ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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皆様お待ちかね、ダリアマ水着回……爆☆誕!





流星モラトリアム~束の間の休息~
煌く太陽の下で 前編


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海。大地よりも総面積が広く、地球に犇めくように存在している生命たちの発祥の故郷と言ってもいい。

 人も、獣も、虫も、極小の微生物も遍く全ての種は海を母として生まれたのだ。そんな海に常日頃から13都市を防衛するコドモたちは、浜辺に足を踏み入れる形で訪れていた。

 

「お、おお! すっげー!!」

 

「へぇ……これが海か」

 

 海を直に見る事などなかったコドモらの反応は感動のそれに近く、ミツルも柄に似合わず瞳を輝かせていた。

 そもそも何故13部隊が全員海へ来たのかと言うと、本来はこういった事は有り得ない。

 コドモの使命はパラサイトとしてフランクスに乗り叫竜と戦い、都市を守る事である。

 いつ、どのようにして叫竜が襲って来るか分からない中でコドモを海で自由にさせるなど、非常時の事を鑑みればあってはならない。

 しかしフランクス博士はこれを提案し、鷹山の賛成の声も相俟ってこうして実現したと言う訳だ。

 

「はぁぁ……なんでこんなこと……」

 

「そう溜息零すなよナナさん」

 

 ちなみにコドモらは全員水着に着替え、監視という名目で鷹山とナナも来ており、当然ながら2人とも水着姿である。

 

「ナナさんの水着姿……綺麗だよ」

 

「は、はぁぁッ?! なな、な何言ってんのよもう!!」

 

 ヘラヘラとしたニヤけ面だった顔をキリッとさせ、真面目な面持ちで言う様は傍から見ればシュールではあるものの、自分にとって初の水着姿を見られて、存外真っ直ぐな感想を言われたのだ。

 親しい仲の男性に言われれば、つい嬉しいと思ってしまうのが女心と言うもの。

 証拠にナナは顔を真っ赤にし、戸惑いの表情を隠せずに出している。

 

「そ、それよりも! コドモ達のことキチンと監視しなさい。私と貴方がここにいるのは、その為なんだから」

 

 その言葉は正論ではあるものの、つまらないとばかりに今度は鷹山が溜息を吐いた。

 

「はぁぁぁぁぁ〜〜〜〜……いや、分かってるよ? でもさぁ〜、ナナさんやアイツ等が着てる水着は俺のトコからこっちに寄越したもんだぜ?」

 

 無駄に長い溜息の後に続いた台詞は、愚痴のソレだった。

 ナナと女子のコドモ達が着ているものは全部コロニーからこちらに輸送されたもので、その柄や色は様々だ。

 計50種類もの品揃えで、ナナが自分で選んだものはその中にあった物である。

 どんなものか、と言えば赤い生地にハイビスカスの黄色いペイントが施された代物だ。赤が好きな鷹山としてはナナとのベストマッチが最高の一言に尽きる水着姿。

 これを目にして、超絶という言葉が付くほど鷹山は嬉しさの絶頂に陥っていた。それ以外に一体何の感情がいるのだろうか。

 いる訳がない!

 少なくとも鷹山はそう心の中で叫ぶ程だ。

 

「……」

 

「え、ちょ、あんま見ないでよ……」

 

 ゴローは視線を向ける。その先にはイチゴ、正確に言えば彼女が着ている水着だ。

 ピンク色の生地に白の水玉模様がよく映えるが、よく見れば白い玉には猫のような耳があり、ただの水玉模様ではない事が分かる。

 可愛い。それが彼が無意識に思った素直な感想だが、視線に気付いたイチゴは顔を赤らめ、照れ臭そうに言いながら顔を逸らしてしまう。

 

「あ、いや、……悪い」

 

 すかさず謝るがイチゴはフンっと言いたげな様子だ。一方でミクとゾロメはと言うと恒例の痴話喧嘩は特になく、ゾロメがただ素直な感想でミクの水着姿を不器用ながらも褒めていた。ミクの水着は黄色に黒い猫のイラストがペイントされたもので、何処となく猫を彷彿とさせるアルジェンテアに乗る彼女のイメージとよく合っていた。

 

「そ、そーいうのもイイよなミクは。なんつーか、こう、いつもより可愛いし」

 

「あ、ありがとう……」

 

「フトシ君どうかな?」

 

「最高! ホント最高だよココロちゃん!!」

 

 ココロの水着姿は白の生地に赤、青、黄、黒と言った星柄が散りばめられたもので、その見応えはパートナーたるフトシから見れば最高の一言に尽きる。言葉と興奮度合いからその程度が窺い知れた。

 

「……」

 

「……」

 

 しかし、明らかに温度差の違うメンバーがいた。ミツルとイクノだ。イクノは黒みがかった藍色の水着で、柄は特にないが大人しい彼女に合う落ち着いた色彩である為、様になっていた。

 

「……まぁ、いいんじゃないですか?」

 

「別に。あんたに褒められても嬉しくないよ」

 

 冷え切っている。チラリと見ていた鷹山の抱いた感想がそれで、他の誰かが見ても同じような言葉を呟くだろう。

 

「は、はは……仲良くね二人とも」

 

 居心地の悪さを感じ苦笑を浮かべるナオミは、そんな二人の後ろで丁度二人の間に挟ま

って見える位置でなんとかフォローを入れてものの、大した成果は得られないだろう。

 ナオミの水着は紫の生地に緑の色彩で形成された蛇やコブラのイラストがペイントされた、エキゾチックな毒々しさを表したもので、これが妖艶な雰囲気を何処となくながらも

醸し出していた。

 ともあれ、海という未知の体験はコドモたちにとっては良い刺激である事に変わりない

。特に嬉しさを際立せていたのはゼロツーだった。ちなみに水着は特に柄のない上下赤一色のもの。

 赤がイメージカラーのゼロツーにはシンプルながらもよく似合った水着だ。

 

「ダーリン! ほらほら!」

 

「そ、そんなに引っ張ると危ないって!」

 

 前々から見たかった海がそこにあるのだ。

 喜ばない筈なく、気に入った新しいパートナーもいるとなれば嬉しいの一言しかないのだろう。

 これに関してはヒロも嬉しいのだが、さすがに手を結構な力で引っ張られると困る為、そんな抗議の声を上げるヒロだがゼロツーは軽くスルー。ある程度、大体膝から少し上辺りまで海水に浸かると立ち止まり、両手を器代わりに水を掬い上げる。

 ゆらゆらと動き、何の汚れもない無色透明の液体。

 水ではあるものの水道水や川、池などの淡水とは違い、塩分を含んでいるので塩辛く飲める代物ではない。しかしこうして浸かるだけなら、何も問題ないソレは特別という程の物ではないが、それでもゼロツーにとっては普通以上の特別なものに見えた。

 

「しょっぱくて、不思議な味。ふふ……ありがとうダーリン。ボクをここへ連れて来てくれて」

 

「いや、俺は何も……」

 

「ううん。ダーリンのおかげだよ」

 

 自分は何もしていないと言うが、ゼロツーはそれを否定した。

 

「ダーリンがいたから、パートナーになってくれたからボクはここにいる。だからダーリンのおかげなんだよ♪」

 

 笑顔で真っ直ぐなそのセリフに顔をはにかむように綻ばせるヒロの顔は、左右の頬が赤く染まり、それが気恥ずかしさと照れを両立させた物だと。側から見れば一目瞭然。

 それだけ美少女と例えるに相応しい容姿の女の子に褒められると言うのは、陽気的な意味で気持ちを高揚させてくれるものだ。

 

「そう言えばダーリンって泳ぎ得意なほう?

 

「え、どうかな……まぁ、そんなに酷くない筈だけど、上手いかって言われたら微妙かな?」

 

「よし! じゃーいっぱい泳ごう!」

 

「えぇ?! 待ってくれゼロツー!!」

 

 ヒロとゼロツーの2人が競泳でハシャぎ捲る中、それを見ていたココロ、ミク、イクノ。

 そしてゴローは安心したような表情で見ていた。

 

「ヒロ君、元気になってよかったね」

 

「ちょっと良すぎる気もするけどね〜」

 

 ミクとココロはそう言い、ゴローもそれに便乗した。

 

「そうだな。戻されそうになったって聞いたけど、結果的にまたパラサイトとして戦えることになって良かったよ」

 

「……」

 

 自分のパートナーの言葉にイチゴは、あまり肯定的に捉える事ができなかった。何故ならあの夜、ゼロツー本人からパートナー殺しの噂が真実である事を聞いたからだ。

 だからこそ、みんなと違ってゼロツーの疑念は晴れない。他のみんなはパートナー殺しの噂がデマだと思っている。

 当然だろう。

 あの夜の温室にいたのはイチゴだけ。ゴローにはその時の詳細を伝えてはいるものの、戦いの後にヒロは死なず、それどころか元気な姿で無事生還を果たした。ゼロツーに乗った事で命を落としかけたのは事実だが、しかし今はこうして生きて共にいる。

 少なくとも現状においては大丈夫なのだと、ゴローはそう判断していた。

 だがイチゴは違う。今もまだゼロツーに対し疑念を抱き、何か企んでいるのならば真っ向から相手になってやる。そう決意を固めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

「そ、れ〜!」

 

「よっと!」

 

 コドモたちはそれぞれが思い思いに過ごしていた。

 イクノは少々泳ぎが苦手な所がある為、それをナオミが丁寧で分かり易い指導で仲良く練習していたり、イチゴはそんな二人の輪の中に入って練習に協力している。

 ヒロとゼロツーは砂を用いて色々と作っており、恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯かせるヒロと彼が作った、控えめに言って『イマイチ』に分類されるモチーフ元が分からないほど色々歪んだ作品を見て、堪らず爆笑を奏でるゼロツー。

 この光景を見るにどうやら巧さの点では、ゼロツーに分があった様子。

 ミクとココロはビーチボールを用いて、互いにパスし合いながら浜辺の球技遊びに興じている。実に目の保養になる美しく楽しそうな光景の数々なのだが、それらを邪な目線で見る者達がいた。

 海で泳いでいたヒロを除く男子らだ。

 ゾロメは浮き輪に尻部を嵌めた格好で見ており、その浮き輪の両脇にフトシとゴローが掴まり一緒にまじまじと見ていた。ついでに鷹山も。

 鷹山の場合、ゾロメと同じく浮き輪なのだが普通の使い方だ。

 

「……なぁ、みんな……」

 

「皆まで言うなゾロメ」

 

 何かを言おうとするゾロメだが、そこに待ったと即答する勢いで声をかけた鷹山は、その言葉で彼と同調してみせた。

 

「「海っていいな!!」」

 

「す、すごいハモり……」

 

「あ、ああ……でも分かるぞ。その気持ち」

 

 眼鏡の中央パーツをクイッと上げ、やたら高揚とした様子で呟くゴローにフトシは驚きの声を上げた。

 

「意外だね……ゴローもこういう話題に興味あったりするの?」

 

「お、俺だって男だぞ!!」

 

 それに対し、失敬な。と言いたげに反論するがゾロメもイメージとしてはあまり食いつかない方だと思っていたので、フトシと同じく意外に感じていた。

 

「まぁ落ち着けよ。男ってのはな、エロい位が丁度いいんだよ」

 

 なんか間違ってる。ほんの一瞬ばかり頭の中に浮かんだその言葉を実際に出し掛けたゴローだが何とか堪え、そのまま息や唾と共に飲み込んだ。

 

「エロいって……アレっすか? 女の子を見てるとこう……なんか込み上げて来る……」

 

「あ、俺もある!!」

 

「……俺も少し」

 

 エロい。その言葉の意味を正確に理解できていないゾロメ、フトシ、ゴローの3人なのだがそれが女の子に対する情念的なものである事を本能が悟ったのか。

 ゾロメの言葉は少し曖昧なニュアンスもあるが、間違っているという訳でもなかった。

 

「そうだ。特に肌が出てるともっと沸き起こるだろ? その気持ち……ムラムラとも言う」

 

「ムラムラ……」

 

「これ、そんな名前があったのか……」

 

 ゾロメは女の子を見て沸き起こる高揚に近い感情の正体が『ムラムラ』と呼ばれるソレである事を知って、納得いったとばかりに感心し、復唱する。フトシもまた感心したと言う感じである。

 

「さぁ、もっと味わえ……こいつを使ってな!」

 

 一体何処から出したのか。そう言いたくなるような唐突さで三つの双眼鏡を出した鷹山はそれを3人へと渡す。赤を基調とし、レンズの縁など細かい箇所が蛍光の緑で塗装されたソレは、まんまアマゾン・アルファのカラーだった。

 ちなみに普通のサイズより幾分小さめとなっている。

 

「刃さん、これ!!」

 

「そいつで見てみろ。もっとよく見えた方が楽しめるもんだ」

 

 しれっとドヤ顔で言う鷹山だが良識知る者がこれを見れば、その誰もが『覗き』だと口を揃えて言う事だろう。しかし、その行為を咎める者はこの場におらず。男子の気持ちが一つになっている事もそれに拍車を掛けていた。

 

「あれ、でも刃さんはいいんすか?」

 

 ここでゾロメは、ふと浮かんだ疑問を本人に問いかけた。二ついっぺんに渡す理由はあるのだろうか?と。

 単純に優先して貸してくれただけと言う考え方もできるが、しかし実際のところ、鷹山に双眼鏡は必要ないのだ。

 

「フフ……あんまし俺を舐めない方がいいぜ?」

 

 鷹山は何が誇らしいと言うのか。何故か勝ち誇ったような不敵な笑みを浮かべては、堂々と宣言してのけた。

 

「俺のこの目は……アマゾンとしての視力はかなり高いんだよ! 双眼鏡以上にな!!」

 

 鷹山の自慢的なカミングアウトは、男子らにある種の衝撃を引き起こした。遠くからでもよく見える、と言うことは女の子の色々な所をより細かく、それも自分の存在がバレずにまじまじと観察できる事を意味している。

 バレない、と言うのは隠れ方にもよるが遠くならそう簡単にバレることは可能性的に少なく、しっかり身を隠していれば更に見つかる可能性はぐっと低くなる。

 この利点を鑑みれば男として、羨ましい筈が無いというのが鷹山の持論であり、後の話になるがゾロメもフトシも……ゴローでさえ、自信満々にそう語る始末だ。

 

「マ、マジッすかそれ?!」

 

「ど、どどのくらい見えるの?!」

 

 テンション爆上がりのゾロメとフトシ。対しゴローは何も言わないものの、やはり聞きたいのか。2人と同じくズイっと鷹山に迫っていた。

 

「そうだな……今のままなら、この距離から見てスリーサイズや肌の状態とか、余裕で分かるぜ?」

 

 それはもう立派なドヤ顔で語って見せる鷹山を笑止と言って切り捨て冷たい非難の視線を送るか、それとも感嘆と尊敬の気持ちを込めて言葉を述べるか。

 しかし3人の少年達が選んだのは……後者だった。

 

「ス、スッゲェェーじゃないですか!!」

 

「お肌がまる分かり?! けしからんけれども……スゴイ!」

 

「……クッ、羨ましい!」

 

 ゾロメからフトシ、ゴローの各々の反応に鼻が高くなるのを自ら感じる鷹山。普通ならばそんなのありえないと一蹴するものだが、鷹山がアマゾンであり、人間を超えた身体能力や感覚を有する事を理解している彼等は鷹山の言葉を、嘘だ。詐欺じゃないか。

 などと指摘したり否定はしない。いやできないと言うのが正しいか。いずれにしろ肝心な事はそこではなく、男心を燻らせるムラムラの原因、女の子の肌を晒した姿を拝むことなのだ。

 

 そして、彼等は見た。

 

 双眼鏡という、遠くからでありながら近付いたかのように目視できる便利な道具から通して見る、綺麗に整ったボディーラインが織り成す肉体の美。

 よく発育した胸をまるでゼリーのように揺らし、水着効果も合わさってより可愛らしく見える女の子の姿。

 一言で述べるなら、素晴らしい!

 これに尽きるものがそこにはあった。

 

「「おおおおおおおおおッッッ!!!!」」

 

「……いいな、うん。本当に」

 

「だろ?」

 

 興奮するゾロメとフトシ。短く、しかしそこに今溢れている感情を詰め込んだゴローのほんの呟きに鷹山は同意だ、とばかりに言う。

 自分達が見られていると気づいた女子たち……中でもミクがギャーギャーと捲し立てているが、そんな事はどうでも良かった。

 

 望むものを見れた。

 

 その結果こそが男達には大事だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 そこは暗い洞窟と呼ぶ他にない場所。

 広くドーム状になっている空間に何かが青い光を発し、その息遣いを蠢かしていた。

よく見ればそれは蛇だ。蛇と言っても人間より小さな小型爬虫類ではなく、かと言って、ニシキヘビのような成人と同等の大型でもない。

 

 遥かに巨大な蛇型の“叫竜”だった。

 

 漆黒の強固な皮膚が全身を覆い、凶暴性を宿すかのようにギラついた青い瞳の目。身体には青いラインが節々に引かれ、青い光はそのラインと瞳から発せられている。

 しかも1匹ではなく2匹。

 争う様子はなく、互いの身体を絡ませることなく重なり合う大蛇の姿は圧巻の一言で、目を奪われ惚けてしまうだろう。それだけの迫力を秘めている。

 そんな2匹の大蛇の前に“彼女”はいた。

 青いラインが綺麗に横に配列する椅子に似た物体。そこに腰を下ろし足を組む様は王者と表現するに相応しい風貌だったが、生憎のところ彼女と称するだけにれっきとした少女だ。

 王、言うよりは姫か女王がしっくり来る。

 個体名を示す名は不明だが、少女を知る者は彼女をこう呼ぶ。

 

 “叫竜の姫”、と。

 

「……何者だ」

 

 厳格さと幼さ。この二つを織り交ぜたような声が耳ではなく、頭の中に響くように“相手”に伝わ

っていく。それに答えたのは、彼女の眼前にある出入り口の暗闇から現れた“彼等”だった。

 

「お使いのもんさ。お姫様?」

 

 ヴィスト・ネクロ幹部、ザジス。その実力はアマゾン・アルファを窮地に追い込む程。

 そんな彼が同じ幹部である“相方”を連れて、彼女の前へと姿を現した。

 

「俺、ファント。よろしく」

 

 筋骨隆々の肉体を何も着ることなく曝け出した半裸の男は、なんて事のない挨拶を口にするが顔は無表情。しかも漂う空気からして、決して友好的ではないと分かる。

 

「お使いだと? 貴様ら人食いの獣が、何の為にここへ?」

 

「そうだな。回りくどいのはナシで直球に聞くがよ」

 

 “ザ・ファースト”の在り処をゲロしろ。

 

 その問いは、意味は、彼女を驚愕させるには十分過ぎた。

 

「驚いた。人を食うことしか知らぬ獣がそのような事を知ってるとはな」

 

 しかし、あくまで彼女は何一つ変えない無表情のまま言葉を綴る。

 

「そいつはちと違うな。俺はそのザ・ファーストって奴がどんなヤロウかなんて、全く知らねぇ」

 

 ザジスは、十面姫からの命令でここへ来た。しかしそれは彼個人としては、どうでもいい部類なのだ。

 

「うちのボスは守秘義務で、あんま細けぇ事は喋らねーからな。まぁ、俺としては正直興味ないがな

 

「……何が言いたい?」

 

 要領得ぬ言葉に業を煮やした彼女は己の視線に殺意乗せザジスへとぶつける。

 

「どーせ、ゲロしねぇんだろ? だったらよ……」

 

 “その首、貰うぜ!”

 

 ザジスの手が刃に変わる。人間ではその肉眼で捉えることは不可能な程の高速で彼女へと迫るザジスは、両ブレードをハサミにし、首を刈ろうとした。

 

 ガギィィッッッ!!

 

「ほぉう?」

 

「やれやれ。なんとも狂暴な獣だな」

 

 だが、二つのブレードは彼女の首を刈ることはできず。彼女を腰を下ろしていた椅子のような何かの一部が触手と化しそれがブレードを阻止していた。

 

「どうやら口で言っても聞かぬらしいな……」

 

 ザジスのブレードを防いだソレが大きく仰け反り、弾く。それによる衝撃でザジスは後方へ吹き飛ばされるが地面に当たる寸前、身体を回転させブレードを突き刺すように着地せしめた。

 

「フゥゥ……やるなぁ。おいファント、お前は取り巻きの蛇をやれ。俺はこのお姫様の首を頂戴すっからよぉ」

 

「俺、構わない」

 

 頷き、そう答えるファントは灰色に染まる蒸気のオーラを全身から噴出させ、その姿を本来の姿へと変異させた。

 

「俺、蛇、やる」

 

 逞しさを兼ね備えた、筋骨隆々とした灰銀の肉体と頭部の両側にある団扇のような耳。

 極めつけは、太く長い鼻とその左右に生えた牙だ。

 鞭のように振れば人間や低ランクアマゾンを撲殺でき、手として使えば相手を拘束したり、物を掴む事だってできる。それを見た者は口を揃えてこう言うだろう。

 

 “マンモス”。

 

 象と同一の先祖を持ち、太古の時代に人間や環境の変動によって今はもう存在しない絶滅種の生物。その遺伝子を持つのがファントのアマゾンとしての本来の姿、マンモスアマゾンなのだ。

 

「覚悟しろよ叫竜の姫ェェッッ!!」

 

「それはこちらの言葉だ。愚かなる野猫よ」

 

 両者は互いにそう交わし、刃を交えた。

 

 

 

 

 

 







 早くも登場した中の人が『くぎゅうううう!!』な叫竜の姫。
 そしてファント……名前の由来が象の英名であるものの、実際はマンモス……アレです、
最初は『こいつ絶対サソリの怪人になる』って思うほどサソリ要素満載なのにいざ怪人
になってみるとカニの怪人だった、ドクトルG的な。

 鷹山さんは原作とは別ベクトルでヒドいとは思いますが、アレが平常運転です
(`・ω・´)キリッ

 
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