ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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コロナが世界規模で流行して、すごくヤバい状況が続く中、あの有名な志村けんさんが亡くなるニュースが……。

ご冥福をお祈りします。

皆さんも新型コロナには気を付けてください。


※少し改稿しました。



コロニー《人と獣の街》

 

 

 

 

 

 

「どうも始めまして。第13部隊の諸君!」

 

 

 

 

4Cセンターの局長執務室。

 

開口一番にそう告げた4C局長であるヴォルフは眼前にて横一列に並び立つ少年少女たちに笑顔を向け、そして労いの言葉を送る。

 

「いや、本当にありがとう! 君達のおかげでこのコロニーはあの巨大な爆弾に等しい叫竜の脅威から解放され、市民の人々は無事。これは素晴らしい事だ」

 

「い、いえ! 自分達は当然の事をしたまでです!」

 

イチゴがやや緊張気味にそう返す。それを見たヴォルフは軽く苦笑しつつ謙遜しないでくれ、と告げた。

 

「本当ならコロニーを統括している最高議長にも会ってもらいたかったんだが、生憎今は別のコロニーに用事で出払っててね。会いたがっていたのに残念だ」

 

13部隊が滞在している此処を含め、コロニーはその総数が3つ。

 

そして、各々に正式な呼び名がある。

 

鷹山の生まれ故郷でもあるこのコロニーは、その名を『ビーストメン』と命名されている。英語で『獣人』を意味するこの言葉は人間とアマゾンが共存するコロニーとして相応しいという理由から、そう名付けられている。

逆に人間しかいないコロニーがあり、名も『ヒューマンズ』と人間を誇張したネーミングとなっている。何故人間しかいないのかと問われれば

単純にアマゾンとの共存を拒んだからだ。

アマゾンとて知性があり、ビーストメンのコロニーに住うアマゾンたちは法を犯すこともあるが、それでも人と大差ない道徳観念を持って暮らしている。

しかし、仮にそうだとしてもアマゾンはタンパク質。それも人間の血肉を求めるという嗜好性から"人喰いの獣"というイメージレッテルを貼り、そこから嫌悪や危機感を抱き、排斥する人間が少なくなかった。

そういった思想はアマゾンを受け入れ好意を抱いている思想の人間と、アマゾンたちの反感を買い、過激な衝突に至る危険性があるのは目に見えている。

だからこそ、そういった類の争いを避ける為、人間の為のコロニーが存在するのだ。

 

そして最後の一つは『プラント』と呼ばれている。

 

これは二つのコロニーに送る為の物資や食糧品を生産する為の『工場としての側面を持っているから』で、都市としての機能は殆どない。そこにいる従業員は人間とアマゾン、AI搭載の機械作業端末で構成され、常に安全重視で管理体制も万全。

 

ネロが言う最高議長とは、まさにこの三つ全てのコロニーを統括し、あらゆる事柄に対しての最終決定権を保有するザ・トップと呼べる人物。今はとある事情により、上記にあるヒューマンズのコロニーへと出払っている為、今現在このビーストメンにはいないのである。

 

「まぁ、それはともかく。せっかくだからこのコロニーで十分に疲れを癒しつつ、色々見て回って楽しんでほしい。既にナナ君から聞いているだろ?」

 

実は叫竜を殲滅し、コロニーを無事守り抜いたということで、13部隊には特例として、再び一日分だけ休暇が与えられていたのだ。

APEとしてはあくまで表向きに過ぎないとは言え、協力関係を結んでいる相手に恩を売れた事を好都合だと捉えているのだろう。

今回は下手すればコロニーが壊滅しかねない程の非常に危険な状況下だった。それを解決へ導いた為にある要求が通り易くなった。

 

アマゾンズドライバーに関する子細なデータと、その譲渡だ。

 

何故必要なのかと言うと、どうやらAPEはアマゾンライダーに代わる新たな対アマゾン戦に有効な兵器の開発に着手しているらしく、その為に制御装置となり得るアマゾンズドライバーのデータが欲しいと言うわけだ。

ヒロの持っているモノは以前調べようとしたが、謎のプロテクト機能により不可能で、鷹山の持っているモノは緊急時を考慮すると無理だ。

 

よって、アマゾンズベルトに関する研究資料を豊富に持つであろうコロニー側に要求した、と言うわけだ。

 

当初は渋ったものの、コロニー側はAPEの要求を承諾。

 

政治的な面で利を齎してくれた事に加え、フランクス博士からの意見もあった。

 

曰く『コドモたちの精神面において、やや不安定なデータがある。よって休息が必要だ』と。

 

以上のことから、13部隊には二度目の休暇が与えられる事になったのだ。それについては13部隊にも既に通達されており、勿論細かい裏方事情を省いた上でだ。

 

「ええ。既に伝えてあります」

 

「うん。じゃあ、これを。連絡と電子通貨が入った端末だ。見て回る際にぜひ使ってほしい」

 

そう言って、局長の直接の手から渡されたのは、手の平にすっぽりと収まる程度の大きさになる一個の端末。

色は黒く、外見は正方形に画面が全体を占めたタブレットタイプのもので、ナナやオトナたちが使っているものと比べるとコンパクトに仕上がり、やや厚みがある。

 

「では、私からは以上だ。皆各々で観光を堪能してほしい」

 

そう言って和かな表情を浮かべ手を振るヴォルフ。そんな彼にナナを筆頭に13部隊全員が頭を下げる。

そして局長の執務室を後にし、4Cセンターから出ようと長い通路を移動していく。

 

その最中、

 

「ねぇ」

 

イチゴが自らゼロツーに声をかけて来た。

 

それ自体は別にどうと言うことではないのだが、今までを振り返るとイチゴから声をかけるのは珍しかった。

 

「ん? どうしたのイチゴ」

 

視線を隣にいるイチゴに向け、問いかけるゼロツー。

イチゴは言い出すことに躊躇いを覚えるのか、やけに言い辛そうだ。

 

「あの時、助けに来てくれて……あり……がとう。叫竜の中にいた時もゼロツーのアドバイスがなかったら……本当に……危なかったと思う」

 

少し辿々しく紡がれたのはゼロツーに対する、感謝の言葉。両都市防衛作戦での一件以来どうにも心の中で彼女に対する不信感があり、ヒロの

身を危うくするかもしれないと。

イチゴは本気でそう思っていたが、今回の作戦で自らの身を省みずにゼロツーは助けに来てくれた。

ならば、感謝するのが筋というものだが、内心密かに彼女に対し疑心を覚えていた為、今更そんなことを言うのは図々しいんじゃ?という思いもあった。

 

だからこそ、言い辛かったのである。

 

「……一応仲間だし。そーいうもんでしょ?」

 

それに対するゼロツーからの返答は素っ気ないものだが、仲間意識がそれなりにあるのだと感じさせるものだった。

 

その答えにイチゴは内心嬉しさを覚えた。

 

同時にもしかしたら、自分は誤解していたかもしれないと心中で思った

。確かにゼロツーは自由奔放で、人の意見を全く聞かないといった自分本位な行動と思考が目立つがそんな彼女が単純に『仲間だから』という

理由だけで、危険を冒してまで助けに来てくれたのだ。

 

これだけは認めなければならない。

 

そして、それは彼女にも誰かを思う心があるのだという確かな証明と成り得る。少なくともイチゴは強制などではなく、ゼロツーが自分の意思で助けに来てくれたという事実を受け止め彼女が13部隊の一員で仲間なんだと。

 

疑惑を取り払い、信じてみる事にしたのだ。

 

そんな会話を交わす内に長い通路からエレベーターへ乗り込み、13部隊一同はセンターのホールへと辿り着く。

 

「さて。ここからは各自、好きなように行動して結構よ。けど10分おきに連絡することを忘れないで頂戴。いいわね?」

 

『はい!』

 

「はいはい」

 

13部隊のコドモたちがきちんと返事をするも、ゼロツーは相変わらずの適当さを曝け出した返事で答える。

無論、ナナはその点については熟知している為、今更どうこう指摘する気はない。

 

かくして、13部隊のコドモたち其々の休日が幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

「はえぇ〜……これがコロニーの街なのか」

 

見渡す限りに溢れる人々。

これがコロニーではなく、プランテーションのコロニーであったならまず有り得ない光景であることに間違いない。

その有り得ない光景をしかと見ているゾロメは内心そう思いつつ、人の多さが生み出す賑やかさに間の抜けたような感想を零す。

 

そんなゾロメにミクも同意するように声を上げた。

 

「ホント。こんなにオトナの人がいっぱいなの、ミクたちの都市じゃありえないよ」

 

彼女にしてもやはり、こうも人だかりに溢れた街並みというのは、物珍しく興味を惹かれるようだ。

 

「ねぇ! アレってパン売ってるのかな?!」

 

「イクノ! ちょっとあっち行ってみようよ!」

 

「えぇ?! あ、待ってナオミ!」

 

フトシはすぐ目についたパン屋に心を奪われ、それとは逆の反対側にあるアクセサリーショップに興味を示したナオミが目を輝かせ駆け走っていき、それを慌ててイクノが追っていく。

 

「……全く。元気がいいわね」

 

ふとその様子を見ていたナナは、そう呟く。

 

連絡用の端末は渡しているし、大丈夫だろうと判断している彼女は特に制止することはなかった。そもそも、個々の自由時間としているのだから、当然なのだが。

 

「そんなナナさんは俺と一緒にどうだい?」

 

疲れたように溜息を吐く彼女を労っているつもりなのか、そんな誘いを鷹山がかける。ナナは、手の平を出して待ったとジェスチャーする。

 

「あの子たちは休暇だけど、私はまだやる事があるわ。久しぶりの故郷なんだし楽しんで来たら?」

 

コロニーは鷹山の出身地であれば、確かに故郷という言葉は当然だろう。

だが、飄々と笑みを浮かべていた筈の鷹山の顔は翳りを見せた。

 

「そうなんだが……あんましいい思い出があるわけじゃない」

 

「え?」

 

「まぁ、んなことはさておき!」

 

しかし次の瞬間にはそう言って声を張り上げ、ナナは両手で抱え込む。

俗に言うところの『お姫様抱っこ』である。

 

「ちょっと! おろして刃!!」

 

「やなこった」

 

取りつく島もなく即答する形でナナの言葉を切り捨てた鷹山は、無駄に抵抗されないよう並の人間では到底不可能な速度であっという間に見えなくってしまう。

 

「あ、あはは……」

 

「相変わらず勝手に行くねあの人」

 

「……」

 

その光景にココロは苦笑を浮かべる。イチゴは全くもってブレない自由奔放な鷹山の勝手ぶりにそんな苦味を含ませた感想を零した。

それに対しゴローは『勝手』という部分に2日前の事を想起させてしまい、無言になる。鷹山に対する何らかの文句はあるかもと思いフォローしようとした自分を寸前で制した。

仮に言ったとしても否定しようのない正論を突きつけられるだけなのでで、喉まで出かけてた言葉をそのまま飲み込み、胸の内に仕舞い込む。

 

「じゃあ、ボク達は一緒に街を見て回る? ナオミとイクノ、そんでもって刃兄はナナと行っちゃったし。色々知ってるから案内できるよ」

 

ゴローの心境など露知らず。ゼロツーが街の観光ガイドを買って出た。

 

「え、ゼロツーってここ来たことあるの?」

 

「うん。たまに来るよダーリン」

 

さも当然とばかりにそう言ったゼロツー。鷹山がフランクス博士と同じく保護者としての役を買っていることを思えばあまり不思議ではないのかもしれない。

 

ヒロとしてもその可能性を考えなかった訳ではないが、まさか本当に的中するとは思いもよらず、少し程度ながらも驚いていた。

他のみんなも同じようなものだが、約1名のみ違った。

 

「えぇ?! そうなのかよ!!」

 

ゾロメだけは、やたら大袈裟にリアクションしまくる。

 

「こんな面白そうなとこに何回も来てんのかよ?! ほんっと羨ましいぜ!!」

 

「まぁ殆ど刃兄の用事のついでだけど」

 

「じゃあ、迷うことはなさそうね。地図も見れるらしいけど操作に慣れないし」

 

4C所長であるネロから譲渡された端末を手に取り、イチゴはそう言う

 

「そーそー。出すまではいいんだけどよ、なんかマークとかいっぱいあって分かんねーんだよ」

 

その言葉に同意とばかりにゾロメは端末画面に表示された地図を目を凝らして見ては不満の声で愚痴を零す。

確かに初見で扱うなら表示されるマークの意味を理解しなければならないだろう。

それに加えて、適当に操作してミスを犯すと簡単な図形状に記されたモノや、建物一つ一つの情報が見れるタグが表示されるモノ。

また現在地点の周囲をそのままに描いたような立体的なモノなど。使い方さえ把握していれば便利ではある。が、そう言った説明がなかった為

、十全に使い熟すことができない為、不便だろう。

 

もっとも、端末の取り扱い説明がなかった理由は単にネロが忘れていただけだが。

 

「とりあえず。まずはここから近いとこに行こうか」

 

「なんか面白いとこあるのか?」

 

「もちろん。あんな死んだ街とは違うよ」

 

死んだ街、という言葉は以前もゼロツーが言っていた。

前に無断でオトナの街へと侵入した際、眼下に輝く街並みを見据えるその目は、まるでつまらないモノを見てしまい熱が冷めていくような。

それほどまでに淡々と色褪せた表情でそんな事を呟いた記憶をヒロは思い出し、同時に納得感を覚えた。

誰一人として外出せず建物の中に籠り、静寂しか意味を為さなかったオトナの街。

確かにアレは、死んでいるという意味が正しいのかもしれない。しかしコロニーの街は良くも悪くも騒がしく活気に溢れている。色々なモノがあり、それを楽しむ人々の姿と声が街を一つの命として生きているのだと錯覚させられてしまう。

 

「? どうしたのダーリン?」

 

不思議そうにヒロの顔を覗き込むゼロツー。

 

少し意識を思考の中へと沈めていたせいもあってか、視界いっぱいに広がるパートナーの顔を見て現実へと引き戻されたヒロは、一瞬ほど少し驚いたものの、すぐに冷静さを取り繕う。

 

「なんでもないよ。案内よろしくゼロツー」

 

そう言ったヒロの言葉にゼロツーは、笑顔で任せて、と答えた。

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

ゼロツーの案内の下コロニーを回ることになったのはヒロ、イチゴ、ゴロー、ゾロメ、ミクの5人だった。

 

ナオミとイクノは二人でアクセサリーショップへ。

 

フトシはすぐ目に入ったパン屋へと行き、ココロはそのパン屋のすぐ近くにいる花屋に目がいった為、同じように興味を持ったミツルも、その花屋を見ていくことになった。

 

「うわ〜すごい。お花がいっぱい」

 

目の前に煌びやかに活気良く咲く花々を前に、ココロの口からそんな感想が自然と零れ落ちる。ミストルティンの温室も色々な種類の花があるが、この花屋ほど多くない。

店に咲く花の種類の数は、簡単に追い越せてしまう程あるのは間違いないだろう。

 

「……」

 

顔を綻ばせるココロとは対象にミツルは特に表情を変えることなく淡々としつつ、興味あり気に花を見ていた。

 

「何かお探しですか?」

 

暫く見ていた二人を気にかけてか、店員の女性が店の中から出て来た。

 

「あ、すみません。綺麗な花がいっぱいあったものですから……」

 

「ふふ、ありがとうございます。良ければ外だけじゃなく中も見て下さい」

 

店員の言葉に甘えて2人は外に置かれたものだけでなく、店内の中に置かれた花々を見てみる。店先もそうだが外以上に花の種類が豊富で、やはり見たことのない花が大半を彩っていた。

 

「わぁ、すごい! 色々あるんですね!」

 

「そんなに多い訳じゃないんですけど…そう言って貰えると嬉しいですね」

 

素直なココロの感想を聞いた店員は嬉しそうなそう言う。

別段大変と言えるほどの手入れはしていないが、それでも言われた側としては嬉しい事に違いない。嬉しそうに笑う店員だが、ふと何かに気付いたのか。二人の顔をマジマジと見始める。

 

「もしかして、お二人はプランテーションから来た……えーっと……パ、パラなんとか……」

 

「パラサイトです」

 

中々名前が出てこないようだ。

 

そんな様子を見兼ねてか、ミツルはフォローする形で彼女の言いたいであろう単語を言う。

 

「そーですそーです!! 結構ニュースになってますよ! 大きなロボットに乗って都市の外すぐそこに急に出てきた、これまた大っきな叫竜をやっつけたんですよね?!」

 

「え、えーっと……」

 

ほんの数分前、出会った当初の落ち着いた雰囲気は完全に消え去り、あれやこれやと詰め寄って捲し立てるその姿にココロは勿論ミツルも引き気味だ。

 

「あ、ご、ごめんなさい。つい……」

 

「大丈夫です! こっちこそ、びっくりしてしまってごめんなさい」

 

別に落ち度はないのだが、それでもココロは謝罪の意をもって答える。

 

「いいえ。お客さんは何も悪くないですよ。私こう見えて機械も好きなもんですら……ハハ」

 

乾いた苦笑を漏らす店員。どうやらこの女性、花も好きだがそれと同等レベルで機械好きな面があり、目の前の二人が巨大ロボットであるフランクスに乗って戦うパラサイトだと気付いた為、思わずテンションが上がってしまったらしい。

 

まぁ、好きなものに熱を入れてしまうのは人間の性だろう。それをとやかく言うほど、ミツルはともかくココロは狭量ではない。

 

「ま、まぁ、奥の方とかにもまだ色々ありますからどうぞどうぞ! 一本サービスでタダにしますよ」

 

「え、でも……」

 

店員から勧めであるとは言え、さすがに一銭も払わず貰っていいのかと思うココロに店員さんは更に後押しを加える。

 

「その代わりと言ってはなんですけど……色々と聞いちゃってもいいですか? ロボットのこととか、プランテーションについて」

 

「それくらいなら別に構いませんけど……」

 

話すとは言っても自分達コドモはフランクスに関して専門的に隈なく知っているという訳ではない。機械好きな所を考えるに大方フランクスに

についてが殆どだろう。

となると自分では役不足ではないか?と思ってしまったココロだが、その懸念はミツルの言葉によって解消された。

 

「と言っても専門的に詳しい訳じゃないですよ? 難癖つけられるのも嫌なので、あらかじめ言っておきますが」

 

「大丈夫です。知ってる範囲でいいですよ」

 

最後の方を嫌味を付け足して強調して言うミツルに特に気に障る様子を見せず、店員は和かにそう答えた。

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

「ほんとに此処にいるんですかぁ?」

 

ある建物を四方余さず方位している4Cの部隊。その内の一つ、黒崎が

隊長として指揮している『クロウ部隊』に同行していた札森は気怠そうに言いながら、ポリポリと頭の後ろを掻く。

 

「まぁ調査班も無能じゃねーからな。一応は」

 

そんな彼に答えたのは黒崎だった。

黒崎隊の隊長である彼はよく使う武装である対アマゾン仕様にカスタマイズされた『H&K MP5』と呼ばれるタイプのサブマシガンを手に、銃身を肩に乗せた状態でヴィスト・ネクロが潜伏しているビルを仰ぐ。

 

「よくもまぁ、こんなとこに堂々と潜んでやがるなぁ敵さんは」

 

「こういうのが逆に怪しまれないってヤツじゃないですか?」

 

人気のない場所より、逆に敢えて人が多く、更に目立つ場所に拠点を設けて何層にも情報的・視覚的カモフラージュをかけておけば、心理的盲点を突くことができる。

実際これまでヴィスト・ネクロが関与している事件の多くは、このような手口で及ばれており、気付いた頃には後の祭りといった顛末が殆どだった。

 

だがコロニー側とて、いつまでも辛酸苦汁を舐め回されている訳じゃない。

 

何の脈絡も兆候さえなかった巨大叫竜の出現に伴い、引いては前々から起きているアマゾンの謎の暴走現象を考慮しコレをヴィスト・ネクロによる犯行と仮定。

 

これまでヴィスト・ネクロの暗躍と暴挙を許してしまった原因はアマゾン同士による共鳴反応とアマゾンの存在を探知するレーダー、二つを無効化してしまう特殊なジャミング装置を利用していたのが原因だった。

 

この装置のサンプル奪取に成功した4Cはすぐに技術班、化学班の合同研究による解析。その結果から得られる情報を元に対抗策を講じようとしたものの、その過程は難航を極めた。

 

主な原因は、サンプルとなるジャミング装置のシステムが非常に難解なだった点が挙げれる。どうにも装置の機構やプログラミングが不可解と言っていいほどもので、それらを理解していくのに数年単位の月日を費やしてしまったのだ。

 

その間、ヴィスト・ネクロは拉致と重要施設の破壊を繰り返した。

 

そしてある年を機にこれまでの過激なテロ活動が唐突に消え去り、その後数年間は安泰だったものの、代わりにプランテーションへのテロ行為を蜂起。

 

どういう意図で、何故空白の期間を設けて。数年後というタイミングで魔の手を伸ばす標的をAPEへと変えたのか。ヴィスト・ネクロの真意が読めない以上、考えても仕方のないことなのだが、それが得体の知れない不気味さを漂わせていた。

 

とは言え、対抗策は何とか見出された。ジャミング装置を無効化する特殊なレーダーシステム『トゥルーアイ』を開発。

 

トゥルーアイを用いた建物の調査の結果、コロニーのアマゾンならば必ずある筈の腕輪の反応が見受けられないアマゾンの反応が多くある事が判明。

 

判定は確かな黒となり、今こうして4Cの部隊が出動し、蟻1匹さえも逃がさないよう包囲しているのだ。

 

「黒崎隊長。近辺の住民の避難が完了し、こちらも装備調整及び包囲網体制は万全。いつでも突撃できます」

 

「分かった。おい赤松。そっちはどうだ?」

 

『問題ない。いつでも行けれる』

 

右耳に装着したインカム型通信端末で自身の反対方向である西側にいる赤松へと連絡を取り、いつでも出れるという返答を貰う。

 

続いて南側で待機している青井隊を指揮する『青井雉咲(きざき)』に連絡を入れる。

 

『こちらも問題ありませんわぁ〜。いつでも』

 

甘ったるさを含ませた女性の声。それが耳朶に染み込んでいく感覚に黒崎は嫌気が差すのを無視できなかった。

 

「青井ぃぃ……そういう感じの声出すのやめろ」

 

『あららぁ〜、またですの?』

 

実のところ黒崎は青井の甘ったるさを含ませた感じの声と口調が出会った当初から気に入らず、なるべく会わないよう心掛けているのだが……このように合同任務で顔を合わせたり、会話しなければならない状況の場合、無駄とは思いつつ、とりあえず注意するといったスタンスでやっている。

 

『私の個性というものですからぁ〜、仕方ありませんわぁぁ』

 

「……ホワイトフィール。特に問題ないか?」

 

これ以上会話していても仕方ないと通信のチャンネルを変えて、今度は北側に配置されたホワイトフィール部隊を指揮する『アリア・ホワイトフィール』に問題の有無を確認。

 

『大丈夫です! こっちも行けれます!」

 

幼さを残しつつ、凛とした溌剌の良い少女の声でアリアは答える。四部隊の中で最年少だが、その腕は確かなもの。

 

……性格の方は難あり、だが。

 

「分かった。……所長。許可を」

 

アリアからのOKを聞いて、最後に4Cの四部隊を動かす最高決定権を保有するヴォルフから出撃の指示を仰ぐ。

 

「許可する。抵抗しなければ捕縛を。だが殺意をもって抵抗するなら、容赦はいらない。速やかに排除しろ」

 

所長室から送られるヴォルフの厳格なる言葉は建物を包囲する四部隊の隊長たちに通達され、後は決行に移すだけだ。

 

「突撃しろ」

 

「突撃開始ですわぁ〜」

 

「突撃!!」

 

「行くよ!」

 

それぞれの隊長の突撃の合図。それによって四部隊は建物内部へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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