ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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すみません……この回をヘマやらかして消してしまいました。

再投稿します。どうぞ。


Viper laugh《笑う毒蛇》 後編

 

 

 

 

 

どれほど時間が経っただろうか。

それを確認するだけの余裕は13部隊には存在しない。そんな事していれば、隙を突かれてお終いだ。

 

「チィッ! 叫竜みたいにウジャウジャ湧くなよ!!」

 

ミョルニルを用いた電撃付属の蹴りで怯ませてから、メゾナスでタコアマゾンの首筋を斬り裂くゼロツーは溜まっていく不満を言葉としてブチまける。無論、それで敵がどうにかなる訳でもないが。

 

(拙い! このままじゃ……)

 

全滅。この二文字が嫌でもイチゴの思い浮かんだ。普通に考えれば倒しても倒しても湧き出て来るアマゾンモドキの死肉人形に、その中から変異した完全なアマゾン。今は何とかなっても銃の弾になるギガの容量には限りがあり、体力もまた同じ。

体力が空になればイプシロンの場合は元の姿に戻り、コドモらはまともに立てない状態になるだろう。そうなれば仲良くアマゾン共の腹の中へ収まる未来は確定となる。

 

“そうならない為には、どうすればいい?”

 

“何をすればいいの?”

 

思考をフルに使いイチゴは考える。

この戦況から脱出するには一体どういった方法が正しいのか。リーダーとしての葛藤し始めた直後、それは唐突に起きた。

頭上から幾千と錯覚しかねない程の数の赤い光弾がまるで生きているかのように、蛇行の動きでコドモらを避けて死肉人形やアマゾンへと着弾。死肉人形は当たった瞬間に黒い液体と化し、アマゾンらは結構なダメージを食らったらしく倒れてそのまま黒い液体になって死ぬ者もいれば、何とか生きているものの、いずれ絶える虫の息が殆どだ。

 

「な、何が起こってるの……?」

 

「いや〜どうもどうも。第13部隊の諸君」

 

いつからそこに居たのか。

胡散臭さを醸し出したかの様な雰囲気で揚々と。あるいは飄々とも取れる態度で軽く声を掛けた怪人物……ブラッド・スタークは屋上の中央に位置する辺りの縁に腰を下ろし、手を振っていた。

 

「ブラッド…スターク!!」

 

「おんやぁ? 随分と警戒心剥き出しだね〜イチゴちゃんは」

 

イチゴが名前を呼ぶと同時に睨みを利かせるがそんな事など何ともないと。堂々と宣言でもしているかのように意に介していなかった。

 

「何しに来た、スターク!!」

 

イプシロンがアームカッターを構えて問い掛ける。下手に動けば、いつでも狩ると言う意思表示だ。

だが、スタークは怯えるどころか気に止める様子さえなく、調子を崩さず話を続ける。

 

「何しに来たって、キミたちを助ける為だよ。キミたちを守り生かす事をキミらのパパに頼まれたんだ。何故だと思う? それはボクがキミらのパパの協力者だからさ」

 

なんの配慮もなく投下された発言は爆発的とも言える衝撃でコドモたちに驚愕を与えた。

 

「お、お前がパパの協力者ぁ?」

 

「嘘おっしゃい! なんでアンタみたいな胡散臭い奴がパパの協力者なのよ!!」

 

ゾロメが懐疑的な視線を向け、ミクがありえないとばかりに反論するがとうの本人は溜息を吐くばかりだ。

 

「悲しいね〜、信用されないのって。まぁさ分かるよ? 信じられないのは。でも本当の事だし、どうあっても覆らない事実だからさ、そこん所ヨロピク♪」

 

憎たらしい笑顔でVサインを送るスタークのその舐め腐った態度に業を煮やしたのか。あっという間に距離を詰めて来たゼロツーは彼女が衝撃で落ちようとも鑑みず、問答無用で蹴りを見舞った。

しかし。

 

「!!ッ」

 

「甘いよ。バケモノちゃん♪」

 

その蹴りを、スタークは何と人差し指一本で止めてしまった。

 

「反射速度は中々。身体能力もいい。で・も・さ、足りないよ全然」

 

くいっと。ほんの少し押すだけでゼロツーの身体はグラつき、倒れかけるが両手で身を持ち上げてそのまま反転。体制を何とか立て直すがいつの間にか背後にいたスタークが左腕で彼女の腹部から腰を、右腕で首を絞め付ける形で捕らえてしまった。

 

「ハッハッハッ!! こうして見ると凄い可愛いいね、愛玩動物っぽくて!」

 

「クッ、はな、せ!!」

 

力を振り絞り拘束から逃れようと足掻くが、どうにもできなかった。むしろ無駄に暴れれば暴れるほど締め付ける感覚が強まり、宛ら蛇のようだった。

 

「あと……発育も良いぃ」

 

ねっとりと湿り気を帯びた様な言葉にゼロツーは背筋に悪寒が奔り、しかも腹部から腰を押さえていた腕がゆっくりと這う様に胸へと移動。そうして、その手でゼロツーの美しく整った豊満な乳房を掴んだ。

 

「さ、触るな……ウゥッ!!」

 

「フフフ……悪い子だ。お仕置きしちゃおっかなぁ?」

 

決して強くなく、しかし加減していながらも抜け目のない程にしっかりとした掴み方で乳房を揉む。その背徳感の湧く菅能的な光景に13部隊のコドモらは思わず、頬を赤く染めてしまうが彼は違った。

 

「ゼロツーを離せ!!」

 

後ろからアームカッターで斬りかかろうとするが、充分加減はしている為、まず死ぬことはない。

 

「キミも基本的な性能はいいけど、まだ足りないよ。これじゃ雑魚感まる出しだ」

 

ゼロツーを離し、後ろを振り返ったスタークはメタリックのシルバーカラーに染まる30cmの筒状の物体を何処からか取り出したかと思えば、その筒状の口に当たる部分から硬質な赤い物質が瞬時に生成されれ、アームカッターを防いだ。

 

「何ッ?!」

 

「驚いた? これはギガとマグマ燃料を加工して生産した特殊な物質を使ったものでね。名前は特に無いんだけど……さしずめ、“トランスソード”とでも呼ぼうかな?」

 

どんなに力を込めても切断できない赤い物質の刀身を前にこれ以上は無駄だと判断したのか、イプシロンは一旦飛び退いて距離を取りつつ、戦闘態勢は解かず様子を伺う。

 

「仕組みは簡単だよ。この特殊な加工物質は温度次第で鋼鉄みたいに硬くなったり、鞭のの様にしなやかに柔らかくもなる」

 

軽く筒状の物体…スターク・セイバーを人差し指で器用に持ち上げながら、頼まれてないにも関わらず説明を続ける。その様子からは緊張感に欠けるが決して容易に笑うことのできない不気味な何かがあった。

 

「硬度を高めるには50度以上必要で、柔軟にするのなら28度以下。更にその下まで行くと赤い粒子状に分解できるから消したい時にそうするって感じね。で温度設定の仕方はすっご〜く簡単♪ このコントロールバーって部分を指で軽くなぞるだけ。あ、もっちろん火傷しないよう高温対策もしてあるからキミ達でも十分扱えるけど……あげよっか?」

 

「んなのどーでもいいんだよッ!! つーか、助けるつもりなら何で

早く来なかったんだよ!!」

 

リザスターガンの銃口を突きつけながらゾロメは吼える。

イクノもいつでも狙撃できる様に既に照準をスタークに定めており、他の皆も警戒心を上げていつでも戦える態勢を整えていた。

 

「あ〜れまっ随分と嫌われてるな〜……あっ、質問の答えだけど簡単だよ。ボクはね、どうしても確認したい事があったんだ」

 

「確認したいこと?」

 

疑問を孕ませてイチゴが復唱する。

 

「キミ達13部隊だよ。キミ達はパラサイトとして育成され、その為だけに生きてきたと言ってもいい。そんなキミ達が突然アマゾン狩りを始めてさ、一体何処まで出来るのか……知りたいじゃん?」

 

「そ、それだけの理由で?」

 

「え? なになに怒ってんの? ちゃんと助けてあげんたんだからさ〜、細かい事は言いっこなしでしょ?」

 

さも当然と言って憚らないスタークの言動は、無性に胸の奥底から怒りを焚き付けるには十分過ぎた。

 

「お前……いい加減に黙らないと噛み殺すぞ」

 

「ハッハッハッ!! さっきまでいい様にされてた癖になに? その強気発言」

 

高々とスタークは笑う。が、その視線は何処でも冷え切っていて情の暖かさなど皆無に等しいと言えた。

 

「安さが良い味出してるよ、本当」

 

どういうわけか、唐突に先程までの高々としたテンションがまるで嘘の様に消え去る。

それに伴って声のトーンが低くなったかと思えば、獲物を狙う蛇のような視線がコドモらを縛り付ける。

 

「まっ、いいさ」

 

興味が失せたかのように視線を平常に戻し、トランスチームガンを肩でトントンと軽く叩く。

 

「ともかくボク情報だとさ、まだいるみたいよ? ほら」

 

そう言って人差し指を向ける先には出入り口から新たに出てくるアマゾン……タコアマゾンが8体とカイアマゾン2体が出現。

ゆっくりとした足取りながらも獰猛な唸り声を上げて、獲物として13部隊を捉えていた

 

「それじゃあ、ここはイプシロン君に任せようじゃないか。あっ、それ以外は手出し無用ね♪」

 

スタークはそう言い、前の叫竜戦で使用していた水道管のバルブが付属された銃型アームデバイス『トランスチームガン』を天へ向け発砲。

放たれた赤色の光弾が蛇のような不規則にくねり曲がった動きを見せつつ、イプシロンを除くコドモら全員を拘束した。

 

「ちょっ、何コレ?!」

 

「ほ、解けない…グゥッ!」

 

「ちょ、これ痛いって!!」

 

「ぐっ!」

 

「こ、このぉぉ……ッ!!」

「おい! 何の真似だよ!!」

 

「そうよ! なんでヒロだけにッ?!」

 

拘束されつつも問い詰めるイチゴとゾロメを一瞥するも視線をイプシロンへ向けながら答えた。

 

「まぁ、簡単に言えば性能検証ってとこかな?」

 

「性能検証?」

 

「そそっ。どの程度やれるのか、それが知りたくてね」

 

ただ簡単な事で、なんでもないのだと言っているに等しい様子の言動だが、それで納得できる訳がなかった。

 

「お前ッ…ガァッ?!」

 

捕まった仲間達を助けようとスタークに詰め寄るイプシロン。

だが、そうはさせまいとばかりに1体のタコアマゾンの触手が首へと巻きつき、イプシロンの進行を阻止した。

 

「グゥゥ……ク、ソ……ッッッ!!!」

 

踏ん張りを利かせて抵抗を試みるが、結果はその努力を無駄と嘲笑う。あっという間に引き摺り込まれてしまい、残りのタコアマゾンやカイアマゾンから鋭利な爪や重量感を伴う蹴り、果ては強靭な顎力と牙で噛み付かれると言った理性も技術性もない原初の暴力の嵐がイプシロンを襲う。

 

「おんや? なんか弱くなった?………あー、ただ単にエネルギー切れなわけね」

 

スタークが言いたいのは、アマゾンとしての体質に基づく特性の事を指している。

動物が他の種、あるいは同種の個体を殺害・食べることでその生存を繋げるようにアマゾンもタンパク質……特に人間の物を食らう必要がある。そしてアマゾンとしての力を行使する場合は消耗が激しく、使えば使うほど空腹感は強まり、ある一定のラインまで行くと身体機能が脆弱状態に陥ってしまう事がある。今まさにイプシロンがその状態なのだ。

 

「ぐっ、ガァッ!! ぐ、ヴオオオオオオオオオオオオオォォォーーーーーーー!!!!」

 

一か八か。ギガの力を身体の胸と腹部の境目当たりの中央一点に集中させ、一気に放つ事で衝撃波を発生させる手に出たイプシロンは結果を成功に収めたものの、消耗がより一層としたものになってしまい、現状不利な状況は覆らない。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、……クソ」

 

「へぇ〜やるねぇ〜。普通なら人間の姿に戻ってる筈なんだけど、

以外にタフなのかね?」

 

面白い。内心そう呟いてスタークは、場所を弁えず手に頭を乗せた状態で寝そべる。緊張感などそこら辺にでも捨てたのかと言いたい太々しさだ。

 

「ヴヴ…グルァァッ!!」

 

獣のように吼えるイプシロンはベルトの右グリップを握ると、そのまま一切の躊躇なく引き抜く。同時にアマゾンの血液らしき黒い粘り気を帯びた液体が流れ、足元に生々しい音を奏でた。

そして引き抜かれたグリップ部分はその先に短剣の刀身が形成された武器のそれと化していた。

 

『バイオレント……ブレイク・ナイフ』

 

遅れて電子音声がそう発した。

どうやらこれは、“ブレイク・ナイフ”と言うものらしい。

 

「ギィ、ギィィ!!」

 

タコアマゾンの一体が腕に絡みついた触腕を投げ縄のように振るい飛ばし、イプシロンを捕らえようとしたが自身の身に触腕が接触する前にブレイク・ナイフが無慈悲にぶつ切りにせしめる。

 

「ギィィーーーーーーーッッッ!!!!」

 

「ハァァァァァ…………」

 

痛みに悲鳴を上げるタコアマゾンだが、その姿を見てイプシロンは深く、恍惚とした吐息を零す。

すると今度はカイアマゾンの二体がイプシロンを仕留めようと突撃を仕掛けて来た。その姿は先程まで戦っていたカイアマゾンとは形態が異なり、例えるなら前のカイアマゾンが足軽兵にサザエの意匠を組み込んだ様なら、新たに出てきたカイアマゾンは西洋の騎士にアンボイナと呼ばれる猛毒針を発射する海水性の貝の意匠を有した形態となっている。

 

「ギュルルッッッ!!」

 

独特な鳴き声で威嚇するように吼えるカイアマゾンの内、赤い体色の1体が接近格闘戦を仕掛け、もう1体の青い体色のカイアマゾンは手首から鋭い針を伸び出し、刺しに掛かるという戦法を取った。

アンボイナの意匠を有するだけに針には猛毒の成分が分泌されており

、もしほんの僅かな少量でも体内に入れば数分と掛からず死に至るだろう。

 

「ハァァァァァッッッ!!!!」

 

だが、その事を知らないながらも本能で危険だと感じたイプシロンはブレイク・ナイフで棘を防ぎ、もう一方の手でパンチを繰り出して来たカイアマゾンの拳を鷲掴みにする形で捕らえた。

そして、一方的に棘を押し返すとナイフを袈裟斬りに振るい、カイアマゾンの棘がある二の腕から先を切り落とした。

 

「!!ッッッ」

 

声が出ないほどの激痛が青のカイアマゾンを襲う。だが、その痛みに浸る余韻はなかった

。すぐさまイプシロンが次の手に出たからだ。

イプシロンは赤のカイアマゾンの拳を掴んでいた自身の手に更なる力を込め、一気に自分へと引き寄せる。

そして、そのまま力の流れに任せてある方向へと投げ飛ばす算段で目的の方角へと重量級の部類に入る赤のカイアマゾンを容易く……それこそ、ボールでもポイと手から放す様な感覚で吹っ飛ばした。

目当ての方角の先にいたのは切られた手首を抑えて痛みに耐えている青のカイアマゾン。

そこ目掛けて吹っ飛ばされたという事はどういうことになるのか…問うまでもなく、赤のカイアマゾンとの衝突以外にありえない。

 

「ギィッ!」

 

「ギャッ!!」

 

 

赤と青のカイアマゾンの両者がぶつかり合った際、なんとも間抜けな声が彼等の口から漏れ出た。赤のカイアマゾンを青のカイアマゾンへとぶつける事が目的だったイプシロンは

、成功を少しばかり喜びつつ、グリップを握り回らした。

 

『バイオレント……エア・スラッシュ』

 

ベルトから発生される特殊な電磁パルスが身体中に水面の波紋の如く広がる感覚と、その後で全身のアマゾン細胞が暴れるかのようにザワつき、活性化する様を感じ取っていくイプシロンは膝を屈ませ、強靭な筋力をバネに高く跳躍。

更に両腕に備えられたアームカッターも細胞の活性化によってギガが増幅し、肥大化したのだ。

 

「ハァァァァァーーーーーッッッ!!!」

 

覇気の篭った声をいっぱいに腹の底から吐き出して、イプシロンは降下と同時に肥大化したアームカッターを振り下ろす!

 

「「ギュルルゥゥゥッッッ!!!!」」

 

振り下ろされた両腕のアームカッターが赤と青のカイアマゾンを捉え、頭から下腹部へと綺麗な一線を描いた。

そして。

その身体は慈悲の一欠片もなく左右に分断され、その命を断たれた。

 

「ガルルゥゥゥ……ガァァッ!!」

 

カイアマゾン2体を倒す事に成功したものの、まだタコアマゾンが8体もいる。

枯れ切った力を無理にでも絞り出すような声で叫んだ後、イプシロンは両足にギガのエネルギーを送り、強制的に再度活性化させる事で爆発的な速度を可能にするだけの力を生み出した。

そして、一気に8体のタコアマゾンの間を駆け抜ける。

 

「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!」

 

荒い息がイプシロンの口腔から吐き出される。身体に掛かった負担は既に限界値を超えており、バイオレントを放った時点で変身が解除されてもおかしくはなかったが単に気力か

。あるいは何か特異な体質的理由があったのか。真相は定かではない。

 

「グゥゥッッ!……ガッ、ハァッ!!」

 

さすがに負荷の許容範囲を超えたのか、イプシロンはとうとう膝を曲げ、地に付いてしまった。

それと同時にイプシロンがタコアマゾンらの間を駆け抜けた直後から何故か動きを停止させていたタコアマゾンたちが次々と黒色の液状化へと消滅していく。

どうやら駆け抜けるあの刹那の一瞬にアームカッターの刃が致命傷を与えていたらしい。

 

「ブラボー!アメイジング、ブラボー!」

 

そんなイプシロンにパチパチと。両の手の平で拍手喝采を送るのは、

ただ一人……ブラッド・スタークだ。

 

「火事場の馬鹿力は何とやら……かな? ボクの予想を良い意味で裏切ってくれて嬉しいなぁ」

 

「ハァ、ハァ、ハァ……さっさと、拘束を……みんなの拘束を解けッッ!!」

 

「はいはい、そ〜れッ!」

 

パチンと。弾けるような音を指と指で打ち鳴らし、それに呼応するように13部隊を拘束していた赤いエネルギーのようなものは消失。

自由の身になった。それを確認したイプシロンは気が抜けたのか、人間の姿であるヒロへと戻りながらその身を地面に預けるように倒れた

 

「ダーリン!」

 

「ヒロ!」

 

それを見たイチゴとゼロツーが真っ先に駆け寄る。少し遅れるように13部隊も彼の下へその安否を確かめようと駆けつけた。

 

「おい、大丈夫かよヒロ!!」

 

「ヒロ! しっかりしろ!」

 

「し、しし死んじゃってないよね?!」

 

意識のないヒロをイチゴが仰向けに寝かし、状態を見る限りでは意識を失っている以外に何ら傷や異常の類は見受けられず、正常な呼吸を表すように胸部が上下に動いている。

 

「さって、と。中々いいもの見れたし、ここでお開き…ッ!!」

 

ここに留まる理由がなくなったスタークは軽く身を伸ばし、そのまま去ろうとするが直後に自身に向けられた殺気を感じ取り、トランスチームガンをある方向へと定めトリガーを押した。

 

バァンッ!!

 

赤色のエネルギーで形成された光弾とは違う、れっきとした金属製の実弾が銃口から吐き出され一直線に殺気の下へと突き進む。

 

「フンッ!」

 

しかし実弾は容易く弾かれた。

 

「よぉ、初めまして。ブラッド・スターク…で、当たってるか?」

 

実弾が放たれた方角はこの屋上の出入り口だった。

スタークの名を呟きながらそこにいたのは……。

 

「刃さん!!」

 

アマゾン・アルファだ。その後ろにはミツルとココロもいた。

 

「コ、ココロちゃあぁぁんッッッ!!」

 

嬉しさに満ちた涙を流して3人の下へと向かうフトシ。ココロの両肩を掴んで良かったと何度も言う光景からはどれ程心配したのかが窺い知れる。ミツルはどーでも良さそうだったが、二人の様子を見て心なしか安心した様に溜息を零す。

チラッとそれらを一瞥したアルファも、そんな感じを匂わせるが眼前にいるスタークへの警戒は一切解かず、緑色の複眼を光らせて問いを投げる。

 

「ノーコメントってのは無しだ。答えろ……お前は何もんだ?」

 

「そうだねぇ……七賢人の老人方の協力者って言えばいいかな?」

 

「ああ……ジジイ共の。で、そんな奴が何の用なんだ?」

 

「いやね、頼まれたんだよ。13部隊を守って欲しいって。まぁ、正直面倒臭いとは思ったけどさ、これでも仕事はきちんと受けてする方だから」

 

胡散臭い。スタークの言葉から滲み出るものは、まさにこの一言に尽きた。

 

「騙されないで下さい! こいつは私達の身動きを封じて、ヒロだけにアマゾンと戦わせたんです!!」

 

イチゴが非難するように叫びながら言う。

それを聞いてスタークは悪びれる事なく話を続けた。

 

「確かにそうしたけど、ボクはただ単に彼の力量や能力がさ、どの程度なのか知りたかっただけだよ。実際、ヤバそうだったら助ける気でいたし」

 

「……そうかよ。フンッ!」

 

真に受ける気はない。

わざわざ言葉にしなくとも短い返答と同時に、右腕にギガのエネルギーが集中されていく時点で明確に知れるだろう。

そこから発生した赤熱のエネルギーが湾曲した層の刃と化してスタークに迫る。

鷹山刃圭介という男の性格を鑑みて、自分の態度で何かしら攻撃手段に出て来るものだと事前に予想はしていた為、突発的な彼の行動に対応することはスタークにとって造作もなく、トランスチームガンの光弾で相殺する算段を即座に組み立てて銃撃を放つ。

が、ここでスタークは目測を誤った。

層は二重になっていたのだ。1発の光弾は確かに相殺を可能にしたがその中に隠れていた二層目はそうはならず、目前までスタークに切迫した。

 

「チィィッッ!!」

 

本来ならこの時点で餌食になっていただろう。しかしスタークは迫り来る赤熱のエネルギー層をギリギリの紙一重、僅か数cm差で横に身を反らすことで回避する事に成功したのだ。

 

「グゥゥッッ!!………ハ、ハハ……やってくれるね!」

 

とは言え、完全には回避できなかった。

その代償として層に近かった左腕の二の腕には火傷のそれと似た切創の傷跡が形成されていた。

 

「ほぉぉ。当てる気満々だったんだが、意外と反射神経イイんだな」

 

「あ〜痛ったいな〜! 乙女の肌を傷物にするとか、えげつないね!」

 

皮肉たっぷりのアルファの言葉だが、それに応える事はなく、自身の二の腕に刻み付けられた傷を見てスタークは嫌味混じりに罵る。

 

「それで、どうする? 大人しくお縄につくか。それとも、俺に情報を色々吐いて殺されるか……さぁ、選ばせてやる」

 

「それじゃっ、第三の選択肢『逃げる』で!!」

 

2つに1つという選択肢の提示に対し、彼女は存在しない3つ目を選ぶとその身体に黒の蒸気を纏わせる。すぐにアルファが阻止しようと走り出すしたものの、あまりに遅過ぎた

。蒸気の消滅と共にスタークの姿は消え失せてしまったのだ。

 

《あーそうそう。キミ達の大事なお仲間の女の子……確か、ナオミだっけ? その子はボクがきちんと助けてあげたからさ。今頃は1階のロビーの所でスヤスヤ夢見状態♪

ちゃんと保護してあげるんだよ? あと、ここのアマゾンたちはイプシロン君が始末した奴等で全部だから。チャオッ!!》

 

13部隊にとっては良い情報と付属してどうでもいい台詞を吐き捨てて、紛れもなく本当にこの場から姿を消したようだ。

 

「ジジイ共の協力者がブラッド・スターク……こいつは、キナ臭くてイケ好かねぇな」

 

小さくだが、それでもはっきりとした声音で様々な感情を交錯させた様に呟くアルファの言葉は、ただ静かに虚空へと溶けていく他になく、本人以外の誰の耳にも届く事はなかった……。

 

 

 

 

 

 

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