ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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ちょっと遅くなってすみません(-_-;)










地中より這い出るモノ 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん……」

 

「ダメか?」

 

 ゴローはヒロと共にミストルティンにある、宿舎と似た雰囲気の建物へと足を運んでいた。

 とは言え、それなりに大きく広い建物である事と老朽化して箇所によってはいきなり崩れ出すかもしれないという二点の理由から、ヒロの気配を察知レーダーと嗅覚。

 これらをもう一度利用してナオミの行方を探索しているのだが、これが中々掴めない。

 

「ダメだ。全然感じ取れない」

 

「ここもダメか……」

 

 現在2人は、建物の入り口から入ってすぐにある居間の空間におり、内部は腰を下ろす為のソファ

ーや何かを置く為の木製のテーブル。書籍の棚がいくつかあり、どれも年季の差を感じさせる質感の古本が並び、様々な題名が記されていた。

 

「なぁ、ヒロ。やっぱりここ似てるよな?」

 

「うん。俺たちが住んでる宿舎と形とか、雰囲気がそっくりだ」

 

「んん〜……何でだろうなぁ」

 

 この建物がコドモたちの宿舎に似ている点に関しては2人も気付いていたらしい。しかし何故この建物と自分達の宿舎の作りや形状が似ているのか。

 そこまでは分かりかねるといった様子のゴローだが、ヒロは違った。

 

「ここが宿舎に似てるって言うより、宿舎の方が意図的にこっちに似せて作ってると思うんだ」

 

「え? なんでそう思うんだ?」

 

 ヒロの言葉にゴローは疑問の声を上げる。

 

 敢えて似せて作った、と言うのであれば確かに両方が似ている事への筋は通る。しかしそうなると『一体どちらが似せて造ったのか』、という新たな疑問が生まれてしまう。真面目に考えるなら情報が少な過ぎて、何も答えられないという結果になるだろう。

当たり前だが何かを証明しようと言うのなら、ただ言葉にして発するだけでは説得力など皆無だ。

 

 証明は、人を納得させる為に必要なもの。

 

 納得とは、人の意思に決定を打ち込む鍵だ。

 

 理不尽でも。

 

 悲しくても。

 

 つらくても。

 

 痛くても。

 

 たった一つの納得が人を決定させ縛り付ける。それだけ納得とは全てに優先され、自然と帰結するものなのだ。

 少し話が逸れてしまったが、ヒロの言い分は逆説的にこっちが似せて作ったと言う考え方もできる筈。あるいは偶然に似ているだけと言う結論にも納得が行くが、どちらが先で、後なのか。

 まるで『鶏が先か、卵が先か』の言葉が似合う禅問答だが有力な情報がない限り、大抵の人間はまともに答えられない。答えとしてもどちらかが、などと言った曖昧な解答を出してくるだろう。それでもヒロは『どちらかが似せてそう造った』という曖昧な表現をせず、ミストルティンの宿舎がこの建物を真似て形作られていると言うのだ。

 さしたる情報がない中で何故こうも言えるのか。ゴローが疑問に思うのも当然だろう。

 

「オトナたちの都市と、この街を比較してみたんだ。前に見たオトナたちの都市は無駄を省けるだけ省いたみたいな、そんな洗練された雰囲気を感じたんだけど、この街にはそれがなかった。ここだけじゃなくてこの街その物の雰囲気が俺たちの宿舎と同じなんだ」

 

 この建物だけでなく、街全体の雰囲気が驚く程に合致していた。それをヒントにヒロなりに考えて導き出した答えだった。

 

「ビンゴ! さっすが元天才児は発想からして違うなぁ」

 

 聞き慣れた嫌な声が2人の鼓膜を震わせる。自分達が入って来た入り口のドアへ一斉に視線を向ければ、そこにいたのはやはり彼女だった。

 

「! お前はッ!」

 

「スターク……ッ!」

 

 味方だと嘯き、時には13部隊に協力する事もあったが時として陥れる事もあった謎めいた人物にして、APEを裏切った少女。ブラッドスタークが、ドア縁へと片肘を当てダランと気の抜けた様な格好でそこに佇んでいた。

 

「ミストルティンにあるコドモの宿舎はね、ここをモデルケースにしてるんだよ。前時代と呼ぶ暮らしがコドモにとって良い育成にはるって理由でさ」

 

 驚きと警戒を露わにするヒロとゴローを軽く流し、そんな説明を求められていないにも関わらず、自分の勝手とばかりに垂れ流す。

 

「なんで裏切ったお前がここに……」

 

「野暮用って奴だよ。わざわざご丁寧に説明する訳にはいかないなぁ〜?」

 

 嘲笑う表情は何処までも他者を格下と見なし、舐め腐った態度で接しているのが分かる程に分かり易い挑発だった。

「……もう2度と、あんなことを起こさせはしないぞッ!!」

 

それがヒロの中で苛立ちとなり、そして前回のキッシングにおける惨劇が苛立ちを明確な怒りへと上昇させた。ヒロは念の為にと付けていたアマゾンズベルトのグリップを握り締め、吼える。

 

「アマゾンッ!!」

 

 人間としての姿であるヒロから、アマゾンとしての姿であるアマゾンイプシロンへと変身した瞬間。自慢の脚力による瞬発を利用した跳躍で一気に距離を詰めるイプシロンは、アームカッターでスタークの身体を切り裂こうとした。

 

「おい、ヒロッ!」

 

 静止の声を出すにはあまりに遅かった。

 

アームカッターはスタークの身体を……

 

「甘いね」

 

 切り裂くことなく、自慢の刃はスタークの主要武装であるトランスチームガンの銃身によって、甲高い衝突音を鳴らし防がれた。

 

「!ッ」

 

「そら、吹っ飛びな!」

 

 スタークはそう言いイプシロンを蹴り飛ばす。老朽化しているとは言え、それでもそこそこは頑丈だった筈の壁を突き破り外へ出ると同時に倒れ込む。

 

「グゥゥッ!」

 

「全く元気なことで。まぁ、大したことないけどさ」

 

 余裕綽々と言いたげな雰囲気を露骨に曝け出すことで、更に挑発の度合いを上げて来るスタークはイプシロンの前へ立つとトランスチームガンの照準を定める。

 

「不意打ちかましてくれたお礼をどうぞ♪」

 

 そう言って何の躊躇いもなく引き金をひくと、トランスチームガンの銃口からエネルギ

ー弾が紫色の光を発しながらイプシロンに命中。確実なダメージを与えた。

 

「ガァァッ! グッ!」

 

「ちょっとちょっと、反撃は? そんな風に寝てるだけじゃボクは倒せないよ?」

 

「ヒロ!」

 

 騒ぎを聞きつけたのか他のコドモたちに加えて、鷹山にナナも駆け付けて来た。

 

「アイツ!」

 

「ブラッドスターク?! 何でここに!」

 

 ミクとゾロメが驚きの声を上げる。自分達が休暇を満喫している地域にまさか現れるなどとは思ってもみなかったからだ。

 

「これはこれは……13部隊の諸君。またお会いできて恐縮です、って言えばいいかな?

 

 飄々と道化染みた態度で腕を大振りに肩へと添えて、軽く会釈する。

 鷹山はそれに対し何も言わず、ヒロ同様事前に付けていたベルトのグリップを握り締て回すと赤い蒸気の如きオーラと共にアマゾン・アルファへ変身。

 

 アームカッターを勢いよく振るう。

 

「ウワッと!!」

 

「避けるなよ」

 

 ギリギリかわしたスタークに向けてアルファは言うが、刃物を自分に対し振るわれ、避けない道理などない。

 

「怖いな〜もう。ちょっとは手加減するもんでしょ」

 

「悪いな。お前みたいな得体の知れない奴には手加減できない性格なんだよ」

 

「あっそ。随分な性格だね」

 

 そんな会話を交わしつつ、互いに戦意と殺気を引かず、アルファは拳に加えアームカッターを用いた格闘戦術で攻めていく。

 スタークはこれに対抗する為、自身も独特な格闘戦術で攻めを行使し始めた。主体としては蹴りを用いたものだが、より威力を強化する目的なのか足先から、太腿までの足半分にかけての部位が淡く紫色に発光。

 加えて、蹴りの軌道が蛇のように曲りくねり中々防ぎ切れないというメリットを作り出している。

 

「チッ! 面倒な……」

 

「どうしたァッ?! その程度か!」

 

 微々ながらもダメージを与えていくスタークは、自らの有利性を誇示するように挑発して来る。まさにされるがまま、というのがアルファの状況なのだ。

 攻めようにも相手の軌道の読めない蹴り技による攻撃が妨害となり、思うように攻められない。

 攻撃は最大の防御。などと誰かが言ったが、まさにその通りだ。

 コレを脱却したいと願うアルファだが、今のままでは脱却の糸口などありはしない。

 

 “アルファだけ”では。

 

「刃さんッ!」

 

 しかしスタークの敵はアルファだけではない。ダメージからある程度回復したイプシロンが、跳躍を利用した急接近からのアームカッターでスタークの背を切り裂いた!

 

「グヌゥッ!」

 

 いきなり斬り付けられたダメージから攻撃の手…もとい足を止めてしまった。

 

「ナイスだヒロォォッ!」

 

 アルファはイプシロンを賞賛すると共に渾身の蹴りをお返しとばかりにスタークの鳩尾へと食い込ませた!

 

「ガハァァッッ!!」

 

 衝撃が身体の内部まで蹂躙し、人体の中でも鳩尾は急所の一つ。食らってしまえば相当な激痛にのたうち回るもの。

 

 だが……。

 

「ふぅ〜、あ〜痛い! 乙女の顔じゃなきゃ、どこを攻撃してもいいとか思ってんのぉ?」

 

 吹っ飛ばせるように後退しつつ、それでも立ったままの態勢をキープしたスタークは鳩尾に手を添えるように当てて、そんな苦言を呈して来た。その姿は然程ダメージが通っていないように見える。

 

「……こいつはまた。頑丈なスーツなことで」

 

「自慢だからね。このスーツの耐久性、防御力はボクのお墨付きさ」

 

 ブラッドスタークたらしめるこのスーツは、対アマゾン、ひいては人間外の高能力的存在との戦闘を想定して作られたもの。

 すなわち、人ならざる存在との戦いにおいて余程の規格外な攻撃でもない限り、破損または全壊することなど無いのだ。

 だからこそ、スタークは彼等を相手に戦うことができているのだ。

 

「大層な事で。どっちにしろ、お前を捕まえるのが目的だから関係ねぇけど」

 

「情報でもゲロさせるつもり? そうするにしても、まずは無力化させられなきゃ話にならないよ?

 

 鷹山が欲しいのはブラッドスタークが何者で、何をしようとしているのか。更に欲をかけばヴィスト・ネクロの情報も欲しかった。

 

 情報次第では、根城を突き止められる。

 

 壊滅させられるか、となると可能性は極めて低いと考えているものの、それでも悪意の手で消される犠牲を最小限に抑えれるかもしれない。

 無辜の命が何の意味もなく、ただ消えていく光景を知る鷹山だからこその考えだった。

 

「だから、今やろうとしてるんだよ」

 

「ふ〜ん。なら実力ってのを教えてあげよう」

 

ついたった今、飄々としていた空気を取り去り、スタークは僅かに殺気を滲み出す。

 

「行くぞ、ヒロ」

 

「はい!」

 

 同様にアルファも真剣さを帯び始め、側にいたイプシロンに淡々と指示を出す。どうやら本気で行くつもりのようだ。

 

「フッ!」

 

 軽く息を吐き出し、先手を打ったスタークはまずアルファに蹴りを、イプシロンに掌底打ちを繰り出す。アルファは衝撃を殺せず吹っ飛ばされたものの、咄嗟に両腕のアームカッターが備わっているグローブ部位を横に合わせるように防ぐ事でダメージを微々たるレベルに抑えられた。

 だが、イプシロンは違った。

 アマゾンとしての戦闘能力は向上してはいるのだが、それを上手く使いこなす為の技術がまるで成っていなかったのだ。

 技術、と言っても対人戦の為ではなく、人ならざるアマゾンと戦う為のものだ。パラサイトとして叫竜を倒す傍ら、空いた時間を利用しての訓練を鷹山から受けてはいた為、前よりは上達こそすれど実戦するには未だ足りないレベル。

 その為、アルファのような咄嗟の防御態勢、また緊急回避などができず、そのまま喰らい多少のダメージを負う羽目になってしまう。

 

「ガハァァッ!!」

 

「んじゃ、まずそちらから!」

 

 戦いでは、弱い者から狩る。

 野生でも群れの弱った個体から仕留めるものだ。

 スタークは追撃とばかりに拳を打ち込んでいき、更には両腕に纏わせたエネルギーを蛇腹剣のような形状へと変化させ、巻き付けると共にその身を切り裂く。

 

「グゥゥッ! アアァッ!!」

 

 苦悶の声がイプシロンから漏れる。締め付けられる圧力に加え、エネルギーの剣の鋭利が身体を裂いてダメージを与えいるのだから、当然だろう。

 

「俺を忘れるなよ!」

 

 横からアルファが自身のギガを収束させ放った、アームカッターによる赤い斬撃を飛ばすがスタークをそれを手の平で、掴むようにして消し去ってしまった。

 

「なにッ?!」

 

「惜しい。食らっときなよ」

 

 今度は手の平から赤と青の混じる紫の光球を形成、狙いをアルファめがけ放った。

 

「そっちこそ惜しいな!」

 

 しかしダメージを与えるには至らず。

 アームカッターによって二つに分かれられてしまい、そのまま後方へ軌道が逸れ爆散。一気に近づいたアルファは右手で首根っこを掴み、左腕のアームカッターをスタークの左肩へと食い込ませた。

 

「ガハッ、いぃッ! !」

 

「捕まえたァァ!」

 

 スーツのせいで思うように切れないが、それでも確かにダメージはある。

 いかに防御力・耐久性に優れていようと耐久値の限界は必ずあり、それを狙い再びアームカッターにギガを収束させる。切れ味が格段に上がり、とうとうスーツを形成している三つの特殊繊維による層の内、二つの層を切り裂き三つ目の層へと到達した。

 

「観念しな。このまま大人しく投降するなら腕は勘弁してやる」

 

「フン、お優しいことで!」

 

 空気を上手く取り込めない息苦しさと肩に生じる苦痛。二重苦に喘ぐ羽目になっているが仮に腕を切り落とされても“問題はない”。万が一勢い誤まって絞め殺されるか。あるいは首の骨を折られるか……それも“問題はない”。

 

 どちらにしろ“その程度では死ねない”。

 

 彼女を殺すのに物理的な方法は無意味に終わるだけだ。

 

(でも……ここでバレる訳にはいかないんだよ……ッ!)

 

 しかし、死ななくとも再起不能にはなる。ダメージを負わない訳ではないのだ。一定を

越えるダメージを負えば身体がその機能を著しく低下させ最悪の場合、意識不明という形で再起不能になる危険性がある。

 スタークがわざわざナオミとして、13部隊にいるのは彼等が彼女個人における計画に必要な人材である事と、ヒロのアマゾンとしての成長具合を己の目で把握するという目的の為だ。

 

 わざわざ自身を二つに分かち暗躍するだけの価値が、13部隊とヒロにはある。それをこのタイミングで潰される訳にはいかない。

 

 彼女は、“もっと彼等を見たい”のだ。

 

(しゃーない。結構消耗するけどこの際仕方ないなァ!!)

 

 全身に紫電のエネルギーが迸る。それを見たアルファは本能的な咄嗟の判断でスタークから離れ、イプシロンは更に警戒心を上げ防御態勢を取りつつ13部隊の前に立ち、いざとなった時の壁となるべく配置に付く。

 しかし紫電のエネルギーはスタークの足元から地面へと流れていき、最終的に光が消え失せるだけで大きな何かが起こることはなかった。

 

「? なんのつもり…!!ッ」

 

「これは!」

 

 アマゾンであるからこそ気付く小さな異変。

 それを逸早く感じ取ったのはアルファと、イプシロンの2人のみ。地中深くから小さ過ぎるほどに微弱な気配を察知し、しかしそれは段々と急激に大きくなる。やがて、かなりのスピードでこちらに向かって来ている事が手に取るように分かった途端、アルファは叫ぶ。

 

「お前ら! ここから離れろッ!!」

 

「え、それどういう…キャッ!」

 

「うわっ!」

 

 突然の地震。それにイチゴとゾロメが驚きの声を上げ、ゴローが当然起きた地震に顔を訝しめる。

 

「なんで、突然地震が?!」

 

 そう叫ぶが、その答えを知っているのはこの中でアルファとイプシロンの2人のみ。

 

 その2人が“地中の中に存在”を知らせた。

 

「単なる地震じゃない! アマゾンだ!」

 

「多分、いや結構デカいヤツが来る!」

 

2人の言葉に肯定でもするかのようにソレは、土煙と土砂を噴水のように巻き上げ現れた。

 

『◾︎◾︎◾︎……』

 

 それを目にした13部隊は全員、誰1人としてソレが『アマゾンなのか?』という疑問と『アマゾンじゃない』という否定の、二つの感情を持たずにはいられなかった。

 いや、正確に言えばミツルとココロだけは前に一度目の前のソレに近い存在を見たことがあるので

、それなりに耐性はあったものの、やはりソレをアマゾンとして見るには規格外過ぎた。

 ソレは、独特の電子音にも聞こえる鳴き声を発し、身体は無数の小さな突起が溢れるように上半身の全体表を覆う赤黒い外骨格が形成されており、脚は計6本。その内の前方二脚はカマキリのような鎌の形状をしており、残りの脚と比べても断然長い。

 一般的な人型ではなく、昆虫に分類される蟻と形態の特徴が非常に似通っているが下半身……正確に言えば尻部の所。そこは上半身の数百倍はあろうかと言うほどにブヨブヨと芋虫の如く膨れ上がっており、後ろから見ればもはや蠢く白い肉塊にしか見えない。

 そして、極めつけはその大きさである。コドモたちや2人のアマゾンと比較して見ると一目瞭然で、ゆうに8mもある。

 

「アマゾンには、肉体が一度無数の細胞として分解する形で休眠する性質のものがある」

 

 スタークは、現れたアマゾンの巨体を見上げながら言葉を紡ぐ。ご丁寧に解説してくれるようだ。

 

「ここには、その状態で眠ってる蟻のアマゾンがいたんだ。それを今さっきのエネルギー波で活性化。呼び覚ましたって寸法さ」

 

 蟻のアマゾンって言っても、女王蟻だけどね。

 

 そんな言葉を付け加えて、スタークは余裕をもってトランススチームガンの銃口を天へと掲げ、引き金をひく。

 

「僕の野暮用はもう済んでるんだ。キミたちの実力もデータとして手に入れられた以上、ここにいる必要はないからね。チャオ♪」

 

 銃口から黙々と吹き出す蒸気に身を包まれたスタークは、蒸気が晴れると共に彼女の姿も消え去っていた。去り際の言葉を残し、この場からのうのうと逃げ果せた事実にアルファの中で苛立ちが募るが今はこの女王蟻のアマゾンをどうにかする方が大事である為、すぐさま思考を切り替える。

 

「ハァァァァァッッッ!!」

 

 イプシロンは既に攻撃を仕掛けており、渾身の力を乗せた拳でアリアマゾンの尻部を攻撃。

 が、予想外の弾力によって拳の威力が半減どころかそれ以下にまで下回り、そのまま跳ね返してしまう。どうやら単純に柔らかいだけでなく、異様な弾力性であらゆる衝撃を吸収・吐き出せる性質を持っているようだ。

 

「チィッ! 柔らかいだけじゃないのか!」

 

「曲がりなりにもアマゾンだからな。厄介な特性なんざ常套句だ」

 

 苛立ちを隠さず舌打ちを鳴らすイプシロンにアルファがそう嗜める。しかし今のように素手や足を用いた格闘における打撃技が意味を成さない以上、実践可能という条件を考えた上で与えられるであろう有効打は『アームカッターでの斬撃・切断』か、もしくは『ギガを用いた戦法』。いずれかだろう。

 

「聞けヒロ。多分、殴る蹴るの打撃技は通用しない」

 

「なら、どう、するんですか!」

 

 自身の目の前に立つアルファとイプシロンを狩ろうと、アリアマゾンはそのおぞましい肉塊の尻部の先端……産出孔から己の子であり、手足であり、戦闘可能な兵士であるワーカーのアリアマゾンを捻り出していく。

 その間、産出を邪魔されぬよう大きく鈍重とは思えない素早さで鎌を振り回す。高速で振るわれる鎌を優れた動体視力で回避していく2人だが、両者には明確な差が出ていた。

 アルファは余裕をもって無駄のない動きで回避していくのに対し、イプシロンは当たらないようにしなければ!という、ある種の焦りから本能的な動きで女王アリアマゾンの鎌を避けている。

 しかし焦燥もそうだが何であれ、強い感情に縛られての行動は無駄が出やすくミスを起こしやすくなる。

 

「ちっとは落ち着けって。こんなもん、速いだけで単調だぞ」

 

「いや、刃さん基準で言われても…ウオッ!」

 

 擦れ擦れに迫っていた鎌を咄嗟に避ける。

 

 やはりイプシロンには荷が重いようだ。

 

 女王蟻のアリアマゾンは、確かに脚の速度や動き自体は全てにおいて単調ではあるものの、代わりに獲物を仕留める為の両鎌の繰り出される速度は早い。その仕組みは三つに分かれた脚のパーツの内、第2と第3の節の間に半流体化した、しなやかに伸び縮みする特殊筋肉にある。

 この筋肉から瞬発力を生み出し、あの高速の攻撃を繰り出せる訳だ。

 

「……おっと、コイツらもいたな」

 

 女王蟻のアリアマゾンから産出された子達である彼等、ワーカーのアリアマゾンたちだ。

 スタークに襲いかかった個体と同じ姿ではあるものの、しかし彼等の場合、自らの口部から吐き出した液体で剣や槍などを生成。その剣先と矛先を2人に向けている。

 

「感じ取れるギガから察するとランクD。ま、ザコだな」

 

「ハァ、ハァ、次から次にッ!」

 

 女王蟻のアリアマゾンによる高速攻撃が止んだと思えば、次はワーカーのアリアマゾンの近衛部隊。軽く息切れを起こし文句も言いつつも、イプシロンはアームカッターを構え迎撃態勢を取る。

 

「よし、コイツらはお前に任せる。俺はあのデカブツをやる」

 

 返答を待たず、勝手に決めたアルファは高く舞い上がる。自慢の足を使っての跳躍だ。

 

「あ、ちょっ、……はぁぁ。仕方ないな!」

 

 言ってもどうにもならない。イプシロンは、そんな自己判断を下すと構えを直し、一気にワーカーの近衛部隊めがけ駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリアマゾンの群れへと駆ける際、胸の内に脈打つ黒い衝動を感じながら……。

 

 

 

 

 

 

 







先週の日曜にプロメアを見てきましたが、いや、もう最高でした!

万人向け、とはいかずとも過去にグレンラガンやキルラキルを見て『面白い!』と
感じた方にオススメです。グレンラガンのような疾走感と興奮あふれる熱さ。
魅力溢れるキャラクターとそれを最大限に生かす声優さんたちの演技力。

本当に面白かったですから、ぜひ興味があれば映画館へ!


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