ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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やっと、やっと結ばれたぜ! ヒロゼロ!!
14話から不穏ぶっちぎりだったけど、15話で結ばれるとは。
夢ににも思わなかったですよ、マジで。
ちょっと早過ぎる気もしますが、まぁ色々込み入った事情もある
だろうし、仕方なしです。
あと色々伏線が……叫竜の正体ってもしや……。


そんなこんなで新章&最新話です、どうぞ。





~生きて、戦うと言うこと~
アマゾン×コドモたち 前編


 

つ、疲れた……。

内心でヒロは、体力消費と疲労の蓄積を心の声のみで吐露する。

 

あの後、意識を取り戻したヒロは是非を問わず、色々と検査を受けさせられ、とりあえず結果は後々ということで帰された。今は館へと歩を進めている。

検査自体は苦痛的で辛いということはなかったのだが、いかんせん数が多かった。

それはもう50通りはあった程だ。それだけ今回の事は予想すらできないほどイレギュラーな事態だったらしい。ふと腰に装着されたアマゾンズドライバーに視線を向ける。

当初はこれも調べられる筈だったが、どうにもヒロ以外の者が触れようとしてもエネルギーバリアのようなもので阻まれてしまい、それでも無理にやろうとすれば電流のような物が接触者を襲う為、アマゾンズドライバーに関しては保留ということで現状は唯一所持できるヒロが管理することになった。

とは言え、かなり怪しい、その上素性の知れぬ人物から貰い受けたものなど持ちたくないのがヒロの心理だが、あの戦闘で助けられたのは事実だ。

ヒロはあの時、何があったのかをきちんと記憶に残している。自分が異形の姿と化した事やフランクスが変身したことなど。

その全てを余さず覚えている。

 

「……」

 

故にヒロは不安げに、アマゾンズドライバーへと視線を投げる。自分はあの時、あの異形の存在となった際、途方も無い何かに囚われかけた。

未だアレが何なのか、言葉で形容することはできない。

だがアレは……。

 

(いや、待て。そんな簡単に出していいものじゃない)

 

出かけた一つの答え。それを強引に時期尚早としまい込むヒロはあの湖畔近くへと立ち寄る。

ゼロツーとの邂逅前、ケガをした一羽の鳥の死骸を埋める為だ。そのままにしておくには忍びなかったし、何より最初ケガのせいで飛ぶ事ができず、もがき苦しんでいたその様を今の自分と重ねて見てしまった。

そうなると、嫌でも同情やら悲哀やら。それらしき類の情が出て来てしまうものだ。

 

「これでよし……ごめんね」

 

近くの木に埋めて一言の謝罪。助けられなかった自分の無力か、それとも一時の安い情のようなものでこんな偽善的行為をしてしまった事へのか。その解答は本人さえも分からないだろう。

ともかく、屈んでいた両脚を伸ばしミストルティンの館への帰路を歩み出した。

 

「にゃ? にゃ〜にゃっにゃぁ〜」

 

館の外装が見え、玄関前のすぐ近くまで来たヒロの目に一人のコドモが見えた。イチゴだ。しかも楽しげに猫のような鳴き声的擬音を口にするイチゴ。戯れで動かす白く華奢な指の先には一匹の猫がおり、愛くるしく腹を見せてる。

 

猫は黒猫で、特に抵抗することもなくされるがままに腹をイチゴに触らせているところを見ると、相当懐いている様子だった。

 

そんな姿を見ていたのは、ヒロだ。

 

ゴローもそうだが、昔から兄妹のように一緒にいた仲だからこそ、イチゴはこういった物が好きとか分かるものがある。

イチゴはとにかく可愛いものが大好きだ。

今も昔も変わらず、そんな彼女にとって猫は

まさに心中を射抜くには十分過ぎる存在だと言えた。

 

そんな光景を前にヒロは思わず口の端を緩めて綻んでしまう。

 

「なにやってんだよ、イチゴ」

 

そして。ちょっとからかいの気分を交えて、ヒロは声をかけてみた。

 

「ひ、ヒロォォッ?!」

 

案の定。まさか目の前にいたとは思ってもみなかったらしく、普通に驚きを顔に示した。

その声に驚いたのか、猫は足早に逃げていってしまった。

 

「あ、あの、み、見た?」

 

「うん。バッチリ」

 

頬を赤く染めていたイチゴは、更に顔全体に赤味が増した。こうなるとまさに名前通りの状態と言う他になく、両頬をぷっくりと膨らまして一気に詰め寄って来る。

 

「わ・す・れ・て!!」

 

「あ、うん、ごめんイチゴ」

 

迫力に負けて戸惑い気味にヒロは答えた。

 

どうにもやり過ぎてしまったようだと内心反省し、改めてイチゴに謝罪の意を言う。

 

「本当ごめん。可愛かったからさ」

 

「か、かわッ……もう! ほら! みんな待ってるから行くよ!!」

 

ヒロの真っ直ぐ過ぎる素直な感想に驚きと照れを混ぜ込み形作ったような顔をしたものの、すぐにそっぽを向いてしまったイチゴは顔を少しズラし、ヒロのいる後ろへと視線を投げかける。

 

「とりあえず、良かった。あの日からすごく元気なかったからさ」

 

あの日とはヒロが最終試験を受け、落ちた日のことだ。それについては本人もよく分かるのだが、すごく落ち込んでいたと言われるとヒロの頭に疑問符が浮かぶ。

 

「そうか?」

 

「うん。気づいてないの?」

 

「いや、そういうわけじゃないけど……言うほどか?」

 

正直なところ、ヒロ自身はゾロメのように活発溢れる気質の持ち主かと言われればそうではない。

なら逆にミツルのようなクールな気質かと問われれば、これも違うと言っていい。

程よい位に明るく、誰かに対して思慮深く、しかし一度気が落ち込むとズルズル引きずってしまう…そんな性質の持ち主だ。

イチゴやゴローなどは幼馴染であるからこそ、そういったヒロの精神的状態が本人以上に分かってしまうものなのだろう。

そんなヒロの言葉を聞いたイチゴは思わず、呆れたような溜息を零す

 

「本っ当にヒロは自分のことに疎いんだから

 

「はは…そうかもな」

 

イチゴの言葉に対しそう苦笑して返す他ないヒロ。ふと彼女の視線がアマゾンズドライバーへと注がれた。

 

「そう言えば、それ何? ベルト?」

 

「あ、あーうん!! なんか付けてろってハチさんが言ってさ。本当、何なのかよく分からないんだけど……」

 

咄嗟に嘘をついた。簡単に喋っていいものではないし、何より怪しい人物から強制的に貰い受けた怪しい品だ。危険なことに大切な仲間を巻き込みたくない。

そして、自分のあの姿を知られてしまう事が恐ろしい。

この二つがヒロに嘘をつかせた理由だった。

 

「ふーん。まぁ、いいや。それとさ、ナオミのことなんだけど、無事に保護されたって」

 

「保護……そっか。良かったよ」

 

ナオミは昨日はぐれてしまった後から会っておらず、検査で忙しかった為に探せる余裕がなかった。無論、彼女のことを忘れたことは一度もない。かつてのパートナーで、自分と一緒に努力した間柄なのだ。

そんな彼女を容易く忘れられるほど、ヒロは感情なき人物ではない。

 

「ほら、そろそろ行くよ。みんな待ってるし」

 

「ああ、そうだな」

 

そう言って、ヒロの手を取りながらイチゴは、みんながいる洋館へとその扉を開いた。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

「あー、もう会ってるが名前を言ってなかったよな。

俺は鷹山刃圭介。まぁ、そこのラブってるゼロツーの保護者のお兄さんだ」

 

鶏の骨付き肉に噛り付き、少々面倒臭さそうに。更に言えば困惑気味に自己紹介するボサボサ頭に白衣を着た青年こと鷹山は跳ねた髪の束が右往左往している髪をかいて自己紹介を述べた。

 

「はいダーリン、あーん❤️」

 

「え、えっと……あん」

 

鷹山に名指しされたゼロツーはヒロの膝の上へと腰を下ろし、蜂蜜たっぷりのトーストをヒロへと差し出す。しかもなんと肉や野菜にも蜂蜜がふんだんに盛られており、その異様な光景にミクが思わず口を手で押さえてしまうほどだった。

 

しかし、ゼロツーはそんなことなどお構いなしに“あーん”をせがんで来る。それにヒロは恥ずかしげに目を逸らすが、せっかく彼女の好意を無碍にするわけにもいかない為、口を開けてトーストに齧り付く。

 

何故かその様子を見ているイチゴはジト目で不愉快MAXとでも称するべきか、そんなようなジト目視線を二人に向けている。

 

他の面々も視線を向けてこそいるが、イチゴのような一種のマイナス感情に近いものではなく、単に好奇な目で見ているに過ぎない。

 

「“ダーリン”って何?」

 

「さぁ?」

 

「ヒロのこと言ってるみたいだけど……」

 

そして好奇の情はゼロツー本人のみでなく、彼女がヒロに対して言った“ダーリン”という単語にも向けられていた。ミクは一応ココロに聞いてみるも本人は知らず、イクノはその言葉がヒロに対して使われているのを察したが、それだけ。

結局、この13部隊の中でダーリンの意味を知る者は全くもって皆無だった。

 

「食いもんの名前か?」

 

「もし、そうならイイなぁ」

 

「アホ。ヒロが食べ物のわけないでしょ。ヒロに言ってんだから」

 

ゾロメの予想にミクは大きく溜息を吐く。逆にフトシは有りの様子だったが。

 

「でも本当に不思議な人ね」

 

「不思議というか、人間なのか怪しいけど。ほら、角が生えてるし」

 

ココロは変わった人程度の認識のようだが、ミクは彼女が人間じゃないという疑惑を抱いており、両手を頭にくっ付けて人差し指を角に見立てている。

 

「やめなよ。あのコのおかげで私達は助かったんだから」

 

そんなミクにイチゴが言葉を慎むよう注意を勧告する。

 

「でも叫竜の血を引いてるって本当なのかな?

それに0番代のナンバーなんて聞いたことないし」

 

イクノはナナの言っていた叫竜の血を引いているという点について懐疑的らしく、少し眉間に皺を寄せて言う。

 

「でも、助けてくれたのは間違いない。命の恩人って事実はきちんと受け入れないと」

 

「けどさ〜、あんなに蜂蜜をぶっかける女のコってどーよ」

 

人の悪口や嫌味などを好まないイチゴは、尚も注意する口調で窘めるものの、ミクは減らず口を止めなかった。

 

「はい、あーん」

 

「あーん」

 

そんな会話をしている間にココロとフトシは何を思ったのか、二人がしていることと同じことをし始めた。

 

「ちょ、ココロにフトシ!」

 

「あ、ごめんなさい。二人を見てると何だかやりたくなっちゃって」

 

「でもこれ……なんかイイね!!」

 

驚くミクの声にココロはそう言い、彼女のパートナーのフトシは満更じゃないと嬉しさを言葉のみならず顔ですら語っている始末。

 

「よし、ミク! 俺たちもしよーぜ!!」

 

「はぁぁッ!? ありえないんだけど!!」

 

いきなり素っ頓狂な提案を出してきたゾロメにミクはツッコむ。

 

「いい〜じゃんかよ。ちったぁ〜そんくらい可愛げを見せてみろってーの」

 

「なっ、なによそれ!! 普段の私は可愛くないって言いたいわけ?!」

 

「もちろん」

 

デリカシーの欠片もないゾロメの言葉に無言でキレるミクは容赦も躊躇もなく、的確に彼の頭頂部めがけて脳天チョップを繰り出し、見事なまでにクリティカルヒットを収めた。

 

「ぐはァァッッ!!!!」

 

シュウウと煙を出してゾロメはテーブルに伏した。

まるで屍のようだ、と言っておこう。

 

「……なんつーか、随分と個性派揃いだな」

 

どこか意外にも感じた様子で言う鷹山。特に食事をやめることはなく、こんな言葉を吐く最中でもムシャムシャと骨付きの鳥肉を食べている。

というか、これで20個目なので、さすがに食べ過ぎだと感じざる得ないが。

 

「あ、あの! 鷹山刃圭介さんでいいんですよね?!」

 

ミクの凶悪的で痛烈なチョップによるダメージから早くも回復したゾロメは、まるで期待に満ち溢れるとでも言うべきか。

そんな風なキラキラと輝かしい瞳で鷹山に詰め寄って来た。

 

「名前の確認なら合ってるがよ、もうちっと略していいぞ。ゼロツーみたいに刃兄とか、親しみを込めて言うのも有りだ」

 

「じゃあ、その、“刃さん”でいいですか!」

 

「おう。どうぞどうぞ」

 

ゾロメの呼び名に文句なく、むしろ嬉しそうに鷹山は承諾した。

 

「刃さんって、オトナなんですよね?! あのアマゾンに変身した姿もめっちゃくちゃカッコイイし、もしかしてオトナって刃さんみたいに変身できる人達もいるんですか?!」

 

「いんや。俺はかなり特殊な方なんだよ」

 

一旦肉を置いて手を拭きながら、刃は淡々と説明しし始めた。

 

「俺はAPEが統制して管理するプランテーションとは違う人類が住む場所の出身で、そこは俗に“コロニー”って呼ばれてる」

 

「コロニー?」

 

「確か、プランテーション以外で、しかもマグマ燃料に頼らないで暮らしている人達が住んでる所だった筈だ」

 

分からないとばかりに首を傾げるゾロメとは違い、ゴローはコロニーについて簡単に説明して見せる。

 

「正解だ金髪くん」

 

「金髪くんって……ゴローでお願いします」

 

間違ってはいないが、特徴だけでそんな名を言われるのは不服なので、自分の名を教えて苦笑を浮かべるゴロー。

 

「そこで俺はこんなナリだが研究者をやってたんだよ。で、自分の身体にアマゾン細胞を投与してアマゾンになったわけだ」

 

「え? 刃さん元人間なんですか?! で、でもアマゾンになったら……」

 

ゾロメの言葉を刃は遮ると共に、彼が何を言いたかったのかを察して繋げる。

 

「“なんで襲わないのか”って言いたいんだろ? 確かに俺はアマゾン。ある程度お前らも知ってるとは思うが、アマゾンはタンパク質を好む

。特に人のものをな。タンパク質の摂取自体は人間や他の生き物もすることだがアマゾンの場合、最もエネルギーを多く得られるのが人間のタンパク質ってわけだ」

 

淡々と何気なく言う鷹山だが13部隊のパラサイトたちからすれば、恐怖を身に染み込ませるに十分過ぎるほど恐ろしい内容には違いない

実際ゾロメは鷹山から一歩引いて、身震いを起こしている。

 

「でも安心しろ。俺は人間以外のタンパク質でも得られるエネルギー率が高いんだ。よっぽどの飢餓状態か、何かしらの異常が起こらない限りは人間を襲わないし、もしそうなっちまった時は……自爆する」

 

鷹山は自身の腰に巻かれているベルト『アマゾンズドライバー』を肉持つ手とは逆の手の人差し指で示す。

 

「じ、自爆……」

 

「そんなに驚くことはないだろ? 確か、万が一の場合を想定してか、フランクスにも自爆システムがあるって話聞いたぞ? まっ、それと同じだな」

 

自爆システムに関してはここにいるパラサイト全員がフランクスに乗るパラサイトとして知るべき重要事項の為、知らない者は誰一人としていない。

しかし、いざこうしてはっきり言われてしまうと思わず驚いてしまうし、何より自爆前に緊急脱出できるフランクスとは違い、自爆するということは、実行した当人の死を意味する。

なればこそ、何かを思わずにはいられないのは当然の心理と言えるだろう。

 

「あ、言っとくがベルト自体は爆発しないぞ? このベルトが俺の体の中に入ってる自爆用の爆破装置に信号を送る。それでアマゾンにとって生命維持に必要な部位にボンっ……て寸法だ。

あ、威力に関しては体の一部が吹っ飛ぶ程度の小さいもんだから、離れときゃ安全だから心配しなくていいぞ?」

 

手で花開くような感じに爆発のジェスチャーを表す鷹山は補足も加えて、自身が配慮している安全性の周到さを語ってみせるが、それよりもコドモたちはそんなことを何の躊躇もなく言ってのける刃に対し、かなり引いているが。

 

「みんな、ちゃんと集まってるわね?」

 

「ナナ姉!」

 

そんな折、食堂の扉を開く者がいた。パラサイトの管理官にして作戦指揮の副官でもあるナナだった。

 

「食べているところ悪いけど、報告しておきことがあるの」

 

「報告? 何なのナナ姉」

 

「驚くことかもね。いいわ、入ってきて!」

 

イチゴの疑問にそんな曖昧な表現を用いて返事するナナは自分が入って来たドアへ声をかける。

すると、ドアはナナが入って来たと同じように開く。

しかしナナの時とは違い、ゆっくりとしたもので、恐る恐るといった感じを匂わせる。

そうして、食堂へ入って来たのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

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