ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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 ダリフラ10話ヤバい……なんかもう、闇の一部に触れた感じっす。

 今のところは誰一人死んでないけど……この先不安だな~。

 そんなこんなで、今回はアマゾン・アルファ登場回です! どうぞ!


獣の名、それはアマゾン

 

 

「それって本当?」

 

「ああ。しかもここにも出るらしいぜ……“獣人”が!」

 

 基本パラサイトたちが暮らす館の居間で、一言で“悪ガキ”と称されかねない雰囲気を持つ少年がちょっとした噂話で場を盛り上げようとしていた。しかも話の最後に大袈裟に両腕を上げてグオーと襲い掛かって来そうなポーズまでする始末。

 

 彼の名は『ゾロメ』

 

 彼が話す噂の内容は“三つのプランテーションで獣人が侵入し壊滅的被害を与えた”というものだった。

 

 とは言え、これはあくまで噂の域を出ない話題に過ぎない。所詮は真実味に欠けた根も葉もない法螺話でしかないのだ。

 

 少なくとも“パラサイトや一般市民にとっては”……。

 

 故にそれを自慢話の如く楽し気に語る様に彼のパートナーであるツインテールの少女

『ミク』がゾロメを呆れたようなジト目で睨んだ。

 

「どうせただの噂話でしょ?」

 

「そうだよゾロメ。獣人って、叫竜と違って大きくないし、それに街を短時間で破壊できるような攻撃力もないからセキュリティだけでどうにかなるって話だよ?」

 

 阿保らしいとばかりに鼻を鳴らすミク。所詮噂話と断じた彼女に同調するように体格的にふくよか且つ食いしん坊の少年『フトシ』が説明する。

 

 彼等が言う“獣人”とは、アマゾンの俗称を差す言葉。

 

 形こそ人型なれど人にあらず、様々な獣……生物の特徴と能力を有した存在故に獣人という、正式名称とは異なる名で呼ばれているのだ。

 

「んだよつまんねーな。まっ、どっちにしろフランクスで潰しちまえば問題ねーけどな」

 

 少し不機嫌そうになったもののすぐに意地の悪い笑みを浮かべては、アマゾンなどフランクスで楽勝と宣う。

 

 もっとも、フランクスは“対叫竜兵器”。

 

 人間より遥かに高い耐久性と身体能力。そして特異な攻撃手段を用いるとは言え、物量では圧倒的に勝てるほど人間程度のサイズしか持たない存在を相手にわざわざ巨大ロボットを駆り出すなど、まず有り得ない話だが。

 

 それに都市の外…不毛な荒野の地で戦うとも限らない。

 

 状況的にアマゾンが都市内部へと侵入した場合、パラサイトが操るフランクスは都市の外側でなく、内側で戦わざる得なくなる。

 

 そうなれば被害甚大な上に前代未聞のトラブルも発生しかねない。これを考慮すればゾロメの言葉は机上の空論…現実味のない冗談話にしか聞こえないだろう。

 

「“獣人”はともかく、今後ヒロはどうするのでしょうかねぇ」

 

 何処か嫌味にも聞こえる言葉を平然と吐く整った髪型とそこから滲み出るシニカルな雰囲気が特徴的な少年『ミツル』は、やや強引に話題を変えてヒロの名を出した。

 

「やっぱり……ナオミちゃんと一緒にここを…」

 

「まっ、そうするしかないんじゃない? そうじゃないと巻き添え食ったナオミの立場がないし…」

 

 お淑やかさと母性的な雰囲気を醸し出す、金髪の少女『ココロ』の不安の入り混じった言葉とは反対にミクは当然のように言った。

 

 ヒロは皆の名前を考えた名付け親だった。他のみんなにはない一種のカリスマ性と呼ぶべきものを持っていた。

 

 だからこそ、ヒロをよく知る13都市のパラサイトの皆は自分達を導くのはヒロかもしれないと思っていた……結果は落第だが。

 

 フランクスに乗る能力と資格を失ってしまった。

 

「ヒロは残るよ。残留許可は出てるし、もしかしたらあの時は単に調子が出なかっただけかもしれないし」

 

 そう言ったのは、出入口近くの壁に寄り掛かり青みがかった短めの髪をアシンメトリーに整えた少女『イチゴ』だった。ヒロを庇おうとするが、眼鏡をかけた『イクノ』という少女がイチゴの言葉に反対的意見を投げて来た。

 

「でもヒロは説明会に参加してないし、事実上はパラサイトとしての責務を放棄したと見るしかないわ」

 

「それは…けど…」

 

 イクノの言葉にイチゴは反論できなかった。最終試験に落第して以降ヒロは自信を無くし、皆と距離を置くようになっていた。

 

 曰く『俺がここにいてもみんなの邪魔になるだけ』などと言う始末だ。

 

 それだけでもここに残るか否かは明白だろう。

 

 “行かせたくない”。“ずっと一緒にいたい”。

 

 そんな思いを密かに胸に抱くイチゴだがそれに反し、ヒロはここを去るつもりらしい。その証拠と言わんばかりに先程から電子端末で呼び出そうとしているがメールでもコールでも結果は無反応に尽きた。

 

 それを見ていく度に何故か、胸が痛かった。

 

 よく分からない気持ちがイチゴの心底を騒めかせた。

 

「イチゴ、ヒロと連絡は取れたか?」  

 

 丁度入って来た金髪に眼鏡をかけたイチゴのパートナーである『ゴロー』がそう訊ねる。当然だがイチゴは頭を横に振って答える。

 

「ダメ。全然出ない……あの馬鹿ッ!」

 

 少し苛立ち気味にイチゴはそう吐き捨てた。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ 

 

 

 

 

 一方。ミストルティンの湖でヒロとゼロツーが運命的な出会いを果たす最中。

 

 男性特有の低い声が一つ、湖畔に響いた。

 

「おーおー、ここにいたのかゼロツー」

 

 振り返ったヒロの視線の先には屈強な体格の男とボサついた頭に白衣を纏う男…鷹山刃圭介がいた。

 

 その後ろには見慣れぬ黒服の男たちや、よく見る槍のような武器を手に携帯している警備員らもいた。

 

「あーあ、見つかっちゃった」

 

 彼らを見たゼロツーは残念そうに淡々と言う。その目は“せっかくイイ所だったのに”とでも言っているかのようだった。

 

「なんでいつもいなくなる! パートナーの俺が苦労するんだぞ!」

 

「まぁまぁ、そう怒んなよ」

 

 怒鳴るパートナーの男だがそれを鷹山が腕で押さえるように諫める。そしてヒロへと視線を移す。

 

「で…そっちはここのパラサイトのステイメン君か?」

 

「は、はい」

 

「うちのパートナーが迷惑をかけてしまったな。すまない」

 

 ゼロツーのパートナーらしき男は軽く頭を下げて謝罪を述べた。

 

「俺からも謝罪するよ。こいつは自由過ぎるところがあってな。勘弁してやってくれ」

 

 男に続いて鷹山も謝罪を述べて来た。

 

「い、いえ…迷惑なんてそんな……」

 

「それと……」

 

 一言置いていきなりヒロに近付いて来た鷹山はスンスンと。なんと、その匂いを嗅ぎ始めた。

 

「ッ!?」

 

 無言で軽く引いたように驚きを示すヒロに対し、鷹山はすぐさま謝罪の弁明を述べた。

 

「あー、悪い悪い。俺、“鼻”がイイんだよ。そうだなぁ……お前のは人としての情緒に溢れちゃいるが、その裏側に底知れぬ野生を秘めてる……そんな匂いだな。好みだぜ?」

 

 男に匂いを嗅がれて、そんなこと言われても嬉しくない。

 

 失礼とは思いつつもヒロは心内でそう吐露する。

 

 だが同時に鷹山刃圭介という男に対し、何処かゼロツーに似た雰囲気をなんとなくではあるが感じていた。

 

「悪いなゼロツー。せっかくのデートのとこで申し訳ないが時間だ」

 

「はいはい、分かってるよ刃兄。けどその前に……」

 

 そっとヒロに近付いたゼロツーは、ペロッと。

 

 彼の頬に自分の舌を生き物の如く這わせるように触れた。皮膚に唾液が付く感覚。湿り気を持った生暖かい感触。この二つの知覚情報が電光石火のように全身を駆け巡り、最終的に脳へと。

 

 まるで深く突き刺さるような衝撃を伴い到達した。

 

「な、舐めた……のか?」

 

「うん。舐めたよ。ダーリンの味はいいね……ドキドキする味だ。それに野生的な味もする」

 

 ドキドキしまくっているのは自分だ。本人はそれをわざわざ言ったりはしないが。

 

「じゃあね。バイバイ、ダーリン」

 

 ゼロツーがヒロに背を向け、その場から去ろうとする。その姿は何処が哀愁を誘うものだった。

 

 それを見た時ヒロはどういったわけか……自然と言葉が出ていた。

 

「あ、あの! 俺はヒロ! 君の名前、俺に教えてくれないか?!」

 

「僕は“ゼロツー”。0と2。ただそんなもんしかないよ」

 

 名を求める少年に返ってきた答えはあくまで番号。

 

 “違う。知りたいのは番号なんかじゃなくて、ちゃんとした名前だ。”

 

 淡々と答えたゼロツーを見てヒロはそう思った。

 

 本来パラサイトに名前など存在しない。

 

 あくまでも番号で個を識別するのだが、ここ13都市のパラサイトたちには全員名前がある。名前は幼少の頃にヒロがつけたものなのだが、それを正式呼称として使用されているのは“今の”13都市のパラサイトたちが所謂『テストチーム』という立場にあるからだ

 

 搭乗するフランクスも他の都市のものが同型機でデザインに差がないのに対し、ここにある四機のフランクスは皆それぞれデザインが異なり、装備している武器にも違いがある

 

 このテストチーム結成の発端はフランクス博士による考案なのだが、その真意を知るものは博士以外にいない。ようするに謎という訳だ。

 

「さっさと行くぞ」

 

 黒服の男の一人がそう言い、今度こそ去っていくゼロツー。

 

 パートナーの男もそれに続くが鷹山だけは少し残りヒロに向き合う。

 

「あいつは他人と馴れ合うことはないんだ。そんなアイツがお前にあそこまで心を許すなんてのは珍しいんだよ」

 

「え?」

 

 突然のカミングアウトにヒロは疑問を抱くがそんなこと毛頭知らぬとばかりに鷹山は話を進める。

 

「まぁ、俺が言いたいのは三つ。一つ、お前は結構アイツにとってお気に入りなのかもしれない。二つ、もしあいつのパートナーになるんだったら色々覚悟を決めろ。そして最後の三つは……」  

 

 三つ目。そこから鷹山の瞳が獣のように光った気がした。

 

「自分の中の自分をきちんと見据えろ。決して逃げるな。じゃなけりゃあ……呑まれて終わるだけだ」

 

 それだけ言い残すと鷹山は手を振り、ゼロツーとスタッフの下へ行っていった。

 

 立ち尽くすしかないヒロの頭につい今言っていた鷹山の言葉が反芻される。それがどういった意味なのか、何を伝えたかったのか。

 

 それを今ここで考える暇はなかった。警備員の手によって強制的にみんなの下へと連れ戻されるに至ったからだ。

 

 

 

 

 ※ ※ ※ 

 

 

 

 

 パラサイトの住む洋館の中庭。いつもはパラサイトたちがボール遊びや読書に用いているこの場所に一人、ヒロのパートナーになる筈だった少女…ナオミはいた。

 

「……」

 

 無言で俯き、中庭を取り囲む二段しかない階段部分に腰を下ろして座り込み、悲壮感を漂わせる彼女がこのような状態に陥っているのはヒロ共々試験に落ちたからだ。自分に問題がなかったとしてもパートナーとは一心同体。ようは連帯責任なのだ。

 

 それにパートナーの組み分けは緻密な検査と複雑な方程式の計算によって成されたものなので、パートナーに問題があったなど有り得ない。

 

 ともかく原因はどうあれ、ナオミはここにいることはできない。ヒロは何故かは知らないが残留許可を貰っており、ここに残ることは可能なのだが本人はケジメとしてナオミと共にここを出るつもりらしい。

 

「……それは、ダメだよ。ヒロ」

 

 呟きは口から洩れて虚無に消える。

 

 どう思ってそのような言葉が出たのか。それは本人のみぞ知るところだろう。

 

「ナオミ……大丈夫?」

 

 ふと、背後から声が掛かる。ミツルのパートナーであるピスティルのイクノだった。

 

「イクノ……ううん。結構凹んでるよ」

 

 力なくナオミは笑った。一目見て分かるほどに無理をして、ぎこちない笑顔を作っている彼女の姿を見るというのは、親友と言うべきイクノにとって胸が締め付けられるように苦しいものだった。

 

「隣、いい?」

 

「うん」

 

 ナオミの許可を貰い、彼女と同様イクノは腰を下ろして座る。

 

「やっぱり、ここを出なきゃダメなの?」

 

「うん。落第しちゃった以上はね。ヒロは残留許可が出てるみたいだけど」

 

 陰鬱とした言葉で、ただそれが変えることのできない現実であることをナオミは誤魔化すことなく端的に答えた。

 

 それ故かイクノの表情に翳りが差した。

 

「でもヒロもここを出るみたいよ? 何だかんであの子が原因な訳だし、当然と言えば当然かもしれないけど」

 

「……」

 

 まるでヒロを悪く言うかのような言い回しだが、これに関して言えば正直な所、間違ってはいない。

 

 彼はある時期からコネクト値が徐々に低下する傾向が見られ、それが計測の間違いでないことは確認済み。疑いの余地もなくコネクト値の低下は紛れもない事実だった。

 

 何故そうなったのか。何が原因となっているのか。

 

 その答えは幾度の検査をもってしても判明には至らず、最悪“体質的な問題”と片付けられてしまった。

 

 ヒロ本人やナオミは自分達なりになんとかしようとはしたものの、努力虚しく落第の太鼓判を押され、今に至っているというわけだ。

 

 だからこそ、ナオミはイクノの言葉を否定できず沈黙してしまった。

 

「……ごめん。言い過ぎた」

 

「ううん。否定できなかった私も悪いよ」

 

 そう言って立ち上がり、その場を去ろうとするナオミは最後に首を少し後ろへ。イクノの方へ向けた。

 

「でもね、ヒロはここに残るべきなんだよ。私はもうパートナーじゃないけど……それでも彼を、ヒロを信じてる」

 

 それだけを言い残してナオミは足早に去って行ってしまった。

 

 何故かその顔は飄々としていて……先程の哀愁としたものは消え失せていた。

 

「そうじゃないと色々困るもの」

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 

「ん? おいどうした」

 

 ゼロツーとそのパートナー。そして鷹山の護衛していた黒服の男たちの内、前を歩いていた男が突然足を止めた。目的地であるAPE第13都市支部の研究施設までは少し距離がある。APEとは、この移動要塞都市であるプランテーションを築き上げた天才的な科学者によって構築された組織的機関であり、プランテーションを管理する一種の上層部でもある。

 

 そして頂点には『七賢人』と呼ばれるトップたちが存在し、パラサイトからは“パパ”と呼ばれている。

 

 そのAPEの研究施設へと赴かなければならないというのに、黒服の男は何も言わずほぼ無言で急に立ち止まったのだ。

 

 おかしい。一体どうしたんだ?

 

 誰もがそう思う中で率先して黒服の男の一人が立ち止まっている男へと声を投げかける。 

 

「……」

 

 しかし返答はなく、ただ妙に身体を震わすだけだった。

 

「おい。聞いてるのか?」

 

 苛立ちを交えつつも怪訝に思い足を止めた男へ肩を伸ばした瞬間。

 

 ザシュッ!

 

 何かを裂くような音がコダマの如く反響した。そしてその後に何かが地面へと落ちてその音源を確かめる。

 

 男の体に付いていた筈の……首だった。

 

「うわあああああああああッッッ!!」

 

「貴様どういうつもりだ!」

 

 あまりに一瞬だった為に分からなかった。

 

 が、自身の片腕を水平に位置させ、その手に付いている生々しい大量の血から判断すれば……声をかけた黒服の男を殺したのは立ち止まっていた男で間違いない。それも信じられない事に……何の変哲もない手の一振りで首を切り離したらしい。

 

 そう判断するな否や一斉に拳銃を出し銃口を男へ向ける。

 

 同時にゆっくりと男も振り返る。

 

 本来なら白目の筈の部分は黒く染まり、瞳は緑となっていた。更に剥き出している歯は人間のそれではなく完全に獣の犬歯と化したいた。

 

「があぁぁぁ……ヴオォォォォォーーーーッッッッ!!!!」

 

 叫ぶ。まるで人のそれでない声に鷹山とゼロツーを除いて黒服の男たちは戦慄を覚えてしまう潜在的な恐怖があった。やがて蒸気のようなものが男の体を包み込み、晴れて現れたのは……一匹の人の形をした獣だった。

 

「こいつ…“アマゾン”だったのかッ!」

 

 誰かがそう言った。そしてその言葉は正しく的を得ていた。

 

 アマゾン。人のタンパク質を好む異形の獣。

 

 それが今、決して侵入できる筈ないと思われていたプランテーション内部にいて、しかも自分たちの目の前に現れている。

 

「喰イタイ……食ウゥノガ……俺ノ仕事」

 

 片言で何処か機械的な声で喰いたいと言う黒服の男のアマゾンの姿は蜘蛛に似ており、背中には左右二対の蜘蛛の足に似た部位が生え、その間の中央に左右二対と比較して大きい蜘蛛足の部位の先端が獰猛な輝きをこれ見よがしに見せつけていた。

 

「おーおー。まっさかここにも出てくるとはなぁ……まっ、見つけたからには狩らせてもらうがな」

 

 鷹山は黒服たちを軽く押し退けて前へ出る。そこに恐怖や動揺はなく、むしろ生きのいい獲物を見つけたことに対する生粋の狩人の喜びが目や顔に有りのままに滲み出ていた。

 

「危険です鷹山博士! ここは我々が…」

 

「いいや無理だ。こいつの相手は俺しかできねぇ」

 

 黒服の言葉を取り付く島もなく斬り捨てる鷹山。

 

 そんな鷹山の姿を見た蜘蛛のアマゾン…クモアマゾンはニタリと気味の悪い笑い声を上げた。

 

「ヒィッヒッヒッ……思イ出シタァァ……オマエ、鷹山刃圭介ダロォォ? 俺言ワレタ。オマエ、一番最初ニイィ喰エッテェェッ!」

 

 理性という名のタカが外れたように凶暴な唸り声を上げて切迫するクモアマゾン。丁度“人間の腕が届きそうなほどの範囲”にまで両者の距離が縮まった瞬間。

 

『ブヘェェェッッッ!!!!』

 

 クモアマゾンの視界が衝撃と共に反転した!

 

『ナニガ…ッッ?!』

 

 クモアマゾンは疑問と混乱で脳内がパニックになるが、しかしすぐに今の状況を理解した。

 

 自分は容易く殴られたのだ。殴られて軽く吹っ飛び地に背を向けて倒れ込んでいるんだ

 

 そう理解したクモアマゾンは起き上がり改めて鷹山を見る。確かに殴った後の様に拳を握り、相変わらず余裕綽々な顔で自分を見ている。

 

 ならば本当に殴られたのだ。

 

 この事実にクモアマゾンの心中は穏やかとは言い難く、むしろ怒りがマグマのように煮え滾ってきた位だ。

 

「貴様ァァ……ヨクモォォ」

 

「おいおい。まさか俺を喰えって言った奴は俺が一体何なのか……伝えなかったのか?」

 

 唸るように怨嗟を零すクモアマゾンに鷹山はそんなことを宣う。そして腰に何かを装着した。鳥類の顔を思わせるデザインのベルトのような代物で、嘴と思しき部位に二本のハグリップパーツが付属されている。

 

 一目見た程度では全貌を測ることは難しいだろう。

 

『アルファ…』

 

 鷹山がグリップパーツをバイクのハンドルのように回す。

 

 すると目に相当する部位が緑色に発光し起動の合図を告げる。

 

「アマゾン……」

 

 眼前の存在の名を呟き、それがキーとなり赤い蒸気が鷹山の体を包み込んでいく。クモアマゾンはこの蒸気を知っていた。

 

 人間の姿をになったアマゾンが“本来の姿に戻る際に出すものだ”。 

 

 だとすれば、この鷹山刃圭介という男はもしや……。

 

 クモアマゾンの中で一つの答えが導き出されようとしていた瞬間、熱を帯びた衝撃波と周囲に火の手が舞い上がる。

 

 鷹山が立っていた場所に鷹山の姿は何処にもなかった。だが、その代わり人型の存在がいた。

 

 全体的に赤を基調とした体色。胸部と腹部は銀色の生体装甲とも呼ぶべきプロテクターが備えられ、肘から先には黒の籠手に似た外骨格に包まれ、両足の膝から先も同じような感じになっている。

 

 顔はトカゲのようだが何処かピラニアも思わせる面持ちで、目はベルトの発光部位と同じく緑色。

 

『さ~て、狩りの始まりだ。お前の命……食わせろ!』

 

 それは人間ではない。名をアマゾン。

 

 “アマゾン・アルファ”。

 

 それが鷹山刃圭介の……もう一つの姿にして名である。

 

 

 

 

 

 






 アマゾン・アルファって、“ピラニア”モチーフなんですよね。知ってました?

 元の原作アマゾンライダーがトカゲモチーフだから正直なんか、後付け感がありますけど(そもそもピラニア要素が見当たらない)……そうらしいです。

 感想・批判、どんと来いでお願いします。



 
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