空我を優先して書いてますんでこちらはどうしても不定期更新になってしまいますが、ご容赦ください。
空我も今日(明日?)午前0時ピッタリに投稿しますのでよろしくです。
※本編にウッカリ入れ忘れましたが、出久は当然ワン・フォー・オール使ってもケガしてません。
オールマイトとの再会から爆豪勝己が人質となったヘドロ事件での変身、そしてオールマイトの個性"ワン・フォー・オール"の継承という、怒濤の急展開を経た一週間が終わり、ようやく訪れた休日。
緑谷出久はとある山中にいた。山中と言っても、森や茂みに囲まれた鬱蒼とした場所ではない。砂利や石に覆われた、開けた土地――いわゆる、採石場と言われる場所。そこに愛馬であるアクロバッター、そしてもうひとり、青年を侍らせて立っていたのだった。
「わざわざ来てもらってごめんね――ジョーさん」
ジョーと呼ばれた青年は、そんな出久のことばに対しフッと笑みを浮かべて応えた。
「気にすんな、アニキの呼び出しなら何を置いても駆けつけるってモンよ!」
「あはは……やっぱり頼もしいなあ」
この青年との付き合いは決して長くはないのだが、戦友という関係性は長短など超越したところにある。まして本来の彼が、自分……RXを殺すために造られた怪魔ロボット"デスガロン"であることを考えれば。
「しかし驚いたぜ、あのオールマイトにそんな秘密があったなんてな」
「僕もだよ……しかも力を受け継いでほしいなんてさ」
「俺に話しちまってよかったのか?そんなこと」
「それなら平気だよ、オールマイトにもちゃんと許可はとったから」
これまでもこれからも、肩を並べてあらゆる悪と戦うことになるだろうジョー。彼とくらいは秘密を共有し、何かあったとき頼りにしたい――そんな少年の願いに、乞うて継承してもらった立場のオールマイトが否と言えるはずがなかった。そもそも彼とて塚内はじめ、少数ながら支援者をもつ身である。出久にもそういう、秘密を抱える必要のない同志が必要なのは間違いないのだ。
「"平和の象徴"か……重いな、中継ぎだとしても」
「……うん。正直、僕なんかがひとりで背負えるものじゃないよ」
「かもな」あっさり首肯しつつ、「でも、だから俺に話してくれたんだろ?いいじゃねぇか、アニキはもう独りじゃないんだからよ」
ただでさえその小さな背中に重責を背負ってきた出久である。鉛のようになった足を引きずるようにしてそれでも歩き続けなければならない、にもかかわらず救けを求める手に必ず応えようとする。
自分は、彼の差し伸べてくれた手に救われた。少し運命が変わっていれば、クライシスのいち怪人として葬られていただろうに。
――だから自分は、全力でこの少年を支える。際限なく増えていくであろう重荷、救いを求める手、すべて分かち合うために。
鋼のジョーこと元クライシス、怪魔ロボット・デスガロンがそんな決意を新たにしていると、一台の車が採石場内に進入してきた。それは出久たちのすぐそばまでやってきてから停車し、
「緑谷しょうね~ん!」
助手席からかの貧相な男性が降りてきた。風貌とは裏腹に声はよく通るし、身ぶりも大きくはっきりとしている。――彼の正体はNo.1ヒーロー、"平和の象徴"オールマイトであるという事実を知ってさえいれば、それは驚くようなことでもなかった。
「おはよう少年、遅くなって申し訳ない。来る途中、塚内くんが道を間違えてしまってね!」
「俊典、きみな……」運転席からあとを追ってきて、塚内。「きみがここは左に曲がれば近道とか自信満々に言うから、言うとおりにしたんじゃないか」
「そ、そうだったっけ?HAHAHAHAHA……ごめん」
トゥルーフォームなオールマイトがしゅんとしな垂れている。ただでさえ萎んでいるのに……と内心凄まじく失礼なことを考えつつ、出久はふたりの中年のもとに歩み寄っていった。
「こちらこそ申し訳ありません、オールマイト、塚内さん。わかりづらいところにお呼び立てしてしまって」
「なあに、すごくいい穴場じゃないか採石場なんて。しかし、ここときみには一体どういう縁があるんだい?」
「えっとですね……妙な話、ゴルゴムやクライシスの怪人と戦ってるとき、気づくといつもここに移動してたんです。街中にいたとしても、いつの間にか」
「???」
ふたりの頭にクエスチョンマークが乱舞しているのが出久にもわかる。正直、自分自身だってそうなのだ。BLACKとして戦いはじめた頃は戸惑いに戸惑った。なぜか帰路をきちんと記憶していたバトルホッパー(当時)のおかげで事なきを得たが。
「ま、まあ、その辺りの事情はあとで詳しく聞かせてもらうとして……」咳払いしつつ、「ワン・フォー・オールを継承してもらって数日が経過したわけだが、その後どうだい?何か変わったことがあったかな?」
「え~と……う~ん………」
「……特別変わったことはないです、すみません」
「そ、そうか……そうだよね、きみ元々すごい力持ってるもんね……」
既に三年近く、体内に"キングストーン"なる巨大な力の源を宿している以上、ワン・フォー・オールが新たに宿ったというだけではさしたる変化も感じられないのは無理もないのかもしれない。それは理解できるのだが……やはりちょっぴり残念な気持ちになるオールマイトだった。
「ま、まあそれはいいや。それより、あの場で継承させておきながら今日まで使用を禁じてすまなかったね」
「いえ……気にしないでください。RXにも並ぶパワーですし、安易に試し撃ちなんかしたら大変なことになるのは想像がつきましたから」
「ご理解感謝するよ。まあここなら余程のことがない限り問題ないだろうし、心おきなく試し撃ちしてみてくれ!」
「わかりました!」
彼らが到着する前に、おあつらえ向きに出久の背丈の二倍は直径のある巨岩をジョーと一緒に運んできておいた。RXの拳なら一撃で砕けるが――そこにワン・フォー・オールを加えることで、それこそ跡形も残さず消滅させる。それくらいが及第点だろうか。
ともあれうなずいた出久は、まず慣れ親しんだ構えをとる。右手を天目がけて突き出し、手刀の形にして徐に下ろしていく。腹のあたりで、それを左から右へ切り、左手に代わり――
「――変、身ッ!!」
勇ましい叫びとともに拳を握り込むことにより、腹部にベルト――"サンライザー"が出現、そこに内蔵された奇跡の石・キングストーンが出久の全身を内側から変化させていくのだ。
身長160センチに体重50キロ程度、中学三年生としてはやや小柄な出久の身体が、身長198センチ、体重98キロ――大きく逞しいバッタに似た異形の英雄へと"変身"する。
――その名も、仮面ライダー。仮面ライダーBLACK RX。
変身を完了した出久……もとい仮面ライダーは、その場で仁王立ちの姿勢をとってすう、と深く息を吸っている。真価が発揮される……その前兆。オールマイトも塚内もジョーも、固唾を呑んでその姿を見守っていた。
とりわけ塚内は、刑事の勘ゆえか妙な胸騒ぎを覚えていた。何かとんでもないことが起こるのではないか。オールマイトは「余程のことがない限り」と言っていたが……。
そうこうしているうちに、RXの拳が固く握りしめられていく。
(ワン・フォー・オール……発動……!)
頭の中でそう念じるだけで、全身に漲っていく力。彼自身の視界には映っていないが、その身体には血管を想起させる赤い光流が奔っている。――ワン・フォー・オールの発動が、成った証。
「おぉ、継承はちゃんと成功したようだね!」
「みたいです。――いいですか、やっちゃっても?」
「うん。……あぁ、ひとつだけアドバイス」
「?、はい」
すぅ、と息を吸い込み――オールマイトは、あらん限りの声で叫んだ。
「ケツの穴グッと締めてこう叫べ――"SMAAAAASH!!"とな!!」
「!、――はいッ!!」
ライダーパンチ、ライダーキック――技名を叫んで一撃ぶっ放すのは、BLACK時代から幾度となく繰り返してきたこと。実はそれはオールマイトの影響が強くて……だから"SMASH"はオリジンと言ってもいいことばなのだ。自然、身体が熱をもつ。
「ハアァァァァァァァ………――!」
溜めるような唸りとともに、拳が引かれる。その動作だけで周囲の空気がズン、と重くなり、居合わせた者たちに凄まじい威圧感を与える。……それは何も人間だけを対象とはしていない。足下の小石の群れがわずかに浮かび上がり……プレッシャーに耐えられず、粉々に割れて消失する。
――あれ?
塚内だけでなく、割と楽観的に構えていたオールマイトとジョーも、ここにきてようやく胸がざわつくのを自覚した。世紀王を超えるパワーと、ワン・フォー・オールのパワー……その化学反応。これはひょっとして、とんでもないことになるのではないか?
「しょ、少年、やっぱりちょっと待っ――」
ともかくいったん中止させよう。そう思って声をかけようとしたオールマイト。しかしもう、専心の極みに達しているRXを止めることはできず。
「S……MAAAAAAAAAASHHHHHHH!!!」
オールマイトの期待を超えた咆哮とともに――拳が、突き出される。
「――ッ!!」
凄まじい旋風が巻き起こり、オールマイトもジョーも塚内も、その場に踏みとどまるのが精一杯。凄まじい砂塵が襲い来るから、目すら開けていられない――
(こ、これは、私と同じ……いや……!)
――それすら、超えるのではないか。
ようやくその事実に思い至るのと、怒濤たる疾風が収まるのが同時だった。
「………」
恐る恐る、目を開ける。防護の腕越しに見える、RXの背中。それに変化はみられない。強いて言うならその呼吸が少しばかり大がかりになっていることか。それ以外に変わった点は、何も――
(何、も?)
何か、違和感があった。RXの姿にではない。その周囲の空間、この採石場。何かが足りない……本能がそう訴えかけてくる。だがそもそも、ここは元からほとんど何もない空間だったのだ。いまの一撃が何かを破壊したとか、そういうことはまずありえない――
――ん?
「あの、さ……塚内くん、ジョーくん?」
「……ん?」
「なんだ?」
「ここ、って………」
「――こんなに、広かったっけ……?」
自分たちの真正面だけ、記憶より明らかに空間が広がっている。もっと言えば周囲をぐるりと囲んだ岩肌が、そこだけ不自然に削れてしまっているような……。
「あ、あわわ……」
「……やっちゃいました、僕」
「え、え?」
「山……消し飛ばしちゃいました………」
「………」
「へぇえええええええええッ!?」
情けない叫び声をあげたのはオールマイトただひとりだった。塚内はそれすらできずに硬直(フリーズ)している。ジョーは対照的に、「おぉ……」と声を漏らす程度で冷静さを保っている。
だが一番慌てているのは他でもない、仮面ライダーBLACK RX本人で。
「こッ、ここここれって流石にマズいですよね!?」
「う、うん……マズいかマズくないかでいえば……非常にマズい」
一部分とはいえ地形を変えてしまって、マズくないわけがない。少なくともめちゃくちゃ怒られること間違いなしである、地権者とか行政とかに。
「ッ、………」
呆然と自分の手を見遣るRX。闘志に併せて身体も萎み、もとの緑谷出久のそれに戻る。丸まった小さな背中は、流石に年相応の少年そのものに見えた。オールマイトの心に罪悪感がにじむ。
「ごめん少年……私が迂闊だった。まさか初っぱなからここまでのパワーが出るとは………」
「い、いえ……ある程度は予想できてたというか……。だからここをチョイスしたわけで………」
「あ……そうなの」
そう――あれだけ危機感を抱き、ワン・フォー・オールの継承を躊躇していたのだ、こういう結果を予測できていなかったわけがない。
それでも思いきり力を振るったのは、一度はオールマイトに――自らの師となる人にはっきり見せておかねばならないと思ったからだ。超・世紀王と平和の象徴――重なったふたつの力の凄まじさを。……もっとも、視覚効果はそれを企図した出久自身ですら冷静でいられないほど強烈だったわけだが。
「オールマイト……。こんなことを言うのは慢心してるみたいで嫌なんですけど……いまの僕の力は、正直、あなたを超えていると思います」
「………」
何も知らない者が聞けば、慢心どころかふざけた冗談を口にしているか、さもなくば中二病の類としか思われないだろう。
しかしそのどちらでもない、それがまぎれもない真実であることをオールマイトは知っていて……だから、沈黙とともにうなずかざるをえない。
「――改めてお訊きします。それでも、あなたの気持ちは揺らぎませんか?」
出久に――仮面ライダーに、このままワン・フォー・オールを預け続けること。たとえ期限付きであっても……その間に万が一出久がヴィランに堕ちるようなことがあれば、あっという間にオールマイトの"宿敵"に並ぶ……いやそれ以上の脅威となる。世界を手に入れ、思うままにすることなど容易いのだ。それだけの力を間近で見せつけられてなお、その気持ちに揺らぎはないか。もし欠片でもあるというなら、やはり――
「は、――」
「HAHAHAHAHAHA、ゴフッ!」
「!!?」
いきなり哄笑しはじめたかと思えば、吐血する。さすがの出久も、初めてトゥルー・フォームを目の当たりにしたとき並みに目を剥いた。
「ど、どうしたんですか!?」
「ハァハァ……す、すまないね。――そんなの、いまとなっては愚問だと思ってさ!」
「!」
口角に血を残したまま、オールマイトはビシッと親指を立ててみせた。
「私だって散々迷った末にこういう結論を下したんだぜ?きみの力に圧倒はされても、それで今更迷うなんてことあるわけないさ!」
「オール、マイト……」
「ただ……」
「ただ?」
いっさい迷いなどないということばと表情には似つかわしくない注釈に、当人以外の三名は揃って口を傾げた。
「私のように"ぶん殴る"のに使うのはやめたほうがいいかもしれないな!これじゃあヴィランもろとも街ひとつ吹き飛ばしちまう!」
「……あー」
確かに。街は言うまでもないが、ヴィランを消滅させてしまうのも言語道断――今更ながら直接殴った巨岩は欠片も残さず消滅していることを付け加えておく――。ヴィランにだって人権はある、きちんと裁判を受け法に則った罰を受ける必要があるのは個性が現れる以前の社会と変わりない。
「それは……そうですよね」うなずきつつ、「でも、じゃあどうすればいいでしょうか?」
打撃力強化に使えないとなると……しかしオールマイトの口ぶりからして、「使うな、ただ保管庫であれ」ということでもないだろうが。
「HAHAHA、ワン・フォー・オールはただのパワー強化じゃない、"パワーをストックする個性"なのさ!そのパワーをどこに振り向けるか……元々多彩な能力をもつきみなら、私より遥かに多彩な活用方法を見つけられると思うけどね!」
「多彩な、活用……」
確かに、ワン・フォー・オールの規格外のパワーを除けば(一応)ふつうの人間ではあるオールマイトに対し、自分はRX……さらにロボライダー・バイオライダーという異なる能力をもつ形態にも変身することができる。得た個性をどう作用させられるか――形態によって、それも異なってくるということか。
「無論そうなってくると、私から教えられることには限界がある……。きみ自身で見出してもらわなければならないこともあるだろうし、私の知人に教えを請うてもらうこともあるだろう。なんにせよ、できうる限りの支援はする」
「――はい、ありがとうございます。でも、あの……ここのことなんですけど」
話を強引に進めてしまっても、現実は――ここの地形を変えてしまったという事実は変わらない。これの後始末をどうするか……ゴルゴムやクライシスと戦っていた頃はそれどころでなかったが。
(そういう責任も、これからはちゃんと負わなきゃならないんだ)
正規のヒーローに、なる以上は。
しかし現状、14歳の少年であることもまた、事実なわけで。
「ここはひとまず私と塚内くんでなんとかするよ。"私の秘密の特訓で……"って言えば、なんとかなるだろう。まあ、いくらか包むことにはなるだろうけどね、haha……」
「……すみません、将来きちんとお返しします」
「そうだな……こりゃ、また寿命を伸ばされちまったな!」
その出世払いが済むまでは死ねない――無論冗談だろうが、その日までオールマイトを守ることを、出久は改めて心に誓うのだった。
そして、
(さよなら……僕のメモリープレイス)
こうなってしまった以上、もう二度とここには来られないだろう。つらく苦しい戦いに、何度もケリをつけた場所。その想い出を噛みしめながら、出久は仲間たちとともに去るのだった。
*
それからは特訓の日々が始まった。といっても原作のように"地獄の"という冠詞はつかない。新たに始めた特訓ではどちらかといえば工夫、工夫、工夫――頭を使うことのほうが多かった。海浜公園の掃除――それはクライシス壊滅直後からオールマイトに勧められて実行済みだが、これは改造人間である出久にはさほど苦ではなかった。むしろ一緒についてきた茂や一水の体力づくりにひと役買った部分が大きい。
それに、かつてともに戦ったヒーローたちのもとでの修行。さすがに大っぴらに戦場には立てず様々な形での支援が中心となったが、それもまたワン・フォー・オールの新たな活用にひと役買った。
とはいえどうしても戦わざるをえないときもあって……よりによって折寺中学の修学旅行の際にそういうことが起こったりもしたのだが、いずれ機会があれば語ることとしたい。
ともあれ、非常に楽しく充実した日々はあっという間に過ぎ――十ヶ月。
――雄英高校入学試験、当日を迎えたのだった。
雄英高校入学試験に挑む出久は、ハンディキャップとして自ら変身を封じる。しかし邂逅した心優しき無重力少女が無慈悲なる巨大ロボットの手で危機に陥ったそのとき、封印は解かれ、試験会場に伝説の戦士が顕現する!
RX「リボルケインッ!!」
次回 超・世紀王デク
サードライン
ぶっちぎるぜぇ!!