ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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 寒くなりましたが、負けずに投稿もリアルもがんばりたいと思います(*^▽^*)




両都市防衛決戦 中編

 

 

 

 

 

 

 

『ハァァァァァッッッ!!!』

 

 イチゴことデルフィニウムの叫びが轟く。

振り上げられた双剣と槍を合わせたような専用武装『エンビショップ』の刀身がコンラッド級1体を切り裂き、青い鮮血を咲かせると共に撃沈せしめる。

続いて2体のコンラッドが飛び掛かるようにして襲って来る。突発的だがデルフィニウムは慌てて動揺を生むという愚を犯しはしなかった。

 

『無駄だァァッッ!!』

 

 そう叫んだデルフィニウムは1体を串刺しに、もう1体を串刺しにした個体を盾代りの如く衝突させ、一気に力押し返す。その隙を見逃さず、迅速な手際の良さで2体の叫竜を何回か袈裟斬りに仕留める。

 

「クッ! 何やってんですか!!」

 

「うるせ! 勢いつけ過ぎたんだよ!!」

 

 リーダー機たるデルフィニウムが奮戦する一方で、アルジェンティアは叫竜を仕留めようと迫る中、その勢いが仇となり、運悪く支援射撃を行なっていたクロロフィッツと運悪く激突してしまった。

 とは言え、大したダメージも傷もないので機体上の問題は特にないが、こういった味方間で起きた事故と言うものは敵対している相手からすれば攻め入れる隙となり、格好の機会なのだ。その隙を突かれて命取りになりかねないのが戦場というもの。現にコンラッド4体の叫竜がアルジェンティアとクロロフィッツを狙い、襲い掛かる。

 すぐに起きようとするが中々思うように起き上がれない。そんな危機的窮地を救うかの様に4発の橙色の閃光の弾丸がコンラッド4体を全て貫き、一瞬にしてその命を刈り取られた彼等は爆散。青い血潮を撒き散らした。

 

『大丈夫?!』

 

 ルークスパロウの砲口を向け、そこから煙を黙々と立ち上らせているジェニスタの姿。

どうやら自分達が助かったのはジェニスタに乗るココロとフトシ、二人のおかげのようだ

 

「サ、サンキュー……」

 

『ありがとう!』

 

『助かったよココロ』

 

『ふふ、どういたしまして』

 

 ミツルを除く全員がジェニスタに礼を言うが、今はそんな事をしている暇はないらしい

。気が付けば倒した数以上のコンラッドが地中から顔を覗かせ続々と参戦して来た。

 

 どうやら叫竜側の増援のようだ。

 

『みんな、“プラン・ホーク”で行くよ!』

 

 戦況を見越してここでイチゴがこのような数の不利に陥った場合の戦法の内、ホークと称される戦闘プランを実行。

 すぐさま行動を開始したのはクロロフィッツとアルジェンティアだった。さっきは無様な真似を晒してしまったが同じ轍を踏む程、そこまで間抜けではない。アルジェンティアは開いた両手を重ね合わせその掌にクロロフィッツはアルジェンティアの肩を借りつつ、ふわりと軽く舞う様にして乗ってみせた。

 それを確認したアルジェンティアは、両腕に力を込めると思いっきり宙へと放り投げる

 

 クロロフィッツを、だ。

 

 が、これは作戦の内に過ぎない。

 

 クロロフィッツは一回転し、両腕に搭載された専用武装『ウィンスパン』の銃口を20体の叫竜の一群へ向ける。同時にジェニスタもルークスパロウの砲口をクロロフィッツと同じ標的へと定める。

 

『ファイア!!』

 

 デルフィニウムの合図を聞いたジェニスタとクロロフィッツは、一斉射撃を展開。

 1発1発が強力なパワー系射撃と威力は並なものの、息つく暇もなく連続して襲い掛かるスピード系射撃。力と速さにおける2属性の連携射撃は確実にコンラッド級の叫竜を仕留めていき、運良くこの射撃の雨から逃れた何体かの個体も事前に構えていたアルジェンティアの専用武装である『ナイトクロウ』によって切り裂かれ、デルフィニウムのエンビショップで刺し貫かれる末路を辿った。

 

『ウソ、一気に20体とかすごくない?!』

 

 アルジェンティアの驚愕だと言わんばかりの発言は、他のコドモたちにも伝播する。

 

「まさか、ここまで上手く行くとはな」

 

「ジンさんの訓練の成果だね!」

 

 しみじみと語るゴローに嬉しそうな反応を示すフトシ。訓練の成果とは、実は13部隊はこの戦いの二日前に特別訓練を行なっており、驚くべきことに訓練カリキュラムの発案と講師はあの鷹山だ。

 アマゾン狩り専門の戦士にして、ワイルドながらも技術的な格闘センスを有するアマゾンライダーである彼が、叫竜戦を想定した訓練を考案・指導するというのは異な事なのだが、これに関しては鷹山がハチやナナに無理に言って押し通したのだ。

 

 曰く、『パラサイトとしても成長しねぇといけないから、俺も見てやる』。

 

『どうやって? 俺の戦い方を応用させるんだよ』。

 

 ハッキリ言って疑問符しか浮かばない言葉のソレなのだが、言いたい事を簡単にまとめるとこうだ。

 

 鷹山の戦い方を模倣・改良する。

 

 そんな事をして意味はあるのか? と問い掛けたくなるかもしれないが、彼の戦い方は合理的で、あまり体力やギガを消耗させない一点に特化したものなのだ。

 つまりそれを模倣するという事は、叫竜戦でエネルギーを無駄に消耗させない戦い方をすることが出来るかもしれない、という事なのだ。

 プラン・ホークもその一つ。

 これは多数の敵を相手にした時にする鷹山の戦法の一つを応用したもので、鷹山の場合はアマゾン・アルファとなって地面から8m程高く跳躍した際、ギガでコーティングした水分を弾丸のように口部から射出。

 しかも、弾ければ更に小さな水弾と化し衝撃による力も加わり、小さいながらも威力が上がる仕組みとなっている為、広範囲における多数を一気に殲滅する事が可能だ。

 もっとも、この技で仕留められるアマゾンのランクはE〜Cランクが限界である為、基本的にそのランクの敵が多数の場合か。あるいは自身における何らかのアクシデントがない限り、滅多に使わないのだが。

 更にデメリットがあり、空中にいるのだから地上と違い自由には動けず、もし射撃能力や対空攻撃を可能とする手段がある相手には、集中砲火で撃墜されてしまう危険がある。

 だが今回の場合コンラッドにはそういった類は見受けられず、もし持っているなら既に使っている筈だ。

 あくまで接近を前提とした白兵戦しか行使して来ない所を見るに、無いのだろう。

 そう判断したからこそ、イチゴはプラン・ホークを実行したのだ。

 

「ヘッ、見たか俺の腕前!」

 

 まるで自分のおかげだとでも言いたいのか、そんな台詞を吐いて調子付くゾロメ。

 確かにクロロフィッツを飛ばす役目を担ったのは、紛れも無くアルジェンティアであり

、ゾロメとも言えるがそれはパートナーであるミクも同じだ。

 

『ちょっとぉぉ。ミクもなんだけど』

 

『ま、まぁまぁ……』

 

 ミクは自身が入っていない事をよく思わず、不機嫌を隠さず不満に溢れた表情をアルジェンティアの顔に写し出す。それを見兼ねたジェニスタが宥めるが大した効果はなかった。

 

「喧嘩は後にしろ! まだまだ来るぞ!」

 

 数はそれなりに減ったが、その勢いは止まることを知らないとばかりに猪突猛進を体現しているかのようだ。

 戦いは、まだ序盤の終わりに差し掛かったに過ぎない。

 この戦いにおける“目玉”は、未だ息を潜めている……。

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

「……なるほど。遅かった訳か」

 

 ヒロとナナしかいない筈のブリーディング・ルームにもう一人、鷹山が訪ねていた。

ナナから詳細な事情を耳に入れる度、その顔に不快感と嫌悪を滲ませるが言葉には出さず、己を律するかのように静粛と聞いていた。

 

「ゼロツーの事は仕方ないわ。ヒロ、あの子は普通のパラサイトじゃないの。彼女と組むという事はそれ相応の負担と覚悟を背負わなくちゃいけない」

 

 ナナの言葉にヒロは否定しようのない納得を覚えた。

今こうして青く肥大化してしまった心臓の激痛に苛まれている現状が

、まさにその負担と覚悟の表れだ。

 焼かれるような激痛。息苦しさ。高熱。異様な倦怠感や吐き気。

 これらはゼロツーと共に乗る上での負担であり、己が命を削っていると断言してもいい事象だ。その先にあるのは、“死”という未来。

これこそが覚悟であり、この覚悟無しに彼女と共にフランクスに乗るなど有り得ないし、あってはいけない。

 

「で、どうしたいんだお前は」

 

「え?」

 

 突然の問いにヒロは意味が分からず、疑問符を浮かべる。

 

「いや、だからよ。どうすんのかって聞いてんだよ」

 

 まるで、誤魔化す事を許さないとばかりに少々言葉にドスを乗せて再度問いを投げかける鷹山にヒロは答えられず、ただ言葉を濁らせるしかなかった。

 

「……お前、アイツと乗るって決めたんだろ?」

 

「そ、それは……」

 

 どう答えればいいのか迷う中、一つの記憶が彼の脳内にふと浮上して来る。

 あの時、ヒロがゼロツーと出会ったミストルティンのあの湖畔で誓ったゼロツーへの宣言。

 

 “ゼロツーと一緒に乗って戦う”

 

 確かに自分は明確な意志を持って決めた筈だ。

 

 それなのにアレは何なんだ?

 

 結局見ていただけ。ゼロツーが去る後ろ姿を口を噤んで気持ちを封殺して、ただ見ているだけに過ぎなかった。

 あの誓いは一体どうした。

 ただの口約束に過ぎない戯れだったのか。

 

 いいや、違う。

 

 絶対に嘘などではない。自分の心がそう願い、望んだ事なのだから。

 

「ナナ姉。ゼロツーは……普通の女の子だよ。笑って、人に悪戯して楽しんだり、色々困ったことするけど……誰かの事を思ってる」

 

 ヒロの思わなぬハプニングを見て、腹を抱えるほど笑った顔。人の肌を舐める様な真似をして、その反応を面白がる意地悪な表情。

 他人からの非難を受け、己の罪を否定せず。それを下らないと吐き捨てず、自覚した上で背負っていた彼女の姿。

 それらは全部、ヒロにしてみれば何てことのない“人らしい普通”なのだ。

 

「彼女は……俺のパートナーなんだ!」

 

「ま、待ちなさいヒロ!」

 

 それだけを言い残し、ナナの制止を振り切って行ってしまったヒロは、ひたすら廊下を自らの足で駆け抜ける。

 1秒でも早く。早く。

 でなければ、彼女は遠くへ行ってしまう。

 走っているせいか胸の痛みが増す感覚が襲うが、それでもその足を止める理由にはならない。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ!!」

 

 苦しい。身体を止めかねないその思考を強い精神力で無理矢理に抑え込んでまで、ヒロは止まると言う選択肢を取る気はなかった。

 

 止まったら、ゼロツーに会えない。

 

 それだけはダメだ。

 

 そんな思いが原動力として彼を動かしているのだが、ようやく長い廊下を抜け、広い空間へと出たヒロの目にエスカレーターで上の階へと昇ろうとしているゼロツーと警備員の姿が見え、すかさず向かおうとした。

 だが、セキュリティーゲートがその行く手を阻む。

 

「そんな……ッ! ゼロツーッ!!」

 

 たった一つの障害。それはアマゾンへ変身すれば造作無く破壊できるだろうが、今手元にベルトはない。

 アレがなければアマゾンにはなれない。この現実はヒロにしてみれば歯痒く、虚しいという負の感情がじわりと心中に染み込んで一瞬ばかり、諦観の情念が頭の中を過る。

 

 が、それでも尚、諦めなかった。

 

 届けたい、聞いてほしい言葉があったからだ。

 

「ゼロツー!」

 

「!! ダーリン……」

 

 エスカレーターへ足を踏み出し、乗った時。ヒロの声が聞こえたゼロツーは少しばかり視線をヒロのいるゲートへと移す。

 

「アイツ、追ってきたのか!」

 

「ほっとけ。どうせゲートは通れん」

 

 警備員らもそれに気付くが、あくまで無視を徹底した。いくらアマゾンになれるコドモとは言え、ベルトが無ければ唯のコドモに過ぎない以上、わざわざ気にかける道理など彼等には存在しない。

 一番に前にいたスタークも気付いたものの、何も言わず。あくまで静観していた。

 

「聞いてくれゼロツー!! 俺は、俺は怖かったんだ!!」

 

 一人の少年の独白が始まる。

 

「君と乗るが……怖った。けど、それは君が人間じゃないからじゃない! 俺自身の覚悟の

無さなんだ!!」

 

 本当は、覚悟がまるで成ってなかった。

 

 あるように思えていたのは所詮誤魔化しに過ぎず。ただコドモだから。与えられた使命を何の疑問もなく受け取り、機械的に果たそうとしていた。

 

 それだけの為にパラサイトであろうとした。

 

「それだけじゃない!

アマゾンとしての俺も怖かった。自分が自分じゃなくなって、大切な仲間を……君を傷付けて殺してしまうかもしれないって……」

 

アマゾンになった自分は、いつしか人喰いの本能に理性を失い、正真正銘の化け物へと成り果てるんじゃないか。

その不安が全くない訳ではなかった。

 

 “それでも、大丈夫。大丈夫なんだ”。

 

 根拠もなく信じた。信じる以外に術はなかったからだ。そうでもしなければ、まともに乗れない。乗れないコドモはパラサイトになどなれないし、価値もない。

 

 パラサイトでなくなるのは、耐えられなかった。

 

「初めて会った時、君を綺麗だと思った!! いつも、どんな時だって自信に溢れてて、俺とは大違いで……だからすごく安心できた! 君のおかげで俺はパラサイトで在り続ける事ができるんだ! 君じゃないと……ダメなんだ!!」

 

 言葉が止まらない。止める気さえ、今のヒロにはないのだろう。

 

「俺は、君と一緒に飛びたい!」

 

 たった一つの願いを。思いを。少年はひたすらに告白する。

 

「行かないでくれ! ゼロツゥゥゥゥーーーーーッッッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……フフッ、戻れなくなっちゃったよ」

 

 少年の思いは、孤独な少女に確かに届いた。

 

「ガッ!」

 

 突如として警備員の一人が吹っ飛び、後ろにいた3人を道連れに転がり落ちていった。

ゼロツーが不意打ちに放った蹴りが命中したからだ。それを見たもう一人の警備員がすぐ

に銃を構えようとするがそれを掴んだゼロツーは、まるで重力に逆らうかのような軽快な

動きで身体を跳び浮かせる。

 簡単に言えば、逆立ちのそれになったのだ。

そして、そのまま両足を警備員の背中へ着け、一気に前へ押し出す。並の少女では決して出せない力に抗うことができず、警備員は前方へと無様に転倒しただけでなく、あろう事か銃を手放してしまった。

手放された銃を棚から落ちた牡丹餅とばかりに奪い、一回転するゼロツーは、エスカレーターの手摺りを駆け下りつつ、奪った銃を用いてゲート頭上の強化ガラスへ弾丸を浴びせる。

 

しかも、ただ闇雲に撃っているのではない。

 

 強化ガラスなので、そのまま撃っても効果はない。

 なので一点に集中する形で的確に当てていく。しかし、それでもガラスは割れない。

 だがこうなる事は予測済みなので次の一手に出た。

 

「とぉぉぉりゃあああッッッ!!!!」

 

 ノリノリな掛け声と一緒にゼロツーが跳ぶ。

 丁度手摺の下り最後尾の辺りからだ。しかも、跳躍地点から8m離れて浮かんでいる。並の人間ではまず出来ない芸当をゼロツーは苦もなくやってのけたかと思えば、今度は宙に浮かんだ状態でくるりと前転の形式に一回転し、そこから右脚を折り、左脚を前へ突き出した態勢へ移行する。

 

 端的に言うと、跳び膝蹴りの形だった。

 

バリィィィィィィンッッッ!!!!!

 

 弾を撃ち込んだ一点めがけ蹴り技が炸裂し、強固なガラスの壁が甲高い音響を奏でつつ

、容易く砕け散る。

 

「よっと! 来てあげたよ、ダーリン」

 

 華麗に見事な三点着地を果たしたゼロツーは、無邪気に勝ち誇ったような顔でヒロを見据える。

 

「ゼロツー……」

 

「正直、あんな恥ずかしい事言われたの初めだよ」

 

 三点着地のポーズから立ち上がり、スタスタと。両手を後ろへやる仕草をしながらゼロツーはヒロに足早に近付く。

 

「そ、それは……俺…俺だって……」

 

 楽しそうな顔を浮かべる彼女にヒロは、動揺する様にしどろもどろしてしまう。

 女の子特有の独特な香りが鼻腔を擽る。

 それ程までに距離を近付けて来たゼロツーにたまらず、顔を少し紅くしながら視線を泳がせてしまうのは仕方のない当然の反応だ。ついでに言えば、自身の言葉に対しても、だ

 

「と、とにかく! その…もう一度俺と…」

 

「んん? 聞こえないぞ〜?」

 

 本当は分かっているにも関わらず、ゼロツーは聞こえないフリを平気でかまし、催促する。どうやら彼自身の言葉でハッキリと聞かなければ納得しないらしい。

 

「うぇ?! …………お、俺をもう一度ストレリチアに乗せてくれッッッ!!!!」

 

 羞恥をかなぐり捨てて、叫ぶ。

 自分の思いを。どうしてもしたい事を。彼はそれらの答えを咆哮の如く示した。

 するとゼロツーは嬉しさを爆発させたようにニカッと笑う。それはまるで目が焼けてしまいそうになる程眩しいと輝く、太陽に見えた。

 他はどう捉えるかは分からないが、少なくともヒロ自身は確かにそう感じたのだ。

 

「やれやれ。困ったことしてくれるじゃないお二人さん〜」

 

 そんな良い方向へと傾いた二人の空気に水を差すが如く、黒い蒸気を用いての瞬間移動で二人の下へと参じたスタークは面倒だ、と言わんばかりの雰囲気を醸し出してはトランスチームガンをいつ出したのか手に収めていた。

 

「あんまし面倒事増やさないでくれるかな? こっちも、楽にやってる訳じゃない」

 

「ハッ、知らないねそんな事。ボクは帰らないし、ダーリンと一緒に戦うんだ」

 

「……ほざけ、ステイメンを食い殺す化け物が」

 

 途端、スタークの纏う雰囲気が変わった。

 

 これは……“殺意”と呼べるものの一種だ。

 

「“オレ”にとってお前は駒の一つに過ぎない。ご老人どもにとっては救世の鍵だったとしてもな」

 

「鍵……?」

 

「……」

 

 スタークの言っている意味が分からず、困惑するしかないヒロはゼロツーを見る。彼女はパートナーから向けられる視線に気付きながらも、あくまで無視しスタークを睨む。

 

「……………だが、いいだろう。ここは一つ、お前の我儘を汲んでやろうじゃないか」

 

 そう言ってスタークはトランスチームガンを黒い蒸気で覆い消し去り、両腕を余裕綽々とばかりに組んで背後の壁へと身を預ける形で凭れ掛かる。

 

「どういうつもり?」

 

「オレは面白いものが大好きだ。お前たちはその面白ものにカテゴライズできる。だからついつい私情が上をいっちまうんだよな〜、コレが」

 

 ガラリと変わり過ぎたスタークの口調にヒロは、困惑が更に強まった。いや、ここまで来ると猜疑心とでも言うべきか。

 

 “彼女はブラッド・スタークなのか?”

 

 なんて事のない疑問に思えるかもしれない。が、スタークをよく知る者の視点で考えると、この消しても浮上するように湧き上がって来る疑問は当然と言える。

 

「そ・れ・に♪ 今頃外じゃ面白いショーが幕を開けてる頃合いだ」

 

「ショー……だって?」

 

 鸚鵡返しに聞いて来るヒロにスタークは口端をより一層釣り上げる。

 

「ああ……とっても面白いショーがな」

 

 その嘲笑が、二人の中に言い知れぬ不安を掻き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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