先月投稿できなかったので、その分も含めて2話連続投稿です。
世の中コロナのあれこれで大変ですが、頑張りたいと思います。
「4Cにおける精鋭四部隊の突入を確認。経過は逐一報告すると」
現場にいる隊員からの通信連絡。それを左耳に装着されたインカムで受け取ったロシュウは経由する形で4C所長であるネロへと報告する。
それを聞いたネロは一言『ご苦労』と告げた。
「"門矢士"に関する調査の程は?」
そして後に続いた言葉は『門矢士』の名とその人物における調査の進行具合を問いかけたものだった。問われた側のロシュウは、どこか歯切れ悪いといった表情を滲ませる。
「……全く。"まるで初めから無かった"としか
言えないほどに」
「……なるほど。文字通り『正体不明』と言う訳か」
門矢士という一人の男の存在を知ったのは鷹山とヒロがアマゾン専門の医療機関施設へと運び込まれたにも関わらず、同時に忽然と消えてしまうという異常事態が発生してから数時間後のことだった。
鷹山とモニター越しで会話していた最中、突如として鷹山の背後から銀色に輝き水面のように波打つ何かが発生。
そのまま流れるようにスライドし鷹山に通過した瞬間、寝ていたベッドだけを残してそのまま鷹山本人は消え失せてしまったのだ。
目を見開き起きていながら夢でも見ていたのか、と言われかねない荒唐無稽な現象の一部始終を目撃したネロの心境は驚愕と己の理解を超えた事象に対する混乱が入り乱れ、軽いとは言え一種のパニック状態に陥ってしまった。
しかし何とか荒ぶる精神を抑え、冷静に二人が運ばれた施設へと4Cの部隊を派遣。すぐさま施設内部を隈なく捜し尽くしたものの、鷹山の姿は影さえも見つからず。
それどころかヒロの姿もない有様だった。
そして程なくしてある一通の電子メールが届いた。それもある回線を用いて、だ。
色々と他者に知られてはならない情報を有するネロは、通常業務で用いる回線とは別に秘書にして補佐でもある信頼深いロシュウにしか教えていない、文字通り『自分とロシュウだけしか知らない極秘回線』。
そこから経由されたメールという事実に驚愕を隠し切れないまま、恐る恐る開いてみる。
差出人は、あの門矢士だった。
『第13プランテーションが叫竜に囚われた仲間を救出する作戦を開始する。特に何もするな。余計なこともな。
それと、こいつを見とけ。
ヴィスト・ネクロが拠点にしてる建物の内部構造と位置情報だ。
俺の事を探ろうとは思うなよ? まぁ、やっても無意味だろうがな。事が済んだら手早く準備をして襲撃なり奇襲なりしとけ。
連中が何かとんでもないことをする前にな……念を押すが作戦中に余計なことはご法度だ。バラされたくない事の一つや二つ、あるだろ?』
以上が内容の全てである。
何処の馬とも分からない奴の物言いにわざわざ従う道理などないが、前提としてネロはAPEに属する第13都市セラススが進める対叫竜の
作戦に介入する気は毛頭ない。
自分達でも対処が極めて不可能に近いほど困難な大型叫竜を相手にどうにかできないからこそ、その為に13部隊にコロニーへと来訪してもらったのだ。
問題は最後の一文……まるで、お前たちの秘密を知っているぞ、とでも言いたげなニュアンスの文面。
こちらの心理を利用し、掌握する為に誘導する一種のブラフの可能性もあるが、徹底的に秘匿された極秘の回線を用いて、このメールが送られて来た事を鑑みると決して虚言だと切って捨てられない。
ここは言う通りにした方が得策だろう。
そう判断した直後、プランテーションから通信が入った。内容は囚われた仲間の救出作戦。
あの叫竜がいかに危険なのかについては、送られて来た情報から把握済みである。
コロニー全体を丸々覆い尽くすほどの威力を有するなど、もはや核爆弾だ。
そんな相手に迂闊に手を出すのは得策ではない。明確な対策が見出され、その安全性と危険性を他諸々を検討し議論。そして最高議長の判断で最終的に可決されるまでは大人しくしていた方が無難なのだ。
しかし彼等はそれまで待つ事などできない。
13部隊の隊長とそのパートナーの命はフランクスの生命維持機能によって守られているが、そう長くは保たないのが現状。
故にどうしても、と懇願に近い許可を求める要請が来たのだが、ネロとしてはコレを退けたかった。
中に囚われたコドモ二人の命を見捨てる形にはなるが、それでもコロニーの安全を守る組織の長として要請を退けなければならない。
これが引き金となって爆発でもしたら、全てが灰塵に帰すのは目に見えている。だが門矢士から送られて来たメールの件もある。4Cが秘匿保有している機密情報がヴィスト・ネクロへと横流しされる危険性も放って置く訳には行かず。
結果的にネロは全責任を覚悟して、個人の独断で救出作戦に許可を出した。
作戦自体は結果的ながらも成功。
それに伴い、叫竜も撃破できたのは思わぬ福だった。
まぁ……その分、ネロの諸々の後始末が大変な事になったのだが。
それはさて置き。以上の経緯から門矢士によって齎されたヴィスト・ネクロに関する情報の真偽を図る為、メールに記された拠点とその身辺
を調査。
その際、最近開発された対ヴィスト・ネクロ用の特殊レーダー『トゥルーアイ』を実践的に投入するという、謂わば起動テストを兼ねた形で
実行した結果……紛れもない真実だった。
「門矢士という人物の思惑がどうあれ、目下の最優先はヴィスト・ネクロです。奴等が何かしようとしているなら止めないと」
門矢士をいくら調べようとも分からない。議論もするだけ無駄。ならば不毛な事柄に目を向けているより、影でコソコソと暗躍している輩を
締め上げる方が有意義だろう。
この観点のみに集約すべきだと語るロシュウにネロは当然とばかりに不敵な笑みを浮かべる。
「ああ。もちろんだよ。その為に精鋭四部隊を余すことなく投入させたからね……屍獣狩り、始めてやろうじゃないか」
※ ※ ※
「あ〜れま、大変だこりゃ」
建物に何箇所か設置してある監視カメラが何者かによるハッキングを受け映像が停止。そして大勢の気配がこの建物の内部へと踏み入れて来るのを感じた彼女は……ブラッドスタークは、頭を掻きつつ、あくまで呑気にそう言う。
「まぁ、予想してたけど」
「スターク様!」
監視室にいたスタークに声をかけた白い防護服の研究員がアタッシュケースを差し出して来る。それを見たスタークは笑みを浮かべた。
「完成した?」
「最終調整は完了しました。後は専用の例の装置に装填し、起動すればいいだけです」
研究員はそう言い、アタッシュケースの中を見せる。中には長方形の形状をしたガラス製容器が三つ収められており、その中身は例の溶原性
アマゾン細胞が大量に含まれたあの液体だった。
「グゥ〜ット!! これで計画を実行に移せるね」
「しかし、奴等がここに来てしまった以上、他の研究サンプルは……」
「それは放棄するしかないよ」
にべもなくスタークは惜しそうに物申そうとした研究員の意見を切り捨てる。
「今後のことを考えれば、まぁ惜しいかもだけどいくつかは本部に送ったんだ。状況が状況なんだし、この拠点と諸々は放棄すべきだと思わない?」
至極真っ当な意見に研究員は何も言えなかった。敵が侵入して来たことはとうに察知している。しかしこの施設で研究していた資料、そして
成功例の溶原性アマゾン細胞のサンプルを捨て去るのは長期間ここで研究していた彼にとって惜しいことこの上ない。
だが、命あっての物種。
背に腹は変えられない。
「失礼しました。では、早く避難を」
「元からそのつもりだよ……と言いたいけど、そうは問屋が卸さないようだね」
バァァンッッ!!
爆発音と共に自動ドアが破壊され、雪崩れ込むが如く武装した4C隊員が一斉に銃を構える。
耐久性の高い繊維で編み込まれた白い服装と同色の防弾ベストから、ホワイトフィール部隊だろうとスタークは内心結論付ける。
「動くな! 両手を頭の後ろにやれ!」
隊員の一人がそう叫ぶ。研究員は渋々といった様子で従い、スタークは特に抵抗の意思を見せず素直に従った。
「これは何とまぁ……大所帯で来たもんだね」
「口を閉じろ。発言は許可されていない」
「固いこと言うなよ。そら、選別だァァ!」
しかし実際のところスタークが大人しく言われるがまま等、有り得なかった。
選別と称して彼女が隊員たちに向け放ったもの。それは紫の菱形を成したエネルギーの塊。
それを自らの頭上にて発生させ、放たれたエネルギーは音速をもって隊員全ての頭部へと命中し、そのまま絶命させた。
「あぁ〜危ない危ない。計画に使うコレをやられちゃ困るってのに」
そう言ってアタッシュケースを撫でるスターク
だが、時間をかけず無傷で4Cの中でも精鋭に入る四部隊の隊員らを抹殺せしめるその手腕は研究員に驚愕と畏怖を抱かせるのに十分だった
。
しかも、あくまで余裕だったのだ。
余裕に10人をほぼ同時に殺して見せた。
実力の程が馬鹿でもよく理解できるだろう。
「本当ならフォトンミストでとんずらする方がいいんだけど……まぁ、いっか」
フォトンミストとは、ヴィスト・ネクロが長距離の移動を短時間で済ませる為のあの瞬間移動現象である。幹部は全員フォトンミストを生成する器官を体の内部に施されており、意識次第で体から噴出させ、自身をその場から瞬時に離脱することが可能となる。
またプロフェッサーはフォトンミストを他者に対して使用することができ、距離の感覚と相手の位置を把握さえしていれば距離にどれだけの長い間があろうと、問題なく他者をその場から離脱・移動させることができる。
かつてザジスが13都市に侵入し、アルファと交戦中に消え失せたのもプロフェッサーだけが持つフォトンミストの力によるものだ。
当然他の幹部にこのような芸当はできない。
では、何故プロフェッサーだけなのか?
そんな疑問が浮上するが現状その理由を語れるのは、そう采配した十面姫のみ。ちなみに幹部以外ではAランクが使用することができるが、幹部のように体内に器官はなく、代わりに錠剤カプセルの形状をしたアイテムを必要とする。
このフォトンミストの発案・発明者は他でもないスタークだ。
彼女は幹部とは違い、体内に器官もなければ、アイテムも使わずに行使する事が可能で、どういった原理かは誰にも分からない。
ともあれ……どうやら彼女はフォトンミストを使う気はないようだ。
「4Cがどの程度なのか見ておくのもいいかもね。で、君はどうするの
?」
スタークはそう言って、研究員を見る。
「ボク個人としては逃げるのがオススメだけど?」
「……いいえ。これでもヴィスト・ネクロの一員。我が牙にかけて戦います」
そう言って研究員は身を守る防護服と顔を保護する為のガスマスク。身に付けたコレらを内側から引き千切るかのように、破り捨てていく。
そして、人としての形態ではなく、蒸気と共にアマゾンとしての姿が現れる。
それは、ハイエナだ。
ライオンと犬猿の仲と称され、獲物を横取りするイメージの強い肉食獣。最大の武器は硬い骨を容易く噛み砕く顎の力だろう。
アマゾンである為、普通のハイエナの数倍にまで引き上がった力は鋼鉄を紙のように引き千切ることが可能となっている。
硬度に自信のあるアマゾンでも、やられれば一溜りもない。
それほど強いのだ。
とは言え、この研究員のランクはあくまでB。四部隊の隊長……例に上げればバッファローアマゾンの赤松相手では容易くいなされるのがオチであろうが。
「じゃあ、別々に動くとしよう。キミは雑魚の相手をお願いね。ボクは、四部隊の隊長さん達と少し遊んでから行くよ」
「……あの、しかしスターク様はソレをお持ちでは……」
言いづらそうに指摘するのはヴィスト・ネクロが計画する本作戦において重要なファクターである溶原性アマゾン細胞。その完成サンプルだ
。
これを持っている以上、気楽な心構えで4Cを相手に戦闘など、果たして正しいか? 少なくとも研究員はそうは思わないだろう。
だったら相手になどせず、逃亡に徹した方がいい筈なのだ。
「あー、なるほど。確かに計画に必要なコレに何かあったらマズいよね
まぁ、それは分かる。けど問題ないよ」
そう言ってスタークはハイエナアマゾンの目を覗き込むように視線を向ける。不思議とバイザー越しにうっすらと見える瞳は、紫色の妖しい光を宿していた。
「質問はしない。そのまま行ってね」
「……了解しました」
困惑した雰囲気を途端に無機質なモノヘ変化させたハイエナアマゾン。
彼は彼女の言われた通り、一切無言のまま4C隊員が入って来たドアとは別の右側のドアからそのまま監視室を去っていく。
それを確認したスタークは反対方向の左側にあるドアから監視室を後にする。
長い通路を特に慌てず、騒がしくしたりせずといった様子を保ち、アタッシュケースを片手に優雅で落ち着いた足取りで歩み進んでいく。
「そっちはどう? プロフェッサー」
ふと、そんな呟きが誰の耳に届かず虚空へ消える……。
※ ※ ※
「撃てぇぇッ!!」
雄叫び上がる声を合図に複数の銃撃音が鳴り響く。無数の薬品の液体らしきものが入った円筒状のタンクと何らかの実験をしていたと思われる真新しい人間の死体が乗せられた台。
そこそこ広さを持つ実験室では研究員が変身したアリアマゾンを相手に順調に殲滅していた。
一応、言われた通り任意同行を求める警告をしたが、それに素直に従う訳もなく。
殺意を露に、牙を剥いて襲いかかって来たアリアマゾンをギガの銃弾で次々と仕留めていく。所詮研究員は皆DかBクラス程度のアマゾン。
一般人でもアマゾンに対する知識があれば殺すことはできずとも、対処は簡単にできてしまうような輩である。
故に精鋭部隊の一つ……蒼いカラーリングの特殊スーツにライトブルーの強化パワードスーツを身に纏った青井部隊にとって、大した敵ではなかった。
「隊長! 鎮圧完了しました」
「ええ。ご苦労様ですわぁ」
青井部隊が突入した出入り口から、一人の女性が一歩一歩と。
ゆったりとしながらも、何処か油断も隙もない張り詰めたような雰囲気を纏うその女性は、戦場には似つかわしくない服装だった。スカイブルーを基調とし、三日月の模様が全身に刺繍され、首元が幅広く。両腕と腰と足を覆うスカート部位に白のフリルがある貴族風のドレス姿。
誰の目から見ても、似つかわしくないと思うのは明白だろう。
命を奪い合う戦いの場にドレスなんて、とそう思うのが普通だ。
だが彼女……『青井雉咲』にとってコレは正装なのである。誰が何と言うともだ。
「あ、青井さん来てたんだ」
別のドアを勢いよく蹴り上げて入って来たのは、アリア・ホワイトフィール。白髪のボブカットヘアに赤い瞳が特徴的な少女で、部隊の証でもあるホワイトカラーのタイツ系統の特殊スーツを装着している。
ホワイトフィール部隊は俊敏なスピードに特化した戦術、戦法を専門とする為、こうした軽快でスピードを十全に活かせることが重要なので他の部隊と比べると重装備ではない。
その部隊を指揮する彼女はどういう訳か。
一人で青井が率いる部隊が制圧した研究室へとやって来た。
疑問に思いつつ、内心ある予想を立てながらも青井は一応問いを投げかけた。
「アリアさんお一人?」
「はい。私の部隊は指定した階層の制圧が完了しましたから。個人的な所用で残りのアマゾン見つけてはアレやってたんですけど、いつも通り適当に一人で突っ走ってたら、こっちに来ちゃいました!」
「……そうですか」
活気よくハキハキと素直に答えるアリアに対し、思わず呆れた溜息を青井は自身の口から漏らしてしまった。既に彼女は知っている事だが、アリアは部隊を率いる隊長の立場にある人間とは思えない程、単独先行を好むという厄介な性分を抱えている。
とは言え、ただ無責任に自分の部隊を放っておくなどと、立場に伴う責任を理解してない様な愚行はしない。状況を観察・検分し、それに応じたタイミングで単独行動を開始する。
今回の場合、アリアが率いるホワイトフィール部隊は北側の全階層各エリアにおける制圧・敵の無力化を担当しており、彼女の言葉通りなら既に制圧は完了しているのだろう。
無論、襲い掛かって来たアマゾンも駆除済み。
ソレがどんなモノであれ、与えられた任はきちんとこなすのがアリアである。つまるところ『やるべき事はやったのだから、自分の行動に関して文句言うな』といったある種、傲慢とも取れる性分の持ち主。
ちなみに付け加えておくと彼女が単独行動を好む理由は『一人がやり易い』とか、『他人がいると足手まとい』、といったテンプレートなものではない。
彼が単独行動を実行するのは"自分が開発した武器を周りを気にせず
、存分に敵に対して実験したいから"、という理由。アリアが『アレをやっていた』と言っていた意味がコレだ。
控えめに言っても、マッドサイエンティストな動機だろう。実質彼女は4Cの一部隊を指揮する隊長であると同時に技術顧問の研究者としての側面も持っているので、科学者であることは事実だ。
それだけなら別にいい。
文武両道という言葉を現実にこなしているのだから。確かな結果を残している以上、それ自体をとやかく言うのは合理的ではないだろう。
しかし問題なのは性能の検証や実験を実戦現場で直にやってしまうことなのだ。
曰く、ぶっつけ本番の方が手っ取り早く見定められるから、らしい。
頭脳を扱う研究者にも関わらず、脳細胞の代わりに筋肉の繊維をこれでもかと頭に詰め込んだような理屈は、誰の耳から聞いても到底理解できたものではない。青井もその一人だ。
仮にいたとすれば、かなりの変人に違いない。
そんな彼女だがマッドな一面はあれど、だからと言って誰かを傷つけ、最悪命を奪うことを平然と良しとする性格ではない。
そうでなければ自分から部下の側を離れるような真似はしない。自分の個人的な実験で部隊の仲間を傷つけたくないからこそ、アリアは単独行動を取ろうとするのである。とは言え……常識的に言えば、そもそも新しく開発したばかりのものを、現場で即試すような実験をしなければいい話なのだが。
「で、いつものアレはもうやり終えたのですか?」
「はい! いや〜おかげで良いデータが手に入りましたよ!」
「たしか……」
何かを言おうとした青井の通信端末にコールが入る。アリアにもだ。
『こちら赤松。西側の各階層及び、全エリアの制圧が完了した』
『黒崎部隊、東側もOKだ。そっちは?』
通信で真面目な口調で報告する赤松と、面倒な仕事が終わった風体で気怠そうな報告を入れる黒崎の声。
内容は制圧完了の報せだった。
「終わったのですか? こちら南側も完了ですわぁ」
「ホワイトフィール部隊も同じく!」
『そうか。とりあえずこれでこの建物の東西南北、各階層全域を攻略したってところか?』
「色々とソレらしいモノ沢山を見つけました。やはり、ここは確実にクロで間違いないですね
アリアの言葉に口には出さないが東側にいる黒崎は内心同意する。
建物を探索すればするほど、人体実験の過程で死んだと思わしき老若男女問わないコロニーの市民と思わしき人間の死体。
中には一体何をどうすればこうなるのか、と問いたくなる程に通常の人体の形から、大きく変質してしまったモノまである。
はっきり言って、胸糞が悪過ぎた。
「!!ッ」
突然、何かが自分達めがけ降下して来る気配を逸早く感じ取った青井は、ドレスのスカートを惜しみなく押し上げ、"足輪の付いた右脚"で
その何かへと蹴りを繰り出す。
まともに蹴りを喰らったにも関わらず、その何かは床へと這い蹲るように着地すると、そのまま二本の足で立ち上がる。
『……』
それは、漆黒のアマゾン。
アルファとイプシロンが討伐したあの黒いアマゾンに形状こそ似ているが、両腕。両足。胸。
それら三つの肉体パーツに紫色に妖しく輝く、まるで"蛇が巻きついたような"謎の装飾らしきモノを身につけていた。
「青井さん!」
「部隊のみんなは下がってた方がいいですわぁ。だってコレ……」
結構、お強いわよぉ?
※ ※ ※
「やっべぇぇ! 此処どこだよぉぉ!!」
ゾロメは何故か一人で、少し錆びれた建物が密集している路地裏にいた。理由は単純にハグれてしまったからだ。ゾロメとしてはコロニーへの来訪が今回で初めてだったこと、更に性格も災いして、みんなより先んじて見たこともない新しいモノで溢れた街に目移りしていった。
しかも気分的に高揚していたので仲間のことに気配りできず、勝手に
一人で突っ走って、この様と言うわけだ。
おまけに道中、はしゃぎまくっていたせいか連絡する為に必要な例の端末を何処かに落とすという、これまたベタな事をやらかしてしまって
おり、当然ながらみんなと連絡が取れないで適当に彷徨っていたら、訳も分からずここへ来てしまったのである。
「はぁぁ。どーすんだよコレ。なんか人もいないし、誰かいりゃあな…
…」
人がいれば4Cセンターへの道を聞くことができ、そこに戻って仲間のみんなに連絡を入れるということが可能だが、残念ながら人っ子一人いやしない。
ならば他の案をと頭を捻って、ゾロメなりに考えてもコレと言った案が全く思い浮かばない。
このまま当てもなく探さなきゃいけないのか。
そんな考えが不意に頭を掠めたその時。
「どーしたのお兄ちゃん」
背後から小さな女の子の声が耳朶に届く。
振り返って見てみれば案の定五歳位の女の子がいた。灰色のセーターを着て、ピンクのスカートを履いたショートヘアの女の子は、不思議そうにゾロメを見ていた。
「な、なぁ! 4Cセンターって建物に行きたいんだけど、教えてもらえないか?」
「4Cせんたー? 分かんない」
淡い希望を抱いたゾロメだが、最も容易く打ち砕かれた。全く知らないようである。
「そ、そうっすか……」
「あ、けどお父さんなら知ってるかも!」
だが、天はゾロメに微笑んだようだ。女の子は自分は知らずとも、自分の父なら何か知っているかもという提案を示し、ゾロメはそれに乗る
ことにした。
このまま彷徨っていても、目的地に辿り着けるかどうか分からないからだ。
「じゃ、じゃあお父さん……だっけ? その人のとこに案内して貰ってもいいか?」
「うん! ついて来て!」
そう言って女の子はゾロメの手を引いて、案内を務める事になった。
感想待ってます!