ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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ジオウも残り僅かの話数……時の王にして平成最後の仮面ライダーはいったい何を見て
、何を選択するのか。


コロニー・ザ・アマゾン~アマゾネスト計画、始動~
コロニーへの来訪


 

 コロニー。言わずと知れたAEPが統括する移動要塞都市プランテーションとは対を成す旧人類の居住地である。AEPからすれば、アマゾンに関する方面では色々世話になり、コロニー側は資材や技術提供の恩恵に肖っている為、相互利関係にあると言ってもいい両者だがそれは表向きに過ぎない。

 実際は水面下において政治的に牽制し合っているのだ。AEPは害獣であるアマゾンを駆逐する為の戦力・人材・他諸々を手にしたいが故に同盟という形からコロニーを取り込もうとし、逆にコロニーは愛想を振りまきつつ、そうはさせまいと睨みを利かせている。その一環としてAEPでの有力な発言権と立場を持つ重鎮フランクス博士との間に密かにパイプを作り、その手引きでスパイを何名か送り込みAEPの内情を探らせているなど、可能な限りに手を忍ばせているのだ。

 そのスパイの一人に対アマゾンの協力者である鷹山も入ってはいるが本人にその自覚はなく、あくまで個人の意思で13部隊を見守り、共に暮らしているに過ぎない。鷹山とは、そういう男だ。それを上も重々理解しているらしく特に4Cの局長であるヴォルフ=ネロは良き理解者でもある為、多少は目を瞑っている。

 とは言え、自分の立場を考えているのか一応情報を送ってはいる。あくまで13部隊に関するものが殆どで、その内容はコロニー側から見て非常に他愛なく果てしなくどうでもいい類の日常の世間話レベルのものだが。それでもグランクレバス攻略作戦に関してのみで言えば、唯一まともで有意義な情報と言えるだろう。ともあれ、そのコロニーを目指し13都市のプランテーションは速度を加速させつつ向かっていた。

 

「コロニーに、ですか?」

 

ブリーディングルームではハチとナナ、鷹山が揃い13部隊全員が着席する形で集まっている。当然だがゼロツーもいる。

 

「そうだ。最近になってコロニーで叫竜の目撃例が頻発している。本来であればマグマ燃料のあるプランテーションを狙う筈がどういう訳か、コロニーの周辺に出現し、物資を積んだ移送部隊を襲うなどの被害を与えている。勿論、その物資がマグマ燃料ということはない」

 

 叫竜はマグマ燃料に惹かれる性質を持つ。これはガーデンの頃、口酸っぱく徹底的に教わった叫竜の習性であり常識だ。今回説明された事例はそれを覆す異例の現象に他ならない。

 

「現在、この都市が進路上コロニーを通る為、コロニーの要請に従い我々が叫竜討伐の任を負うことになった」

 

「って、ことはコロニーに行くってことっすか! 刃さんの生まれ故郷に!」

 

 ハチの説明から導き出された答えにゾロメは興奮した様子でそう言うが、そこにきちんとナナが釘を刺して来た。

 

「言っておくけど勝手な行動はダメよ。コロニーの最高責任者並びその関係者には挨拶として行くけど、あくまで挨拶としてで、観光ではないの。そこだけはきちんと覚えておいて」

 

 厳粛なナナの言葉にテンションを一気に落とすゾロメは渋々、と言った様子で大人しく引き下がる。

 

「では各自、目的地到着までの間は自由待機とする。以上だ」

 

 それだけを述べたハチは解散を告げ、各々がブリーディングルームを後に去って行くイチゴも部屋に戻ろうとするのだが、その手を誰かが掴む。

 

「ちょっといいかな? イチゴ♪」

 

「な、なにってきゃぁッ!」

 

 有無を言わせずそのまま強引に引っ張って行くゼロツー。そんな二人を後ろから見ていたヒロとゴローは当然ながら疑問符を浮かべる。

 

「ゼロツー? なんでイチゴを」

 

「女子同士の親睦的交流ってところか?」

 

 親睦と呼べるほどイチゴとゼロツーの仲は良好かと問われると微妙だと答えざる得ない。然程接点が多かった訳ではないし、とは言え、険悪と呼べるほど悪くはない為あくまで微妙なラインなのだ。

 そんな男子二人など意に介さず、走るペースを段々と上げるゼロツー。それに引っ張られ嫌を言う暇なく付き合わされるイチゴは荒い呼吸を吐き出し、苦労の色を見せていた。しばし走っていた二人だが、エレベーターに乗り込んだことでイチゴはやっと強制ランニングから解放されて膝を折ってそこに手を当てて、ゼェーゼェーと何度も呼吸を整える。

 やはり呼吸は荒く、キツかったのは明白だ。

 

「ありゃ。そんなにキツかった? この程度ボクは全然大丈夫なんだけどな〜」

 

「ゼェー、ゼェー、ハァ、ハァ、ハァ、……な、何なのよ。一体何のつもり?!」

 

 ようやっと息を整え、まず言葉にした開口一番はゼロツーへの問い詰めだった。確かに有無を言わさず、強引にこんな事をしたゼロツーに非があるのは明らかだ。さすがに悪いと思ったのか。ゼロツーは両手を合わせて頭を下げる。俗に言う『ゴメン』のポーズだ。

 

「ごめんごめん。ちょ〜っと聞きたいことがあったからさ」

 

「聞きたいこと?」

 

 一体何の事なのか。そう思わずにはいられないイチゴの心境を汲み取るかのようにゼロツーは、彼女に耳打ちするように囁いた。

 

「キス、したの? ダーリンと」

 

「!!ッ」

 

 途端、心臓が一気に跳ね上がるような感覚を嫌でも感じた。そんなイチゴの動揺に対しゼロツーは笑みを浮かべたままではあるが、少し目を細め確信を得たとばかりの表情を作る。とは言え、その様子は責めるつもりは一切ない様に見える。

 

「フフ、否定してた割りにはやっちゃうんだね〜イチゴも」

 

「……それは」

 

 必死に何か弁明しようとするが中々言葉が出ず、それ以前に弁明の内容が浮かんで来ない。頭の回転を早くしようとも明確で、理に適った物が思い浮かばない。

 

 ポォン。

 

 そうこうしている間にエレベーターが最上階……すなわちコドモ達の住むミストルティンへと到着した。

 

「安心してよ。確かめたかっただけで咎めやしないさ」

 

 そう言ってイチゴに背を向け、開いたドアへと足を数歩進ませて降りるゼロツーは最後にとばかりにイチゴのいる後ろへと振り返り言った。

 

「ダーリンがキミにとって特別な好きなのは見てたら分かるよ。けど、譲るつもりはないよ?」

 

 それだけを言い残し、去って行くゼロツーの背を見送りつつ彼女の言葉を心中で反芻しては、イチゴは無意識に手に力を込め、スカートをギュッと握り締めた……。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

「あ、ミツル君!」

 

「……なんですか、それ」

 

 ミストルティンの温室。様々な花々が群生するここによく来るのはココロだが、最近になってミツルも訪れるようになり、今日も訪れた訳なのだが珍しく彼女は花の世話ではなく、本を読んでいた。

 ただその本を見る限り図書室に置いてあるような代物ではなかったが、ミツルには本の表紙に見覚えがあった。ココロと赴いたあの廃墟で彼女が拾った本によく似ているのだ。

 

「まさか、そのまま持って来たんですか?」

 

「これは……その……」

 

 ミツルの指摘にココロは、さながら悪行がバレた犯罪者のような罪悪感と後ろめたさ

、それらが織り混ざった表情で、しどろもどろと。歯切れ悪そうな様子を醸し出す。

 この反応は当然だ。

 コドモはオトナから教えられた事以外の知識を得たり、それに関与するなどの行為が絶対的に禁止されている。その厳戒な規律を破り、こうして外から持って来た書物に目を通し未知の知識に触れようなど、あってはならない。それを理解しているからこそココロは怯えたソレに近い感情と行動を見せているのだ。しかしそれは、すぐに杞憂に終わった。

 

「何か勘違いしているようですけど、別に貴方の事を誰かに言うつもりはありませんよ」

 

「え?」

 

「なんの得にもなりませんし、他人の事にいちいち気にかける程僕は暇人じゃない」

 

 それだけを言い残し、ミツルは去ろうとする。元より一人で物思いに耽りたいが為にここへ訪れたのであれば、ココロの存在があっては意味が無いのでこのまま出ようとするが、そんな彼の手を掴む形で引き止めたのは、当たり前ながらココロ以外にいなかった。

 

「……な、なんですか?」

 

「お礼、いいかな?」

 

 突然だった為か、少し戸惑い気味に言うミツルにココロは、少しはにかむ様子はあったものの、明るい太陽の笑顔でそんな事を言い出した。お礼……と言っても大層なものなど用意できる訳もなかった為、そもそもこの提案も行き当たりばったりの突発的企画なのだ。故に大層な物どころか何一つないのが現状である。そんな中でココロはとりあえず自分が面白い話をしよう、と言う微妙で奇天烈な提案を新たに打ち立てた。

 

 ……何故そう思い至ったのかは謎だが。

 

 しかし一番の謎はミツルだろう。本来であれば

訳が分からない、下らないなどと言って去る筈がココロの要望に従い文句すらなかったのだ。これに関しては本人もよく分かっておらず、むしろミツル自身が知りたい位だった。

 

 こうなった以上はさっさと終わらそう。

 

 そんな思いを抱きながらミツルはパイプ椅子に座り、同じように座っているココロと面と面を向かい合わせた。

 

「で、なんですか面白い話って」

 

 まず、面白い話と言ってもどのような内容なのか。ミツルはまず始めにそう問いかけるのだが、とうのココロはどうも言いにくそうな雰囲気を醸し出し始めた。

 

「お、面白い話と言うか……聞きたかったこと、かな?」

 

「何をですか?」

 

 なら初めからそう言えばいいのに。そう思いつつも言葉には出さず、とりあえずは

耳を傾ける。

 

「ミツル君は、その、小さい時に私に仲直りの仕方教えてくれたの覚えてる?」

 

 仲直り? 温厚で優しく、大抵なら誰とでも合わせられる彼女が喧嘩したことでもあるのか? そんな疑問がミツルの中で生じるのだが、それ以上に驚きなのが自分がココロに仲直りの方法を教えた、という一点。ミツルにとって昔の事はあまり思い出したくないことだらけだ。元より他と比べて適正値が低く、しかし時期的な人数合わせの理由から早々に捨てられることなかったミツルだがその代わり、他のコドモが受ける通常訓練の数倍過酷な訓練を強いられ、更には命に関わる危険な薬品の使用による強化訓練までさせられていたのだ。

 

他の誰よりも劣っているから。

 

 たったそれだけの、その一つだけの理由で苦痛を強いられる幼少時代だったのだ。しかし苦痛も困難も全てを乗り越えた。ミツルをそこまでさせたのは当時憧れていたヒロとの約束。それを糧に、今に至ることができたと言っても過言ではない。

 

 だが、今は……。

 

「ミツル君?」

 

 ココロの問いを投げるような言葉にハッとし、自分が深い思考の沼に囚われていた事に気付いた。

 

「……な、なんでもありません」

 

 心配した様子で見て来るココロの視線から逃れたいが為に少し逸らして、自身が何の問題もない事を告げたミツルはココロの質問に答える。

 

「小さい頃のことは、多いほど覚えていません。生憎ですがそんな記憶もありませんよ」

 

 あくまで冷たく、そっけなく言うミツルに寂寥を含ませた苦笑を浮かべたココロはそれが望んだ答えでなくとも、言葉を紡ぐ。

 

「ミツル君は覚えてなくても、私は覚えてるよ。些細なことでミクと喧嘩しちゃった私に、ミツル君は優しく気にかけてくれた」

 

「……」

 

「それだけじゃなくて、きちんと謝り方を教えてくれたんだよ」

 

「……言いたいことは、それだけですか?」

 

 やはり依然として変わらない冷淡な態度で言い残すミツルは、これ以上は無駄だとでも思ったのか。椅子から立ち上がり温室を出ようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カシャッ。

 

「「!ッ」」

 

 突然二人の耳に届いたシャッターを切る音。

 もし誰かがカメラを持って写真を撮っているとするのなら、何故気がつかなかったのだろうか。そんな疑問が頭を掠めるがそれよりも先に視線が音のした方向へと行き、二人は振り返る。

 

「おっと邪魔したか? まぁ気にするな。続けて構わんぞ」

 

 そこに立っていたのは、フランクス博士や鷹山のように白衣を着た一人のオトナの男

。その手にはマゼンダ色のトイカメラを持ち、温室の花たちを写真として切り取っていた。

 

「誰ですか。ここはミストルティンですよ?」

 

「ああ。知ってる。だがここは下の殺風景で風情のへったくれもない場所とは違くてな。写真を撮るには丁度いい」

 

 男は何とでもないかのようにそう言うが、本当に都市のオトナのなのか? この男の言い草ではまるで彼にとって下にある都市が無価値なものとでも言いたいばかりの物言いだ。ふと疑いが沸き起こる。

 ヴィスト・ネクロのスパイではないか、と。

 

「スパイとは。これまた心外だな」

 

 そんな心の中に生じた思考を読み取るように彼は言ってのけた。

 

「!ッ」

 

「おっ? その反応を見るに図星か?」

 

 まさか自分の考えを容易く読まれるとは思ってなかったミツルは、明から様な驚きぶりを披露してしまった。そんな彼に男はニヤリと指摘し、茶化したような笑みを浮かべる。

 

「貴方は、一体何者なんですか!!」

 

 コケにされた事に大層ご立腹とばかりに声を張り上げて問い質したミツルに、男は一枚のオレンジ色に淡く光るカードを見せた。それは紛れもなくこの男がこの13都市におけるオトナが持つ証明書だった。

 

「……え、えーっと……かどや、つかさ?」

 

その証明書に宛てがわれた名前の欄にある名を、ミクが読み上げる。

 

「正解だ。Code556……いやココロと呼んだ方が俺としてはいいな」

 

 門矢士。あまり使われていない漢字で書かれた男自身を指すその名を、間違いなく的確に言い当てたココロを軽く賞賛し、何と彼は識別番号ではなく名前で呼んだ。

オトナなら知っていてもまずそうは呼ばないのが常識なのだが…どうにもこの門矢士という男は普通や常識と言った枠に当て嵌まるような人間ではないらしい。

 ただ一目見るだけで、そう言われれば納得してしまう雰囲気がそれを助長しているせいだろうか。

 

「あ、私のあだ名……」

 

 思わず、とばかりにココロが驚いた様子で言葉を零した。

 

「ん? ああそうか。ここじゃオトナはコドモのことを番号で呼んで、名前で呼ばないんだったっけか?」

 

 ココロが驚いている理由は単に士が知らない筈の自分のあだ名を知っていた事も勿論あるだろうが、それ以上に軽く驚きだったのがあだ名を呼んだことだ。オトナ……しかも研究機関に携わっている役職の人物であれば、その程度の情報は知っていてもおかしくはない。現に証明書のカードには役職欄に13都市専属研究員とあった事から間違いないだろう。

 しかし、知られていてもオトナに名前で呼ばれるなど一切なかった。それが物心ついた時から既に当たり前な事で、誰もそれを指摘することはなく、ただ受け入れていた。

ヒロがコドモたちの中で異彩を放ち、際立ち始めた頃。名前遊びが広がった時も相変わらず、オトナたちをコドモらを番号でしか呼ばなかった。そんなオトナの一人であろう門矢士という男が番号ではなく名前で呼び、それを好ましいと言うのだ。

 普通ならば有り得ない。だからこその驚きだったのだ。

 

「だいたい撮り終わったか。じゃあな」

 

 どうやらもう用は無くなったらしく、無いのであればさっさと出るとでも言わんばかりに自由気ままな態度で温室を出て行く士。言うだけ言っておいて、気分一つでさっさと行ってしまう。そんな彼の異常な一連の流れに頭が痛くなる感覚がズキリと疼くミツル。

 そんな彼とは対照的にココロは単純におかしな人、と言う判定をこっそりとしていた

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、すごい……」

 

 都市を囲む30mの白い壁。それを前にしてヒロが無意識に感嘆めいた言葉を漏らす。壁は長方形を呈し、コロニーの都市面積の2,198km全てを計150枚の壁が囲い込み、侵入者を阻む障害として、その存在感を発揮している。

 更にこの壁には人間・アマゾン双方に有効な高圧電流が駆け巡っており、不用意に触れればアマゾンはともかく人間は忽ち黒焦げになって命を落とすだろう。無論、都市住民の事も考え内部にはフェンスが設けられ巡回のC4隊員が見張っているので、よっぽどの事がない限り事故は起きないし、過去にそういった例は未だ無い為問題ないだろう

 ともあれ都市に配備された計4つあるゲートの内13部隊は正門からコロニー内部へと入ることになり、丸みを帯びた山状の形をした鉄扉の門の前で配備された警備隊員らの隊長とハチ、ナナ、鷹山の4人で入る前にアポイントメントの確認をしており13部隊はセレモニーの時と同じ格好で終わるのを待っていた。

 

「確認が取れました。入ってすぐに車を待機させていますので、それに乗って頂き我々が案内します。それと、コロニー内のいかなる場所であろうと対アマゾンにおける戦闘行為は我々4Cの管轄権限。万が一の事を考えてアマゾンズドライバーの所持は許可しますが、あくまでアマゾンに対しての逃走・避難が不可能と判断された場合のみとします。そこはあしからずに」

 

「分かりました。ありがとう」

 

ナナは警備隊の隊長である男とそんな会話を交わし、13部隊のコドモたちへと振り返る。

 

「さっ、行きましょ」

 

 重く閉ざされた鉄扉が重低音を奏でながら自動で開いていき、やがて完全に開き切る

。コロニーというコドモたちにとっては未開の地に等しい場所を見て何を思うのか。まず我先にとばかりに一番に声を上げたのは、やはりと言うか自己主張がこの部隊の中でも際立っているゾロメだった。

 

「ほぁぁ……なんかスゲーな」

 

 アマゾンの駆除任務の際、初めてオトナの都市に行った時と比べてテンションに差はあるものの、大分驚いているのは違いなかった。オトナの住む都市の建物とは違い、白やグレー、あるいは赤に近い色彩に染まり、形は同じく長方形が主だが大きさは同等のものがあれば、13都市の建物を多少追い越すものなど様々。

 そんな光景を目に収めつつ、13部隊は言われていた通りすぐそこにあった計7台の黒塗りで四角い形状の装甲輸送車に乗り込み、付き添いの3人も乗った事を確認した後は大した時間を要する事なくエンジンを吹かせ発進。

 AEP関係者を乗せた1台を残りの6台が左右囲むような配置を維持しつつ、並走する形で出発することとなった。

 

「なんか、すっげー賑わってんな」

 

「前に見たオトナの都市の街中は結構静かだったけど……」

 

 輸送車内部は座席が運転席前方を向くよう設置されており、2列順で数は左右全部で20席。小窓もあり特殊強化ガラスに加えて特殊防護繊維で構成された針金が固定されている為、窓を狙った攻撃への安全は性能的に優秀と言えるだろう。

 そこから見える景色はと言うと、街を行き交っている人々が大勢いて、様々な目的で店売営業している店舗で用を足す者や親しい誰かと手を取り合って歩く者。遊んで楽しんだり、色々なことをしている人々の光景がそこにはあり、その全てが車の勢いによって過ぎ去っていく。

 それに対し、ふと零したゾロメとイチゴの言葉がコレだった。

 

 

「……隊長さんよ。警備を付けるのは至極当然なんだが、ちっとばかし厳重過ぎないか?」

 

 コドモたちの座っている席の前方の席に座っていた鷹山は、向こう側の自分と同じ位置の席に座る隊長の男にやや訝しげな視線を送り問いを投げた。

 

「上の判断です。それについては到着した後、ヴォルフさんが説明を

 

「所長直々にか」

 

 ヴォルフ=ネロ。アマゾンが関与する事件に対処し、治安を守る保安組織『C4』の所長である彼は鷹山とは旧知の仲で、AEPへ叫竜の対策依頼を要請した人物。これから13部隊が挨拶に伺う統制委員会のメンバーと共に所長もいるらしく、詳しい説明をするようだ。

 

「!!ッ どうした?」

 

 突如、輸送車が急ブレーキをかけて運転を停止するという事態が発生し、運転席で運転していた隊員に隊長が状況を説明するよう問い質す。

 

「それが道路上に不審者が……」

 

「不審者だと?」

 

 疑問と怪訝な感情を含めた顔で座席から立ち上がった隊長は、運転席が覗ける小窓からフロントガラスの向こう側に存在する運転手の言う、1人の不審者を視認できた。

 まるで装甲車の行く手を塞ぐようにして道路に立っており、黒い布状の衣類で全身を顔を含め何もかも隠している為、一目見た程度ではその性別を確認できない。

 

「そんなもの、さっさと…」

 

 隊長が対処するように言おうとした時、鷹山が制止の声をかける。

 

「待て。下手に出るなよ……」

 

 有無を言わせない威圧を込めて紡がれた言葉に隊長は何も言えず、そして鷹山刃圭介がどういった人間なのかを伝聞とは言え聞き及んでいたが故に素直に鷹山の言葉に従った。その瞬間、まるで風を切る音と共に装甲輸送車が上下に分かれるように一筋の線が奔り、車体は爆炎と煙に包み込む。

 

「「キャアアッ!!」」

 

「え、何ッ?!」

 

「な、ななんで爆発するんですか?!」

 

 突然の大きな音にココロとミクは驚き、フトシは上手く状況を飲み込めず、ゾロメに至ってはフトシと同じようなものだがそれに付け足して混乱している有様だった。

 

「もしかして……ヴィスト・ネクロの襲撃!」

 

 しかし幾分かは余裕を持っていたイクノは突然の事態に取り乱すことなく、ヴィスト

・ネクロの襲撃ではないかと予測を組み立てた。

 

「だとしたら対処できるのは」

 

「俺と刃さんしかいない!」

 

 イチゴの言葉にヒロが即座に答え、既に万が一に備えて用意していたアマゾンズドライバーのベルトを腰に装着する。

 

「しゃーねぇ。みんな安全な場所に避難しとけよ」

 

 刃も同様にアマゾンズドライバーを腰に付け、隊長にドアを開けるよう指示する。

 

「相当な手練れだ。俺とコイツでなんとかするから、お前らはみんなの避難頼んだ」

 

「し、しかし! アマゾンズドライバーの使用と戦闘の許可が…」

 

「返事はァァッ?!」

 

「は、はい!」

 

 思わぬ一喝を喰らってしまった運転手はドアが開けてしまい、隊長も何か言おうとはしたものの、鷹山の鋭く威圧を込めた視線を喰らい止める事叶わず。そんな彼等を尻目にヒロが一番に外へと飛び出し、続いて鷹山も外へ出ようとした時。

 

「刃!」

 

ナナが声をかけた。

 

「……あんまり無茶しないで」

 

「ああ。分かってるよナナさん」

 

 しっかりナナと顔を見合わせて、鷹山は笑顔でそう返し、敵が待つ外へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

「アレがこの世界の仮面ライダーか」

 

 そんな独り言を零すのは13部隊を乗せた輸送車の襲撃という、緊急事態の現場を近くのビルから眺める一人の男。AEP専属研究員の門矢士だった。着ていた白衣を脱ぎ捨て、下は相変わらずマゼンタ色のシャツだが上は黒のスーツを羽織っている。

 そんな彼は研究員であるにも関わらず、しかも、パスを通っていない不正入国に等しい状態。下手すれば捕まってもおかしくないのだが今の所はバレてないらしい。

 

 もっとも……“捕まえた所で意味はないが”。

 

「まずは実力を拝見…といこうか」

 

 士はそう言って、特に何も行動を起こさず眼下で今まさに始まろうとしている戦いに傲岸不遜を絵に描いたような笑みを浮かべ、ただ見下ろすだけだった……。

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 襲撃の姿は相変わらず布状のもので全身を覆い、頭部をフードで隠している為、顔を確認することはできず。性別すら分からない。

 

「いきなり襲撃とはご挨拶だなぁオイ」

 

 そんな正体不明の不気味な人物に鷹山は言葉に威圧を乗せて話しかける。

 

「アマゾンアルファ並びにアマゾンイプシロンの両名を確認。戦闘に移行」

 

 鷹山の言葉に返すことなく、2人を知っているかのような独り言を発した瞬間、謎の人物は身に付けていたものを刹那の間に脱ぎ捨てると共に2人に接近。曝け出したその姿は……アマゾン・アルファを漆黒に染めたような1匹のアマゾンだった。

 

「!ッ」

 

 驚くよりも先に鷹山は自身の戦闘経験によって培われ、研ぎ澄まされた感覚が無意識に反応し、すぐに横へスライド。そうすることで振るわれた漆黒のアマゾンの拳を一欠片の掠りも受けずに回避できた。ヒロは持ち前のアマゾンとしての感覚から本能的に後方へと飛び退くことで当たらずに済んだ。

 

「「アマゾン!」」

 

 その間、腰に巻きつけたアマゾンズドライバーのグリップを握る事を忘れず並行して行った事で2人は掛け声と共にその身を赤と緑の蒸気又は炎の如きオーラに身を包み、一撃の蹴りと拳を漆黒のアマゾンに向け放つと同時にアルファとイプシロンへ姿を変えた。

 

「無駄だ」

 

 アルファが放つ、鳩尾を狙った膝蹴り。そしてイプシロンが繰り出す頭部へ狙いを定めたストレートパンチ。しかし、それらを黒いアマゾンは一言で切り捨てると同時に膝蹴りを右手の平で掴むように、そしてストレートパンチを前腕部位で防いでしまった。

 

「んだとッ?!」

 

「! グッ!」

 

 アルファとイプシロンは驚愕を隠せず声に出した。ただ、それは単純に攻撃を防がれた事実ではなく、漆黒のアマゾンの“背中から伸びる触手”がアルファの脚とイプシロンの腕を絡めたからだ。

 しかも、アルファにはソレに見覚えがあった。その触手はオトナの都市での戦いで現れたあのイソギンチャクのアマゾン……その触手とほぼ同じだったのだ。

 

「殲滅。敵を、殲滅」

 

 何故だ。どうしてなんだ。

 そんな疑問を頭の中で思い浮かび考察する余裕などなかった。繰り返し言う無機質な言葉と共に、触手と接触している2人の部位から“ソレ”は察知される事なくアルファとイプシロンの体内へと送り込まれた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








今回は少し長めに書きました……その分、労力も……(-_-;)

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