ギリ間に合いました……(~_~;)
ヴィルム。
この言葉を知る者は数少ない。極、と一文字つくくらいに。
その意味の全貌を知るのは、叫竜の姫と、アマゾンライダーとは異なる『仮面ライダー』の称号を持つファースト。そして、名前が明らかとなっていない、数名の『名無し者(ネームレス)』たち。
この『ヴィルム』が何を意味するのか。
それに関しては、ヴィルムを知る者達にしか分からない。
そんな得体の知れない謎の言葉を名として冠するライダーが今、13部隊の前に現れた。
「ん〜ッ! 最っ高! まさにエネルギーが漲るって感じ」
気分が高揚しているらしく、軽く全身の筋肉を伸ばし、手などを見ては状態を確認するようにグー、パーと開き閉じの動作を取る。
アマゾネストやアマゾンアルファに似た顔ながらも、左右後頭部の突起部位は上へと釣り上がっている。
身体には橙色をしたファイアーパターンのラインが奔り、両腕にはアームカッターに相当する部位が見当たらない。
「せっかくだし、丁度いい準備体操になるものは……」
「オォォォイ……こりゃあ、どういうことだ」
一つの声が響き渡る。ナオミがアマゾンへ変身するのと同時に雨が急速に止んだ為、雨の音に阻害されることなく、その声はコドモたちの耳にもそうだが、人間を遥かに凌ぐ優れた聴覚を持つヴィルムが聞き逃すことはなかった。
「おー、いいところに来たね。ザジスにアレニス」
視線を上へと向ければ、民家の屋根の上に彼等はいた。
ヴィスト・ネクロ幹部『ザジス』と『アレニス』。
その兵隊であるアリアマゾンたちが獰猛な吐息と唸りを吐き出しながら、ヴィルムへと殺意の篭った視線を注いでいた。
「スタークだろ? 随分と派手な衣替えだな。だが、その為だけにこのコロニー中にウヨウヨいたアマゾネストを喰いやがったのか?」
「だとしたら、ぜひ理由を聞かせてもらいたいわ。事と次第によっては、死んでもらうけど」
ヴィスト・ネクロが幹部2名にその部下を引き連れて今この場にいる状況は13部隊にとって果てしなく拙い状況だった。
いっそ、絶望的とも言っていい。
だが……ヴィルムは違う。
自身へと向けられる殺気と殺意。そういった暴力的な感情を隠そうともせず曝け出し、自らという一点へと集まる視線を前に、彼女は。
どういう訳か、仮面の奥で『歓喜』と『期待』を込めた表情を作り出していた。
「いや〜ごめんね、二人とも。実はどうしても力をつける必要があってさ。でも、ただ人間を喰べるだけじゃ駄目なんだよ」
そう言って、ヴィルムは自らの右手を恍惚と眺めるように見据える。
「ヒトモドキどもの特殊なエネルギー……魂って言った方が分かり易いかな?」
「魂だァ?」
魂という、非科学的な胡散臭さを臭わせる台詞を吐き捨てたヴィルムに対し、怪訝な表情を浮かべるザジス。
しかし、あくまで魂とは、分かり易く例えた表現に過ぎない。ヴィルムがアマゾネストから吸収したものは本質的に言えば、"生命エネルギー"という概念が近い。
一般的に生命エネルギーとは、摂取・消化・代謝の三段階をもって生成される熱量を意味するが、生命エネルギーには熱量とは異なる、もう一つのエネルギーが存在する。
それは生物における"意識を構成している因子"。
ソレは科学的に確認されてはおらず、科学の最先端を行くAEPでさえ、その実体が掴めていない。遥か太古の時代から限られた者が知覚することができ、国や地域によっては『マナ』や『オド』、『オーラ』等と様々な名称で呼ばれていた。
共通するのは、それが生命の源とも言える根源的エネルギーであると
同時に不可思議な事象を行使できる未知の力であること。だからこそ、ヴィルムはそのエネルギーに敢えて『魂』という言葉を用いて表現したのだ。
「正確には、魂とか色々な言葉で呼ばれてた一種の特異的エネルギーかな。アマゾネスト化することで、それを強化・向上するようプロフェッサーに任せたのさ」
「?!ッ」
「!ッ……まさか、プロフェッサーが裏切ったと言うの?!」
アレニスが驚愕とばかりに声を上げる。当然だ。万が一裏切ることを想定して自身の端末を埋め込んでいるのだから。
そこでハッと気付く。
ナオミにも仕掛けていた筈。それがどういう訳か、異常なしと信号を送っている……異常に。
「あー、勘違いしないでほしいんだけどさ。私もプロフェッサーも……それにシャドウも。最初っから貴方達の味方じゃないからね全然」
「……色々と、説明して貰おうかしら?」
スタークの今の姿。彼女の言動の真偽。そして…何故自分が埋め込んだ端末が破壊されていないというのに、まだ反逆者の存在を伝えずに『問題なし』、などと。
安全を意味する信号を送り続けているのか。
質問したところで、まともな答えが返って来るなど端から期待していない。取り乱して隙を作るなど、愚の骨頂は犯さない。ただ彼女を戦闘不能に追い詰め、どんな手段であれ吐かせるだけだ。
「シャアラァァッ!!」
先手を打ち込んで来たのは、ザジス。
それに続いてアリアマゾンたちも次々とヴィルム相手に肉迫し、その爪による一撃を。
ザジスは両手を変化させたブレードで切り裂く為に振い上げ、ヴィルムの脳天へと狙いを定る。
だが……それら全て、次の瞬間には無意味と化してしまう。
「フェイス1(エン)のスペック出力は、総じて5%」
ブレードが僅か0.01秒という、目蓋を瞬くよりも早い速さで砕け散り、その衝撃波でアリアマゾンたちやザジスは大きく吹っ飛ばされてしまう。
「たかが5%と言っても……気をつけた方がいいよ? 下手するとすぐに死んじゃうから」
いつの間にか、ザジスが吹き飛ばされた先で佇んでいたヴィルムはザジスの後ろ首を掴み上げては、そんな言葉を吐く。
「は、離せぇ……テメェェェッ!!」
「うん。離してあげるよ」
さながら、縫いぐるみを大して力を入れず、気怠げに放り投げる様な。
そんな簡単な動作でザジスを空高く舞上げる。
その高さ、およそ100m。
「お〜跳ぶ跳ぶ! 全然力なんか入れてないのによく跳ぶもんだねぇ〜!!」
宙へと飛ばされたザジスを笑いながらヴィルムは、変身時に腰部に出現した『ヴィルム・ドライバー』のグリップ部分を握り、軽く捻る。
『バイオキリング……フレアスラッシュ』
ドライバーから流れる音声が、無慈悲にザジスの運命を定める。
鳥の顔を模したようなドライバーの青い目が輝き、ギガが活性化される。それに伴い、灰銀色の外骨格に覆われた腕から炎が迸った。
そして。
「よっと」
軽い動作。埃でも払うそれのように腕から放出された炎の刃は、丁度よく落ちて来たザジスを上半身と下半身の二つに分断してしまった。
「まずは、一匹」
どしゃっ。生々しい鮮血と共に地面に落下する二つの肉塊。
中枢臓器は無事であるものの、灼熱の炎によって断面が大部分的に黒く炭化してしまっているレベルの損傷具合から見て、再生はできなくはなくとも困難であることは間違い無いだろう。
「あれれ? どうしたの? 兵隊アリがそんな呆けて突っ立ってたらダメじゃん」
間髪入れず、今度はアリアマゾン二体の頭部を両手に持ち、まるで知り合いにでも言うような気軽さで忠告を付随する。
「!!ッ 惚けるなッ! 死ぬわよッ!」
あまりの光景に意識が白痴へと赴いたアレニスだったが、すぐにアリアマゾンたちに指示を下し、自身も白い蒸気に包まれながらアマゾンの
姿へと変貌する。
アレニスは、『シロハキグモ』と呼ばれる白い液状の毒性物質を牙に備え、時にはソレを噴射することで身を守る蜘蛛の一種の遺伝子を持つ
『シロハキグモアマゾン』。
一般的に蜘蛛型のアマゾンはずんぐりとした体型が多く、主にタランチュラといったオオツチグモ科系統の遺伝子を持っていることがその原因なのだが、シロハキグモは蜘蛛の種類においてはオオツチグモ科とは別の科の種である為、クモアマゾンとは言え、その容姿は大分異なる。
細身で、女性らしいラインが浮き出た体型をし、蜘蛛の脚のパーツが両腕、腰、両脚に密着するように付随。
体色は白と灰色の二色で構成され、頭部は特に何もないのっぺりとしたものだが、複眼が後頭部に一対存在し、本来あるべき前方には左右上下に並ぶ形で二対ある。
口部は四方に開く形状のもので、左右には鋭利に殺気を放つ毒牙が備わっていた。
「1手目は……5匹ってとこかな」
しかし。アマゾンとしての姿を晒すことで本気であることを示した彼女を意に介さず、最初の一手における目安数を定めた。勿論それが意味する処は……自身が始末する標的であるアレニスとアリアマゾンたちだ
。
「よっと」
アリアマゾンの首が2匹分刎頚され、地面を2回ほどバウンドしながら転がっていく。
アレニスから陣形を組むよう指示されてはいるが、アリアマゾンたちは本能的に察したのだ。
ヴィルムに対して、警戒を上げようと。油断なく構えていようが。陣形など組んだところで何も変わらない。自分たちは生き残ることなくここで死に絶える、のだと。
「これで5匹だね」
もし、ナオミのままであったなら何てことのない笑顔で言っていることだろう。
しかし、その手にはアリアマゾンの首一つが掴まれ、新たに3体の死体が製造された。
うち一つは首がなく、残り二つは中枢臓器ごと深く焼き切られた跡を刻み込まれ、既に事切れている。
「チッ……クソッたれめ」
「それ、ザジスの台詞じゃない?」
アレニスは舌打ち混じりに悪態を吐くが、それをザジスのようだと皮肉で返す様は、余裕のソレだ。
「ハンデだ。次の手は君たちに譲るよ」
その雰囲気を崩さないヴィルムはそう言って、かかってこい、と。
手首を前へ出してクイッと曲げる動作を二回繰り返す。完全に挑発だ。
「……いいわ。後悔させてあげるッ!!」
挑発に乗ったと思う言動だが、いかにも不条理で想定外。言葉で上手く説明することができない状況の中でもアレニスは驚愕の感情こそあれど、それで冷静さを失ってなどいなかった。
敢えて、そうした言葉を吐き出すことで油断を誘う為だ。
相手は確かに絶対的と言っていいほどの優位性をもって立ってはいるが、だからこそ、それ故の油断が生じやすい。
(ッ!)
アレニスは口から猛毒性を有する白い液体を霧状に噴射。同時にテレパシーでまだ生存しているアリアマゾンたちに地中へ潜るよう指示を出した。
「ん? 逃げた?」
アリアマゾンたちが自分に向けていた殺気を消し、地中へと潜った様子を見たヴィルムはアレニスを捨て置いて逃亡したと、そう判断したらしい。
そんな悠長に語りつつも、自身に向けて放たれた粒子状の毒液に対する手を緩めてはいなかった。
背中から紫色のギガエネルギーをマントのように展開。それを翻し縦にすることで毒液を蒸発させる。
「お〜こわいこわい。これ、身体に入ってたら危なかったよ」
「……」
わざとらしい口調で語るヴィルム。その言葉に焦りなど微塵もない。毒液を防いでみせた動作もつまるところ、遊びの一つに過ぎないのだろう。
自身が変身するアマゾンライダー。その性能を直に見聞する為の、遊び程度の認識でしかない。
「フン……」
忌々しいと内心思うも、何も言わず。手首の糸を吐き出すミクロ単位の穴から、今度は糸を出して動きを封じようとする。
「毒液の次は糸? 芸がない……! ッ」
もしこれがただの糸なら……ヴィルムは両腕から出す『フレアカッター』で容易く切り裂いていただろう。
だが、そうはならなかった。
糸は大きく円形に広がっていき、そのままなんと。まるで生き物のようにしなやかに動き始め、瞬く間に両腕と両足。
そして胴体や腰部へと巻きつく。これで完全にヴィルムの身体を拘束され、まともに動くことはできない。
「焼き切ろうとしても無駄よ。1000〜5000度の高温に耐えうる糸なの。力づくで引き千切ろうなら糸の切れ味でバラバラよ」
「うぅッ……油断、しすぎたかな?」
じりじりと締め付ける糸。それによって先程の余裕に満ちた雰囲気が消えたヴィルムを見て、アレニスは自身の勝利を確信した。
「今よ! やりなさい!!」
瞬間。すぐさま部下へと命令を告げ、地中からヴィルムを囲むようにアリアマゾンたちが出現。ここに来てアリアマゾンたちは逃げ出した訳ではなく、地中へ隠れ潜んでいたのだと察するが……その時点で、全てが遅い。
ヴィルムの身体にアリアマゾンたちの爪と牙が、対象の命乞いや悲痛な叫びを聞き入れることなく食い込んで、あらゆる身体組織を破壊していく。
その様に恍惚とした気分に浸るアレニスは背を向け、アリアマゾンたちにより蹂躙が終わるのを待った。
今見たところで群がっているアリアマゾンたちが肉壁となってしまい
、じっくりとよく観察することなどできない。なので、終わった後でその無残に原型を留めていないだろう彼女の亡骸を徹底的に見てやろうと
。
そう言った腹積りで、ほんの数分先の未来に思い耽る。
「チェックメイトね。できればたっくさん無様に泣き叫んで、許しを乞う言葉でも見苦しく披露してくれるとありがたかったけど………まっ、これで「"私の勝ち"って?」!!ッ」
アレニスの聴覚器官に届いた声は、紛れもなくヴィルムのもの。アリアマゾンたちに食い千切られ、抉られるなどしてズタボロの状態に陥っている彼女にしては、あまりに落ち着きのある声調だ。
思わず、獲物へと群がりその味に酔いしれているアリアマゾンたちを見るが、次の瞬間には物言わぬ肉片へと身体がバラバラに吹き飛ばされ
る。
それが周囲の地面を黒々と染めように飾り立てた。
「てっきり"この姿"で仕留められると思ってたんだけど、どう〜にもそれができないくらい強いみたいなんだよね、アレニスは」
アリアマゾンたちを吹き飛ばし、無数の肉片へと変換させたヴィルムは、何一つ変わってなどいない余裕さと飄々とした雰囲気を纏い、呑気に語りながらゆっくり。ゆっくりと。
その歩みを止めず、アレニスへと近づいていく。そして、特筆すべき点としてヴィルムの姿は明らかに先ほどとは異なっていた。
『フェイス……トゥ』
「"第二面形態に移行した"からには、ちゃんとデータを取らせてもらうよ?」
セイバーはデザイン的にカッコイイですね。ただ、なんか、こう。
暗い感じのダークシリアスが欲しいというか、自分的にはちょっと作品の雰囲気として明る過ぎな感じがします。まぁ、子供向け番組なんですから、そりゃ当たり前ですけど。
やっぱりクウガとかアギトとか。龍騎や555。平成シリーズの初期のダークとシリアスがアダルトな雰囲気を醸しつつ、しかしライダーとしての要素を潰さない、アレが自分的には非常に好みなんです。
比べるという訳ではないんですが、個人的な意見と思って下さい。
では、また。