ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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長かったこの章も今回ともう一話で終わりです。

いや、本当に長かったですね。(;'∀')

でも個人的には原作でも一つの盛り上がり所でしたから、
書いている自分としては楽しかったです。

では。





両都市防衛作戦の終幕

 

 

 

 

 

『こん……のぉぉぉッ!!』

 

 渾身の蹴りを一発入れて、何とかコンラッド級を退けたデルフィニウムはその隙を突いて、コアをエンビショップ一本で貫く。生命維持を司る器官を潰されたコンラッド級は沈黙。呆気なく死んだ。

 

『フッ!』

 

 それに続く形でクロロフィッツも同様に蹴り飛ばすがそれだけでなく、足先から脛の辺りまであるヒールのような刺突武器『ランスペディグリー』で的確にコアを貫き、自身を封じていた叫竜の命を絶った。

 

『クロロフィッツ! ジェニスタとアルジェンティアをお願い!! 私は26部隊を助ける!』

 

『わかった!!』

 

 然程、救出に時間は掛からず、2人は機体を拘束し身動きを封じていたコンラッド級らを始末することで皆を救出した。

 

『助かったー……ありがとね』

 

「悪りぃ、ホント助かった」

 

 狭苦しさを感じていた拘束からの脱却に安堵の息を吐くと、アルジェンティア組は礼を言った。

 

『ありがとう。ミツル君、イクノちゃん』

 

「け、結構危なかったから良かったよ〜」

 

 ジェニスタ組も同じように礼を言う。

 

『気にしないで。それより……!!』

 

 少し遠くから甲高い轟音が鳴り響き、三機がその方へと振り向く。26部隊の救出を完了させたデルフィニウムも、量産型フランクスらも同じように視線を向ければ、何かが敵であるマンティスと相対。互いの武器を打ち鳴らしあっていた。

 マンティスは鎌を、何かは槍のようなものを。

 ここで逸早く気付いたのはデルフィニウムだった。

 

『アレは……ストレリチアッ?!』

 

 その姿を見間違う筈もなく、誰の目から見ても明らかにストレリチアだった。しかも、入隊式の日に見せた深緑色の形態となっている。

 

「ヒロ……よかったぁ!」

 

 いつも一緒だった大切な幼馴染み。

 その生存を喜ばない道理などイチゴにある筈もなく、ただひたすらに生きていた事に嬉しさが心中を一杯にするが、ここは戦場。そして自分の立場を忘れてなどいない以上、歓喜と希望を押し殺し、きちんと切り替える。

 

『みんな。さっさとこのデカブツを片付けよう!! それであのカマキリ虫野郎をとっちめるんだ!

 

 女の子らしからぬ血気盛んな口調は皆を振るい立たせる為の鼓舞か、あるいは単純に彼女固有の気性の荒い本質が滲み出しただけか。いずれにしろ、両部隊の士気を上昇に一役買った。

 

「へっ、当然だ!」

 

『やってやるわよ!!』

 

『やろう、フトシ君!』

 

「うん!ココロちゃん!!」

 

「………まぁ、僕も負けっぱなしは性に合いませんからね」

 

 13部隊の各々がやる気を見せ始める。隊のリーダーであるイチゴの鼓舞の言葉がここまで効果を齎すのは、男勝りな性格のおかげだろう。率いる者としての強気が一種のカリスマとして、周囲の者を感化させるのかもしれない。それは26部隊も例外ではなかった。

 

「後輩に言われるのは癪だが、不思議と嫌な気分じゃないね」

 

『ええ』

 

「……色々、ありすぎて混乱しているが任務が最優先だ」

 

『そうだね』

 

『いっつつ……ちょっとキツいけど、がんばろ』

 

「……ああ!」

 

 前置きも何もないリーダーからの突然の裏切りでやや士気が下がっていたものの、イチゴのおかげでそれが戻りつつあった。巨大なグーデンベルク級の叫竜『β』が倒れ、身動きができなくなっている姿は今の戦況の流れが自分達にとって良い方向にあると、まるでそう暗示するかのようだ。

 そして、この流れを前に何もしない筈もなく、イチゴの指示がその合図となった。

 

『これより、叫竜の討伐を再開! アルジェンティアは私と一緒に26部隊合同で叫竜の動きを封じる役に、クロロフィッツとジェニスタはコアを仕留める決め手を。今言った通り26部隊は叫竜の拘束を私とアルジェンティアで行って下さい! 異論は!!』

 

 誰も、何も言うことはない沈黙の肯定。それを見てデルフィニウムは頷く。

 

『それじゃあ、行動開始!!』

 

 その一言で一斉に各フランクスは動いた。言われた通りアルジェンティア、デルフィニウムはのたうち回る『β』を封じる為26部隊と共に、拘束班としてその役割に当たる。

 まずは左右両手。右手はポーンハスタを持つアルジェンティアと量産型フランクスの二機、同じく量産型が二機で逆の左手をワイヤーで突き刺して力を振り絞って巻き付ける。これで両手は封じた。

 対してデルフィニウムは単機で当たる訳だが、もう一個分余っていたポーンハスタを借用。それで叫竜の残った片足を巻き付けた後、本体も地面にしっかりと刺して固定させる。自身はエンビショップを二本同時に抉るように表面体表から内部の奥まで食い込ませるように刺し込んでいき、後は力を思いっきり振り絞り、ただ踏ん張る。

 叫竜の身動きはこれで完全に動かなくなったという訳ではないが、激しくのたうち回っていたつい先程と比べると、幾分かはマシな方と言えた。

 

『今よ! クロロフィッツ! ジェニスタ!』

 

 デルフィニウムが必死に機体中に力を込めて、必死に抑えながら決め手の役を担う二機に伝令する

 

『クロロフィッツ!』

 

『ええ!』

 

 互いに声をかけた両機体はデルフィニウムの言葉をしかと受け取り、腰部と両足に備えられたバーニアを吹かすと一気に飛び上がる。そして、人間で言えば鳩尾の中心点。

 叫竜の種類によるが生命維持とエネルギーの生産を成すコアの位置は大概が身体の中心に存在している。今回は人型に近い為、中心点が分かり易い。まずはジェニスタがそこへ降り立ち、自身の武装であるルークスパロウを叫竜に向け、一気に最大出力の一撃を叩き込む。

 

 ドォォンッ!!

 

 けたたましい重厚音が高密度のエネルギーと共に吐き出され、音は水面の波紋の如く広がり、エネルギーは叫竜に筋肉組織や体液を吹き飛ばし、“大穴”が形成された。

 そして、そこから見えたのは……紛れもなくコアだった。

 

『ハァァッ!!』

 

 しばし滞空していたクロロフィッツは、コアを目視で確認しジェニスタが叫竜から降りたのを見計らうと、両翼を模した武装『ウィングスパン』の砲口の照準をコアへと合わせ、銃撃の嵐を吹かせる

。速射砲による高速的にコアへと叩き込まれる弾丸は、確実にコアそのものにダメージが蓄積されていき、徐々に亀裂が生じていく。

 

 

そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

パギィィンッ!!

 

 

 

 

 

叫竜のコアである橙色の玉は、容易に砕け散った。

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 さながら、熱に晒された飴細工だろうか。

 頭部を失ったマンティスは、思わずそんな感想を抱けるほどに機体がグニャリと融解。かろうじて原型は止めているがそれを差し引いても酷い惨状で、しかも金属臭混じりの肉が腐ったような異臭を漂わせている。

 鼻の良い者にとって地獄だろうし、そうでなくともこれには嫌悪感と不快さを掻き立てられる。

 

「ハァ、ハァ、……やった、のか?」

 

『まだ分からないけど、この有様じゃフランクスはもう使えないと思うよ』

 

「……ごめんゼロツー。ここから先は俺がやる」

 

『……うん。分かった』

 

 イプシロンの意図を悟ったゼロツーは、ストレリチアを停止させ、自身の表情が投影される顔の部位を開く。コックピットの球体部位が現れ、ハッチを開けると共にイプシロンは地表へと身投げするように降り立ち、本体と切り離されたマンティスの頭部に視線を向け警戒しつつ、ゆっくりとした足取りで近付く。

 双方の距離間は15m位だろうか。

 ある程度まで行くと、本体同様に半ば融解してしまった頭部の顔部位が勢いよく弾け飛ぶ。

 おそらく何かしらの強い力でひしゃげたのだろう。縁のあちこちが歪んだ状態のハッチが顔を覗かせているが、その内部は外からでは中の暗闇に遮られていて中をよく確認することはできない。

 しかし、わざわざ歩み寄って確認するまでもなかった。

 何故なら……新しいパートナーだった女の子の“頭だけ”をムシャムシャと。口から唾液を滴れらせて貪り喰らうカマキリアマゾンがその姿を現したからだ。

 

「………ンン……ハッン……」

 

 頭だけとなった少女の顔は恐怖と苦痛、他にあるかはどうかは分からないが、とにかくそういった類の感情に支配された表情で口からは血を滴らせ、地面へ雫となって落ちて行く。

 喰われた部分の一部からは脳らしき赤い肉片がチラリと見えており、尋常な思考の人間なら良くて顔をしかめるか。あるいは胃の内容物を惜しむことなく、恥も外聞もかなぐり捨てて、吐き出してしまうだろう。

 

「……おい」

 

 イプシロンから怒気を含んだ声が絞り出されるように言葉として紡がれる。それを聞き届けたカマキリアマゾンは、食事を一旦中断し、視線をイプシロンへ向けた。

 

「………あァァ……すまないね」

 

 そんな言葉を口にし、食べていた筈の少女の頭を地面へ軽く放り投げる。まるで丁寧に扱う価値など皆無、とでも言いたげな……いや実際にそうなのだろう。

 カマキリアマゾンにとって、もはや人間など腹を満たすだけの食料という側面にしか価値がなく、それ以外に何を思うという事は一切なくなったと言っていい。

 

「君と君の汚ならしいバケモノのパートナーのおかげで、ダメージを負うわエネルギーを多く消費するわ………はぁぁ。なんでもう一歩ってところで邪魔してくれるのかなァァ?」

 

「……」

 

「で、ランチタイムという訳だよ。おかげで回復したんだけど……フフッ、アマゾンになると人間は食料なんだってよく実感できるよ」

 

 カマキリアマゾンは口を止める気配は一向になく、その間にもイプシロンの殺気は徐々に高まりを見せて行くがそれに気付く様子はなく、敢えて無視しているのか。どちらなのか定かではないが講釈を饒舌に垂れ流していく。

 

「特に頭が美味しいんだ。だからこうして取って食べたけど、うん。本当にいいよ」

 

 今貪り喰っていたのが自分のパートナーであったなど容易に理解している。

 理解した上で彼は言っているのだ。

 

「あァァァァ。僕の前の……愛おしい大切なあの娘にもこの美味しさを分かち合いたかったなぁ~。

フフフ……だから本当に残念だよ。あんな卑しくて、薄汚でないバケモノなんかに取られて」

 

 もはや我慢の限界だった。

 カマキリアマゾンが気付いたの時には既に目の前へとゼロ距離に迫り、顎めがけてアッパーを繰り出そうとしていたイプシロン。が、それを容易く掴み、振り払うと同時に後方へ飛び退けた。

 

「怒ったのか? でもそれは……僕もォォ同ジナンダヨォォォッッ!!!」

 

 そう言って口から泡沫混じりの黒い体液を吐き出したカマキリアマゾン。黒い体液はただ見るだけならば得体の知れないだけの妙な液に過ぎないが、それは瞬く間に形を変えていった。やがて、完全に形を成すとそれはカマキリアマゾンと同属・同形態のアマゾンに姿を顕現する。

 数は2体。1体はカマキリアマゾンと一寸違わずそのままの姿をした別個体。

 もう一体は赤褐色の個体で、背中にはマンティスと似た鎌の両前脚を有しているが一対ではなく、二対となっており、先にある鎌は謎の透明な粘液に濡れていた。

 

「分身体か!」

 

「ギィィッッ!!」

 

 赤褐色の個体が奇声を上げつつ、背中に備わった二対の前脚鎌を器用に動かし、俊敏性と的中性をもってイプシロンを切り刻もうと繰り出す。が、それをイプシロンはよく目で捉えていた。鎌が縦に迫ればアームカッターで防ぎ、逆に左右横一線、斜めから来れば腹を捩る形で紙一重で回避。当たりそうになれば、その箇所にギガを集中。一時的に硬質化することで防いで見せた。

 だがもう一体カマキリアマゾンがいる。

 オリジナルと同形態の分身体は背後に狙いを定めており、どうやら隙を見せた所を一気に突く腹積もりのようだ。だが、それを理解していたイプシロンは赤褐色の個体の二対の前脚鎌による一本の一撃を“両腕で掴む体勢”で防ぎつつ、膝を地へと着かせた。

 背後には何もなくガラ空きの状態。緑色個体はこれを好機と見て仕掛けるがオリジナルの声が上がる。

 

「待テェェ! ソレハッ」

 

 ブラフだ。

 そう最後まで言い切ろうとするも叶わず、掴んでいた一本をイプシロンは立ち上がると同時に引き千切る。そしてそのまま後ろから迫っていた緑色個体の首を前脚鎌で切り裂き、頭部を肉体から分断

。地へと叩き落とした。

 

「終わりだ」

 

 これだけに留まらず、今度は赤褐色個体の胸部中心を左手で抉るように貫く。黒い液体が飛び散り

、やがて赤褐色個体は緑色個体のように黒い液状と化して仮初めの命を停止させた。

 

「……もう無駄な悪足掻きは、やめろ」

 

 2体同時に相手取り、しかし苦戦した様子もなく平然と勝って見せたイプシロンはカマキリアマゾンに対し、そう警告する。

 

「ク、ククク、ハッハッハッハッ! いや〜見事見事。あの時初めて僕の作った分身体を相手に苦戦してのは、やっぱり不調が原因だったのかなぁ? それとも他に理由がぁ?」

 

「……もういい」

 

 警告にろくに答えず、おちょくる口調で褒めて讃える……というより、皮肉を込めた嫌味を述べ垂れるだけ。それは自らの死を、他ならぬ自分自身で確定付けたと言っても過言ではなく、もはや彼に対しての躊躇はイプシロンの中には存在しない。その身を確保し、然るべき裁きの場に彼を立たせたいと思っていたが、もはや無意味と悟った以上、この場で命を刈り取る。

 それがイプシロンの判断であり……決意だ。

 

「僕を殺す気かい?」

 

「ああ……けど一つ、聞きたい。なんで殺した!! 苦楽を共に感じて、助け合って、一緒に戦って来た仲間の筈だろ?! なのに、何故こんなことをッッ!!」

 

 仲間を大切に、時として自らの命を投げ打つ覚悟とそれを厭わない決断力を持つヒロだからこそ、何故復讐の為だけに仲間を手にかけたか。それが一切理解できなかった。いや、そもそも理解したくないと言うのが正しい。

 ヒロにとって仲間の為、都市やオトナたちを守る為に戦うという価値観を持つ故に090のした事の全てが嫌悪感を覚えるものだった。その問いに対し、カマキリアマゾンは平然と答える。

 

「簡単さ。無意味で無価値に感じたんだよ」

 

 なんて言う事なく、至って平坦な回答だった。

 

「なっ……」

 

「フフフ、僕は今まで都市を守るコドモとして、それに何の疑問を抱かずに戦って来た。そしていつしかオトナになりたい、頑張れば成れるんだと信じていた」

 

 オトナはガーデン時代、集会を開いてはその場に集まったコドモらに恒例という程言い聞かせて来た。

 

 “コドモとして課せられた使命を全うすれば、君達はオトナになれる”

 

 “思考を乱す不要な感情がなく、性問題も解消。オトナとは、完全なる存在なのです!”

 

 それを聞いたコドモたちは皆憧れを抱い た。ゾロメもその1人だ。逆にヒロはそれほど魅力的には感じなかったが、そんな凄い人達をこの手で守れる。役に立てる。名誉ある誇り高い使命を果たせると言う、そんな喜びを心内に染み込ませるように感じていた当時が記憶の中にあった。

 

「だけど……それって意味があるのかい?」

 

 少し感傷的になっていた思考をカマキリアマゾンの声が……否、言葉が現実へと引き戻した。

 

「なんだと?」

 

「オトナとは、所詮無力で脆弱な人間に過ぎない。完全などと宣うが戦う力を捨て去り、進化の可能性を自ら閉ざした哀れな存在だ」

 

「……オトナは、進化したよ。だから完全なんだ」

 

「クックックッ、そうかい。まぁこんな所で議論していても仕方ない。僕はもう負けだ」

 

 負けを認めてはいるが、何故か余裕に満ちていて、敗北者特有の空気はその臭いさえも漂わせていない。

 

 “何か、ある”

 

 直感でそう思ったイプシロンはカマキリアマゾンが何らかのアクションを起こさせないよう、首を狙い、確実に仕留めようと一気に詰め寄る!

 

 が。

 

『悪いが〜そいつは駄目だ』

 

 飄々とした少女の声と共に赤い光弾が2発。イプシロンの腹部と左肩を直撃し、その身体を後方へ吹き飛ばす。

 

「グゥッ、ァァッ!」

 

「ごめんねイプシロン。この子は、今後の為の手足なんだ」

 

 黒い蒸気から現れた存在…ブラッドスタークは、トランスチームガンをイプシロンの方へ向け構えた状態で、カマキリアマゾンの隣へと並び立つ。

 

「遅かったじゃないですか。僕が自分で時間を稼いでいなければお終いでしたよ」

 

「そう言わないでよ鎌男君。きちんと来たんだから。で? 君の方は復讐できた?」

 

「デキタ訳ネェェェダロォォォォォォ!! 喧嘩売ッテンノカ!!」

 

 急に片言になり、怒鳴り散らすとは一体どういう了見なのか。

 スタークとしては文句の一言位いいと思うのだが、そうはせず、むしろ心当たりでもあるのか……そんな風に悪戯な笑みを浮かべつつ、適当に流した。

 

「はいはい、ご立腹は結構な事で。とにかくこの子はボクが連れ帰るから、そういう事で

よろしく♪」

 

「ま、待て! どういうつもりだ!」

 

「え?………あーそうだった。言い忘れてたよ。ボク、もう君達の味方じゃないから」

 

 それは軽過ぎると言うべきか。もしくは脈絡など微塵もない突拍子な戯言か。

 スタークの言葉にイプシロンは当然の如く疑問しかなかった。

 

「ヴィスト・ネクロ。そこがボクの属する新しい場所さ」

 

「なッ?!」

 

「おお、以外に結構驚くね」

 

 これを驚かずにいろ、と言われれば無理だ、と答えられる妙な確信がイプシロンにはあった。

 胡散臭く何かを企んでいるような得体の知れなさがあったものの、まさかヴィスト・ネクロに寝返りました、などと。簡単で容易に、こんなフザけた軽い口調で明かされるという悪趣味なサプライズをされるなど誰が想像できるのか。

 

「そんでもっておめでとう。無事に生還してくれて。わざわざ君の頭の中の世界にまで入って説得したかいがあったよ」

 

「!!ッ……そんな、じゃあ!」

 

「言ったでしょ〜? 正真正銘本物のブラッドスタークだって」

 

 アレは、夢じゃなかった。だが信じられない。どうやって自分の頭の中に入ったのか?

 そんな芸当が可能なのか? しかし夢でも幻でも、ましてや勘違いなどでもなく、現実に起こってしまった事象である故に荒唐無稽の戯言と断じる事はできなかった。

 

「じゃあ、また会う日まで。チャ〜オ!」

 

「ま、待てぇッ!!」

 

 黒い蒸気がスタークとカマキリアマゾンを包み込むように発生し、やがて数秒と経たずして消え失せる。当然、そこにスタークと元パラサイトの090……カマキリアマゾンの姿はその影すらなく完全に消失していた……。

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 両都市の防衛作戦は、叫竜の殲滅という一点だけを見れば見事成功を収めたものの、他の視点……いや、総合的に見れば1人の反逆者によるテロ紛いの行動により、26部隊は半ば壊滅状態となり、更には協力者と思われていたブラッドスタークの裏切り。

 この事実を重く受け止めたAPE最高司令部にして、統率者たる七賢人は満場の一致でスターク並びcode090を反逆者兼最重罪犯とし、その行方を追ってはいるものの、何一つとして手掛かりを掴む事ができず、些細な情報さえも捉えられずにいた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










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