一月と遅くなってすみません(−_−;)
この回含めて2話分ほどストックができましたので、投稿します。
「…………ん、うっ、……ここは?」
深い暗闇から浮上するかのように覚醒を果たしたヒロは、ゆっくり上半身を起こし周囲を見渡す。患者の為の設備を整えた病室という事だけは、雰囲気や置かれている物などを見て何となく把握できた。
ただ何故自分がここのベッドで寝ていたのか。
それが分からなかった。
ガチャ。
何とか思考を巡らせ答えを得ようとした矢先、丁度目の前から見て左側にあるドアが音を立てて開き、誰かが入って来た。
「気付きましたか!」
見れば鷹山と同じ白衣を身に纏い、その下には黒いスーツを着ている黒髪のショートヘアをした女性だった。
「具合は? 何か不調はありますか? この指が何本に見えますか?」
ヒロから見て女性は全く面識がなく、見ず知らずの人物によるいきなり質問攻めを食らってしまったヒロは戸惑いを覚えつつも『何ともない』と告げた。
視覚も問題なく、女性がピンと立てた一本の人差し指を見ても一本にしか見えず、体調もさることながら視覚に関しても異常はなかった。
「あ、あの。ここって……」
「あ、失礼しました! ここはコロニーのアマゾン専門の医療機関です! 私はここに勤めている医師の者で『咲本カエデ』と言います」
「どうも……」
「何故ここにいるのか、前後の出来事を覚えていますか?」
そう言われて頭の中の記憶を遡る形で整理していく内、ヒロは思い出した。
あのアルファに似た謎の黒いアマゾンと戦い、倒した後に身体中に激痛と高熱が生じ、そのまま意識を失って倒れた事を。
「じ、刃さんは! 大丈夫なんですか?!」
自身の記憶が正しければあの時、鷹山も同じ様に苦しみ出した筈。安否を問うヒロにカエデと名乗る女性は微笑んで答えた。
「大丈夫ですよ。鷹山刃圭介さんのことですよね? あの人なら貴方より先に意識が回復して別の病室にいますよ」
それを聞いてホッとした。自分が今、この瞬間生きているように鷹山もそうなっているとは限らないからだ。
実際ヒロも死の淵を彷徨っていた為、下手すればそのまま目覚める事なく呼吸を停止させ永遠の眠りへ着きかねなかった。
そうならずにいられたのは医療スタッフの懸命な処置とヒロ自身の生命力が成せた業である。
ともあれ自分だけでなく鷹山も助かったという安堵に疲労を込めた吐息を一つ零したヒロは、自分が意識を失った時のその後……あの黒いアマゾンはどうなったのか。それについて問いを投げかけた。
「あの後……どうなったのか教えて貰えますか?」
「え? ご、ごめんなさい。私は貴方が特別な事情でAPEから来た子供ってことしか聞かされてないから……」
どうやらカエデは詳しい情報を知らされておらず、突然の質問に困惑している様子を見せた。
「そうですか……突然質問して来てすみません」
謝罪を送るヒロにカエデは両手を振って、気にしてない、というジェスチャー付きで答える。
「いえいえ、大丈夫ですよ。とりあえず、今はまだ安静にしていて下さい。一応念の為に触診を……」
「その必要はない」
カツカツと意図的に足音を鳴らし、見るからに尊大でやや傲岸とも取れる威圧的な雰囲気で入って来たのは一人の男性。
新たに現れた人物もまたヒロにしてみれば初対面なのだが、ココロとミツルがこの場にいれば即座に反応を示しただろう。
そう、門矢士。紛れもなく彼だった。
「士さん」
「よぉ。調子は? どこか痛みは?」
「あ、だ、大丈夫です。ほら……」
そう言ってベッドから立ち上がろうとヒロだが、いざ立とうと身体に力入れた途端、つい先程までなかった激痛が全身を駆け巡った。
「グゥッ! アアァッ!!」
苦悶の声を漏らしそのまま床へ倒れ込んでしまったヒロに、逸早く反応したカエデはすぐさま介抱した。対照的に士はあくまでも冷静に見ているだけで、特に慌てた様子は見せず、納得がいったとばかりに言葉を紡ぐ。
「なるほど。回復はしているが完全じゃなさそうだな。全身筋肉痛…
…ってところか」
士の推測通り、今感じている激痛の出所はほぼ全身で、故にその分、痛みが半端ない。
「この分だと内臓にもダメージあるかもな」
「ちょっと士さん! 手伝って下さい!」
淡々と観察眼から得られた情報を下にヒロの容態を診察していくが
、カエデが非難の声を上げる。確かに『医師』として診察も大事だが患者に気を止めず……と言うのはあまり良い印象を受けられるものではない。
言われて渋々だが介抱を手伝い、ヒロをベッドへと戻した。
「もう、少しは患者の事を気にかけて下さい!」
「その内善処する」
取りつく島もないとは、まさにこの事か。
口で善処すると言いつつ、その前にある“その内”という言葉が彼の適当さを物語っていた。
「はぁぁ。で、何しに来たんですか?」
「なに。そいつに聞きたい事があってな。ああ
、それとお前に婦長の呼び出しが来てるぞ」
言葉だけ聞き取れば伝言を賜ったから伝えに来た、という態に見えるが実際は大きく異なる。
まるで動物相手にこっち来るなと言わんばかりのシッシと手を仰ぐジェスチャーで無駄口も何も言わずにさっさと行け、と。
如実に物語っていた。
「……あー、そうですか。一応言っておきますけど、変なことしないで下さいよ?」
「俺にそう言った趣味はないから安心しとけ」
ジト目で睨んでは遠回しに士をそういった性癖の人間扱いして蔑むが、当の本人はカエデの言葉が本心でない事を察している為か、単にそう言って切り捨てるだけだった。
「それじゃ、ちょっと所用で行っちゃうけど、士さんがいるから聞きたい事は何でも聞いてね。まぁ、この人かなり怪しくてアレかもしれないけど一応安心はできるから。じゃあね」
「一言多い。さっさと行け」
そう言い残し、士に睨まれつつ病室を後にするカエデの背中を見送りながら改めてヒロは士へと視線を移す。
やはり、何度見てもこの男性に対して見覚えはない。なら聞きたい事とは一体何なのか。ヒロの中に疑問が生じるが自身の容態に関する話かと踏んだ。ここはコロニーの病院施設。
より正確に言うとアマゾン専門の物だ。先ほどのカエデが看護婦である事を踏まえれば、医師がいても不思議ではない。
そして、その医師が士なのだろう。
そこまで結論付け、ヒロは士に言葉を投げかけた。
「あの〜、聞きたい事って俺の容態について、ですか?」
「いや違う。お前というアマゾンライダーについて興味があった……とでもいいか?」
ドクン。
そんな鼓動の拍子と共に思わず心臓が跳ね上がりそうな錯覚をヒロは感じた。この男は自分が何者なのか知っている。
そう確信した瞬間、警戒心を一気に引き上げる。もし妙な事をしようものなら、徹底的に抵抗してやる。
そんな意志を覚悟として抱きソレがトリガーとなったのか。ヒロの両腕が自身さえも知らぬ内にアマゾンとしての形態……イプシロン時のウィンカットグローブをより有機的に生々しく鋭利さを持った物へと変貌したのだ。
「おいおい。随分と物騒な両腕だな」
「!! ッ……一体、何が目的なんですか?」
自身の両腕が異形のソレに変わった事実に驚愕しつつも決して隙を見せず、あくまで士だけを敵と定め睨みつける。
そんなヒロの問いに彼は平然と答える。
「だから言っただろ。お前に興味があるって」
「答えになってません!」
苛立ちからか声を荒げる。
が、それでも士の態度は変わらない。
「…………そうだな。口でどうこう話した所で分からないだろうから、ここは一ついいものを見せてやる」
そう言って士は右手を上へと掲げる。謎の行動にヒロは更に警戒心を上げたが、ソレは引き起こされた。
掲げられた士の手の上に銀色のオーロラ……としか言い様のない空間の歪みのような何かが四角の形状で出現したのだ。
訳が分からない。
例えヒロでなくとも、誰の目から見てもそんな言葉が出てくるだろう。それ程までにその現象は不可解で、異様で、不明瞭なものだったからだ。
そしてその銀の空間の歪みは士の手へと通過し、そのまま消えていった。だがただ消えた訳ではない。士の掌にはマゼンタと白の二色にカラーリングされた謎の物体がいつの間にか収まっており、士はそれをきちんと掴んでは軽く振るような動作を見せつける。
どうだ? と自信満々とばかりに言っているようにヒロには見えた。
「平たく言うとコイツはお前が持っているヤツと同じ……ようは変身できる力を持った道具と思えば大体あってる」
「それって……ベルトのことですか?」
「ほぉ。理解力は中々あるな」
相変わらず、態度は不遜以外の何物でもなかった。おそらく今指摘した所で無駄だろう。
それが分かっているからこそ、ヒロは自らの神経を逆撫でするような態度で接する士に対し、とりあえずは穏便に済ませようと努力している。
かなり不本意ではあるが、いちいち突っかかっても野暮で無意味だと理解しているからだ。
「アマゾン・イプシロン。それがお前のアマゾンであり、ライダーとしての名前なら俺にも、仮面ライダーとしてのもう一つの名がある…………ディケイド。この姿の時は門矢士と覚えとけ」
「……ディケイド?」
仮面ライダー。
以前、鷹山から聞いたその名を覚えていたヒロは、この目の前にいる男がその人物本人だとは到底思えなかった。
いや、思いたくなかったと言うべきか。
事実は小説より奇なり、とはよく言ったものである。こんな男が、自身の尊敬する鷹山が一目置く人物だったのか、と内心嘆きたくなる心境ではあったものの、ディケイドという単語については聞き覚えがなかった。無論、鷹山に教えられた記憶もない。
もしかしたら、早とちりかもしれない。
それを兼ねてヒロは質問した。
「ディケイドって、何ですか? 仮面ライダーと何か関係があるんですか?」
「仮面ライダーとしての名前だ。お前は知らんだろうが仮面ライダーは一人じゃない。ああ、この世界では、確かに一人しかいないがな」
意味が分からない。
一人じゃないが一人しかいない、という士の言葉にヒロは困惑と猜疑心を織り交ぜた視線を向ける。
「はぁぁ。どうやら詳しくじっくりと話をしきなきゃならんようだが、今は時間がない」
「? それってどういう……」
「士さん!!」
バタン。派手にドアが打ち開く音がヒロのいる病室に響き渡り、士の名を叫ぶ先程の女性医師のカエデが憤慨した様子で入って来た。
「もう! なんで嘘つくんですか! 婦長からのお呼びなんてなかったですよ!」
「あー、悪かった悪かった。俺の勘違いだった。詫びに一つ面白い話をしてやろう」
「はぁ? はぐらかさないでキチンと謝って下さいよ」
カエデの意見は至極真っ当なものだが、それでも士は勝手に話を進める。
「この部屋は今現在、ここにいる患者の細菌・ウィルスなどの感染の可能性を考慮して防護服を着ていない者、又一般の看護婦や医師の入室と接触を固く禁止されている。この事はこの施設の関係者全員が知っていることだ。知らされたのはほんの10分前だ」
士の淡々とした説明に対し、カエデの顔が可愛らしく怒っていた愛嬌のある表情が徐々に失せ始めた。
「なのにお前は入った。忘れた……なんてことは無い筈だ。ここに勤務して8年も経つ奴が重要なこと忘れてたんじゃ、まともに勤まらないからな」
また空気が変わっていく。
士は変わらずだがカエデの表情は恐ろしい程の無機質さを露わにした顔となり、そこに人としての暖かみはなく、あるのはヒロでさえよく分かる明確な殺意の気配だ。
「更には最初触診しようとしたな。接触が禁止されてるにも関わらず
、何がしたかった?」
瞬間。カエデは一瞬にして片腕を黒い異形の形へと変質させて、その手に力を込め手刀を繰り出す。狙うのは士の頭部。
「!! ッ」
そのまま行けば確実に士の命を奪えただろう。
しかし、手刀が頭を貫く前に次元が歪み、あの銀色の幕が生じてカエデの異形の手を“別次元”へと強制移動させた。
「悪いがもう少し増やさせて貰うぞ」
腕を引き抜こうとも全く引き抜けない状態の彼女に対し、士はそう言いながら手を前へ翳す。
やがて、その行動に合わせるかのように出現したのは、もう一つの銀色の幕。
足元から生じたソレはカエデの腰部分まで上ると共に下半身を余さず、強制移動させる形で消し去った。
「ッ……」
「抜け出そうとしても無駄だ。単純な力だけじゃな」
つい先程までの感情豊かな人らしさ顔は完全に消え失せ、あるのは目の前にいる士を殺そうと言う、明確な獣染みた荒々しさを剝き出す殺意の悪鬼と化した凄惨な表情で士を睨みつける。
やがて、カエデの姿が蒸気を大量に噴出させながら変わっていく。
ソレを見て、ヒロは驚愕に目を見開いた。
何故なら、その姿は変異の際に所々がズタボロに破れ千切れた白衣と衣服を身に纏っている点を除けば、あの時、自分と鷹山を追い詰めた……あの黒いアマゾンだったからだ。
「さて。それじゃ後輩へのお披露目と行くか」
そう言って士は、今度は腕を横へと伸ばし、手を開く。すると銀の幕がもう一枚形成される。
それがゆっくりとスライドする形で士の手をすっぽりと飲み込んだかと思えば、すぐさま消失し、代わりに士の手の中には先程ヒロに見せた例の物……ディケイドライバーが握られていた。
士はソレを自身の下腹部に当てる。
するとドライバー本体の右側から白いベルト部位が伸び出し、瞬く間に一周すると本体の反対の左側へと連結され、腰に固定された。
そして両手で本体左右のサイドハンドル部分を引く。
すると中央に何かを入れる為の挿入口と思われる部位が露わになり
士はそこに何処から取り出したのか。
一枚のカードを挿し込み、装填。
KAMEN RIDE……DECADE !!
男性の音声がドライバーから流れ、瞬く間に士の姿は変貌した。
左右にいくつもの白く半透明な影が現れ、それが士へと重なっていく。頭には赤く四角い形状のエネルギーが何枚も差し込まれていき、やがて黒く明確な実体を帯びプレートとなる。
緑色の複眼に何枚ものプレートが並ぶ頭部。
胸に十字のデザインが施され、マゼンタと白と
黒の三つの配色が染まる身体。
ソレをよく知る者は……必ずこう言うだろう。
世界の破壊者……仮面ライダーディケイド、と。
※ ※ ※
他人が嫌いだ。縛り付けるルールが嫌いだ。
弱い俺は……もっと嫌いだ。
そんな風に思うようになったのは、いつの頃からだっただろうか。
多分、物心ついた時にはそう思ってたかもしれない。俺は、とにかく周りと離れたくて暴力を振るった。誰であろうとお構いなしだ。
ある日、些細なことから女の子を一人殴った。
今思うと、かなり最悪な事したなって結構後悔してる。
そんな俺に『この子の分だ!』って殴って来たのは……。
「ゴロー!」
凛としながらも焦燥を含んだ馴染みの深い声に応えるように、朦朧としていた記憶の走馬灯から戻って来たゴローは、声の主がイチゴの物だと正確に把握するのに数秒と時間が掛かった。
ズキリと痛み出した後頭部が、その答えだ。
どうやら、かなりの衝撃によって後頭部を殴打したらしく、それが原因で軽い脳震盪を起こしていたようだ。
イチゴが必死に呼びかけた事が功を成し、意識が正常に覚醒して今に至る、と言う訳である。
後頭部を軽く撫でるようにして押さえつつ、今起きている現状を把握しようとイチゴに問いを投げかける。
「ここ、は……デルフィニウムの中だよな?」
「うん。でも叫竜の中に飲み込まれちゃったみたいでさ。とにかく周囲の様子を確認しよう」
イチゴはそう言い、ゴローの側に座っていた態勢を解くとピスティル専用の操縦席へと跨る。
ゴローが朦朧とした状態から意識を正常に覚醒させた為、両パイロットのコネクトが成功。
機能を停止していたデルフィニウムは、ハッチ部位の顔面にイチゴの表情が宿るのと同時に稼働を開始した。
『!! ッ』
稼働した直後、デルフィニウムの表情が驚愕に染まり、思わず自身の四肢を見る。
思い通りに動かせないと言う違和感から反射的に確認した行為なのだが、見ればデルフィニウムの両腕と両足には、あの時、自分達を拘束し叫竜の体内へと引きずり込んだ例の触手が雁字搦めに巻き付けられており、違和感の正体はコレだったのだ。
『だ、ダメ! 抜け出せない!』
「マジか……自力で無理なら、外部からの救助を当てにするしか……」
とは言え、助けが来るか来ないかは状況次第によるだろう。最優先される事項は叫竜の殲滅。
もし、自身の救出で叫竜の殲滅が困難なものとなり、それが都市への被害……下手を打てば壊滅に繋がるのだとしたら、ソレは避けねばならない。
そうなれば、救出という選択肢は消え、ゴローとイチゴの二人は叫竜と共にその命を消す事になる。それをよく理解しているからこそ、救出に対しゴローは楽観的にはなれなかった。
(クソッ! 俺がもっと早くイチゴを逃してれば、俺だけで犠牲は済んだのに……)
万が一、という場合を想定しての緊急脱出システムが備わっているフランクスだが、二人同時ではなく、ステイメンかピスティルかのいずれしか脱出できない。
だがそんな事はゴローにとって問題ではない。
彼にとって問題なのは、叫竜に飲み込まれる前にイチゴを“脱出させることができなかった”、 という一点のみに尽きるからだ。
判断を迅速にしていれば、大切なパートナーを脱出させることができたと言うのにソレができなかった。
そう思うと後悔が岩の如く、まるで背中にのしかかっているかの様な重圧となってゴローの心を蝕む。
『……』
コックピット内部に表示されたデルフィニウムの横顔がチラリと、ゴローを見る。パートナーのイチゴは今ゴローが何を考えているのか
、全部分かるなどとは言わない。
が、それでも。理解できる部分は確かにある。
ゴローは割と性格的に落ち着きがあり、責任感も強い。おそらくソレが原因で自分を緊急脱出させなかった事を悔いているのだろう。
少なくともイチゴはそう思い、同時にゴローに対し馬鹿野郎と言いたくなる衝動が沸き起こる。
イチゴは彼が自身とフランクスに乗るパートナーである事を認め、そして共に戦う仲間である事もとっくに認めているどころか、そんなもの最初からそのつもりなのだ。
伊達に幼馴染などやってはいない。
ゴローがそんな下らない悩みで頭をゴチャゴチャと思考を乱雑にさせウジウジしているのなら……今、パートナーとして色々言ってやる
!!
イチゴはそんな決心と共に操縦席から立ち上がると後ろへ振り向き
、そのままゴローに近寄っていく。
「イ、イチゴ? どうし……」
ゼロ距離。それ程まで近付いて来たイチゴに対し、当然困惑せずにいられないゴロー。彼が口から質いの言葉を出す前に鼓膜をぶち破らんばかりの怒声が迸る。
「この、バカヤロォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッ!!!!!!!!」
当たり前だが至近距離でかなりの大声を聞けば、耳の感覚がおかしくなる。それはゴローも例外ではなく、まるで金属同士をぶつけ合うかのような、キーン。という風な耳鳴りが耳朶の中を反響していた。
驚きやら混乱やらが思考の働きを阻害しているせいで呆然とする他ないゴローにイチゴは睨みを利かせて言った。
「ゴロー。自分がもっと上手く早く動けてたら、あたしのこと助けられたとか、そうも思ってるでしょ? 例えば緊急脱出システムを使う…
……とか」
「!!ッ……」
イチゴの突然の行動に対するモノとは別の、全く違うモノの驚愕が顔の表面へと引き摺り出された。
「やっぱり。ゴローってさ、いつも自分で勝手に決めて突っ走るよね
。そういうとこ昔から全っ然変わってない!」
「そ、それは……」
否定しようにも言葉が上手く出てこない。
イチゴの論が的を射抜いた正しい物からこそ、ゴローは何も言えない。
「……はぁぁぁぁぁぁ〜〜…………」
深い溜息。ゴローが聞く感じでは呆れているように思えるのだが、それは聞き違いじゃないだろう。
「いい?! なんでもかんでも一人で決めんな! 何の為のパートナーよ! 少しはこっちを頼れよアホタン男!! 突っ走り野郎! ボケナス
!!」
これでもか、と言わんばかりの罵詈雑言の嵐に流石のゴローも目を点にさせ、ただただイチゴの言われるがままにしてしまう。
かなり大声で、しかも連続だった為に息が続かなくなり、一旦深く吸って吐いての呼吸で上がって来た胸の熱を理性と共に抑え込んだイチゴは、改めてゴローを見る。
「まずは、どうやったらこの中を出られるか。それだけを考えよう。過ぎたこと後悔してウジウジして、自分ばっかり責めて何になるっての? どうなの?」
「……あ、ありません」
「うむ。よろしい」
未だ危機的状況であることは、現在進行形で一切変わっていない。故にゴローから陰鬱とした空気が生じていたものの、それはイチゴの
、何とも言えない斜め上を行く叱咤でゴローに喝を入れたおかげで、取り払われた。
なら、あとは脱出を考え試みるのみだ。
(はは……相変わらず強いな、イチゴは)
やや強引ではあるものの、自身に喝を入れてくれたイチゴの姿を見るとゴローの脳裏に浮かんだ記憶が懐かしさの感情と共に底から湧き立つように溢れ出て来る。
そのせいかあの時の姿が今と重なって見えた。
あの日。誰かを暴力で傷つける自分を戒める為、容赦なく殴りつけて来た幼くも負けん気に満ちたイチゴの小さな姿。
それが今と重なって見えるのは今も昔も、彼女は彼女でしかない事を意味しているのだろう。
親しい幼馴染が変わらず強く在る様を見ては、思考が少しばかり郷愁の念に浸かってしまった。
『こちら13都市作戦本部よりデルフィニウムへ。生存し状態に差し支えなければ応答せよ』
そんなゴローの意識を現実へと引き戻す一つの通信が入って来たのは、まさにこの時だった。
「ここがアマゾンズとダリフラの世界か……」
なんて、言い出しそうな世界の破壊者にして流浪の旅人。
仮面ライダーディケイドの満を持しての変身回となりました( ̄▽ ̄)
実は正直なところ、他のライダーを登場させる予定は最初ありませんでした。原点の仮面ライダーアマゾンやリブート作品のアマゾンズでも、他作品ライダーとの共演なんて本編では一切なかった為、というより。
ダリフラとアマゾンズのクロスオーバー作品である点を考慮するとそこに新しい他作品ライダーを加えた場合、パラーバランスとか相性とかで面白くなくなるかな〜とは思ってました。
それでも他作品ライダー……チートな便利能力引っ提げた平成ライダー代表格のディケイドを登場させたのは、個人的にディケイドが好きだった点。
仮面ライダーアマゾン並び、アマゾンズ本編でやらなかった他作品ライダーとの共演をここでしてみたい!という思いに加えて。
何話前かの後書きで言った矢吹ダリフラの番外編(実際には、ただの
いつもの描き下ろしイラストだったのですが)をやるなど。
それらの要素があって、こうなりました。
今後、読者の方々に面白さを期待できる作品になるかどうかは分かりませんが、頑張って最後まで書きたいのが本心です。
できれば『この作品における欠点』や『こうした方が良くて、ここが
こうだと矛盾しておかしい』などのアドバイスの感想を頂けると非常に助かります。
それでは。次回をお楽しみに!