ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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今回は新ライダーのお披露目回です。この為の伏線、実はチラッと貼ってあります。



生きとし生けるものを喰らう凶獣の王 part1

 

 

 

 

 

 

 

 空白。

 

 その言葉通り、何も、入ってこない。

 

 降り続ける雨。雨に紛れて聞こえる筈の肉を喰らう生々しい音や苦痛と恐怖に彩られた悲鳴の数々。

 

 それらの光景や音が情報として全く頭に入ってこない。

 

 耳が正常に機能していようと、関係ない。

 

 

「……あー、うん。やっぱりショックだよね」

 

 

 ナオミは……スタークは、ナオミの声で淡々と確認するようにそう呟く。

 

 

「でも受け入れてよ。そうしてくんないとボクも困るからさ」

 

「……んで」

 

「ん?」

 

「なんでナオミがスタークなんだァァッ!!」

 

 

 悲痛な叫びが周囲に響き渡る。それは単純な声だけではなく、ギガを高め放たれた衝撃波を追随させた。

 

 衝撃波は声と同じように周囲に広がる。一時的に連続して降り落ちる雨粒を弾き、雨で濡れた地面の泥を吹き飛ばす。13部隊は咄嗟に顔を守る動作を取ったが特に何かある訳でもなく、彼等の方に衝撃波の影響が来ることはなかった。

 

 

「騙してのか……俺を、みんなを!!」

 

「結果的にね」

 

 

 冷たく、淡々とした物言いだった。

 

 それを聞いただけでヒロは無意識に両腕をアマゾン化させた。怒りだ。

 

 どうして、そんなことを平気で吐けるのか。

 

 何も感じなかったのか。

 

 全てが嘘だったのか。

 

 

「これも全部、"オレ"の計画の為だった」

 

「計……画?」

 

「ああ、そうさ。"コドモたちによる、コドモたちの為の、平和に暮らせる新世界"のな」

 

 

 近くにある倒れ込んだドラム缶を椅子代わりに座ると、スタークは自身が思い描く計画の内…その"一端"を曝け出した。

 

 

「あの日、オレが海で言ったことに嘘偽りはない」

 

 口では言うが、言葉だけで真偽を見極め、真実だと肯定することなどできない。

 

 それでも、そうだとしても。どう言う訳か彼女の口から紡がれる言葉には納得させてしまうだけの妙な確信要素があり、単なる巧妙な話術によるものなのか、それとも……。

 

 ともあれ、語りはほんの数秒の暇さえなく続けられた。

 

 

「不老不死と引き換えに人間としての在り方を捨てて、プランテーションで引き込みを決めたと思えば、ありとあらゆる時間を夢の中で過ごす堕落した精神をぶら下げて、コドモたちに死を押し付ける」

 

「……夢?」

 

「プランテーションに住んでるオトナはな、頭の中の願望的イメージを現実と遜色ないほど忠実に再現することのできるVR装置を使って、ありもしない仮想現実の中で楽しい思いに浸り続ける、そんなろくでもない存在なんだよ」

 

 

 スタークが語ることに嘘偽りはない。その事実を知っているのは、彼女だけではないからだ。

 

 

「お前も知ってるだろ?」

 

 

 その言葉を向けられたゼロツーは、眉間をピクリと微かに動かした。

 

 

「それが人間のあるべき姿か? それが人間の形として成立するのか?否ッ! ありえないんだよッ!!」

 

 

 スタークは声を張り上げ、立ち上がる。

 

 

「この世界はね、人が、人類がいて当然なのさ!! 人間! 人間! ああ。本当に素晴らしい生命体だよ。その感情は、信念は、無数の未来を生み出す可能性に満ち溢れてるんだからッ!!!」

 

 

 紡がれる言葉は、人間というモノに対するある種の賞賛だった。

 

 

「"ボク"は、そんな人間が大好きなんだよォォォォッ!」

 

 

 狂ったように叫び、捲し立てる様から見えて来るのは、まさに人間という存在を讃える讃歌だ。

 

 だが、それはどこまでも歪なモノで、簡単には言い表せないほどの狂気を孕んだ危険性が覗かせている。

 

 

「でも、つくづくAPEは存在自体愚かだよ。不老不死を得るのはいいけど、その代償に人間性を簡単に捨てた。愚かでも特に極まってる」

 

 

 激しい狂喜の次は、静かな憤怒。

 

 バイザー越しの瞳がそれに呼応するかのように、妖しい紫の光が僅かに灯る。

 

 

「だから、奴らを消すことにしたよ」

 

「……なんだって?」

 

「消すんだよ。いや、崩壊させるって言った方が正しいか? まぁ、今すぐじゃない。近い内にね」

 

 

 それは、あまりに聞き捨てならない言葉だった。呆気に取られるコドモたちを尻目に、スタークは続けた。

 

 

「APEはボクの理想とする新世界にとって、ただお荷物のゴミだ。何の価値もない。なら、さっさとお掃除しようって訳」

 

 

 まるでその行為自体が、目の前に落ちている掌に収まる大きさのゴミをその手で取り、ゴミ箱にでも捨てる程度の事であるかのようなあまりに自然的で、あまりに常識の範疇を逸脱したスタークの言葉。

 

 もし、まともに聞けば、あるいは相手が相手なら非現実的な妄言と唾棄され、捨てられてもおかしくなかった。

 

 が、彼女の口にする言葉には言い表せない真実味が宿り、簡単には妄言と取れない一つの確信を芽生えさせるものだった。

 

 

「正体バラして、目的も言ったし、ここらで"返す"としよう」

 

 

 

 パチンッ。

 

 

 勢いよく鳴らすのは、フィンガースナップと呼ばれる指と指を擦り合わせ、一気に弾くように離すことで音を出す動作だ。

 

 何故いきなりそんなことをするのか。

 

 コドモたちの訝しげな視線を気にすることはなく、スタークはあるものを取り出す。

 

 端的に言うなら、『金色の輪』と表現すべきか。大きさ、幅を考慮するに二の腕部位に嵌める腕輪だろうか。

 

 圧さの薄い円形の装飾があり、それには口を思わせるギザギザとした彫りが施されていた。

 

 更に目を思わせる紫色の宝玉が表裏にしっかりと嵌め込まれ、腕に固定する為の部位には古代の文明のものを彷彿とさせるカクカクとしたラインが刻み込まれている。

 

 宛ら。喰らいつけば、二度と離すことはない凶暴性を発揮する肉食獣を古代的な意匠で表したような、そんなデザインだ。

 

 

「今回のヴィスト・ネクロの目的はね、溶原性アマゾン細胞の運用実験と戦力の大量生産なのさ」

 

 

 スタークは、腕輪を愛おしそうに恍惚な笑みで見つめながら、組織の目的と"自らの目的"を語り聞かせる。

 

 

「開発に成功した溶原性アマゾン細胞がどれ程広がって効果を成すのか。それを調べるのと、もう一つ。アマゾネストを大量に生み出して戦力の増加を図る……その為に、溶原性アマゾン細胞はこの街にバラ撒かれたって訳」

 

 

 溶原性アマゾン細胞の特性は『人に感染しアマゾンへと変える』ことだが、それは同時に敵対勢力側に破壊と混乱を与えつつ、感染によって大量にアマゾネストという兵士を無尽蔵に量産できるというメリットも生じる。

 

 それはまさしく"兵器"としてこの上ない最高の性能だろう。甚大な被害と混乱を与えつつ、戦力を大量生産できるのだから。

 

 この二面性が現実に利用された結果、今こうして様々な惨劇が引き起こされている。

 

 ヴィスト・ネクロは更なる力を獲得し、コロニーに壊滅的なダメージを与える。

 

 それが……"組織の筋書き"だ。

 

 そしてコロニーに与える被害をより甚大なものにする為、下準備として溶原性アマゾン細胞を通常のアマゾンへ投与し、"抑制剤を意に介さない凶暴性"を発揮させ、暴走させることもあった。

 

 それにより、溶原性アマゾン細胞はランクの低いアマゾンを中心に抑制剤の効力を阻害させ、アマゾンとしての本能を活性化させることが分かり、惨劇をより悲惨で混沌とした状況に落とすのに一役買ってくれた

 

 ここまでは、筋書きに沿ってはいる。

 

 だが、彼女の……ブラッドスタークの思惑はここから始まる。

 

 

「感染によって増産されたアマゾネストは……およそ17万3千体か。いいね。これで必要なモノは揃ったァァッ!!」

 

 

 それはまるで、この時を待っていたとばかりの歓喜と期待に胸を膨らませるかのような、そんな声を高らかに金色の腕輪を天に向けて翳す。

 

 

「イッツショータイム!! 面白いモノを特等席で見せてあげようかッ!」

 

 

 その言葉と共に腕輪は、太陽の如き黄金の光を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃てぇぇぇぇぇぇッッ!!!!」

 

 

 叫ぶ隊員の声に呼応し、無数の銃撃音が周囲に響き渡る。弾丸の雨は暴走するアマゾンを、アマゾネストへと容赦なく撃ち貫く。

 

 が、あくまで倒れるのは暴走アマゾンのみ。

 

 アマゾネストは驚異的な回復力で銃創を消失ささせてしまう為、弾丸は意味を為さなかった。

 

 

「だーもうッ! なんだよアイツら! ギガのエネルギー弾やギガを詰め込んだ実弾が全く効かないって、どーゆー理屈だよ!!」

 

 

 アサルトライフルのトリガーを引き、銃撃を何十発も放っているにも関わらず倒れる気配を見せないアマゾネストの姿に、隊員の一人が理不尽だとばかりに叫び散らす。

 

 

「知らねーよ! とにかく今は撃ち続けるしかないだろ?! もうじき精鋭部隊が援護に来てくれる筈だ!」

 

 

 その隣で、隊員と同じくもう一人の隊員が必死に撃ちながら、精鋭部隊による援護を期待していた。

 

 

「んなこと言っても保証あんのかよ?! マジでコロニーはあちこちでヤバいことになってんだぞ!!」

 

「かもだけど! 希望くらいはあっていいだろ!!」

 

「絶望に変わったらマジ笑えねーけどなッ!!」

 

 

 そんな会話を繰り広げている内に一匹のアマゾネストが一気に接近して来た。

 

 

「こ、こいつッ!」

 

「クソッタレめ!!」

 

 

 アマゾネストが腕を振り上げ、隊員二人の首を刈り取ろうとした瞬間。

 

 それは、突然起きた。

 

 鋭利な爪が生えた手を挙げたまま、アマゾネストはその動きの全てを停止させたのだ。

 

 まるで最初から命など宿っていない銅像のように、つい先程まで凶暴的に荒れ狂っていた猛獣は、指の一本さえも動かさず、ただ振り上げる

体勢のまま硬直し佇んでいた。

 

「な、なんだ? どうした?」

 

 当然、隊員二人にこの突然起きた状況を説明はおろか、ほんの一握りさえ理解することもできやしない。

 

 見れば隊員2人に襲いかかって来たアマゾネストだけでなく、他のアマゾネストも全く動かず、ただその場に佇むだけ。

 

 やがて。アマゾネストたちは次々と淡い光を放ち始める。

 

 この説明も理解も不可能な状況は、他の場所でも見られた。

 

 

「あらら〜? ど〜したのかしら?」

 

「……止まった、としか言えないな」

 

 

 レッド・バロン部隊を率いる赤松と、青井隊を率いる青井。

 

 彼等もまた自分達の部隊と共にこの暴動の鎮圧に当たっていたのだが

、アマゾネストたちは急に動きを止め、そのまま硬直。

 

 しかし暴走したアマゾンらは、そのまま止まらず暴れ続けている為、アマゾネストたちの事は一先ず保留とし、アマゾンの捕縛もしくは駆除を続行した。

 

 

「あらら〜。ほんとによく分からない事の連続ね〜」

 

 

 青井はそう言いながら人間態のまま、腕から触手を伸ばし、それを高速に振るうことで暴走アマゾンの首や手足を切り落としていく。

 

 同時に肉体を麻痺させ、身動きと再生力を封じる程度に弱めた毒を注入。これで再生できないので復活することもなく、そのまま仮死状態に入らせることができる

 

 方法としては残虐過ぎるが、暴れ狂うアマゾンを相手にできるだけ殺さず、且つ迅速に捕縛するのであれば、この方法しかない。

 

 麻酔弾はあったのだが、つい先程使い切ってしまった。

 

 やはり、使用対象が多いと他の方へと分配するので限りが出てしまう

 

 

「まったく。今日は厄日だ!」

 

「同感ですね〜」

 

 

 暴走するアマゾンを強制的に、己の自慢の腕力で止めていく赤松の声に同調する青井は相変わらずえげつない方法で戦闘不能にしていく。

 

 アマゾンでなければ、間違いなく即死だっただろう。

 

 ちなみに赤松は素早く首を両腕で締めて、力を込めて勢いよく捻じ曲げる形で仮死状態にしており、こちらもこちらでやっている事はエグいものだ。

 

 精鋭部隊の隊長2人の活躍によって、街の一区画のアマゾンたちの暴走を見事に収めた頃には活動停止状態となっていたアマゾネストは、その身が淡い紫色の光を放つと共に液状に溶解。

 

 そして液状の黒いモノと化したアマゾネストの"中にあった"赤や青の球形状のエネルギーが無数に粒子化。

 

 そのまま、ある方角へと向かっていった。

 

 

「おいおい。どうなってんだよ」

 

「な、なな、なんですかぁコレぇぇ?!」

 

 

 違う場所で鎮圧に当たっていたクロウ部隊を率いる黒崎と、ホワイトフィール部隊に指示を送りつつ、向かってくるアマゾンに対応していた

アリアの両名は自分達が今目にしている光景に愕然と、疑問を含んだ言葉を各々零すしかなかった。

 

 赤と青。粒子状に束となって畝り、曲がり、波のように上下左右にゆらゆらと蠢く"ソレ"が向かっている"先にあるもの"。

 

 それは……黄金に輝く金色の腕輪。それを天へ掲げているスタークの下へだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッハッハッハッハッ!! コイツはイイ! まさか、ここまで貯められるとは思っても見なかった!」

 

 赤と青の粒子状のエネルギー。

 

 それが一本の川のように。生物ならば必ず持つ遺伝子の螺旋に似た形へと一本に束ねられ、腕輪へと吸収されていく。

 

 

「い、一体何が起きてるの……?」

 

「分からない……けどッ! 止めた方がいい気がする!!」

 

 

 イチゴの漠然とした独り言の問いに、ヒロは明確な答えを言えなかったが自分の直感から、今起きている行為は止めなければならない。

 

 直感から導き出された判断に従って、ヒロはスタークを目標に一気に駆け出す。

 

 あの腕輪は危険だ。

 

 アマゾンとしての危機察知における直感が告げる以上、おそらく間違いはない。

 

 スタークとの距離はそう長くはない。あとは破壊する為にアマゾン化した両腕の内、右腕を振りかぶり、そのアームカッターで破壊する腹積りだ。

 

 速度は決して減らさず。腕に込める力も、同じように油断なく腕輪を破壊するまでは抜く気はないと、そう決心した上で振るうアームカッターの刃が腕輪に到達しようとした、まさにその瞬間。

 

 

「おっとっと。ダメだよヒロォォ」

 

 

 ピタリと腕が止まる。

 

 それどころか足も、胴体も、何一つ動かすことができない。

 

 一瞬ばかり混乱してしまったが、原因はすぐに

 分かった。

 

 腕輪を持った手とは反対のもう片方の手が掌を見せるように開かれ、ヒロに向けられると同時に紫色のエネルギー波を放っていた。

 

 ケンゴを拘束し、消滅させたあの技だ。

 

 

「あと、もうちょっとで終わるからさ。ちょい大人しくしてて」

 

『ヒロ!』

 

「ダーリン!」

 

 

 13部隊が、ゼロツーが叫ぶ。

 

 ヒロは必死に抗うものの、身体は巨岩の群れにでも囲い挟まれたように動かず。

 

 当然だ。

 

 常人なら数秒で死に絶えてしまうほどの圧力が降りかかっているのだから。それを身に受けて動けるなど、決して理を逸脱してはいない。

 

 やがて。エネルギーを吸収し終え、腕輪の輝きは徐々に収まり、最終的に消えてしまった。

 

 しかし、それでいい。

 

 腕輪には、膨大な量のエネルギーが詰まっているのだから。

 

 

「ほ〜いっと」

 

 

 金色の腕輪は、完成を果たした。

 

 もう抑える必要がなくなった為、軽い声と共にヒロをエネルギーの圧力を利用して後方へと放り投げ、そのまま解除。

 

 

「ぐぅッ……ナオミ……」

 

 

 放り投げられ、背中から雨で泥状と化した柔らかい地面にダイブしたおかげか、衝撃のダメージは全くなかった。

 

 だが、それとは別に負ったものがある……精神(こころ)だ。

 

 ヒロが苦悶の声の後に零した、かつてのパートナーで。仲間だと思っていた少女の名。一体いつから、彼女は自分達を欺いていたのか。

 

 本当は、違うんじゃないのか? 

 

 姿の見えない敵に意思を奪われ、行動を抑制され、操られている可能性だって無くはない筈。

 

 スタークへの変身も、エネルギー波も、何かしらのトリックで自分達を騙す為のものに過ぎないのだと。

 

 そう思いたかった。

 

 だが、無情にも現実は残酷である。

 

 

「そんな目で見られてもさ、事実も現実も何も変わらないよ。"私"がスタークなのは」

 

 

 女性的なスタークとしての口調でも、男性的なスタークとしての口調でもなく。

 

 ナオミという、一人のコドモだった少女の口調に変えて、優しく。

 

 そして、突き放すように言った。

 

 

「…………なんでよ。なんでなのッ!!」

 

 

 しかし、それでも縋るコドモがいた。

 

 ナオミの親友……イクノが、今まで見たこともない位に取り乱し、声を張り上げる。

 

 

「私……大好きだったのよ。ナオミのこと。なのにスタークだったって……急に言われてもわけが分んないよ!!」

 

 

 涙か雨かはもう分からない。それでも彼女は確かに泣いていた。親友だった筈の少女がスタークという敵だった、などと。

 

 突然言われて受け入られる道理はない。

 

 嘘だの冗談なんだと。そんな言葉で片付けてしまえれば、何気ないふざけ合いだった。

 

 でも、ナオミはこんな形でスタークとしての姿を、隠し欺いていた正体を暴露した。

 

 極め付けは、異能の力だ。

 

 人を拘束し、消し去るエネルギー波を出すコドモなど、存在し得ない。

 

 いたとすれば、それはコドモの姿に偽装した何か……だろう。

 

 その何かが、コドモたちの眼前に立つブラッドスターク本人なのだ。

 

 

「私もだよ。今も、これからも好きだよ」

 

「だったら!」

 

 

 まだ引き戻せるかもしれない。

 

 ふと、そんな思いがイクノの脳裏を過りる。

 

 それが正しいことなのか。そう問われれば、人の倫理としては間違っているだろう。

 

 コロニーに未曾有の惨劇と破壊を齎した組織の企てに加担するどころか、それを利用することで自分の目的を達成させたのだ。

 

 元凶よりも尚、質が悪い。

 

 それ相応の裁きを受けなければならないのは明白だが、それでもイクノは彼女に向けて手を差し伸べざる得ない。

 

 だって、それだけ大切な親友なのだから。

 

 

「でもね、まだその時じゃない」

 

 

 その親友の手を、スタークは……ナオミは払い退けた。

 

 

「私はみんなに人間として幸せになって欲しいだけなの。でもね、その為にAPEを……コロニーも消さなきゃいけない。綺麗さっぱりにね」

 

 

 それはAPEだけでなく、コロニーさえも敵に回すという、一種の宣戦布告だった。

 

 

「ッ!……ふざんなッ! コロニーは関係ないだろ!!」

 

 

 ゾロメの疑問は尤もだ。

 

 APEのオトナたちを人間とは認めない。

 

 だから、死をもって消し去る……というのは倫理的に考えて破綻はしているが、個人の動機としては成立する。

 

 しかしコロニーに住む人々は良くも悪くも、人間らしい感情をもって日々を生きている。少なくともオトナとは違う。それをゾロメはハルとその両親たち家族を通じて知ったつもりだ。

 

 

「……みんなに聞くけど、人間の定義ってなんだと思う?」

 

 

 人としての定義。何をもって、どういった条件が満たされれば、人間と呼べるのか。

 

 そんな意味が込められた問いに13部隊は答えられなかった。

 

 

「急になんの話だ……」

 

 

 ゴローがその問いの真意をまた問いで返す。

 

 

「私が思うに人間ってのはさ、自分より大切な他の誰かの為に痛みを伴うのだとしても、それを恐れず、尽力する信念を持った者こそ相応しいと思うの。でも、コロニーはその基準を満たしてない」

 

「それだけの為に、消そうっていうの?!」

 

「うん。そうだよミク。それだけだとしてもね、私にとってはすっごく重要なんだ」

 

 

 平然と笑みを浮かべて言う姿はまるで、大した事ではないことをただ普通に肯定しているようだった。

 

 APEとコロニーを消し去ると。冗談でもなく宣言しているのだから、これが普通に答えられる筈がないのは明白だ。

 

 それでも、至って平然としたスタークの姿は果てしなく不気味なものがあった。

 

 

「じゃあ、そろそろ見せてあげる。私の変身を」

 

 

 そう言って、スタークはナオミの姿へと戻ると手に持っていた金色の腕輪を左の二の腕へと装着。それに合わせて、腕輪の宝玉が輝き出す。

 

 

「アマゾン」

 

 

 たった一言。

 

 それはヒロや鷹山がアマゾンライダーへと姿を変える際の、キーとなる言葉。

 

『ヴィルム……フェイス・エン』

 

 腕輪から男性とも女性とも付かない独特な電子音声が吐き出され、紫色と橙色の業火の如きオーラがナオミの全身を覆い尽くす。

 

 その様は、やはりヒロや鷹山の変身時と似たものだが、こちらの場合は噴き出るオーラの色彩が一つではなく二つである。

 

 やがて。数秒と経った後にオーラは消え去り、ナオミの姿もない。

 

 代わりに立っていたのは……アマゾンライダー。

 

 ヒロや鷹山、ナインアルファとも異なるそのライダーの名は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アマゾン・ヴィルム。以後、お見知り置きを♪」

 

 

 仰々しく、芝居がかった雰囲気を纏い両腕を広げる新たなアマゾンライダーは、誕生を知らせる産声の代わりにそんな台詞を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 







ついに登場しました……。

今作におけるラスボスにして、アマゾンライダー。

『仮面ライダーアマゾン・ヴィルム』。

以後作中では『アマゾンライダー・ヴィルム』とも。ちなみに『エン
』というのは、ノルウェー語で"1"を表す数字の名です。

ダリフラは色々と北欧神話要素がある為、北欧神話が伝えられているノルウェー語にしました……"1"、ということはつまり?



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