・アンリ・ド・アラミス
フローランス王国の銃士。「三銃士」で有名。銃士隊長トレヴィルの甥。三銃士の中では一番若い。女癖の悪い伊達男。銃も剣もそつなくこなし、学問にも秀でる。
・柳生但馬守宗矩
柳生十兵衛の実父。徳川将軍家兵法指南役として知られる。柳生新陰流の開祖、柳生石舟斎の子で大和柳生藩(現在の奈良県)の藩主を務めた。享年七十六。厳めしい顔立ちの痩身の老人。
・柳生如雲斎利厳
柳生新陰流正当を自称し、但馬守より自分の方が正当後継者だと主張している。享年七十二。太めの体系に達磨のような顔である。
・田宮坊太郎国宗
江戸時代の剣客。歌舞伎の主人公として知られる。齢二十一にして結核で病死したとされる。田宮流居合術の使い手。三尺を超える大太刀を使う。
・サナト・クラマ
異国の服を着て杖を手にした、長い黒髪の女。テトラグラマトン時間神殿のプレイヤー。
銃士隊へと入隊する以前、故郷デルブレー伯爵領の幼馴染、イザベルと婚約をしていた。
だが妊娠していたイザベルは流産、アラミスの前から姿を消した。
神学生だったアラミスは結婚するつもりで僧籍を諦めていたが、叔父のトレヴィルの伝手で銃士隊に入った。
女性に声を掛けるようになったのは、イザベルを捜す為であった。
「ああ、これはきっと、罰なのだろう」
失踪当初は必死にイザベルを捜していたが、やがては諦めてしまった。
しかし心の片隅では彼女の事が気に掛かっており、いつか会えるのではないかと思っていた。
「最後に会えて、良かった」
瞼の裏には今も十字が輝いている。
倒れたアラミスの傍にサナト・クラマが立つ。
その背には、漆黒の翼が拡がっていた。
「……あなたは天使なのか?」
「違う」
「では悪魔か。やはり地獄へ落ちるのかな」
「見る者によって解釈は違う。天使と呼ばれた事もあるし、悪魔と呼ばれた事もあるし、天狗と呼ばれた事もある。そして我々は、十万億土の彼方より天理の均衡を司る。其方は選ぶ事が出来る。ここで生を全うするか、それとも転生人となりて永遠を繰り返すのか」
「悪魔に魂を売れ、という意味か?」
「当然、代償はある。人ひとりが、生涯を掛けて得る事が出来る力の総量というものは決まっている。『銃士のアラミス』という枠内ではレベル10が限界であり、それを超える力を得るにはさらなる宿業を背負う以外に無い。今、其方にはもう一つの逸話が重なっている」
「その宿業、背負わせてもらおう」
「ならばその銃で十字を撃て」
ぎゅばっ!
「何事じゃ!?」
イザベルの亡骸が血煙となって舞い上がる。
「如雲斎老!上じゃ!」
坊太郎の呼びかけに天井を仰ぐ如雲斎。
その視線の先、天井のステンドグラスから眩い光が差し込み、網膜に焼き付いた黄金の十字紋が一層輝く。
ズバン!
「きぃええええいッ!!」
ちゅいん!
気合一閃、如雲斎の一振りで銃弾が真っ二つに分かたれる。
ダン!ダン!
しかし、二発目三発目が装填時間を要さず放たれた事で、さすがの如雲斎も対応は出来なかった。
「がっ!?」
二発目までは防いだが、三発目が眉間を穿つ!
「連発銃か!」
坊太郎は如雲斎が倒れたのを見て、慌てて柱の影へと逃げ込んだ。
「
アラミスの全身はイザベルの血と共に変性していた。
「
両手を交差して半身立ちの姿勢を取り、右肩を前に出す。
ドラクジンガーの銃身を右上腕部に固定して引き金を引く!
ダン!ダン!ダン!
シリンダーが回転し、3発の弾丸が立て続けに放たれる!
「ぬうッ!?」
石柱に隠れていた坊太郎は僅かな音を察知し、咄嗟に屈む。
バチン!
弾丸は石柱の手前でその軌道を変え、柱を迂回して最短で坊太郎に襲い掛かったのだ!
「これも伴天連妖術の類か!」
「63発の魔弾のうち、60発は狙った的に必ず命中するのさ」
通り過ぎた3発の弾丸。
「紅殻術第三開悟・雷疾走――――シッ!!」
バチバチバチィン!
血流の増大、筋組織の膨張を経て、坊太郎の剣が異常なる冴えを発揮する!
「――――
「田宮流居合術
通り過ぎた弾丸は石壁に当たり、跳弾によって戻ってくる。
しかし坊太郎は体を入れ替えて射線から逃れ、さらに一呼吸にも満たぬ一瞬の間、左右後三方向から向かってくる弾丸に対し、三度の斬撃を放って悉く撃ち落としてみせたのだ!
そして四度目、振りかぶって大上段。
ガキン!
銃身の下に光る刃が刀身を脇に逸らした。
「火縄に刃だと!?」
「着剣型マスケット銃シャリベール・カラビニエ」
アラミスが右手に持つ騎銃は通常のマスケットより短く、さらに銃剣を装着していた。
銃剣が生まれて間もない時期であった為、坊太郎にとっては未知の兵器であった。
「しかし、これでお主の連発銃は防いだ!6発全て撃ち切った筈じゃ!」
「さて、それはどうかな?――――
ジャカッ!
「なぬっ!?」
右手のシャリベール・カラビニエは肩のストラップで吊り下げられており、手を放しても問題無かった。
腰のベルトに複数取り付けられた小さなポーチから、6発の弾丸をまとめた装弾器具(スピードローダー)を取り出して左のドラクジンガーのシリンダーに前側から装弾。
「
ズバン!ズバン!ズバン!ズバン!ズバン!ズバン!
至近距離から放たれる6発の魔弾。
チャキン!
屈んで躱しつつ納刀する坊太郎。
「田宮流居合術
ひゅっ!
しゃがんだ状態から跳躍、アラミスの喉元を狙って再度抜刀!
「
間一髪、後方へ跳んで躱すアラミス。
一方、宗矩はサナト・クラマに対して攻めあぐねていた。
「おのれ伴天連!」
「飛べる相手に剣は意味を成さない」
天井の高い教会堂において、サナト・クラマは背中の黒い翼で飛び上がっていたのだった!
~金の十字架(Ⅳ)これにて閉幕!次回、魔弾の射手、切り札炸裂!~