この素晴らしい世界にΨ難を! 作:さい
冒険者にはなれたが困ったな金がない。現在の時刻は午後3時というところか。今から何かしら依頼を受ければ宿代くらいは稼げるか。
ギルドで依頼を受けると現在のレベルと一人という理由であまり強力なモンスターの狩り討伐はいけないらしい。唯一受けられたのがジャイアントトードの討伐だった。読んで字のごとく巨大な蛙だ。
正直に言おう。僕は虫の類いが苦手だ。特にGに関しては直視できないくらいには苦手だ。その理由は斉木楠雄のΨ難を見てくれ。巨大ならテレパシーが通じるとも思うが正直蛙の考えていることなんて知りたくもない。だが行くしかないだろう。
そしてここは街の外に広がる広大な平原地帯。
先程からゲコゲコと巨大な蛙が跳び跳ねている。見ていて少しくるものがある。駄目だなあれは、超能力を使ってすら触れたくない。ふむどうしたものか。時間は余り無い、ならパーティーメンバーを募集するか。幸いなことに僕は上級職で先程騒ぎになった、それなら誰かしら来てもおかしくは無いだろう。
テレポートでギルドの裏まで移動して中に入る。クエストボードの隣に自由に張り紙を貼れる場所があるがあそこで良いだろう。募集要項は、そうだな。誰でも良いだろう。
さて後は椅子に座って待っていればそのうち来るだろう。
「冒険者募集の張り紙を見たのですが、本当に誰でも良いのですか?」
どことなく気怠げな、眠そうな赤い瞳。
そして、黒くしっとりとした質感の、肩口まで届くか届かないかの髪の長さ。黒マントに黒いローブ、黒いブーツに杖を持ち、トンガリ帽子まで被った、典型的な魔法使いの少女が立っていた。
おかしいな、僕は冒険者を募集した筈で中二病を患わせたロリを募集した訳じゃ無かったんだが。
片目を眼帯で隠した小柄で細身な少女は、突然バサッとマントを翻した。
「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者・・・!」
ダークユニリオンでも探しに行くのか?
「だ、ダーク?」
何でもない。
あまりに言動に近いものがあって海藤を思い出していただけだ。気にするな。
「は、はあ....それで、その...パーティメンバーを探しているみたいですが、我をパーティに入れてもらえれば我が力のほどを遺憾なく発揮して見せましょう!」
軽快に中二病を発しているが心の声が必死である。
(本当にお願いします!荷物持ちでも何でもします!もう、他に頼れる人はいないのです!)
ふむ成る程。地雷臭しかしないな。ここは丁重に断りを。
(もう...お荷物のように切り離されるのは嫌なのです....)
......。
分かった。良いだろう、お前をパーティメンバーとして入れてやる。
「本当ですか!?」
ああ、本当だ。それと近いぞ。
「ふふふ、紅魔族随一の魔法の使い手の力を御覧に入れます!我が必殺の魔法は山をも崩し岩をも砕く.....!あの....もう三日も何も食べていないので何か食べさせては頂けませんか?」
ふっ仕方ない奴だな。僕の力でコーヒーゼリーを食べさせてやろう。感謝するんだな。
掌の上にコーヒーゼリーを生成させて超能力を使用して浮かせている。
「な、何ですかこれは!?何もないところから」
煩い。早く食べろ。
僕は目立つことは嫌いなのだ。
簡単に自己紹介を交えながらコーヒーゼリーを数十個食べ終えめぐみんは満足したので街の外に広がる広大な平原地帯に戻ってきていた。蛙の数は3匹もいる。正直気持ち悪いが今回はめぐみんもいるのだ。この幼き少女に全てを任せよう。これは決して仮ではない。コーヒーゼリーを食べさせた、所謂等価交換だ。
依頼の蛙の数は5匹だが問題ないだろう。
「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに準備時間がかかります。準備が整うまで、あの蛙達の足止めお願いします」
足止めを頼まれたが動く気はない。蛙達は此方に興味を示さずにピョンピョン跳ねている、なら此方から干渉する必要もないだろう。
「あの...足止めを..」
む、僕の意図が伝わらなかったのか。なら仕方ないな、窪谷須にして以来封印していたが使うか。この顔を。
「うっ...分かりました!分かりましたからその顔で見るのは止めてください」
「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法!」
魔法を唱えるめぐみんの声が大きくなり、めぐみんのこめかみに一筋の汗が伝う。
「見ていてください。これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段です!」
杖の先が光だし、膨大な光をギュッと凝縮したような、とても眩しい光の塊なる。めぐみんが眼帯を外して、紅い瞳を鮮やかに輝かせ、カッと目を見開く。
「エクスプロージョンっ!!」
平原に一筋の閃光が走り抜ける。杖の先から放たれた光は、遠くにいる蛙に吸い込まれるように突き刺さると、その直後、凶悪な魔法の効果が現れた。
目も眩む強烈な光、そして辺りの空気を震わせる轟音と共に三匹の蛙は爆裂四散した。
爆煙が晴れると、蛙のいた場所には二十メートル以上のクレーターが出来ており、その爆発の凄まじさを物語っている。
これは中々良い威力じゃないか。見直したぞ。
「ふ....我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力により、消費魔力もまた絶大。要約すると限界を越える魔力を使ったので身動きひとつ取れません」
まあ、そんなことは知っていたがな。これだけの威力があるなら問題ないだろう。
冬眠でもしていたのか地中からは5匹の蛙が出てくる。
「蛙が沸きだすとか予想外です...すいません。助けていただけませんか?」
何を言っているんだ?僕が助けるわけないじゃないか?さあもう一度立ち上がれ。
「あれ?....魔力が戻っています?」
めぐみん。もう一度さっきのやってくれ。
「で、ですが近すぎて。今度は引き付けて欲しいのです」
仕方ないな。
めぐみんを抱き寄せると空中浮遊で10メートル程浮かび上がる。ここは日本じゃなく、魔法が存在してるんだ、空を飛んでも不思議じゃないだろう。
「な!わ、わたし空を飛んでます!!何ですかこれ!!」
撤回。あまり空は飛ばない方が良いみたいだ。
それよりも早く蛙を一掃してくれ。
「え、ああ、はい!分かりました!一日に二度も撃てるなんて夢のようです!」
「エクスプロージョンっ!!」
気のせいか二度目は詠唱してないように感じたが。
「ああ、忘れてたぁぁああ!!」
やれやれ詠唱は必要ないのか。それにしても、合計8匹の蛙討伐が完了したな。これで宿代はなんとかなりそうだ。
またコーヒーゼリーを食べさせてやろう、そう思いながら腕の中で力尽きるめぐみんに感謝しギルドに戻っていった。