この素晴らしい世界にΨ難を! 作:さい
石造りの町中を、馬車が音をたてながら進んでいく。
レンガの家々が立ち並ぶ、中世ヨーロッパのような街並み。日本でよく見かけていた車やバイクは走っておらず、電柱も無ければ電波塔も無い。行き交う人々を観察すると獣耳やらエルフ耳の人間がいる。頭髪も黒が一般的ではないらしく様々な色をしている。日本のようにマインドコントロールで常識を変える必要はないみたいだ。
一つコーヒーゼリーを空中に作り出し念力により一口で口の中に運ぶ。素晴らしい能力だ。
さて、こんな素晴らしい能力をくれたんだ魔王を倒すために尽力するとしようか。ふっ僕が動くんだ、良かったな女神とやら半端には終わらせないぞ。
まずは冒険者組合や、モンスター討伐のための冒険者ギルドがあるはずだ。まあ先程から聞こえているんだがな。成る程こっちか。
------冒険者ギルド------
ゲームに必ずといって良いほど出てくる、冒険者に仕事を斡旋したり、もしくは支援したりする組織。かなり大きな建物で、中に入ると食べ物の匂いが漂ってきた。
どんな人物がいるか分からないがこの世界で僕が危惧する人間はそうそう現れないだろう。
「ようあんた見かけない顔だな」
っ!?テレパシーに反応しなかった!?後ろを振り返ると然堂が立っていた。
「よう」
いや顔に傷が無い。その他は然堂そっくりな男が立っていた。何てことだ、異世界にも然堂3が存在しているとは、僕の安静した世界は存在しないのか?
「ようようあんた、どこから来たんだ?お?」
こいつしゃべり方まで然堂そっくりだな。そのうち相棒とか言ってきそうだ。
「なんだ?冒険者になりにきたのか?お?金持ってるのか?」
成る程冒険者になるには一人500エリス必要なのか。1エリスは、日本円にして1円と同じ価値か。だが困ったな金がない。
「なんだお前金がないのか?お?なら俺っちがやるよ」
お、なんだこの世界の然堂3は良いやつじゃないか。
「それじゃあな、相棒」
今回は世話になったな。さてさっそく冒険者登録をしに行くか。
女性職員は二人。片方は何故か混んでおりもう片方は閑古鳥が鳴いていそうなほど人がいない。やれやれ並んでまで喋りたいのか?並ばなくて済むのだからラッキーと思うべきか。
「あ、私の方で良いんですか?」
何が言いたいんだ?どちらでも変わらない。僕は冒険者登録をしに来たんだ。
「そうですか...男性の方は皆ルナさんの方に並ぶので」
そんなことはどうでもいい。早くしてくれ。
「あっはい!分かりました!」
元気よく走って書類を持ってきた。登録手数料を書類の換わりに渡すと説明が始まった。
「冒険者としての簡単な説明をしますね。冒険者とは街の外に存在するモンスター。人に害を与える討伐を請け負う仕事です。とはいえ、基本は何でも屋みたいなものです。冒険者とはそれらの仕事を生業にしている人たちの総称です。そして、冒険者には、各職業というのがございます。先程お渡しした書類の中にこれくらいのカードがあったと思いますがありますか?」
これか?
「はいそうです。こちらに、レベルという項目がありますね?ご存知の通り、この世のありとあらゆるモノは、魂を体の内に秘めています。どの様な存在も、生き物を食べたり、もしくは殺したりします。他の何かの生命活動にとどめを刺す事で、その存在の魂の記憶の一部を吸収できます。通称、経験値と呼ばれるものですね。それらは普通、目で見ることなどは出来ません。しかし.....このカードを持っていると、冒険者が吸収した経験値が表示されます。それに応じて、レベルというものも同じく存在しています。これが冒険者の強さの目安になり、どれだけの討伐を行ったかも自動で記録されていきます。経験値を貯めていくと、あらゆる生物はある日突然、急激に成長します。俗に、レベルアップだの壁を越えるだのと呼ばれていますが、まあ要約すると、レベルが上がると新しいスキルを覚えるためのポイントが貯まっていきます。様々な特典が貰えるので、是非頑張ってレベル上げをしてください」
「それではある程度の説明は終わりましたので、書類に身長、体重、年齢、身体的特徴を記入してください」
身長167㎝、体重52キロ。年は17、ピンクの頭髪と頭部に取り付けた2本のアンテナ状の装置が特徴で....。
この世界に来たときに既にマインドコントロールでアンテナに関しては何か不振に思われる事はない。
「はい、ありがとうございます。えっと、ではこちらのカードに触れてください。それであなたのステータスが分かります。その数値に応じてなりたい職業を選んでください。経験を積むことにより、選んだ職業によって様々な専用スキルを習得できるようになりますので、その辺りを踏まえて職業を選んでくださいね」
さて、お約束だが。恐らく僕の数値は逸脱していると思って良いだろう。なんせ元々超能力者だ。そんな僕の数値が低い筈がないのだ。だが仮に魔王を倒すに辺り数値が高い方が騒ぎにならずにすむのか。それならここは敢えて何もせずにそのままで。
「えーとサイキクスオさん、ですね。ええと...ええええ!!幸運が最低レベルをカンストしている以外は能力値がどれもあり得ないくらい高いんですが...貴方何者なんですか?」
声がでかい。予想より目立ってしまったな。やれやれこれなら少し改変した方が良かったか。そのステータスならなんの職業になれるんだ?
「なんにだってなれますよ!!それもいきなり上位職にも!なににしますか!!」
テレパシーで先程から聞こえてくる。目の前の女性職員のお薦めはアークウィザードと呼ばれる職業らしい。だが困ったことに好感度メーターがいつの間にか90を示している。何故こんなにも好感度が上がったのか分からない。
僕は目立ちたくないんだ。冒険者で。
「え?....冒険者ですか?」
おお、好感度メーターが75まで落ちたな。
「最弱職ですよ?....良いんですか?後からでも変えられますけど、どうせなら最初からでも」
心の中で上位職押しが凄いな。だが敢えて言おう。
ふっ冒険者でお願いします。
この日、斉木 楠雄は冒険者になった。