超・世紀王デク   作:たあたん

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結局一ヶ月かかりました。クソ長くなったのもありますが、チートってムズカシイね。

なのでちょっと古いネタですが、アニメで相澤先生が「最低ふたつ必殺技を編み出してもらう」と発言したとき、

RXデク「僕もういっぱいあるんですけどどうすればいいですか?」(RXキック、リボルクラッシュ、スパークカッター、ハードショット、OFA各種スマッシュほか応用技多数)

という台詞が瞬時に思い浮かんだ。本編に反映されるかはわかりませぬ。


サードライン(後)

 演習会場は市街地を模したものだった。

 いや……正しくは、街ひとつ一からビルドしてしまったとでも言うべきか。道路の幅も広く、取り囲むビル群も立派にそびえ立っている。

 

(さすがは雄英……設備も一流だなぁ)

 

 感心しつつ、他の受験生たちの姿を見渡す出久。見る限りではガチガチに緊張している者はあまりおらず、早く己の力を見せつけたいとばかりに逸っている様子だ。最高峰に挑むだけあってか、皆よほど自信があるのだろう。――その自信、多少なりとも打ち砕くことになるのだが。

 と、群衆の中に見覚えのある少女の姿があった。勝己に突き飛ばされて転けそうになった出久を、個性で助けてくれた女の子だ。

 

(彼女も同じ試験会場だったのか……。彼女には合格してほしいけど僕が下駄履かせてあげるのも失礼だし……うん、頑張ってほしいな)

 

 それにしても、彼女はなぜあんなに顔を真っ赤にしていたのか。結局、ジョーたちは教えてくれないままだった。――長く苦しい戦いと人でなくなってしまった肉体のために、自分には得たものと同時に欠けてしまったものがあることは出久も自覚している。それを取り戻さねばならないことも。

 

 そんなことを考えていた出久は、刹那、背後に迫る気配を感じとって素早く振り向いた。そこに立っていたのは、

 

「!?」

「!、……あ、天哉くん?」

 

 やたら身体のラインの出たユニフォームに身を包んだ、天哉少年だった。肩を叩こうとでもしていたのか、手が伸びかけた状態で固まっている。

 

「きみも同じ試験場だったんだね……。どうかした?」

「いや……先ほどは失礼した。妙にはしゃいでいるようだったから、ひと言注意しなければと思ってな」

「あぁ……気にしなくていいよ、うるさくしちゃったのは事実だし。……でも、僕にとっては恩人のひとりなんだ、プレゼントマイクも。きみのお兄さんと同じで」

「恩人……何か大きな事件に巻き込まれたことでもあるのかい?」

「うーん……まあ、そんなところかな」

 

 一応、嘘はついていない。"巻き込まれた"と言えるかは微妙なところだが。

 

「ところできみ……見れば見るほどお兄さんにそっくりだね」

「!、……そう、だな。たまに言われることもあるが」

 

 兄に似ているというのは、彼にとってはやはり褒め言葉なのだろう。心なしか頬が赤くなっている。

 それを認めたうえで、出久はさらに駄目押しに及んだ。

 

「きみもきっと、お兄さんに負けないヒーローになるんだろうね。――雄英(ここ)で切磋琢磨できるのが楽しみだよ」

「!」

 

 目を見開く天哉。"兄に負けないヒーロー"――そのフレーズに、身体が歓喜を抑えきれなくなる。それと同時に、この地味で小柄な少年に、自分も含めたどの受験生にもない"何か"を感じとってしまった。得体の知れない巨大なそれに、いまにも呑み込まれてしまいそうな錯覚に囚われて、その大きな身体をぶるりと震わせる。

 

(なんなんだ……この男は……?)

 

 自分と同い年であるはずなのに、まるで、いくつもの戦場で無数の生と死を見つめてきた歴戦の勇者のような。兄と同じ……いや、それ以上かもしれない。気づけば天哉は、一歩後ずさってしまっていた。

 

「天哉くん?」

 

 出久が怪訝そうに首を傾げた瞬間、

 

 

『はいスタートォ!!』

「!!?」

 

 カウントダウンもなしの宣言に虚を突かれた受験生たち。無論、天哉もそのひとり――しかし彼の味わった驚愕は、それだけに留まるものではなかった。

 

 

――消えたのだ、目の前から。緑谷出久が。

 

「え……?」

 

 刹那、彼方から響く轟音。受験生たちがざわめいている。

 

「お、おいウソだろ……?」

「あいつ……マジかよ……!?」

 

 彼らが呆然と見つめる先に……かの少年の姿があった。大破しスクラップ同然となったロボット(仮想ヴィラン)を、地面とサンドイッチにしながら。

 

「……実戦ではカウントダウンなんかしてもらえない、ですよね。プレゼントマイク」

 

 既に幾多もの実戦を勝ち抜いてきた出久に、それがわからないはずがない。そのために彼はこうして、自分が既に抜きん出た存在であることを存分に喧伝しているのだ。本来なら、ライバルと呼ぶべき者たちに向けて。

 

「さて、まずはこれで1P。――ボサっとしてると、みんな僕が狩っちゃうぜ……な、なんてね!」

 

 あえて気取った調子で言い放つ出久。内心ちょっと恥ずかしかったのでどもってしまったが、そんな些細なミスには皆気づきすらしない――それどころではないから。

 

 刹那、慌ただしく動き出す受験生たち。出久のことばが冗談では済まないものになると感じとったのだろう。

 天哉もまたそのひとりだった。

 

(い、一体何が起きたんだ……!?あの一瞬で、彼はどうやってあの仮想敵を……?)

 

 駆け抜けつつ。――まず思い浮かんだのは、"ワープ"の個性。だがそれでは、一瞬で仮想敵を破壊できたことの説明がつかない。武器を隠し持っているようにも見えなかったし、純粋な格闘術のみで仕留められる相手とは思えない。ましてあんな、小柄で細身の少年に。

 まさかそれが、人体改造によってヒトの形をとどめながらヒトでなくなってしまった肉体にオールマイトの個性が掛け合わさったゆえだなどと、誰が気づけるであろうか。それらを最大限に操り、出久はほとんど瞬間移動に近いスピードで仮想敵のもとまで移動し、細身から繰り出す馬鹿力で叩き潰した――ただ、それだけ。

 

 なんにせよ――ヤバイ。そう判断した受験生たちは死に物狂いで仮想敵を見つけ出し、我先にと争いながら倒していく。出久は微笑すら浮かべてその光景を眺めていたのだが、

 

「あっ……僕まだ1Pしかとってないや」

 

 のほほんとしている場合ではないことに気づいた。このまま見守っていたら当たり前のように不合格になってしまう。

 ふう、と息をついた出久は――ワン・フォー・オールを、発動させた。全身にエネルギーが漲っていくのがわかる。"フルカウル"――一部ではなく全身に個性を纏うことによって、パワーやスピードを必要なだけ強化することができる。これなら山ひとつ消し飛ばしてしまうこともない。

 

 もうひとつ深呼吸をして――跳んだ。そのスピードは確かに、常人の視力からすれば"ワープ"に見えてしまうかもしれない。鷹野警部補の"ホークアイ"の個性なら影くらいは捉えられるか?「鷹野警部補って誰?」って方は『僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我』もご覧くださいお願いします!!

 

……ともあれ、一瞬にして次なる仮想敵の頭上へ到達した出久は、降下しながらデコピンを放った。威力を抑制するためだ。

 その衝撃だけで仮想敵はバラバラに砕け散り、見るも無残なスクラップと化す。

 

「こいつは……3P敵か」

 

 確認するようにつぶやいていると、

 

「あ……あ……」

「?」

 

 すぐそばで怯えている金髪の少年の姿。確か、腹部からレーザービームを放っていた。振る舞いがやや珍妙なことは置いておいて、なかなか強力な個性の持ち主ではあるようだが。

 

「横取りしてごめんね。――まだまだ敵は残ってるよ、がんばって!」

「……!」

 

 励ましのことばを残して、出久は再び跳ぶ。その笑顔は少年の記憶に色濃く刻みつけられることになるのだが、このときはそんなこと、考えもしなかった。

 

 

 

 

 

 試験開始、一〇分経過。

 

 もはや何体目かもわからない仮想敵"だった"スクラップの上に立ちながら、出久はふう、とひと息ついていた。

 

(そろそろ……いいかな)

 

 累積ポイントはかなりのものだろう。合格はもちろん、一位になるにも必要なだけは稼げたと思う。

 ちら、と周囲に目を向ける。皆疲労を色濃くしつつ、死に物狂いでポイントを稼ぎに奔走している。たったひとりのために、敵の数はずいぶん減ってしまっている――残る少ないパイの奪い合いだ。

 

 出久が最後まで本気で挑めば、残る仮想敵を全滅させることだってわけはない。しかしそうなると他の会場との不公平は決定的なものになる。他の会場の不適格者が合格して、この会場の適格者が落ちる――それは自分にとっても損失以外の何ものでもない。まして恩人の弟に、試験前に助けてくれた"いい人"がいることを鑑みれば。

 

(手は抜きたくないけど……しょうがないよな)

 

 あとは大人しく有力者の観察でもしていよう。まず上述のふたりは余裕はないながらも確実にポイントを稼いでいるようだ、じき合格圏には達するはず。複数の腕を操る体格の良い異形型の少年に、先ほど獲物を横取りしてしまった、腹からレーザービームを放つなんだか演劇がかった所作の少年――そのあたりも合格候補か。

 

(あっちの異形型の子は落ち着いてるな、見た目に違わず肝が据わってるのかも。逆に、おフランスっぽいレーザービームの子はちょっと精神的に脆そうかな。さっきのリアクション見る限り)

 

 もしかすると約一ヶ月後には同級生となるかもしれない相手を分析していた出久は、次の瞬間耳を劈くような轟音と受験者たちの悲鳴にも似た阿鼻叫喚を聞くこととなった。

 

「!、出てきたか」

 

 そのひときわ巨大な鋼鉄の機械人は……間違いない、"0P敵"だ。まともにやりあったところでなんの意味もない、ただ受験生を妨害するためだけのオブジェクト。

 その存在理由に忠実に、猛獣のような獰猛さで受験生に襲いかかる0P敵。ほとんどポイント提供マシーンと化していた他の有価値の敵とは次元が異なるらしい。

 

「こ、こっちに来る!?うわぁああああ!!」

「まだ全然ポイント稼げてないのに!!」

 

 目をつけられた受験生たちの悲鳴のような声。それを聞きつつ……出久は、悩んでいた。

 

(稼げてないのは僕のせいでもあるんだよなぁ……うーん………)

 

 競争なんだから当然といえばそれまでだが、自分ひとりでポイントを荒稼ぎしてしまったのも事実。0P敵の存在も込みで試験ではあるが――

 

(あいついなくて他の試験場とどっこいな気もするしな……)

 

 それに、何より。

 

「誰かのピンチを見てるだけなんて、仮面ライダーらしくないだろ!」

 

 答は、決まった。出久はニヤリと笑い、拳骨を軽く唸らせる。その翠の瞳は猛禽類のような輝きを放っていて。

 

 

「――彼、やる気だね」

 

 椅子に座った幼児くらいの体長のネズミが、人間と遜色ないことばをつぶやく。――彼がこのヒーロー養成の最高峰を仕切る"校長"という肩書きをもつことなど、部外者からすればおよそ信じがたいことだろう。

 

「でしょうね」試験官のひとりが応じる。「0P敵から逃げ回るような性質(たち)じゃないでしょう、彼は」

 

 緑谷出久が仮面ライダーであるという事実。この場にいる者たちが、知らないはずがなかった。試験官でありヒーロー科の教師でもある彼らは、皆現役のプロヒーローだ。ゴルゴムやクライシスの脅威に対して、なんらかの対抗措置をとった者たち。直接怪人と戦った者もそうでない者もいるが……自分の持ちうる力を最大限発揮し、仮面ライダーを支えてきたのだ。

 

――だからこそ、少年の活躍をこのまま黙って見ているわけにはいかなかった。

 

「本来なら、試験は公平公正に……なんだが。……きみにも試練を課させてもらうよ、仮面ライダー」

 

 意味深なことばとともに、鼠校長が手許の赤いボタンを押し――

 

 

――0P敵目がけて跳ぼうとしていた出久は刹那、およそ一年強も感じたことのない強烈な邪悪の気配を間近に感じていた。

 

「ッ!」

 

 咄嗟に上空に跳び上がる出久。直後飛来した複数のミサイルが仮想敵の残骸を爆発させ、跡形もなく弾き飛ばす。

 爆風に煽られながらもビルの屋上に着地した出久は、その劫火をもたらした存在を視認した結果、しばし呆然とする羽目に陥っていた。

 

「あれ、は………」

 

 ヒトの形をとどめた四肢をもちながら、全身を鋼鉄に覆われ、大量の兵器を内蔵した破壊の化身。緑谷出久にとって、それは記憶にある存在――忘れたくとも忘れられない、"第二の"悪夢のはじまりを、象徴する存在だった。

 

 

「キューブリカン……!?」

 

 キューブリカン――クライシス帝国が擁する怪魔ロボット軍団、もっと言うならばすべての怪魔怪人の中で、最初の刺客。RXとなって間もない出久を大いに苦戦させた、まぎれもない強敵だ。

 

「なんで……なんで、あいつが………」

 

 既に滅びた……自分が滅ぼしたクライシス帝国の怪魔ロボットが、なぜ雄英高校の試験会場に?可能性だけなら頭の中で無数に枝分かれしてゆくが、そのどれもがありえないこととしか思えなかった。

 とどまることを知らない思考の渦を弾き飛ばすように、再生キューブリカンはさらにミサイル攻撃を仕掛けてきた。

 

「ッ!!」

 

 ワン・フォー・オール"フルカウル"を再び発動させ、回避する。かと思えば右腕が持ち上がり、そこから空気を焦がすようなレーザービームが発射され、標的たる出久をどこまでも追いかけてくる。

 

(ッ、殺す気かよ……!?)

 

 その猛攻ぶりは、記憶にあるオリジナルのキューブリカンにまったく遜色ない。冷酷な殺人マシーン。そんなものを試験に投入してくるなんて。

 ただ、幸か不幸か、再生キューブリカンは出久以外の受験生のことはまったく眼中にないようだった。

 

「わざわざ怪魔ロボットなんて出してきたってことは……なるほどね、そう簡単に三タテは許さないってことか!」

 

 合格、首席、そのうえ0P敵まであっさり始末されては、ということなのだろうか。あるいはまだ、別の何かがあるのかもしれないが。

 

(キューブリカン相手に生身は厳しいか……でも……!)

 

 仮面ライダーの力には極力頼らず、緑谷出久としてこの試験を乗り越えたい。それは出久の意地だった。もちろん変身せずとも改造人間の恩恵には与ってしまうが、だとしても――

 

「――はッ!!」

 

 ならば授けられた個性を最大限に活用し、この強敵を倒すほかない。そう決心した出久は勢いよくその場を蹴った。逃げ回っているのは性に合わない――教師陣の言は見事に的中している。

 だが再生キューブリカンもさるもの、見かけによらない素早い動作で出久と距離をとろうとする。さらにミサイル、レーザービームの雨あられ。広範囲に拡散するものだから、出久は早速、他の受験生たちからできるだけ引き離すよう方針転換を強いられてしまった。

 

(悪質……ッ!)

 

 自分を殺しにかかるのはいっこうに構わないが、他の受験生にまで被害が及んだらどうするつもりなのか。自分がうまく対処しなければ誰かしら三途の川をプルス・ウルトラしてしまうかもしれない。冗談ではなく。まったくつくづくヒーローというのはどこかネジが外れていると思った。

 再生キューブリカンのことがなくとも、0P敵にしたってそうだ。あんな暴れっぷり……合格できるだけの実力がある者ならまだしも、そうでない人間にはさすがに酷だ。おまえが言うなと言われればそれまでだが。

 

「とにかくッ、早くこいつ倒して0Pの奴も――!」

 

 そのとき、0P敵のいる方向からひときわ凄まじい轟音が響いてきた。

 反射的にそちらを見遣れば、敵の猛攻の余波を受けたのだろう、倒壊していくビルが目に入った。受験生たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。そんな中でも執拗な攻撃を加えようとしているのは流石としか言いようがないが、それにしても、

 

「ッ、ここまで来たら倒しにかかったほうが楽だろうに……!」

 

 あれほどやりたい放題に暴れ回る敵を放置して、他の小粒な敵を倒していくなど、実戦においては悪手もいいところ。だが皆、「倒したところでポイントにならない」「避けて通るべきステージギミック」というプレゼントマイクのことばに忠実すぎるのだ。直接ポイントにならなかろうが、ポイント獲得の邪魔になるなら倒したほうがいいに決まっている。たとえライバルと協力してでも。――でなければ、生き残れない。

 

 そう心のうちで断じていた出久の瞳が……まるでそれを具現化したかのように、瓦礫の下敷きになった人影を捉えた。

 

「!、あの娘は……!」

 

 試験開始前、出久を助けてくれた少女だった。幸いにして身体を潰されたりはしていないようで、なんとか抜け出そうともがいている。しかし情けなど欠片も持ち合わせていない0P敵は、獲物を仕留めんと迫ってくる。

 

――そんな絶望的な状況下で唯一飛び出したのは、出久の尊敬するプロヒーロー……その弟だった。

 

「きみ、大丈夫かッ!?いま瓦礫をどかし……く……ッ!」

 

 瓦礫に手をかけ、力いっぱい除けようとする天哉。しかし彼の個性は"エンジン"――脚力を強化するものであって、鍛えていようと腕力は常人の域を出ない。巨大な瓦礫もあるなかで、ひとりではどうにもならない。

 

「誰か、誰か手を貸してくれ!このままでは、彼女が――」

 

 他の受験生たちに救援を求める天哉。それに応える者が、果たしているかどうか――キューブリカンをいなしつつ、出久はやや冷めた面持ちでいた。

 たとえヒーローであっても、損得勘定なしに動けるのはほんの一握りだけ。――でなければ、自分はゴルゴムとの戦いのさなか、あれほどまでに涙を呑み、爪を立て、うなだれる日々を送ることはなかった。

 

(それだけの人間が、この中に何人いる?)

 

 仄暗い考えがよぎり……振り払う。ならば自分がやらねばならない。ヒーローとしてどうあるべきか、自分の見出してきたものを、背中で示す――

 

 そんな出久の想いを裏切るかのように、遠巻きにしていた面々の中から大柄な影が飛び出してきた。

 

(あれは、複腕の……?)

 

 彼だけではない。脆そうだと評していたフランスかぶれの金髪の少年はレーザービームで0P敵を牽制している。他にも数人、それぞれの個性でできることをやろうとしている。

 

(それなりに、いるんだな……やっぱり)

 

 嬉しかった。

 なら僕も。僕にできることを、全力で。――もう意地など、どうでもいい。

 

 

「変、身」

 

 出久の身体が光に包まれ、

 

「――SMASH」

 

 次の瞬間には、再生キューブリカンもまたピクリとも動かぬスクラップと化していた。その無残な姿に背を向ける、バッタに似た黒と緑の英雄。唯一複眼のみが、鮮烈な赤い輝きを放っている。

 その光が次に向けられるのは、言うまでもなく――

 

 

 立ち向かう受験生たちを無慈悲に薙ぎ払おうとする0P敵。しかし振りかぶられた腕は、一瞬のうちに根元から千切れ飛んだ。飛来した光弾によって。

 

「え……?」

「は……?」

 

 何が起きたかわからず、呆ける少年少女たち。やおら振り向いた彼らは、そこに立つ鋼の英雄の姿に目を剥くことになった。

 金色(こんじき)と黒の、鋼の鎧を纏った狙撃手(スナイパー)。その名も、

 

 

「悲しみの王子――ロボライダー!!」

 

 それが仮面ライダーの数ある形態のひとつであると、知らぬ者はこの場にはいない。

 また、"悲しみの王子"を自称しながら、その胸のうちに宿るのはむしろ歓喜だった。昂ぶった感情を、ボルテックシューターに込めてぶつけていく。メタリックなボディが次々爆ぜ、なすすべなく後退していく0P敵。もう潮時だろう、奮戦した受験生(かれら)が少しでも合格に近づけるよう、早く決着をつけなければ。

 

 ボルテックシューターをホルスターに納めたロボライダーは、一瞬にしてその姿をもとのRXに変えた。そして、

 

「リボルケインッ!!」

 

 サンライザーに手をかざすことで、これまで数多のクライシス怪魔を葬ってきた光の杖が顕現する。その光輝を右手に携え、RXは跳んだ。0P敵の頭上をとり――ワン・フォー・オールを、発動させる。

 ワン・フォー・オールはRXのあらゆる能力に作用し、向上させる。それはRXの体内より出でたリボルケインについても例外ではない。

 杖の輝きがいっそう烈しくなり……その刀身が、何倍にも伸びていくのだ。

 

「喰らえ――ッ!!」

 

 さらに鋭く尖った先端を――

 

 

――脳天から、突き入れた。

 

『!!!!!?????』

 

 痛覚などもたないはずの0P敵から、まるで絶叫のような激しい電子音が漏れ出す。リボルケインの伸びに伸びた刀身は頭から脚の付け根まで、完全に貫いている。それだけではない。このRXの必殺技――"リボルクラッシュ"は、貫通した相手の体内にその身が爆散するまで太陽エネルギーを注ぎ込む。クライシス皇帝すらもやりすぎなほどに吹き飛ばした、恐るべき一撃なのだ。

 正直0P敵相手には、過剰にすぎると言ってもよかった。全身あちこちがひび割れ、例外なく眩い閃光が漏れ出していく。

 

「――ふッ、」

 

 やがて杖を引き抜き、着地するRX。既に勝利を確信した彼は、敵に背中を向けていた。掲げたリボルケインを、ゆっくりと横に下ろす。幾度となく繰り返してきた、勝利の構え。

 

 超・世紀王によって確たるものとされた運命に抗うことなどできるはずもなく。0P敵の身体が、彼の背後でゆっくりと崩れ落ちていく。全身から漏れ出す光が、ひときわ烈しいものとなり――

 

 

――遂に、爆発が起こった。

 

 熱風に皮膚を刺され、受験生たちはたまらず顔を背ける。RXが間に入っておらず、もっと距離が近ければ、それは火傷にも繋がっていただろう。

 爆発そのものが落ち着いて、RXはちらと背後を振り返った。0P敵が跡形もなく燃え尽きていることだけ確認したあと、瓦礫の山のもとに歩み寄っていった。

 

「みんな、大丈夫?あとは僕がやるよ」

「え、あ、あぁ………」

 

 突然の仮面ライダーの登場に、少年少女らは未だ理解が追いついていないようだ。それも致し方なかろう、彼らがRXの存在を認識してから、まだ数十秒しか経過していない。

 そのおかげでかえって皆言うことを素直に聞いてくれたため、RXは容易に次の行動に移ることができた。瓦礫に手をかけ、軽く力を込める。

 

 途端に、触れていた瓦礫が消し飛んだ。粉々になったとかではない、まるでマジックのようにぱっとその場から消えうせたのだ。

 

「え……え………?」

 

 想定外にもほどがある現象に、周囲の受験生たちばかりか救けられた張本人まで呆然としている。

 

「大丈夫?立てる?」

「!、は……はい………」

 

 差し伸べられた大きな手をとり、立ち上がる少女。半ば夢でも見ているかのような心持ちであったせいもあるだろうが、不思議と躊躇いはなかった。あれだけ絶対的な力をもつ、鎧を着たバッタ怪人――生で見たら正直怖いだろうな、なんて思っていたのだが。

 

「残り少ないとはいえまだ時間はある。無理はしなくてもいいけど……きみたちが頑張ってくれたら、僕は嬉しい」

「!」

 

 また呆気にとられる少女にはっきりうなずいてみせ、RXは――その場から消えた。

 正確には跳躍し、一瞬のうちにビルの向こう側に消えたのだが、彼女らに知るよしもない。

 

「……よ、よーし!!」

「!?」

 

 仮面ライダーに救けられた少女が、不意に拳を振り上げる。

 

「試験時間終了まで正々堂々、がんばろうみんな!」

「!、……そうだな!がんばろう!!」

 

 真っ先に応える天哉少年。ライダーの登場と彼らにあてられてか、「おぉぉぉ!!」と鬨の声が上がる。それから試験終了までの数分間、彼らは正々堂々獲物を奪いあったのだった。

 

 

 

 

 

 すべての試験が終わって会場を出たときには、空はすっかり夕暮れの橙に染まっていた。

 悲喜こもごも様々な表情を浮かべる受験生たち。元の学ランに着替えた緑谷出久の姿もそこにあった。主観的にも客観的にも相当な戦果を挙げた割に、その表情は複雑そうだった。

 

(最後まで変身はしないつもりだったんだけどなぁ………)

 

 変身したことで迅速にあの心優しい少女を救けられた。変身せず通してもなんとかなったかもしれないが、その確証はない。

 だから後悔はない、ないのだが――

 

「……ままならないなぁ」

 

 怪魔ロボットの登場という予想外の事態。原因に心当たりがないではないが、計画を乱されたのは確かだ。これだけ強大な力をもってしても、こうも思いどおりにならないものか。ならば数万年の寿命も、理想を完遂するには案外短いのかもしれない。そんなふうにすら思えて、出久は嘆息した。

 と、そのとき、

 

「おぉぉぉ~いッ、待ちたまえ――ッ!!」

「!」

 

 呼び止める声とともに、地響きをたてて駆け寄ってくる音。反射光に迫る出久が目の当たりにしたのは、かのインゲニウムの弟が超スピードで駆け寄ってくる姿だった。困惑した様子で道を空ける他の受験生たちひとりひとりに「失敬!」と詫びている。やはり生真面目くんだと出久は思った。

 

「ハァ……ハァ……ようやく見つけたぞ」

「天哉くん……どうしたの?」

「少し、話したいことが――」

 

「――あ、いたいた!おふたりさーん!」

 

 今度は救け救けられたかの丸顔の少女だ。顔の絆創膏が少しだけ痛々しいが、それ以外に目立った外傷はないようだ。ほっと胸をなで下ろしつつ、出久は彼女を迎えた。

 

「よかったぁ、見つけられて……どうしても確かめたいことがあったんだ」

「僕に?……何、かな?」

 

 なんとなく、予感めいたものがあった。ふたりがなんのために自分を捜していたのか――その目的は、まったく一致するのではないかと。

 

 そして、

 

「きみは、」

「もしかして、」

 

 

「「仮面ライダー……なの(か)?」」

「………」

 

(……まいったな)

 

 

 予感は、的中した。

 

 

つづく




試験場で変身したことにより、正体をふたりの受験生に勘づかれてしまった出久。入学までは正体を隠しておくつもりだった出久は、果たしてどう彼らに応えるのか?そして入学試験の合否の行方は!?

次回 超・世紀王デク

合格!新たな未来へレディ・ゴー!

ぶっちぎるぜぇ!!
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