ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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よくよく思い返してみるとダリフラってビルドと被ってるトコありますよね。

まず『火星』、イメージカラーが赤と青だったり(ラビットが赤、タンクが青)
、ダリフラ20話放送からビルド本編で猿渡一海(グリス)が『話が宇宙規模に
なっちまった』とか言ってたり(実際スタークの正体云々で話が宇宙レベルで広
がってましたし……)。

余談ですが『話が宇宙規模になっちまった』の下りで『シンクロ率100%!!
ww』と思わず吹いちゃいました。はい。













迫る嵐の前に… 前編

 

 

 

 

 

 

 夜。正確に言うと午後9時30分頃。

 

 ミストルティンでの消灯時間は10時と定められている為、宿舎の灯りは未だ消えておらず、温室も同じで、人工の光たるスタンドライトが花々を照らしていた。

 その前に二つの人影が立っている。よくよく見ればそれは制服姿のゼロツーとイチゴだ。

 

「どうしたのイチゴ。話って何?」

 

 やや悪戯っぽい笑みを浮かべるゼロツー。そんな彼女とは対照的にイチゴので面持ちは真剣のそれで、やがて用件を口にし始めた。

 

「明日の戦い、あんまり勝手に行動しないで私の指示に従って。お願い」

 

 それはリーダーだから、ではなく、イチゴという個人からの真摯な願いだった。

 そこから来るのは純粋なヒロの安全だ。ヒロがカマキリアマゾンとの戦いに倒れたと聞いた時、心中に湧き起こって来たのは動揺と不安、そして恐怖だ。彼の容態が悪かった事に関しては薄々ながらも気づいていた。

 ただヒロの気持ちを汲んで、敢えて言わなかったのだがあの時、つい彼を問い質してしまったのは、こういった最悪の事態をつい想像してしまい、焦燥に駆られてしまったからだ。

 もっと早く問い詰めていれば……何か変わったかもしれない。今となってはそれが間違いだったと痛感せずにはいられなかった。

 

だが、今更後悔した所でどうにもならない。

 

今更ヒロを戦わせないで下さいとハチに進言しても遅いだろう。作戦の変更はないと言っていた。何より圧倒的な数で押し寄せて来る叫竜を相手にするに当たり、ストレリチアの力は不可欠になる。

 その事をイチゴは理解しているつもりだ。

 

 “だから、せめて”。

 

 “ヒロに負担を課すような真似だけはしないでほしい”。

 

 それが彼女の本心であり、こうして懇願することだけが無力な自らができる最低限のことなのだ。

 

「………あの時、ボクは言ったよね? 目的があるって」

 

 笑みを消すゼロツーは、淡々と言う。

 

「だからボクは戦うんだ。悪いけど遠慮なんてできないよ」

 

「!!ッ ヒロは、本当に今危ない状態なの! もし次乗れば……どうなるか分からないわ」

 

 必死にイチゴは言うものの、ゼロツーは依然として顔を、その意見を微塵も変えなかった。

 

「ボクと乗りたいって言ったのはダーリンだし、強制したつもりはないよ……それとも、代わって

ほしいの?」

 

「私のことはいいでしょッ!!」

 

「ならそっちも口出しするな。キミには関係ないだろ」

 

 ムキになり始めたイチゴと言葉に棘が付く様になったゼロツー。この2人の会話は平行線を辿るばかりで、明確な出口がなければ延々と続くかもしれないと感じさえする。

 どちらかが根負けするか、もしくは妥協するなどの選択肢を取れば話は早期に決着するのだが、生憎、どちらもそれを許さなかった。

 

「関係ある!! 私はリーダーなんだ! 大切な仲間が死にそうになってんのにそれを見過ごせって言うの?!」

 

 部隊のリーダーとは、当然の帰結として部隊に属する部下、あるいは仲間の状態を把握し対処する責任がある。イチゴはそれを理解しているが故に言っているのだが、ゼロツーは鼻で嗤った。

 

「ハッ、リーダー。リーダー。何か反論する度にそれを出すよね?」

 

「悪い?」

 

「別に。リーダーだからって、それを理由にボクとダーリンのことに口出しするのはどーかなって思うだけ」

 

 言葉の応酬を交わし、睨む両者。

 イチゴは燃え滾る炎のような激情を灯した目なのに対し、ゼロツーはそれとは逆で一切の感情を垣間見せない冷徹な目つきのそれだ。

 睨んでいるとは言え、その形は非常に異なっていると言えるものだった。

 

「………あんたは、ヒロを利用する気?」

 

「……かもね」

 

 肯定。あるいはそれと同義であることを匂わせる台詞で答えたゼロツーは身体を回し、まるで自身の顔を逸らすようにして、イチゴに後ろ姿を見せる。

 

「死んじゃうかもしれないんだよッ?!」

 

 イチゴの声が必死さを帯びて荒げる。彼女の悲痛な叫びを聞いても、彼女の淡々とした無感情な声音は変わらない。

 

「かもしれないってことは、まだ分からないって事だよね? ダーリンはボクと三回以上乗っても死ななかった。キミはもう知ってるみたいだけど、あの噂は本当さ……」

 

 僅かに声が震える。

 

「ボクと乗ったステイメンは3回目で必ず命を落とす。これまでボクと乗ったステイメンはみんなそうやって死んでいったよ。けど、ダーリンは違った。違ったんだよ……」

 

 一層と震えが強まり、無感情で冷徹だった筈のそれは今にも泣き出しそうな幼子に似た声音へと変わっていく。

 

「あ、あんた……」

 

 ゼロツーの突然の変化にイチゴは困惑を覚え戸惑う。

 

 どうして、いきなりそんな風になるの?

 

 私のせい?

 

 一体何を考えているの?

 

 疑問が絶え間なく逡巡、更に疑問が増えてはより思考の泥沼へと陥りかけてしまっていた。

 

「おやおや、こんな所で何をしているんだいイオタ……」

 

 そんな彼女の意識を思考の泥沼から引き上げたのは、救いの手ではなく声だった。

 聞いた覚えなど全くなく、声の雰囲気から察するに少年と思わしきものだ。それに反応してイチゴが後ろを振り返れば、案の定1人の少年がいた。

 

 イチゴはその彼に見覚えは一切なく、当然ながら眼前の少年が一体何者なのか、見当もつかない。

 

「………」

 

「あれれ。知ってる癖にそうやって目も合わせてくれないって、イオタ。君は相変わらずなんだね」

 

 イオタ。

 その言葉でゼロツーへ視線を投げかけ、話しかけている時点でゼロツーの事だと察することができるのだが、当の本人は一切言葉を発することなく、むしろ居ないものとして完全に無視を決め込んでいた。

 少年がやけに親しげに話しかけていることからこれが初対面という訳ではなく、知り合いの仲である筈なのだがゼロツーの対応を見るに、ゼロツー個人にとって彼は好意的に接する必要性のない人物なのだろうか。

 そんな両者を他所にイチゴは、突然現れた少年の姿をまじまじと観察する。何処かの王族の王子と見間違う程に清楚なる言葉が似合う純白の制服を身に纏い、飾られている装飾も相成ってそれらしさを助長させていた。

 

「ハロ〜、13部隊のお2人さん!」

 

 そんな彼の後ろから軽快な雰囲気の聞き覚えのある声がイチゴとゼロツーの耳に届く。

これには無視していたゼロツーも振り向き、声の主の姿を明確に捉えた。

 

「お前は……」

 

「なんで、ここに」

 

ブラッド・スターク。

 

 ヒロを窮地に追い込んだ謎多き人物は、不敵な笑みで浮かべては、得体の知れない空気を変わらず漂わせていた。

 

「なんで、ここに……」

 

「いや〜あの後さ、キミらのパパたちに大目玉食らっちゃって。名誉挽回って訳で、そこのじゃじゃ馬お姫様を連れ戻しに来たんだよ」

 

「ッ!!」

 

「ど、どういう事?」

 

 言葉の意味は解る。

 しかし真意が全く分からなかったイチゴは、反芻するかのように聞き返した。

 

「そのまんまの意味さ。事情が諸々変わったみたいなんだよ。で、ゼロツーの力が必要だって話。理解した?」

 

 端的で単純な解答にイチゴは、ますます困惑を極め、あまり理解が追いついていないが

……とりあえず、彼らの目的がゼロツーの連れ戻しだということは分かった。

 

「ダーリン決まったから、そんなこと言われる筋合いはないって言い訳は無しで頼むよ。パートナーがいようといまいと関係ないんだ。重要のなのは……お前の力だ」

 

 キッとゼロツーは睨む。殺気さえ伴うそれは、常人ならば必ず怯んでしまうだろう。

 だがスタークは平然としており、全く通用しないと豪語しているかのように不敵な笑みを崩さない。更に圧力をかけるのが目的なのか、言葉遣いに変化が見受けられた。

 

「あ〜、そうだった。イチゴは知らなかったな。ゼロツーはお前らが慕うパパ共を守護しいかなる敵や不穏分子を抹消する親衛部隊ナインズの一員なんだよ。まぁ、今は部隊を離れてるから、元ってのが付くけど」

 

「で、僕がそのリーダーを務めさせてもらっている“ナイン・アルファ”。よろしくね」

 

 鷹山が変身するアマゾン・アルファと同じく“アルファ”のコードを持つナインズの一員にして、リーダーであるナイン・アルファは手を開いた片手を上げ、軽快な雰囲気と声音に笑顔という組み合わせで挨拶する。

 

「とは言え、今すぐじゃないがな」

 

「……素直に従うと思うな」

 

 剣呑な言葉はより鋭さを増した殺気の視線と共にスタークへ届くが、やはり意に介すことはなかった。

 

「残念だけど、君に拒否権はないよイオタ。パパの下した命令は絶対だ」

 

 こちらも笑みは絶やさず、しかし、粋がるな…と。暗に言葉としては出さず、気の圧力としてそれを示していた。

 

「おいおい、あまり調子に乗らない方がいいぞゼロツー。どう足掻いたってお前が“鍵”であるのは変わらないし、それが逃れられない運命ってヤツだ」

 

 スタークの口調の変化は、ちょっと変わった程度では済まされないほど激変していた。まるで少女と話しているのではなく、壮年の男性と会話を交わしていると錯覚しかねない違和感が地中に張り巡らせた木の根のようにイチゴの心に巣食う。

 容易に払拭できるものではない、尋常ならざる精神性を垣間見た気分だった。

 

「か、鍵?」

 

 まるでスタークを異形の化け物のように怯えた目ではあるが、それでも逸らさず見据えるイチゴは、鍵という言葉に疑問の声を上げる。

 

「おっと、口が滑ったな。でもまぁ、聞かれて困る事でもないから教えてやる。

こいつは、“世界を救う鍵”なのさ」

 

「世界を救う? ゼロツーが?」

 

 懐疑的な視線でイチゴは、ゼロツーを見る。正直言って彼女が世界を救う鍵とは到底思えない。自由奔放、独尊、無法者、傲慢、そんな言葉の数々がよく似合うこのゼロツーという少女が世界を救うなどと言われても、何らかの比喩か冗談の類としてでしか認識できない。

 そう思ってしまうのも致し方ないだろう。

 

「ここもそうだが、今全プランテーションがある場所へと向けて進んでいる。そこは数多の叫竜が蠢き犇めく地。そこへコイツを運ぶのが、お前ら13部隊の使命なのさ」

 

 腕を組み、足をリズム良く、ゆっくりとした調子で踏み鳴らす様は口の両端が釣り上がるような笑みも加えて、愉快極まりないとでも言っているかのようだ。

 イチゴにはそれを酷く不気味に思えた。

 しかし、スタークにとってイチゴの心境など気にかける必要性は皆無で、そもそも認知すらしないだろう。

 

「さて。これ以上はさすがにもう言えないが……せいぜい死なないよう頼むよ♪ キミたち13部隊には期待してるから」

 

 今度は、イチゴが知るスタークの少女らしい口調だった。そして、それだけを言い残し

、スタークはナイン・アルファと共に木々の中に広がる暗闇へと足を運び、数分も経たない間にその姿を消した。

 

 まるで闇夜に紛れるかのように……。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

「随分饒舌になってたみたいですけど、いいんですか?」

 

「構わんさ。“オレ”を面白くさせてくれた礼に教えやるのも一興ってヤツだ」

 

 暗闇の中、スタークとナイン・アルファは歩を進ませながら何てことのない会話を交わしていた。しかし、スタークの口から発せらる声は確かに少女のそれなのだが、その口調はまるで壮年の男性を思わせるもので一人称も変わり、“オレ”となっている。

 

「とは言え、ボロ出さない方がいいですよ」

 

 窘めるように言うものの、その言葉から感じ取れるのは諌める気というより冗談半分と言ったいいかもしれない軽薄さのみ。

 そんなナインアルファにスタークは鼻を鳴らす。

 

「ボロも何も、“ボク”もオレなんだよ」

 

 ナイン・アルファの方へ振り返り、バイザー越しに目を面白おかしそうに細める。

 口の両端を吊り上げている部分も相成って、傍から見ればそれは狂気に映るかもしれないがナイン・アルファにとっては見慣れている為、何をどう思うものでもなかった。

 

「さ、て。今回の大規模な作戦、どう転ぶか見物だな〜……」

 

「ええ、本当に」

 

 話を振られた金髪の少年は、否定の意も見せずスタークに同調するように微笑み、それが当たり前であるかのように頭を下げつつ、左手を右肩辺りへ添える。王家に支えし騎士然とするような、まさにそんな振る舞いでもって返答を述べるのだった。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 イチゴは1人、コドモたちの住まう宿舎へと戻っていた。頭の中にあるのは一介の言葉が知っていいのかと思う程のスタークから与えられた情報、ゼロツーのこと。

 

 そして、ヒロの今の状態。

 

 結局イチゴはゼロツーに対しヒロに無理させないよう咎めこそしたが、効果があったとは言えず。

 そもそも承諾の意を持った返答さえゼロツーから貰ってはいないのだ。

 

「こんな時間に何やってるんだよ」

 

 ふと声が掛かった。地面に向けて俯いていた顔を上げれば、そこは宿舎の玄関出入り口で自身のパートナーである寝巻き姿のゴローが立っていた。

 

「ゴロー……」

 

「真面目なお前らしくないな。もう就寝時間回ってるぞ。早く着替えて寝とけ……明日は大変なんだ」

 

 優しくそう言ってイチゴに近付いていくゴロー。

 彼の言葉がイチゴにとってどのように聞こえたのか、それは本人ですら認知し得ないものだったのが、それでも。

 心の内に秘めた感情を吐き出してしまうには十分な引き金だった。

 

「!!ッ」

 

「え、お、おい!」

 

 無我夢中でゴローの胸元に顔を埋め、彼の服をギュッと握り締めるという突然の行動に対し、当然困惑したゴローは説明を求めようとしたのだが、上擦り、涙ぐむような声を聞いた瞬間。何も……聞けなくなった。

 

 やがて、ポツポツと。

 

 何らかの思惑か、あるいは運命の悪戯か。

 

 時折降ることのある人工的な雨が降り始めた。雨は木々を、地面を、宿舎の外壁や屋根を絶え間なく濡らしていく。ザーッと降る雨の雫と、地面、あるいは物へ叩きつけられる音の二重奏がミストルティンを支配していた。故にイチゴのか細い嗚咽は、その二重奏へと飲み込まれるしかなかった……。

 

 

 

 

 

 

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