・義勇兵クロム・アーサー
本作の主人公。現代日本より異世界転生を果たした。二刀、二鉈、二丁拳銃、さらに蹴り技の使い手。
・カタリナお
イスパニア忍者。イスパニア宣教師の父と日本人の母から生まれる。伊賀鍔隠れの里で修行をした。
・柳生十兵衛三厳
江戸時代初期に活躍した柳生新陰流の剣豪。隻眼で右目に刀の鍔で作った眼帯をしている。忍法・異世界転生に巻き込まれて行方不明。
・森宗意軒
キリシタン。島原の乱の首謀者の一人。小西行長の遺臣。枯れ木のような風貌の老人で、独自の忍法・魔界転生を生み出した。さらに忍法・異世界転生を編み出す。
・マリア
切支丹忍者、15修道女のリーダー。両腕が絡繰り仕掛け。
・天草四郎時貞
キリシタン。島原の乱を率いた。森宗意軒の忍法・魔界転生により転生した転生衆の一人。宗意軒の一番弟子。忍法・髪切丸を使う。
フローランス軍マッツァリーノ枢機卿
「信じられん……あの男、一体どんな手品を使ったんだ」
アーマンド・ド・アトスは羽根の付いたマスケットハット(銃兵帽子)を脱いで胸元に置き、片手で十字を切って黙祷した。
「そこにいたかアトス!」
その背に声を掛けたのは同じくマスケットハットを被った男だ。がっしりとした体格のその男も、遅れて壮絶な光景を目にした。
「何てこった……正規軍の精鋭が無抵抗で殺されたのか?」
「来たかポルトス。彼らは甲冑を身に着けていたが、これこの通り。鋭利な刃物でもこう簡単に斬られたりはしない」
この男はアトスの従兄弟のイザーク・ド・ポルトスという同じ銃士隊の銃士である。
「ところでアラミスはどうした?」
「あいつはあそこだ」
アトスが顎で示した先、中央広場で哄笑を上げていた天草四郎のさらに先に、忍び足で回り込んでいる伊達男がいた。その名はアンリ・ド・アラミス。
「挟み撃ちだ」
一番足の速いアラミスが先に回り込み、続いてアトス、力はあるが足は遅いポルトスが最後という連携が彼らの強みだった。
しかし、それは叶わない。
「―――因果の彼方より出でよ!入滅せよ!血よ!肉よ!我が
青年の声と共に、血の海に沈んでいた兵士達の骸が血煙となって中空に舞う。
「なっ、何だ!?」
今にもレイピアで切り込もうとしていたアラミスが、血煙に怯んで立ち止まってしまう。一方でマスケットの装填を終らせたアトスも血煙に遮られ、銃の照準を合わせる事が出来ない。
「俺に任せろ!」
ポルトスが近くにあった薪割り場から、人一人分以上はありそうな丸太を持ち上げる。
「おおりゃあああああっ!!」
おそらく相当な重さであろう。そんな丸太を天草四郎に目掛けて投げ付ける!
しかし、その間に立つ人影があった。
「ちえええええいっ!!!」
しゅばばっ!
人影の左の腰から放たれた光が丸太を横一文字に打ち払い、さらに振りかぶって二刀目、三刀目が丸太を細切れにする。
「魔人・田宮坊太郎、見参」
その人影は長髪の青年であった。和装に首元に襟巻をしており、抜き放った太刀筋から居合術の使い手だと見える。
「ポルトス!退け!」
バン!
アトスの構えたマスケットから火花が散る。
「シッ!」
ぎゃんっ!!
しかし、マスケットから放たれた弾丸は、神速の居合抜きで真っ二つにされた。
「貰った!」
さらに天草四郎の背後から、一瞬立ち止まっていたアラミスがレイピアで突きを放つ!
「きひひっ!」
そこへ超絶の反応で、田宮坊太郎が廻り掛の一刀を放つ!
ぎゃりんっ!
「ちいっ!?」
アラミスのレイピアは坊太郎の刀に阻まれてしまう。慌てて距離を取るアラミス。そこへ一撃、引き際の返し技を放つ坊太郎。反射的にレイピアのガード部分で止める。両者間合いが近過ぎる為、剣は振るえない距離。両者同時に離れる。
「ほう、やるな。南蛮人」
「……どこの人間だ?シャムか?」
「くははっ!まず、最初の認識が間違っておる!」
「何だと!」
フローランス最精鋭の三銃士が、たった一人の若侍に翻弄されていた。
「……うぇええん」
その時、兵士達の死体の中から赤ん坊の泣き声がした。アラミスは坊太郎の相手で赤ん坊に気を回す余裕は無かった。
「アトス!ポルトス!」
「任せろ!」「おっしゃあ!」
アトスとポルトスが即座に反応する。アトスはマスケットの次弾を装填、ポルトスは死体の山へと走る!
「忍法・髪切丸」
そこへ天草四郎の忍法が繰り出される!
「忍法・山彦!!」
パン!
ポルトスの身体を切り裂こうと迫る不可視の糸が、カタリナお紅実の忍法によって破られる。両手を一拍叩き、喉の奥を震わせる事で低周波振動を増大させ、遠方において大気を破裂させる!
「伊賀者か!」
空中で弾け飛んだ髪の毛の糸を操り、今度はカタリナの潜む屋根の上へと飛ばす。距離があった為か、カタリナはすぐに後ろに飛んで避けた。
「いたぞ!今、助ける!!」
死体の下に、血塗れの赤ん坊を抱いた少女がいた。どうやら兵士の誰かが庇ったらしい。だが死体の山を退けている間に、天草四郎の魔の手が伸びる!
ダン!ダンッ!
「ぐっ!何奴!?」
ポルトスを襲おうとしていた天草四郎の顔面に、二発の弾丸が当たる。僅かによろめいて片手で顔の流血を抑えながら、天草四郎は乱入者の姿をその目に捉える。
そこに二刀を背中から抜き、クロムが掛けて来る!
「
ぎゅるぎゅるぎゅるっ!!
間合いを詰めるクロム、糸を振るう天草四郎、それを跳んで躱しつつ、空中で連続前方宙返りからの二刀振り下ろしを放つ!
「しゃああああっ!!」
ぎゃいんっ!!
そこへ田宮坊太郎の振り向き様からの薙ぎ払いがぶつかり合う!
「何て力だ!」
常人を超える膂力で繰り出された、全体重をかけた二刀を、坊太郎は片手で放った一刀で受け止めた。そのまま空中で静止するクロムの身体。この先は切替しの一撃が来る!
「こなくそっ!」
そのまま二刀を坊太郎の刀に押し付けたまま、右脚を後背から頂点へ。そして前転しながら一気に踵を振り下ろす!
「鳶業当身十二
坊太郎の脳天にクロムの右踵が直撃する!
「おのれっ!」
びゅんっ!
坊太郎の返しの一刀を蹴りの反動で跳躍して躱す。着地したクロムに対し、頭頂部からの流血によって坊太郎は動きが止まっていた。
「もうよい坊太郎。次の地獄へと参ろうぞ」
「しかし四郎!」
「ここで何をしようと大して意味は無い。いいから行くぞ」
「ちっ……次は仕留める!」
ぶわっ!
天草四郎の不可視の糸が血風を呼び、視界を遮る。
「待ちやがれ!」
「ダメだポルトス!動くな!」
血風の中に飛び込もうとしたポルトスをアトスが止める。
「動けば五体を引き裂かれていただろう」
アラミスが投げ入れた小枝が一瞬で細切れにされてしまった。やがて血風が治まると、二人の魔人の姿は忽然と消えていた。
「……何だったんだ、ヤツら」
「まあ待て、ポルトス。この二人はヤツらを知っているようだ」
クロムとカタリナを見たアトスがポルトスをなだめる。
「後でいいか?まず、この女の子と赤ん坊を安全な場所に避難させよう。お嬢さん、名前を教えてくれるかな?」
クロムの足元にちょうど少女が赤ん坊を抱いて座っていた。
「あ―――アルノルダ」
まだ10代前半と思われる少女。被っていた白い頭巾を脱ぐと、明るい髪の色に、三つ編みのお下げが両肩に現れた。
~地獄変第四歌終幕!次回、新たなる魔人登場!!~