ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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仮面ライダージオウ…ついに始まりましたがナレーションと未来のジオウの声がまさかの小山力さんとは……。まぁ、御本人は役者時代に仮面ライダーBLACKで霞のジョーの役をやられてましたし、鎧武でも武神鎧武の声やってましたからね。
そして早くもビルドの戦兎とクローズの龍我の出演。
更に次回は“ビルドアーマー”が初披露……。
個人的には少しテンポが早過ぎる気もしますが、まぁ、子供向けですしね(⌒-⌒; )






Den of Beasts《獣の巣窟⦆後編

 

 

 

 

 

「ねぇ、どうしたの?」

 

それは、まだ箱庭(ガーデン)にいた頃のお話。

些細な事で友達と喧嘩してしまった私は、1人で泣いていた。

そんな時、貴方は言った。

 

「大丈夫?」

 

泣いてる私に貴方は心配げな様子で、戸惑っていた。

 

「………友達と……喧嘩しちゃったの……ひぐっ、うぅ、どうしよう……嫌われちゃったよぉ……」

 

「ああ、な、泣かないで!! あ、え〜っと……そうだ! 僕も一緒に謝るから、とりあえず謝ろうよ!」

 

「でも、謝っても許してもらえなかったら……」

 

「その時はその時! もしそうなったら僕が仲直りする方法を考える! 約束するよ!」

 

そう言ってくれた貴方は小さな手を私に差し伸べる。嬉しかった。

そんなことを言ってくれたのは貴方だけ。

その時から私は、◾︎◾︎◾︎君のことが……。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

「んん……ここは?」

 

何処か懐かしい夢でも見てた様な気がする。

そんな風に思い意識を覚醒していく少女……ココロは周囲の把握しようとするが、場所を特定することはできなかった。

 

「大丈夫ですか」

 

淡々とした少年の声が耳に入り、視線を向ければミツルがいた。

ココロに背を向けて立っており、リザスターガンをいつでも使えるように構えた状態で周囲への警戒に気を配っていた様子だ。

 

「ミツル君……ここって……」

 

「どうやら地下みたいですね。マグマ燃料を

送るパイプもありますし」

 

周囲には人が3人分で丁度という位の太さのパイプが左右の壁に配置されており、ガラスのような透明な素材を用いてる為か、その中を流れるマグマ燃料がオレンジ色に薄く輝きを放っていた。

 

「あ、そう言えば私達……あの触手みたいなのに……」

 

「引き摺り込まれたんです。とにかく探索してみましょう。何処かに出口があ……ぐっ!」

 

『ある筈』と最後まで言おうとしたが突然の激痛が電気のように神経を駆け抜ける。その正体をミツル本人はとうに知っている。

 

「ミツル君! それ…ッ!!」

 

ミツルの右腕…位置的には肘より上の部位になるが、その箇所の黒い防護スーツが破れ、赤い何かが滴り落ちている。

『血』だ。

 

「……平気ですよ。こんな傷…ッ?!」

 

痩せ我慢でこの場を乗り切ろうとするが、それを嘲笑うかのように更に痛みが増して来た。

 

「ダメじゃない! 見せて…」

 

「触らないで下さいッ!」

 

立ち上がり自身へと伸ばすココロの手を怒声で阻止するミツルの顔には、明確な拒絶の意思が嫌でも見て取れた。

咄嗟に出た行動なのか、ハッとした表情になるミツルだが次第に何処かバツが悪そうに顔を少し歪める。

 

「あ、ごめんなさい……」

 

それに対してココロも何処か同じ様な顔で、謝罪の意を述べる。

 

「でも、お願い。手当てさせて? 少しでも楽になれるなら越したことないから」

 

真っ直ぐで優しい瞳から放たれる視線。

それに我慢ならなかったのか、他に何か理由があったのかは分からない。が、とりあえずココロから簡易ながらも手当てを施してもらう事にしたミツルは一旦壁際に腰を下ろし、その身をココロに預けることにした。

 

「ちょっと痛むかもしれないけど、我慢してね」

 

予めそう言ってココロは手当てに取り掛かる。あくまで応急手当てなので、完全な治療ではないがそれでも傷はすぐに手術する必要があるレベルではないので、今はこれで正解と言えるだろう。

応急キットのポーチから殺菌と止血効果のある薬品パウダーのスプレーを取ってガーゼへと散布し、散布したガーゼの面に傷口を当てた。

なるべく強めに押し、少しでも止血を早める。そのおかげか大体5分位が経過した時にはパウダーの効果もあって止血が上手くいった

ようで、その事を確認したココロはガーゼを被せたまま、そこから包帯を巻いていく。

手慣れた様子で黙々と作業しているココロを見ながら、ふとミツルは湧き上がった疑問を口にした。

 

「どうして、そんな事をしてくれるんですか?」

 

「え?」

 

「僕は、貴方にこんな事をされるだけの借りなんて作っていませんし、そもそもする必要は全く無いんですよ? それなのに、どうして

貴方は……」

 

他人と距離を取り、壁を作ることで無干渉を決め込むミツルにしてみればココロはある種の異常と言えた。ココロという少女は、他人の為に何かをしようとする。

だからと言って決して見返りを求めたりせず、悪意を秘めた裏があるという事はなかった。誰にだって持ち前の優しさを向ける。

それは彼女にとって当たり前の事に過ぎない素直な気持ち故の結果なのだ。

しかし、ミツルにはそれが理解できなかった。

他人に排他的で全く信じず、他人との関係に必要性を感じ得ない思想を持っているからこそ、このココロへの問いかけは彼女の真意を探り図る為のもの。

そんな意味が隠されているなど、知る由もないココロは、ただ有りの侭に。

自分にとっての答えをミツルに聞かせる。

 

「誰かの為に何かしたいなって思ったとして。実際にそうするのに特別な理由って、私はいらないと思うな」

 

「……逆に言いますけど、理由が必要ないなんてことあるんですか?

 

「他のみんなはどうかは分からないよ。けど、少なくとも私はそう思う」

 

屈託のない笑顔で真っ直ぐに答えるココロを何故かこれ以上直視することはできず、そっぽを向いてしまう。

 

「あ、あの……」

 

「今貴方にした質問は忘れて下さい。血も止まりましたし、さっさと出口を探しましょう」

 

そう言いい、まるで重い荷物でも背負っているかのようにゆっくりとミツルは立ち上がり、改めてリザスターガンを構える。

 

「うん…」

 

頷いて答えるココロが同じ様に立ち上がったのを確認したミツルは周囲を警戒しながら歩を進め始め、彼女はその後を追う形で付いていく

二人は、その場を後に地下の出口を探す為に足を進めた。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

一方、アマゾン・イプシロンと第13部隊のコドモたちは突如出現したタコアマゾンに対し、相手取っていた。

とは言え、実質戦闘はイプシロンに任せっぱなしでイチゴたちはただ見守る以外にないのだが。

 

「お、おい、やっぱ援護した方がいいんじゃねーのか?!ヒロだけにやらせっぱしなんて……」

 

「分かってる! けどあんなに動いてたら当たらないし、下手したらヒロに当たるのよ! 分かる?!」

 

「落ち着けイチゴ!」

 

リーダーであるイチゴにイプシロンの援護をすべきだと。

ゾロメがそう進言するも、とうのイチゴはやや冷静さを失った様子で怒鳴り返し、それをゴローが諌める。

何故、彼女がこうなっているのかと言えば原因はイプシロンにある。

 

「ハァ……ハァ……ハハッ、ヒヒッ、ハァァ」

 

荒い息遣いの中に尋常ならざる悦楽に浸るかのような嘲笑。

タコアマゾンとの戦闘が始まって早々、まるで戦いが楽しくて嬉しいと。そう言わんばかりの苛烈な獣の如き攻撃で敵を攻め立て、アームカッターや両手の鋭利な爪で抉るように切り裂いていく。

何度呼び掛けても答えることはなく、その様はさながらゲームに夢中になり過ぎて親の声が届かない無邪気な幼子のそれだ。

 

「ハハッ……ァァ……愉シイィ……」

 

イプシロンから言葉が漏れる。

通常の生物よりも強靭な力を生む筋肉を切り裂く。強固ながら弾力性をも誇る皮膚を拳や足で叩き、臓器にダメージを与えていく。

その全てがイプシロンにとって何故だか面白おかしく、楽しかった。

アマゾン特有の粘り気を帯びた黒い血を目で見て、空気に溶け込む匂いを嗅ぐ。それだけでも心の奥底が熱り立ち、ますます闘争本能が刺激される。

 

「ヒロ! 正気に戻れ!!」

 

ゴローが叫ぶ。しかしイプシロンはゴローの声など気にする必要はないとばかりに戦闘をやめることはなく、ただ戦いという行為に心地良さと快楽が心を支配していた。

しかし、イプシロンを相手取っている獲物のタコアマゾンもやられるばかりではない。

背中から四本のタコ足の触腕を生やしてイプシロンの両手両足を縛り上げ、壁や天井に叩きつけた。

 

「グッ! ガァァッッ!!」

 

「ダーリン!」

 

優勢だったことを考慮して手を出していなかったパートナーのゼロツーだが、その逆となれば話は別だ。

人間のそれとは思えない身体能力を駆使して容易く、イプシロンがいる向こう側へと来たゼロツーは素早くタコアマゾンの後ろへと回り込み、身体の胴と腹の境目部位の側面に蹴りを一発。

力一杯叩きつけた。

 

「ギィィッ!!!」

 

甲高い鳴き声を上げて苦痛を表すと共にイプシロンを拘束していた触腕を解き、壁に激突。タコアマゾンはダメージのせいか、のたうち回る以外に何もできなかった。

 

「ほら、しっかりして」

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……大丈夫。ごめん。気がおかしくなってた」

 

どうやら正気を取り戻した様だ。タコアマゾンがダメージから回復する前にイプシロンは身体を起こし、そのまま足の裏でタコアマゾンの背中を押さえ付け、アームカッターで首を切断した。

血が周囲に飛び散り、すぐ側にいたイプシロンは顔や身体を漆黒へ染め上げた。

 

「わぁ〜お。やるねダーリン」

 

首に手を当てて、横にシュッとスライドさせることで首の切断を表現するジェスチャーを送るゼロツーだが、イプシロンはそれどころではなかった。

 

“何を、自分は思ってた?”

 

“楽しい? 戦いが?”

 

“アマゾンの肉を切り裂いて、血を見ることが

? 破壊することが?”

 

あまりの精神的なショックに思考が停止しそうだった。様々な疑問が沸き起こり、それらを先ほどの行動全てが明確な答えとなる。

 

“楽しいと思った。思ってしまった。”

 

“血を見て、その香りを嗅いで、胸の奥が騒めくような感覚に興奮した

 

“この感じ、あの時と同じだ。”

 

“初めてゼロツーとストレリチアに乗って、アマゾンに変身して…触手を出して、ゼロツーと深く繋がった様な気がしたあの時……”

 

今まで何となく…いや、自覚こそしていたものの、奥底に封印していた“ソレ”を彼は理解してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“命ヲ、食イタイ……命ヲ、殺シタイ”

 

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

「あ〜クソが。匂いが分かりゃしねぇ……」

 

鷹山刃圭介ことアマゾン・アルファは落ちてから数秒で地下へと到達し、見事に怪我を負うことなく着地を果たす。

両足とか片手を使ったスタイルの着地だ。

地下へと降りて早々文句を言うが、自慢の嗅覚が地下に蔓延る臭いのせいで使い物にならなくなってしまっているのだから無理もない。

まるで腐った海水にゲロでもぶち込んだ様な塩っ気と酸味の二つの香りがおぞましい具合にハーモニィーを奏でている。そんな臭いだった

この匂いは、ミクが言っていた様に建物内に入った時から漂っているのだが、地下は特に臭いがキツかった。

とは言え、だからと言って二人の捜索を辞める程、アルファは無責任ではない。

故に早速ミツルとココロの二人を探そうと足を一歩前へ踏み出す…

 

「!! 銃声か」

 

前に音を察知したアルファは、それが銃声でしかもリザスターガンの物であると即座に判別してしまう。

 

「思ったより早く見つけられそうだな!」

 

ならば、音源へと向かい駆け抜けるのみ。

アルファは身体を巡るギガを両足に収束させ一気に走り出す。

そこいらのバイクの最高速度よりも、その上を行く走りで角をいくつか曲がり、確実に二人のいる場所へと向かう。

やがて辿り着いたそこは送られたマグマ燃料を一時的に貯蔵する所で空間は高さ20m、横幅35mの広大さを持っている。

その中心には太い円柱状の貯蔵カプセルがあり、建物全体に送る為のパイプが四方八方に伸びてカプセルと繋がっている。

通路のものと同じ特殊ガラス製のものだが今は貯蔵しているマグマ燃料を送る必要がない為、何もない透明となっている。

そこでアルファは二人の姿を視認することができたが、問題が起きていた。

あのオトナの群れがミツルとココロを囲い込み、二人はリザスターガンで応戦しているものの、壁際に追い込まれている状態だった。

その状況を見たアルファの行動は早かった。

背後から数体のオトナへとアームカッターの刃を首筋に当てつけていき、スピードを利用して容易く切断してしまう。仲間がやられたことに気付く他のオトナたちだが、何かをする前にアルファの拳が身体に

貫通レベルの損傷を与え、沈黙していく。

ザコを相手に手間取るほど未熟とは程遠い彼の実力は通常のアマゾンよりも劣る死体人形でしかない存在らを、1分と関わらず沈黙せしめた。

 

「よぉ、お二人さん。デート中お邪魔するぞ」

 

「でーと?」

 

「……なんですか、それ?」

 

デートの意味が分からないらしく、ミツルは怪訝な表情を顔に出し、ココロは頭を可愛らしく傾ける。

 

「ああ、知らないか。とにかくみんなの所に…」

 

戻るぞ。そう最後まで言おうとしたアルファだが次の瞬間。何の予備動作もなく彼の身体が突如として激しい打撃音を伴って宙を舞ったかと思えば、かなりの速度を伴って壁にめり込む形で激突。

その後十数秒と無駄な時間を取らず、アルファを紙屑の如く吹っ飛ばした犯人がタコアマゾンと同じ隠遁方法で消していた姿を、自らの意思によって浮き彫りにする。

それは、知る者がいれば“イソギンチャク”と呼ぶかもしれない。コアや消化器官などの臓物を収めた本体部位は赤黒い土台状の肉塊を成し

、その上部からはココロとミツルを連れ去ったあの触手が幾本と伸び縮みしながら不気味に蠢いている。

どうやら二人を攫った犯人は、“コレ”だったらしい。更に触手の中心を見れば何か穴の様なものがある。

“口”だ。

無数の牙らしき象牙色の硬質な小物体が綺麗に並び、三重に連なる光景は異界への入り口にも思えるほど生理的嫌悪を呼び覚ますものだった。

海に生息する通常のイソギンチャクとは随分異なるが、それでも似ていることを考慮すればそれらしさは一応あり、人によってはイソギンチャクと表現してもおかしくはなかっただろう。

しかしミツルとココロにとってイソギンチャクに似てるか、似てないかなど、眼中に及ばない些細な事でしかない。

問題なのはイソギンチャク型のアマゾンの体の大きさが触手も含めて10mもあり、横幅は成人男性の8人分は相当する巨体と二人を攫った際の敏腕性。そしてアマゾン・アルファを不意打ちとは言え、軽々と吹っ飛ばしてしまう単純な力だ。

これらを鑑みればランクの特定は不明ながらも二人の実力と比較して手強い相手であろう事は嫌でも分かる。

 

そのせいか。自然と二人の脳内に最悪な未来が嫌でも想像された……

 

 

 

 

 







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