超・世紀王デク   作:たあたん

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すいません、14日8時アップと予告してたんですが予約投稿にしたら普通にガワだけ出てしまってるようなので、即刻アップにさせていただきました。混乱させてしまい申し訳ございません&早速お気に入りに入れてくださった方たいっへんありがとうございまっす!!

内容については正直今回のサブタイトルがすべてです。ヒロアカでありながら(出久がライダーとして戦った)BLACK&BLACK RXのアフターストーリーでもあるのが今作品でございます
なのでチート、ひたすらチート。大枠の構想はありますが細かいことはあまり考えてません、とりあえずあるモノを出したいUSJ篇まではがんばります。そんなのでもよろしくて??

※アニメを基に再構成してるので今回ライダーは名前しか出ません




緑谷出久:アフター

――こっこれいじょうはっ、ぼくがゆるしゃなへぞっ!

 

――ムコセーのクセに、ヒーローきどりかァ……。

 

 

――デクゥっ!!

 

 

 

 ……人は、生まれながらに平等じゃない。

 

 これが、齢4歳にして知った社会の現実。

 

 そして僕の、最初の挫折だ。

 

 

――だいじょうぶ、たてる?

 

――きみは……だれ……?

 

――ぼく?……ぼくはね、

 

 

 

 

 

「――!」

 

 少年が目を醒ましたのは、朝日の差し込む自宅の寝室。"平和の象徴"No.1ヒーロー・オールマイト風のデザインがなされた枕元の目覚まし時計が、セットした時間のちょうど五分前を指している。

 

――夢を、見ていた。挫折と……唯一無二の、親友との出会い。いまとなってはとても懐かしい、日だまりのような温かな記憶だ。

 でもそれはもう、記憶でしかなくて。

 

 緩慢に身体を起こした少年はスマートフォンを手にとり、検索エンジンに何かを打ち込む。表示される文字列、そして画像。――黒と緑の装甲を纏った逞しいボディと、真っ赤な複眼をもつ異形の怪人。バッタ男……そうと形容するに相応しい姿か。

 

《謎のヴィラン軍団"クライシス"壊滅から三ヶ月……仮面ライダーはどこに?》

《謎の都市伝説ヒーロー、仮面ライダーは何者なのか?》

 

「仮面、ライダー……」

 

 つぶやく少年の胸に、壮絶な記憶が甦る。二年。たった二年の間に、多くのものを得て、多くのものを失った……。

 

「……信彦、くん」

 

 写真立ての中で、彼とともに無邪気な笑顔を浮かべている少年。

 

 

 名を呼んだとてもう、応えてはくれない。

 

 

 

 

 

 超常は日常に。架空(ゆめ)は、現実に。

 

 世界総人口の八割が"個性"と呼ばれる特別な能力をもつようになった超人社会。

 その中にあって残りの二割――"無個性"という烙印を突きつけられて十年。緑谷出久は14歳、中学三年生になっていた。

 

 出久はずっと、"ヒーロー"を目指していた。この超常社会には明確な光と陰がある。陰の部分――個性を悪用し犯罪を起こす"ヴィラン"。その脅威から市民の安全を守るのがヒーローだ。

 無個性とわかってもあきらめきれなかった荒唐無稽な夢は、あるときを境に"背負うべきもの"へと変わった。

 

(僕は絶対、ヒーローにならなきゃいけないんだ)

 

 出久少年の、ただの憧れにしてはあまりに重すぎる決心。

 それを知らず、ゆえに目の前の幼なじみは出久を見下ろし、嘲笑う。

 

「没個性どころか無個性のテメェが、なんで俺と同じ土俵に立てるんだ?ア゛ァ!?」

 

 憤怒と侮蔑。血の色そのままの紅い瞳に、それらが滲んでいる。

 幼なじみであっても、この男は"信彦"とは違う……出久は改めてそう感じざるをえなかった。

 

――ところは出久の通う折寺中学校、朝の教室。ホームルームにて進路の話題が出たこと、この幼なじみ"爆豪勝己"が得意満面でヒーロー養成の総本山"雄英高校"へ進学、オールマイトをも超えるヒーローになると豪語したこと、それに水を差すように無神経な担任が「そういえば緑谷も雄英志望だったな」と口走ってしまったこと。そんな一連の流れがいまの状況をつくり出した要因である。

 

 勝己のことばに同調するかのように、彼の取り巻きでもあるクラスメイトのひとりが声をあげる。

 

「大体さぁ緑谷、おまえ個性以前に内申ヤベーんじゃねーの?2年の最後のほうまでほとんど学校来てねえじゃん。なぁ先生?」

「ん、ああ……」担任がうなずく。「学力テストの成績は申し分ないんだけどな。出席日数がちょっと、なぁ……」

 

 担任のことばに、クラス中に白けた雰囲気が広がっていく。「今さら出てきても遅いのにな」なんて声まで聞こえてくる。ただでさえ無個性で地味な風貌、さらに少し前まで不登校だったときて、出久の味方などこの教室のどこにもいないのだった。

 

 でも、

 

「……それでも、僕は雄英に行くよ」

「ア゛ァ?」

 

 か細い声ながら、出久はきっぱりと断言した。

 

「きみと張り合おうってわけじゃない。でも、ヒーローにならなきゃいけない理由は僕にだってある。だから――」

 

 

「おっ、お互いがんばろうねっ、かっちゃん!」

「……は、ァ?」

 

 妙に"らしい"ことを言ったかと思えば、一転へらりと笑ってそう言い放つ。なんだか底知れないものを見せる出久を前に、勝己は暫し呆気にとられていたが。やがて、その額にビキビキと青筋が浮かんでいく――

 

「ほっ、ほら、まだホームルームは終わってないぞ!爆豪、緑谷、席に戻れ」

「!、は、はい!」

「……チッ」

 

 担任の注意でこの場は収まったものの……一部始終を目の当たりにしたクラスメイトたちは、出久に対し侮蔑ともまた異なる感情を向けていて。

 

(ま、マジかコイツ……)

 

 ひと言に集約すれば、これだった。

 

 

 

 

 

 爆豪勝己は苛立っていた。

 

 この平凡な公立中学校で唯一の雄英合格者――目指すNo.1ヒーローの座のためデビュー前から徹底的に箔をつける、彼なりの人生設計の一環であった。

 それがよりによって、彼が一番見下している幼なじみに邪魔されようとしている。いや別に、本当なら邪魔にもならないだろう。どうせ何もできない無個性の木偶の坊――デクなのだから。

 だが、だとしても許せなかった。ましてあいつは、きっぱりと逆らってきたうえに「お互いがんばろうね」なんてのたまいやがった。この引きこもりのクソナードが、なんと自分を同格だと勘違いしている。ふざけるな。そんな勘違い、徹底的に正してやる。そう決心した勝己は放課後再び出久に絡み、彼の熱心につけている"将来のためのヒーロー分析"とかいうノートの表紙を燃やしベランダから投げ捨てた。さらに、

 

――そんなにヒーローに就きたきゃいい方法があるぜ。来世は個性が宿ると信じて……屋上からのワンチャンダイブ!

 

 軽い気持ちで言った。舐め腐った態度をやめさせられればそれでよかった。逆上して殴りかかってくるなら徹底的に打ちのめしてやるつもりだったし……本気でショックを受けて実行するとは微塵も思っていなかった。いけしゃあしゃあとあんな態度をとれる奴が自殺なんてするわけない――その点だけ、勝己は出久を評価していたのだった。

 だが、そのことばは結果的に己の苛立ちをさらに深めてしまった。受けた出久は刹那的にこそ表情を険しくしたものの……すぐに、それを困ったような微笑みに塗り替えてしまった。そして、

 

――かっちゃん、ヒーロー志望なんだから……。そんなこと言ったらだめだよ?

 

 その表情、声音。どこかで見聞きしたことがあったと思ったら、自分の父親だった。母とは対照的におっとりした気弱な性格で、声を荒げて怒るところは生まれてこのかた見たことがない。そんな父が勝己の不行状をやんわり窘めるときの言い方とそっくりだった――つまりは同格どころか、この俺を見下している。

 

 そう解釈した勝己はそれこそ我を忘れて出久の顔面を爆破しようとしたが、さすがに取り巻き連中に止められた。彼らに喫煙も許さないくらい、勝己は内申を気にしている――あからさまな怪我をさせたりしたら、それにも響く。万策尽きて「死ねッ!!」と余計に子供じみた罵声を浴びせて、勝己は下校の途についたのである。

 

「~~ッ」

「か、カツキ……」

 

 未だ怒り冷めやらぬ勝己を宥めようと、一歩後ろを歩く取り巻きの少年たちは声をあげた。

 

「そうカッカすんなって……ムカつくのはわかるけどよ、学校もろくに来てねえ奴の言うことにまともに取りあうだけ時間の無駄だって」

「そーそー。あいつアレだろ、引きこもってるうちに頭のネジ飛んじゃったんだろ。現実見えてないどころか、完全に別のものが見えちゃってる的な?」

「まあカワイソーではあるよな~……無個性なんかに生まれちまったばっかりに。カツキもさぁ、幼なじみなんだしもっと優しくしてやれば?慈善事業だとでも思ってさ」

 

 不良ぶっているわりにこういうことを言えるこいつらの性根は嫌いではなかった――だから傍に置いている――が、正直いまは腹立たしいだけだった。かといって、彼らにあたっても仕方ないと思う自分もいて。

 

「……るせーわ。あんなのと幼なじみっつーのが俺の経歴唯一の汚点だわ」

「アーハハ……そう……」

 

 二度とあいつの話はするなと言外に示せば、彼らは黙り、次いで別の他愛もない話題を口にしはじめる。

 

「………」

 

 だが、せっかくやめさせたにもかかわらず、少年の脳裏から幼なじみの影は消えなかった。彼は本当に、現実に押し潰されて壊れてしまったのだろうか。――授業中、休み時間。ふと視界に入れたときの彼は、いつもどこか遠くを見ているような気がした。夢想ではなく、深い哀しみをその翠にたたえて……。

 

(……俺には関係ねえわ、クソっ)

 

 いずれにせよ、あいつとは中学を卒業すればそれっきりなのだから。どうでもいい。

 

 どうでも、いい。

 

 

 

 

 

 時を同じくして、緑谷出久もまた帰路を歩んでいた。表紙の焼け焦げたノートを抱えて。

 苦笑を口許に浮かべて、独りごちる。

 

「かっちゃんめ……表紙焼くのは器物破損で、そのあとの暴言は自殺教唆だぞ。ヒーロー志望なんだから、もっと考えて行動しろよ……」

 

 特にワンチャンダイブ発言に関しては、本気で怒ろうかとも思った。――結局感情を抑え込んだのは、勝己はただゆがんだ自尊心が肥大化しただけの子供でしかないからだ。自分がこれまでにぶつかってきた悪意の数々に比べれば、勝己にはまだ成長という改心の余地がある。あの幼なじみは自力でそこにたどり着いてくれると、出久は信じていた。

 それに、

 

「……僕はもう、飛び降りたくらいじゃ死ねないんだよ」

 

 浮かんできた仄暗い考えを、ぶんぶん頭を振って振り払う。

 

「……それはそれとしてっ、僕も偉そうに他人(ひと)を論評できる身分じゃないんだ。せっかく()()()に効率的なトレーニング方法を教えてもらったわけだし、この一年でさらに力を磨いていかないと。……玲子さん、今日来てるかな?でも久々にジョーさんとガチバトルもしてみたいな、武者修行の成果も見せてもらいたいしなぁ………」

 

 ブツブツとつぶやきながら、トンネルを歩く少年。傍目には勝己の取り巻きコンビが言うとおりの危ない子である、悲しいかな。

 

――そんな彼の背後に、本当に危ない存在が蠢きはじめていた。

 

「Mサイズの……隠れミノ……」

 

 さながらヘドロに似た流動体は、下卑た声でつぶやきながら、ゆっくりと少年に忍び寄る。少年は気づかず歩き続ける。ある程度まで距離を詰めたところで、一気に覆いかぶさり――

 

「……?」

 

 気づけば、少年の姿が消えていた。当然自身の身体に呑み込めたわけでもない。

 

「僕に何か御用ですか?」

「ッ!?」

 

 (ヘドロ)がギョロギョロ周囲を見回しているうちに、気づけば少年は真正面に現れていた。こちらがヴィランとわかっているだろうに、幼い顔立ちにニコニコと笑みを貼りつけている。――その瞳はまったく笑っていなかったが。

 

「僕の身体を乗っ取るのはおすすめしません。死んじゃいますよ、下手したら」

「な、ナニ……っ」

 

 このガキは気でも触れているのか。だが柔らかな童顔とは対照的に、その瞳からあふれる気迫は先ほどまで対峙していたとあるヒーローにも匹敵するのではないかとすら思われた。

 

(そんなわけあるか、しっかりしろオレェ!!)

 

 こんな小さくてひょろい中学生、どうせ強がっているだけ。彼はそう思い込むことによって、自らを叱咤した。

 

「この、ガキが――ッ!」

 

 再び、出久に襲いかかる。彼が右手を高く掲げるようなしぐさを見せたことを気にする精神的余裕はなかった。

 しかし双方の行動は、刹那響いた声により強制的に中断させられることとなる。

 

「もう大丈夫だ少年!――私が来たッ!!」

「「!?」」

 

 逆光を浴びて立つ巨大な人影。その拳が振りかぶられ、

 

 

「TEXAS……SMAAAAASH!!」

 

 

 凄まじい暴風が、トンネル内で躍り狂う。ヘドロのヴィランは一瞬にして吹き飛ばされ、出久はその場に蹲って耐えることしかできない。

 

(こ、これって……!)

 

 きっと、いや間違いない。――あの人だ。

 

 風が止み、出久はちら、と伏せていた顔をあげた。そこにはもうヘドロのヴィランの姿はなく……いや、あった。巨大な人影の握るペットボトル。よく見ればその中に、凝縮されてしまったそれが詰め込まれている。

 そしてその人影は、

 

「悪かったな少年、ヴィラン退治に巻き込んでしまった」

「!、あ……」

「本当はきちんとお詫びをしたいところだがすまないッ、急いでいてね。()()で勘弁してくれ」

「いや、じゃなくて……あっ!」

 

 よく見たら、風圧で開いたノートのページにしっかりサインがしてあるではないか。いつの間に?出久は目を瞠った。

 

「それでは……今後とも、ヨロシクっ!!」

「!?」

 

 そうこうしているうちに、"彼"はトンネルの外まで駆けていく。まだだ、こちらの話は終わっていない。

 

「まっ、待って!」

 

 そのあとを追って、出久は走り出す――

 

 

「――オールマイトっ!!」

 

 

 

 トンネルを出るや否や全力で跳躍した"平和の象徴"オールマイトは、脚に普段は感じないような重みと違和感を覚えた。まるで、何かがしがみついているような……。

 

「って、えぇ~ッ!?」

 

 本当にしがみついていた。先ほど救けた学ラン姿の少年が。風圧のせいで顔面がとんでもない変形を晒している。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!!??」

「何やっとんだキミは熱狂が過ぎるぞ!?」

 

 振り落とそうと図りかけたオールマイトであったが、ここが上空十数メートルだということを思い出して断念した。ちょっとしつこいファンの中学生を墜落死させたとあってはヒーロー失格どころではない。

 やむをえず、彼は手近なビルの屋上へと降り立った。少年は「死ぬかと思った……」なんてぼやきながら肩で息をしている。

 

「まったく、おじさん本当に時間がないんだから……――ン?」

 

 少年の容貌を明確に認識できる状態となって、ようやくオールマイトは気がついた。この少年、出会うのはこれが初めてではない――

 

「……緑谷、少年?きみ、緑谷少年か!?」

「や、やっと……気づいてくれた……ハァ」

 

 呼吸を整えながら、少年は立ち上がる。そのエメラルドグリーンの双眸は、()()()()と変わらない強い輝きをたたえていて。

 

 

「またお会いできて光栄です、オールマイト」

 

 卵形を細めて、緑谷出久は再会を祝うことばを放った。

 

 

 

つづく

 

 

 




【登場人物】

緑谷出久
折寺中学校三年生。"デク"。
ひょろっちいナードな外見、中学ほとんど不登校という経歴とは裏腹に、覗かせる気迫はヴィランをビビらせるほどのもの。オールマイトと面識があることからも、少なくともただの中二病ではなさそうだが……!?

オールマイト
現在のNo.1ヒーロー。別名"平和の象徴"。チョーカッコイイヒーローさ!
出久とは三ヶ月ぶりの再会らしい。三ヶ月前といえば、謎のヴィラン軍団"クライシス"を仮面ライダーが壊滅させた時期と一致するが……?

爆豪勝己
折寺中学校三年生。"かっちゃん"。
超強力な"爆破"の個性をもつヤベー奴。性格もだいぶヤベーイ!!
自殺教唆をするほどに幼なじみである出久を嫌悪する一方、二年以上の不登校を境に雰囲気の変わった彼に思うところのある様子。

かっちゃんの取り巻き
刈り上げくんとロン毛くん。
不良ぶってるが勝己に「(緑谷とは)幼なじみなんだしもっと優しくしてやれば?」と言ったりガチクズではない。悪く言えば小物。

ヘドロヴィラン
犯罪者。
隠れミノにしようとした出久にビビらされ、オールマイトに捕縛されと踏んだり蹴ったり。次回、リベンジなるか!?

信彦
出久の親友……らしい。
仔細は不明だが、少なくとも勝己のように出久をいじめたりはしていなかったようだ。
現在、出久のそばにはいないようだが……?



次回 再臨!!RX

ぶっちぎるぜ!!


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