ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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 今回はあるキャラが登場します。知ってる方なら知ってるヤツです。

 


目覚めるケモノ×角ノ少女 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深い深い闇。そこから浮上するように意識が覚醒した少年…ヒロはいつもよりも重い瞼を開けて、周囲を確認する為に倒れた姿勢から

ゆっくりと起き上がる。最初に目に入ったのは無数の瓦礫で構築された山と何かによって破壊され荒れ果てた通路。

 

 思い出した。叫竜が襲撃して来て、停留所が破壊されて……それで俺は……ッ?!

 

 ナオミ。自分のパートナーだった少女の手を握り通路を走り抜ける最中だった際に天井が崩落したことを思い出したヒロは周囲を見渡す。

 ナオミの姿は、なかった。

 その代わり獅子に似た形状のロボットと叫竜が獣同士のそれに近い戦いを繰り広げていた。

 

「アレは……フランクスなのか?」

 

 疑問を孕んだ呟きだが、フランクスはその全てが人間の女性を模したもの…ようするに人型を成している。獰猛性をこれでもかと出す獅子型のフランクスなどヒロは聞いたことがなかった。

 

「そう。アレもれっきとしたフランクス。スタンピード・モードと呼ばれる形態だね」

 

 突然聞こえた聞き覚えのない少女の声に驚いたヒロは慌てて後ろを振り返る。そこには長い銀髪を腰までストレートに伸ばし、水道管らしきものが随所に見受けられるデザイン

。赤い血を感じさせるワインレッドカラーの特殊スーツを身に纏った一人の少女が口の端を吊り上げて不気味な笑みを浮かべて立っていた。

 

 顔は青みの多い緑色のバイザーで隠している為、口元が見えるだけでその全貌を確認することはできない。

 

「君は…誰なんだ?」

 

「誰だっていいだろ? まぁ…名前は『ブラッドスターク』。これ位は教えてあげるよ」

 

 少女は自身の名を『ブラッドスターク』と呼ぶ。

 女性にも関わらず男性ニュアンスの名というのは不思議だが、偽名の可能性もある。ともあれヒロは少女…ブラッドスタークへの警戒を上げて睨む。

 

「そんな怖い顔するなって。ボクはこいつを届けに来ただけさ」

 

 後ろへ隠していた片手をヒロの前へ差し出したスタークはその手に掴むものを見せる。 

 

「……なんだ、これ?」

 

 疑問符を含んだ声を出してまで見たものはベルトらしきものだった。バックル部位は機械で、全体的にコンドルなどの鳥類の顔を彷彿とさせる形状をしている。二つある赤色の菱形部位にはまるで生き物のような瞳があり、そのせいで本物の目であるかのような錯覚を引き起こされる。

 それが何かを把握できない様子のヒロを見て、スタークは自身が手に持つ物の名を口にする。

 

「『アマゾンズドライバー』って呼ばれるものさ。まぁ、今後必要になってくるから……ねっと!」

 

「へっ?!」

 

 素早くヒロの背後へと回ったスタークは何をするのかと思いきや、ベルトのようなもの

……アマゾンズドライバーをヒロの腰に装着させた。

 

「ちょっ、何すんだよ! しかもこれ…は、外れない!」

 

「まぁまぁ、いいからいいから♪ 持っておいて損はないし、むしろ絶っっ対必要になるんだから」

 

「いや、意味分からないし! 外せって!」

 

 ヒロはアマゾンズドライバーを両手で掴んで無理やり外そうとするが、相当頑丈なのか破損する気配が全く見られない。

 ドライバーを外すのに必死になっているヒロが面白おかしいのか。少し吹きながら軽く笑っているスタークは彼に背を向けながら去るように歩き始めた。

 

「では、これにてチャ~オッ♪ あっ、ついでにだけど……頭上注意ね」

 

 背を向けた状態で手を振って本当にその場を去る気でいる様子のスタークを呼び止めようとするヒロだが、斜め上に示されたスタークのジェスチャーを見て、彼女の指が向いている方向を見た。

 

 その先にはモホ級の叫竜にふっ飛ばされ、今まさにこちらへ向かって来てしまっている獅子型フランクスの姿があった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 

「ハアァァッッ!」

 

『フンッ!』

 

 軽く唸り声を上げて、カッターアームを斜め一閃に振るうアルファ。しかし、それを喰らうべきコウモリアマゾンは漆黒の翼を硬質化させ、敢えて受ける形で防ぎ弾き返す。

 

「チィッ、無駄に硬いなァァオイッ!」

 

『無意味!』

 

 悪態を吐くアルファ。そんな彼にコウモリアマゾンは自身の翼の優位性を強調するような発言で挑発を誘う。

 しかしそれに応じることはなかった。的確且つ冷静に敵を観察し、そこから必勝の道筋を探ろうとする。

 

『ハァァッ!』

 

「オラァァッ!」

 

 アルファはアームカッターを使いつつ、拳を振るい、ボクシングのような型で打撃技を加えていく。対するコウモリアマゾンは漆黒の両翼を武器にして防具として使う戦法を駆使している。

 だが、コウモリアマゾンの本領は地ではなく空によって発揮されるもの。

 

『ギィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!』  

 

 突然翼を激しく羽ばたかせ、一気に飛び立ったコウモリアマゾンは喉の奥部にある発声器官から歪な超音波を発した。

 

「う、ぐゥゥッ……!!」

 

 耳の鼓膜が破れるかと思うほどの超音波は脳にさえ、頭痛というダメージを容赦なく与えて来る。怯んだアルファを視覚で捉えたコウモリアマゾンはこの機を逃がすような真似はせず、アルファの身体を両腕で拘束し、更には鋭利な爪を喰い込ませることで拘束をより盤石なものとした。

 無論だが、これで終わる筈もない。

 

『堕ちろ……フンッ!』

 

 アルファを抱えて地上から100mほどの位置にまで上昇したコウモリアマゾンは一切の躊躇いなく両腕を離し、アルファをそのまま地へと陥れる。

 更に口部から計3本。自らの血液を硬質化させた、太い杭のような漆黒の物体を吐き出し追撃を仕掛けて来た。放たれた杭はアルファの胸部…右肩に近い部分に一つ、腹部左右に二つと命中し彼の身体を容赦なしに穿つ。

 

「がァァッ!」

 

 赤い鮮血を舞い散らせ落下するアルファを待ち構えていたのは、クモアマゾンとアリアマゾンの群れ。このまま落ちて来るアルファを総勢で嬲り殺しにしてやろうという算段らしい。

 

「ははっ……好都合だァァッ!!」

 

『バイオレント…クラッシャー』

 

 ドライバーのグリップを握り回し、必殺の音声が響き渡る。そして瞬く間に赤い蒸気がアルファを包み込んだかと思えばそれだけに留まらず、下で待ち構えていたアマゾン達さえ巻き込むほど広範囲に渡って拡大した。

 

『ナンダァ…コレハッ!』

 

『気配ガ察知デキ…ッ!』

 

 アリアマゾン一匹の声が途中から切れて、代わりに肉を裂き抉るような生々しい音が奏でられる。

 アマゾンには生物の気配を察知する能力が共通に備わっているのだが、それが全く反応しなかった。その結果、蒸気の中に身を潜んでいたアルファの存在を探知できず、強靭な顎とすべての牙から放出される電流によってその命を奪われた。

 やがて蒸気が薄まり、次第に晴れて来た。

 

 完全に消え失せると黒い泥のような液体と化して死したクモアマゾンとアリアマゾンの残骸のみ。

 

「アリとクモは全滅。後はコウモリだけか」

 

『ギィィッ!』

 

 実質リーダー的存在だったコウモリアマゾンは自分の配下だったアマゾンが全滅した事実に驚愕を隠せなかった。

 必勝と確信していた作戦が失敗に終わった故の激昂か。それとも先程の杭のような遠距離型攻撃を撃てないせいか。そのどちらか、またはそれ以外に理由があるのかは分からないが、コウモリアマゾンは空中に留まることを辞め、猛スピードでアルファへと急降下する形で接近していく。 

 

『バイオレント……エナジースラッシュ』 

 

 それに対し、無言でグリップを握り通常の一回でなく連続で二回ほど。握り回した途端音声と共にアルファのアームカッターは炎とも蒸気ともとれるエネルギーを発し纏い込む

。静かに佇みながら赤いエネルギーを纏ったアームカッターの腕を横へ水平に広げるようにして構えをとるアルファ。

 

 そしてある程度にまで両者の距離が近づいた瞬間。

 

『ガァァッ……ァ…』

 

 アームカッターの刃が振り上げられ、コウモリアマゾンの身体はまるで紙でも裂くかのような容易さで呆気なく縦一線に一刀両断され、そのまま他のアマゾンと同様黒い液体と化して消え失せた。

 

「お前の命…もらったぞ」

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 

 一方、獅子型フランクスが吹き飛ばされ、その際の激突に巻き込まれたヒロは幸いにもケガはなく無事だった。するとコックピットの部位が開き、中から血塗れに染まる一人のステイメンが放り出された。ピクリと動かず、その顔は死人の如く蒼白だった。

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

 ヒロは怯えながらも男の安否を確認する為に近寄るも、全く息をしておらず、脈もなかった。

 

「そいつはもうダメだ」

 

「!ッ 君は…」

 

 少女の声に反応し、視線を男から外して顔を見上げるとコックピットの入口で持たれかけている少女の姿があった。その顔にヒロは見覚えがあり、あの湖畔で出会ったゼロツーに間違いなかった。

 

「君は早くここから逃げた方がいいよ」

 

「逃げるって……なら君はどうする気なんだ?」

 

「叫竜を倒すのさ。それがボクの望みで、目的だ」

 

 ふらついた様子でコックピットへと戻ろうとするゼロツーだが、彼女の状態はお世辞にも良好とは言い難く、頭からは血が流れている。もしかしたら見えないだけで内臓やら骨にダメージがあるのかもしれない。

 

「ダメだッ! そんな身体で!」

 

 ヒロは彼女を止めようとその血に濡れた腕を掴んだ。

 

「……離してくれる? 僕は奴らを殺す」

 

 鋭い眼光で睨むゼロツー。だがヒロはそれに怖気づいて動じることなく、逆に強い眼差しを向ける。

 

「そんな状態の君を行かせない。いや、行かせたくない!」

 

「どうして? そんな必死になる事なんてないじゃん」

 

 不思議で仕方ないとばかりに言う彼女にヒロは言った。

 

「どうしてか、なんて、俺にも分からない。ただ君をこのまま行かせたら……俺はきっと後悔すると思う」

 

 ヒロ自身も不思議なのだ。何故自分はこうも彼女を引き留めようとするのか? 所詮、会ったばかりの仲だ。だがそんなことは結局のところ関係ない。自分がそうしたいからそうする。

 ただ…それだけのことなのだ。

 

「それに君一人じゃ無理だ! 一人じゃフランクスは動かせないはず!!」

 

「……ボクはいつも一人だよ」

 

 どこか寂し気にゼロツーは呟く。

 

「一人には慣れてる……いつもそうしてきたんだ」

 

「ダメだ! 死ぬかもしれないんだぞ!」

 

「死ぬのなんて怖くないよ。それにアイツももうすぐ動き出す。そうなったらどっちみち全滅さ……僕にはやらなきゃいけない事があるんだ。こんなところで立ち止まる訳にはいかないんだよ」

 

 揺るがぬ意志をもって言葉を紡ぐゼロツー。そんな彼女の姿にヒロは今更かもしれないが、途方もない無力感を覚えていた。今の自分にはどうあっても仲間を助けることはできないし、それどころか叫竜に立ち向かう術さえない。

 本当に何もできないコドモだ。

 それでも、どうしても頭の中で“諦めるな”と叫ぶ自分の声。でも気持ちだけじゃどうにもならないのは事実で、何かを成すには条件と策が必要だ。

 

 条件は……ある。

 

 彼女のフランクスだ。そしてもう一つ必要となる策は……      

 

「じゃ、僕は行くよ」

 

「待ってくれ! 俺が…俺がそのフランクスに乗る!」

 

 自分自身がステイメンとして彼女のフランクスへ搭乗する事。

 

「やっぱり君を放っておけない……一人で行かせられないッ!!」

 

「……!ッ へぇ。死ぬ覚悟はあるの?」

 

 彼の言葉に驚いた様子で目を見開くゼロツーだがすぐに目を細め、既に息絶えた元パートナーの男を見据えて問いを投げかける。

 

「わからない……でも、今のままだったら俺に居場所なんてないし、死んでるのと変わりないんだ………俺は、死んでるように生きたくない。だから! 俺を乗せてくれゼロツー!」

 

!!」

 

 それは決意だった。

何一つ成し得ることのできないコドモが己の無力さを感じつつも、尚も諦めず前へ進もうとする道標。その言葉を聞いたゼロツーは顔に笑みを浮かばせ、自然と流れていたヒロの涙に手をやり触れる。

 

「ふふっ……人間の涙、久しぶりに見たよ。やっぱりキミとボクは似ているね」

 

 ゼロツーは笑みを漏らす。まるで遠い記憶の中で失くしてしまったものを懐かしむように、とても愛おしいとでも言うような顔だった

 

「その目、気に入ったよ。さぁおいで…」

 

 涙を拭い触れた手を一杯に開いて、彼女は差し伸ばす。その手に引き寄せられるようにヒロもまた手を伸ばした。ヒロの手をしっかりと握るゼロツーは彼を思いっきり引っ張り、そのまま暗いコックピットの中……まるで闇夜へ誘うように重力に身を任せそして……。

 

「キミを味あわせて。今から君が、ボクのダーリンだ!」

 

 少女の唇が少年の唇と重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 








~今回の補足説明~


『ブラッドスターク』
現在放送中の仮面ライダービルドに登場する幹部クラスの怪人。今作では原作同様に様々なところで暗躍し、飄々とした性格で誰にも目的・思惑が読めない謎の人物。原作では紛れもなく男性だが、今作は少女でそれらしいデザインにリファインされている。
・結構気に入っているキャラですし、変身方法がアマゾンと同じで蒸気に包まれての変身なので登場させました。果てして、その正体は?




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