忍法・異世界転生(いせかいてんしょう)   作:@ピロシキ

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登場人物

・義勇兵クロム・アーサー

 本作の主人公。現代日本より異世界転生を果たした。二刀、二鉈、二丁拳銃、さらに蹴り技の使い手。シャム(現在のタイ王国)の影響を受け、暹羅式念流という剣術を使う。

・シャルル・ド・アルタニャン

 フローランス王国ガスコーナ出身。「三銃士」で有名なダルタニャン。実は女性で本名はシャルロット。まだ十代半ば。剣の実力だけなら三銃士達に引けを取らない。強引で我が強い。肌が浅黒い。銃士に取り立てられようと男装し、手柄を求めている。

・アーマンド・ド・アトス

 フローランス王国の銃士。「三銃士」で有名。三十代前半と思われ、誠実で誇り高き武人。マスケット銃の腕だけでなく、レイピアを左右どちらでも使える。

・森宗意軒

 キリシタン。島原の乱の首謀者の一人。小西行長の遺臣。枯れ木のような風貌の老人で、独自の忍法・魔界転生を生み出した。さらに忍法・異世界転生を編み出す。

・天草四郎時貞

 キリシタン。島原の乱を率いた。森宗意軒の忍法・魔界転生により転生した転生衆の一人。宗意軒の一番弟子。忍法・髪切丸を使う。当時、まだ十五歳であった。

・柳生但馬守宗矩

 柳生十兵衛の実父。徳川将軍家兵法指南役として知られる。柳生新陰流の開祖、柳生石舟斎の子で大和柳生藩(現在の奈良県)の藩主を務めた。享年七十六。厳めしい顔立ちの痩身の老人。

・ユルバン・グランディエ

 フローランス中西部ルダン・ウルシュラ会修道院の元主任司祭。「悪魔憑き事件」で1634年に火刑に処された。三十代前半の色男。


~九本の剣(Ⅰ)~

逃亡した柳生宗矩はサン・ピエール・デュ・マルシュ修道院に帰還していた。

 

主、森宗意軒に己が見た全てを報告した。

 

「ほほう!転生人が増えたか!」

 

「その口振りから察するに、特に問題は無いと?」

 

「宗意軒様の思惑にさして影響は無い」

 

傍らには天草四郎が尽き従っていた。

 

「ふふふ、それはそれでやりようはあるのじゃ。我らが魔王(ルキヘル)の御望みは、この世の還流である。大きな壺の中身をかき混ぜて、底に溜まった淀みをさらう。さすれば壺は大きく拡がり、魔王(ルキヘル)の眷属がこの世に現れる、という道理じゃ」

 

「女天狗の手に鈴が渡ったのはどう致す?」

 

「十五修道女の持つ聖母の力は例えるならば、巫女が神霊をその身に卸すのと同じ力よ。馬利亜十五玄義図の下書きにその力を得る方法を羅甸(ラテン)語で記されていたという。羅甸語を習得した者、即ち切支丹であれば読める、という寸法よ。その力は鈴を介して、生娘の間だけ受け継ぐ事が出来るのだ」

 

「ほう、生娘でござるか」

 

「聖母の処女受胎にちなむのじゃ。儂は中浦ジュリアンより聞き及んでおったのよ。鈴を集めると財宝の在り処が分かると言うが、それは我らにとっては然程重要ではない。重要なのは、その力があれば魔王(ルキヘル)すら呼び寄せる事が出来よう」

 

「マリア天姫とやらが何を考えて十五修道女を使い捨てにしておるのか、拙者には皆目見当が付きませぬなァ……」

 

「元は同じ切支丹とは言え、儂らは魔道に堕ちたる身。天帝(デウス)を信ずるあ奴とは所詮は目的が違うのじゃ」

 

「ふぅむ、ここはいっそ、目には目を歯には歯を。女には女、というのは如何でござるか」

 

「ほほう、但馬よ。リヒルデに十五修道女を追わせるか」

 

「その通りでござる。あの女は鏡で移動が出来るでござろう」

 

「但馬守はどう動くつもりだ」

 

四郎に問われた宗矩は顎に手をやり、不敵な笑みを浮かべる。

 

「兵を失ったのであれば、補充すればよい」

 

「ならば四郎とグランディエを連れて行くがよい」

 

「ははっ」

 

宗意軒と宗矩、生前の地位で言えば宗矩の方が当然ながら格上であったのだが、今は宗意軒が主。

 

忍法・異世界転生は術者である宗意軒が死霊使い(ネクロマンサー)だとすれば、転生衆というアンデッドを使役しているようなものであった。

 

 

 

 

 

アトスは以前見掛けた『劇団のカルラ』という女を怪しく感じ、ダルタニャンを連れて貧民窟を訪れていた。

 

「何で僕なんだ?」

 

「お前は女を見破るのは得意だろうからな」

 

「劇団ってこんなところにいるもんなのか?」

 

「いないだろうな」

 

「じゃあ何で」

 

「だがあの女は何故かこんなところにいたし、チンピラ連中に恐れられてもいた。それだけ暗黒街とコネがあるに違いない。チンピラを締め上げれば、あの女について聞けるだろう」

 

「えー」

 

ダルタニャンは嫌な予感がしてならなかった。

 

危険だからというより、厄介事を押し付けられたような気分だった。

 

「おうおうおう!勝手にこの道を歩くヤツは金を払ってもらおうか!」

 

何処からかアトス達を見ていた男が、行く先に立ちふさがった。

 

「言わんこっちゃない。囲まれたぞ」

 

「むしろ分かりやすくて助かる。俺が前、お前が後ろ」

 

「あー、もう!面倒だなあ!」

 

前をアトス、後ろに回り込んだチンピラ連中をダルタニャンが相手する。

 

そんな騒動を、日陰から見詰める女が一人。

 

チンピラ達は一瞬で叩きのめされた。

 

「おい、劇団のカルラとは何者だ」

 

「誰が言うかバカ野郎」

 

「このまま逮捕してシャトー・ディフに叩きこんでやろうか?」

 

「ひいっ!勘弁してくれ!」

 

「では言え」

 

「……トゥアルセの公爵お気に入りの劇団の女優だよ」

 

「どうしてその女に怯えているんだ?」

 

「あの女に関わったら殺される!」

 

「殺される?誰に?」

 

「そんなもん知らねえよ!でも、ちょっかいを出したヤツが何人も帰らなかった!」

 

「なかなかの悪女なようだな」

 

「知っている事は話した!もういいだろ!」

 

「女には何処へ行けば会える?」

 

「劇団が借り上げている劇場に行けばいいだろ!」

 

「なるほど。しかし劇場なんて何処にあるんだ?」

 

「貴族連中の道楽だぞ?貴族の邸宅が集中してる貴族街にあるさ」

 

「よし、知りたい事は聞いた。仲間を連れて立ち去れ」

 

チンピラ達は倒れた仲間を引きずっていった。

 

「……アトス、何だか容赦が無いな」

 

「悪党共に情けを掛ける必要など無い」

 

「さいですか」

 

アトスは自分達を助けたあのカルラという女に胡散臭いものを感じていた。

 

自分がかつて味わった裏切りを思い出す。

 

 

 

 

 

「あらあら、どうやら餌に喰い付いたようで」

 

貧民窟からアトス達がいなくなり、陰から様子を伺っていた女が道端へ出てくる。

 

外套に身を包んでいて外見はよく分からなかった。

 

「……言われた通りにしたぜ。アレで良かったか?」

 

そこには先程、アトスに締め上げられていたチンピラがいた。

 

「ええ。これであの人はこちらに気を取られる。一人きりになれば、どうとでも処理出来るわ」

 

「イングレスの手先はやる事えげつねえなあ。ええ?ミレディさんよぉ」

 

「そう、私はミレディ。それが今の私の名前」

 

その女はミレディ・ド・ウィンターと名乗っていた。




~九本の剣(Ⅰ)これにて終幕!次回、武勲詩の調べ!~
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