自らを人の面影を残し、力に溺れたマスター   作:NO!

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青年の苦悩、その参

「おはようマスター!」

「おはようございます」

「おっす」

「うむ、おはよう」

 

 ジャンヌオルタと共に食堂に着くや否や、食堂にいる者達が立香に挨拶する。数人ではあるが中には手を振ったり、頭を下げる程度の者達もいた。

 

「おはよう、皆」

 

 立香は彼等、彼女等に一人ひとり挨拶するが全てとは限らない。全員に挨拶するのには骨が折れるくらいだがマスターとしての使命感もあるからだ。

 彼が此処に来たのも、ジャンヌオルタと共に朝食を摂りたいからだった。一日の始まりは、脳を発達させる事だった。先ずは朝食を摂る事で脳を働かせるのが先だ。

 それに彼等、彼女等も食堂にいるが食堂は皆、数名の職員を除き、大半はジャンヌオルタ同様、サーヴァントで溢れている。最初は閑古鳥が鳴くくらいだったが特異点を解決するにつれ、召喚し続けるにつれ、増えていった。

 食堂は何時の間にか、食事の時間だけは宴会に近いように賑やかであった。彼等は立香が連れて来たと言えば良いだろうが彼の力量が、努力が食堂を賑わせたと言い替えれば良いだろう。

 

 それだけでなく、食堂の厨房にもサーヴァント達がいる。彼等は料理に自信がある物ばかりであるがその中でジャンヌオルタ同様、古株の一人でもある彼、赤い外套を纏った男、アーチャーことエミヤがいる。

 彼の料理は天下一品であり、その料理の美味さは溜め息にも近く、舌を鳴らす。彼の料理の虜になった者は数知れずだが、満足しているからだ。

 立香もその一人だが彼は他のサーヴァントに一通りの挨拶をした後、カウンターの椅子に腰掛ける。何故か、ジャンヌオルタも彼の隣に腰掛けるが立香は訊ねた。

 

「おいおい、朝から痴話ゲンカか〜〜?」

 

 そんな中、二人の後ろから男性の声が聴こえ、二人が振り返ると、そこには蒼いフードを頭から被っている蒼髪赤眼の青年がいた。服装は中世の魔術師にも近いが立香は軽く困惑する。

 

「きゃ、キャスター、な、何を言ってるの?」

 

 立香は彼、キャスターに対して、否定の言葉を掛ける。彼はキャスター、真名をクー・フーリンと言う。彼は最初の特異点で彼の手助けをしてくれた最初のサーヴァントだ。

 彼は一番最初に召喚されたのと、立香や後から来た後輩サーヴァント達にとっては頼れる兄貴分でもある。

 

「あん? 違うのか?」

 

 キャスターは彼の言葉にキョトンとするが立香は先を続ける。

 

「違うよ。ジャンヌは俺を起こしにきたから、それに朝食を未だ摂っていないみたいだから」

「は? 元はと言えば貴方が起きないから、私が起こしに来たんじゃない?」

 

 立香の言葉にジャンヌオルタは反論する。彼女は立香を先輩と慕う彼女の代わりに起こしに来たのだ。が、一方で彼と一緒にいる事を誰よりも嬉しいと感じているがそれを周りには言ってない。

 言えば茶化されるのと、それを良しともしないからだった。

 

「まあまあ、ジャンヌもそんなに怒らないで、それに君には感謝してるよ?」

「……はっ?」

 

 ジャンヌオルタは彼の言葉に呆れると、軽蔑の眼差しを向ける。この男は何を言ってるのだろうか? と。

 

「俺……ううん、そのまま寝ていたら良くなかったし、生活のリズムも狂っていたかもしれないから」

「ふ〜〜ん? それでマスターは私に、と?」

「うん、一応、ありがとね?」

「一応? ……まあ、別に良いけど」

 

 ジャンヌオルタはそう言った後、軽くそっぽを向く。少し頬を赤くしているが嬉しいのだろう。そんな彼女に立香は軽く微笑む。

 前線で活躍し、多くの敵を蹴散らす凛とした少女とはかけ離れている、今の彼女は何処か愛おしいのだ。立香はジャンヌオルタを見詰めていたが彼女が彼の視線に気付かない筈も無い。

 

「何よ? 人の顔をジロジロ見て?」

「あっ……否」

「……気持ち悪い」

「何気に酷いよ!?」

 

 ジャンヌオルタの本心が漏れたかのような発言に立香は少し哀しむ。が、そのやり取りを視ていたキャスターは

 

「おいおい? やっぱり痴話ゲンカか? まあ、恋人同士じゃないから何とも言えねけどな?」

「えっ?」

「はっ?」

 

 キャスターの言葉に立香とジャンヌオルタは惚ける。が、彼は微かに笑う。

 

「マスター達の喧嘩は痴話ゲンカにしか見えねえからな?」

「な、何を言ってるのさ!?」

「そうよ!?」

 

 二人は同時に立ち上がるが顔を紅くしている。彼の発言は恥ずかしいとしか思えないのと、それを否定しているからだ。恋人同士ではない、マスターとサーヴァントの立場なのだ。

 そんな二人にキャスターは揶揄する。

 

「おいおい? 顔を紅くしているってことは……」

「それ以上は止めとけ」

 

 そんな中、彼の発言を遮る意味でカウンターの方から声が聴こえた。その声に三人は反応し、見やる。そこには、白い髪に黒い目、褐色の肌に赤い外套を纏っている男性がいた。

 その男はキャスターを見ているが怒っている。

 

「何だよ? 邪魔するなよ?」

「え、エミヤ?」

 

 キャスターは微かに怒るが立香は困惑していた。が、彼は、エミヤは腕を組みながら口を開く。

 

「マスターは飯を食いに来たんだ。お前に構っている暇はない」

「んだと? だいたい、お前は関係ないだろうが?」

「関係無くはない。マスターはお腹を空かしているからな? なあ、マスター?」

 

 エミヤはリツカに微笑みかける。彼こそがエミヤ、種族はアーチャー。この食堂を切り盛りしているサーヴァントの一人かつ、古株の一人だ。彼には何度も助けてもらっているのと、この食堂を明るくさせているのも彼だ。

 何者かまでは判らないがクー・フリーンとは犬猿の仲だ。何が遭ったのかは判らないが二人は互いの相手に対して、軽く口喧嘩している。と言っても、日常茶飯事かつ、仕方のない事だろう。

 立香はそう思っていたがエミヤを視て苦笑いする。

 

「はは……でも」

 

 立香は周りを視る。どこもかしこも、他のサーヴァント達が朝食を摂りながら会話している。話題は何かまでは判らないが相手の功績や生い立ち等だろう。

 中には娯楽目的で何かをしている者達がいた。特にレオニダス、ベオウルフ、ヘラクレス、スパルタカスと言った屈強なサーヴァント達が腕相撲かつ、酒の飲み比べをしていた。周りには応援する者達がいるが大抵は男達だった。

 女子、つまり女性陣の方は女性らしく、どんな服が良いとかや、おまじないとか、憧れと言った可愛い話題ばかりだろう。立香は周りを見ているが不意に暗い影が差す。

 特にだが女の子達の、幼い娘達が眼につく。西洋的な黒い服装な少女、ナーサリー。殆ど、否、大半以上が露出している服を着ているジャック。そして、ジャンヌオルタに良く似ている……否、幼い頃の彼女かつ、冬の季節をイメージした服を着ているジャンヌオルタ・サンタ・リリィ。

 彼女達はサーヴァントの中では一番幼い者達ばかりだ。仲良しでもあるが微笑ましいのだ。

 

「……」

 

 同時に、彼は何故か項垂れる。ある事を思い出してしまったからだ。

 

「「マスター?」」

「どうしたのよ?」

 

 そんな彼にエミヤ、クー、ジャンヌオルタが訊ねる。が、彼は項垂れたまま、顔を上げなかった。何故なら、これから起きる事に対し、躊躇していた。

 これから、特異点に関する事に出なければならない。大抵はマシュと一緒かつ、ロマンがサポートしてくれる。マスターである自分の使命でもあるが躊躇しているのは、彼等、彼女等が傷付く事だった。

 彼等、彼女等は自分の為に、世界を救う為に戦ってくれる、力を貸してくれる。感謝はするがそれは代償と言う意味にも近いからだ。出来る事なら傷付いて欲しくないが無理な話だ。

 それは理解しているがそれを否定している。自分は見ているだけの存在なのか? 命令するだけで何もしないのか、と。立香はそれに自問自答しているが答えはない。

 あるのは、特異点を修復する意味で戦い続けなければならないからだ。しかし、それから背く意味で逃げる事も出来ないのだ。立香はそれに気付きながらも、彼等彼女等が傷付く事を良しとしない。

 彼は不意に頭を抱えるがそれを、周りに言わない。言っても余計な心配を掛けさせるだけだと言う事に気付いているからだった。

 

「マスター、ねえマスター!」

 

 そんな彼にジャンヌオルタは呼び掛けると、立香は我に返る意味で目を見開くと、顔を上げ、ジャンヌオルタを視る。彼女は不機嫌だった。

 

「どうしたのよ?」

「えっ……ううん、何でもない」

 

 彼女の言葉に立香は微笑みながら答えた。それは作り笑顔であるが彼の気遣いだろう。エミヤとクーは彼の様子に気付くが何所まで気付いたのかは彼等にしか判らない。

 が、立香はそれに気付かないが彼は朝食を摂ろうとエミヤの方を視るのだった。

 

 




 書こうかな……これのR-18指定。
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