忍法・異世界転生(いせかいてんしょう)   作:@ピロシキ

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登場人物

・義勇兵クロム・アーサー

 本作の主人公。現代日本より異世界転生を果たした。二刀、二鉈、二丁拳銃、さらに蹴り技の使い手。シャム(現在のタイ王国)の影響を受け、暹羅式念流という剣術を使う。

・カタリナお紅実(くみ)

 イスパニア忍者。イスパニア宣教師の父と日本人の母から生まれる。伊賀鍔隠れの里で修行をした。忍法・山彦の使い手。音を自在に操る。金髪碧眼そばかす。胸がやたらと大きい。

・アルノルダ

 パロペニアの街で助けた少女。後年、「赤ずきん」として知られる事になる。10代前半。灰色狼ナバールを連れている。星々の力を借りる「白魔法」を使える。

・サンドリヨン

 ペンタメロン時間神殿のゲームマスター。青みのあるアッシュブロンドの長い髪と白いドレス、ガラスの靴という出で立ち。名前は童話「シンデレラ」のフランス語読みだが、本名かどうかは不明。

・アンリ・ド・アラミス

 フローランス王国の銃士。「三銃士」で有名。銃士隊長トレヴィルの甥。三銃士の中では一番若い。女癖の悪い伊達男。銃も剣もそつなくこなし、学問にも秀でる。

・柳生但馬守宗矩

 柳生十兵衛の実父。徳川将軍家兵法指南役として知られる。柳生新陰流の開祖、柳生石舟斎の子で大和柳生藩(現在の奈良県)の藩主を務めた。享年七十六。厳めしい顔立ちの痩身の老人。

・柳生如雲斎利厳

 柳生新陰流正当を自称し、但馬守より自分の方が正当後継者だと主張している。享年七十二。太めの体系に達磨のような顔である。

・田宮坊太郎国宗

 江戸時代の剣客。歌舞伎の主人公として知られる。齢二十一にして結核で病死したとされる。田宮流居合術の使い手。三尺を超える大太刀を使う。


~金の十字架(Ⅱ)~

「亡き主人の形見に、この金のロウソク消しをどうぞ持って行って下さいまし」

 

「そんな、マダム。そのような高価な品を頂く訳には」

 

「どうか持って行って下さい。天国に財産は持って行けませんもの」

 

遺品整理の一環なのか、マダム・クレアボーはやたらと気前が良かった。

 

アラミスは知り合いでも何でも無いから、さすがに罪悪感を感じずにはいられなかった。

 

単に、名前を知っていただけである。

 

なので神の使徒として別に嘘を吐いているのでは無く、これはただ双方の認識の違いなのだと都合良く解釈している。

 

マダム・クレアボーは続けて小さな木の箱を取り出す。

 

「こんな話をご存知?二年前、ボーヘンの首都プラーグで一人の書記官が四つ辻で悪魔と契約し、百発百中の魔法の弾丸を作ったと裁判になりました」

 

箱の中から取り出したのは、小さな金属の塊だった。

 

「ではマダム、これが『書記官の魔弾』だと言うのですか?」

 

その話はアラミスも聞いた事があった。

 

ボーヘンはフローランスの隣、ライヒの東に隣接し、『書記官の魔弾造り』という宗教裁判が行われた。

 

「ええ。我が家はボーヘンに伝手がありまして、63発の魔法の弾丸のうちの1発をこうして手に入れました。しかし63発のうちの3発は悪魔のもの。もしもこの1発がそうだったらと思うと、怖くて使えなかったそうです」

 

「ふーむ、これが……円錐形の弾丸とは珍しい」

 

形としてはドングリを半分にしたような形で、後年『ミニエー弾』や『プリチェット弾』と呼ばれたものに近い。

 

この時代の銃弾は多くが完全に球体で、マスケット銃は現在のライフルのような旋条(しじょう)の刻まれていない滑空式であった。

 

歩兵銃は『滑空銃=マスケット』『旋条(ライフリング)銃=ライフル』の二つに大別されるが、ライフリング式の小銃はライヒにおいて開発されているが、作成の難しさや装填速度が遅いという欠点があって量産化されておらず、非常に高価なものである。

 

「プラーグのカスパール・コルナーというガンスミスが、その魔弾の専用の銃を作ったとの話が伝わっていまして。これがその銃、ドラクジンガーです」

 

マダム・クレアボーの視線の先、壁に一丁の短銃が掛けられている。

 

「こいつは珍しい。回転式短銃とは」

 

「私には不要ですし、亡き主人の形見として貰ってやって下さいな」

 

「いやマダム、しかしそれはさすがに」

 

「遠慮なさらないで。このように飾っていても、何の役にも立ちませんし」

 

「そうですか?では、ありがたく受け取らせていただきましょう」

 

しかし貰っておいて失礼な話だが、アラミスはこれは使えないと内心考えていた。

 

回転式短銃は装填の手間を減らせるだろうが、専用の弾丸がたったの一つだけでは使いようが無い。

 

この弾丸を元に鍛冶職人にコピー品を作って貰うにしても、普通の弾丸よりも高くつくだろう。

 

結局、観賞用として飾っておくのが一番なのかも知れない。

 

「それではマダム。名残惜しいですが、これにて失礼します」

 

「まあ!一緒に昼食を、と思っていましたのに」

 

「本当に申し訳ない。その代わり、パリージに来た時には是非」

 

「ええ。いつか必ず」

 

アラミスは郊外のマダム・クレアボーの屋敷を後にし、馬でルダンの中心街へと戻った。

 

手に入れた回転式短銃ドラクジンガーは腰のガンベルトに挟んである。

 

「金のロウソク消しは売れば、同等の金貨(エクー・ドール)にはなるだろう。問題は魔弾をどうするか、だ。とりあえず職人に見せてみるか」

 

情報収集に関しては大きな収穫は無い。

 

「修道院なんて場所は外の世界から隔離された場所だからな……」

 

そもそもルダン近郊には修道院がいくつか存材しており、出入りしている業者にでも当たらないと中々情報を得られない。

 

噂話があったとしても、それを確かめるのは難しい。

 

「パトロンを得られただけでも儲けもの。後は直接、修道院を訪ねてみるか」

 

アトスとダルタニャンは領主の館を訪ねているし、クロム達は街を歩いて情報を集めているだろう。

 

それなら修道院はそれなりに縁のある自分が行くべきだろう、と考える。

 

「フォンテヴラウド修道院か。確か昔のイングレス王の墓があったな」

 

郊外の森にひっそりと佇む修道院は、古城をそのまま利用していた。

 

古い城門の両開きの木の門扉は開け放たれていて、中庭には修道女達が倒れていた。

 

「これは……死んでからそう経っていないな。鮮やかな切り口だ」

 

血の匂いが立ち込める中、手掛かりを求めて周囲を探索する。

 

ズバン!

 

「銃声!」

 

アラミスは姿勢を低くしてマスケット銃に弾を込め、銃を構える。

 

息を潜めて中を覗く。

 

「あれか……あのアラキとか言う男の仲間か」

 

教会堂の中では三人の男達が修道女達と向かい合っていた。

 

「転生人がここにおる筈だ。名乗り出るがよい」

 

「一人ひとり斬ろうか?」

 

「如雲斎殿は血の気が多いでござるなァ」

 

その女達の一人が一歩前へと出た。

 

「我が名はサナト・クラマ。テトラグラマトン時間神殿の使徒なり」

 

異国の服を着て杖を手にした、長い黒髪の女だった。




~金の十字架(Ⅱ)これにて終幕!次回、三人目の転生人は敵か味方か?~
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