この調子だと過去編もBLACKとRXを各1話ずつじゃまとまらなさそうな……約50話あるわけでねぇ……
それはさておき、いよいよ変身!です!!変身シーンと後編の戦闘シーンでは是非「運命の戦士」(見えるか~聞こえるか~ってやつ)を流してもらえたら嬉しい次第
まぶしい太陽の光のもとで、ふたりの英雄が対峙している。
一方は"平和の象徴"と呼ばれる生ける伝説、No.1ヒーロー・オールマイト。
そしてもう一方は、ダークグリーンの装甲に身を包む、バッタに似た異形の戦士。頭部の真っ赤な瞳だけが、燦然と輝きを放っている。
彼らは互いにゆっくりと歩み寄り――がっちりと、手と手を握りあった。"これまで"を称え合い、"これから"を誓い合うかのごとく……。
――それから、三ヶ月。
「またお会いできて光栄です、オールマイト」
まぶしい太陽のもとで、少年は英雄と対峙していた。その翠の瞳が、怖じることなく光を反射している。
何度相まみえても、こんな小さな子供が
が、ほどなくその表情は年齢相応に崩れて。
「って、ていうか酷いですよオールマイト!高速でサインまでしておきながら僕だって気づいてもくれないなんて!」
「い、いやぁ……ハハハ、すまない。暗くて顔がよく見えなかったし、さっきはさっきで顔がとんでも変形していたし……その状態で認識するには、キミ地味すぎるからねぇ」
「ガーン!?」
出久はあからさまにショックを受けている。無論、見ず知らずの少年であればオールマイトもそんなことは言わないが。
それに何より、オールマイトは焦っていた。平和の象徴、No.1ヒーローたる彼は忙しい――それもないではなかったが、彼はもっと切羽詰まった事情……"秘密"を抱えていたのである。
「あ、あのさ少年、再会できたのは本当に嬉しいんだけど……私いま、本当に急いでて……」
「あっ、そ、そうですよね。すいません、邪魔してしまって……」萎みつつも、「でも、改めてお礼を言いたくてっ!あと、あと……ちゃんとお伝えしたかったんですっ、あのときの約束は必ず果たしますから、って!」
「緑谷少年……」
この少年が、別れの際に告げた決意。
――僕は必ず、あなたみたいなヒーローになります。
嬉しかったし、頼もしかった。光が強ければ影も濃くなる。並ぶ者なき栄光の頂点は、裏を返せばたった独りの荒野だ。この少年は己が手にした力をもって、そこに並び立ってくれる――それも遠くない将来に。
だが、オールマイトにはふたつの懸念があった。それは、
「――ッ!?」
突如身体を押さえて苦しみはじめるオールマイト。筋骨隆々の全身から、濃い湯気のごときものが噴き出す。
「
「オールマイト!?ど、どうし――」
出久が駆け寄ろうとした瞬間、ボシュウと音をたてて膨大な湯気……否、白煙がオールマイトの身体を包み込み、
「ゲホッ、ゲホッ、な……何が……」
その身に一体、何が起きたというのか。もはや近づくこともできず、出久はただ煙が風に流されるのを待つほかない。
やがて、煙が去り――
「え……?」
「………」
そこに現れたシルエットに、出久は目を剥くほかなかった。
*
ふたりが再会したビルのほど近くに存在する、田等院商店街。そこは買い物に訪れた主婦や会社帰りのサラリーマンなどで賑わっている。
そんな彼らが見向きもすることのない建物と建物の隙間……薄暗い路地裏に、からんとペットボトルが落下してきた。転がるそれには飲料はなく、代わりにヘドロのような不気味な物体が詰め込まれている。
「……ッ、……ッ!」
チャンスを得た"彼"はひたすらに脱出を試みた。蓋を突き上げ、わずかな隙間から身体の一部を染み出し、開こうとする。きつく締まっていてなかなか動かない。それでもあきらめない。そうした姿勢は奇しくも、彼を捕らえたヒーローと共通するところだった。
「あと、ちょっと……あと――グギャアッ!?」
そのとき凄まじい衝撃が走り、彼はペットボトルごと吹っ飛ばされた。蹴られたのだ、と知覚するのに時間はかからない。まさしく踏んだり蹴ったり……と頭によぎったそのとき、彼は頭にぶつかる障害物の感触が失われていることに気づいた。
「……クソがっ」
見上げた先に、手から爆発を起こす学ラン姿の少年。なんだ、踏んだり蹴ったりどころか、至れり尽くせりじゃないか。自分はやはりヴィランに向いている、ここまで悪運が強いのだから。
少年はこちらに背を向け、友人らと話している。彼――ヘドロのヴィランは気づかれぬようゆっくりと、ペットボトルから這い出し、
「良い個性の……隠れミノ――ッ!!」
かの少年に、襲いかかった。
*
「し……」
「萎んでるぅぅぅぅッ!!??」
オールマイトの変わり果てた姿を目の当たりにして、少年は芯からそう叫ぶほかなかった。
煙の中から現れたオールマイトは、筋肉も脂肪も何もかも剥げ落ちたかのように痩せ細っていた。頭髪にかろうじて面影がなければ、もはや別人と認識するほかなかったであろう――それほどに。
「えっ、なっ、どどどどういうコト!?ニセモノ……いや僕のことちゃんとわかってるしそんな……ハッ!?まさかおまえ、クライシスの残党かッ!?」
身構える出久。「違う違う!」とオールマイト……だった男は慌てて否定した。
「私は正真正銘のオールマイト……ゴハッ!?」
「吐血!!??」
「だっ、だいじょうぶ……ゴホン、プールでよく腹筋力み続けてる人がいるだろう?あんな感じさ」
「そんな理屈なの!?」
出久は混乱した。この人は嘘を言っていない――つまりは本物のオールマイト。
しかし覇気を失ったその姿は、自分の憧れ続けた英雄とはかけ離れたものだった。
「オールマイトは強くてカッコよくて、恐れ知らずの笑顔で皆を救けてくれるヒーローで……あのときだって、ずっと……」
「恐れ知らずの笑顔、か……」
ずるずるとその場に座り込んだオールマイトは、「見られたからには仕方ない」とごちたあと、シャツをまくり上げ、
「……!?」
出久は思わず息を呑んだ。脇腹に走る、痛々しい傷痕。
「……五年前、とある事件で負った傷だ」傷をなぞるように、「呼吸器官半壊、胃袋全摘。度重なる手術と後遺症で憔悴してしまってね。……一日三時間、それがいまの私の、ヒーローとしての活動限界さ」
「そんな……。五年前って、毒々チェーンソーと戦ったとき……?」
「詳しいな……だがあんなチンピラにやられはしないさ。これは世間に公表されていない、私が公表しないでくれと頼んだ。――きみにならわかるだろう、その理由が」
「……英雄が敗北すれば、世界は絶望に包まれる。そして、悪に屈してしまう……」
出久の脳裏に、鮮烈な記憶が呼び起こされる。――黒き光が、白き闇に葬り去られる。そのとき世界は、確かに白き闇に靡きかけた。黒き光が奇跡の復活を遂げなければ、あるいはあのまま……。
「――それが現実なんだ、少年」
「……!」
男は笑みを浮かべた。オールマイトのそれとはかけ離れた、どこまでも捨て鉢な。
「きみがたった独りの英雄として多くのものを失ってきたのは、きみが弱かったからじゃない。どんなに強くなったとしても……いや強ければ強いほど、何かを失う恐怖と苦しみに耐え続けなければならない。恐れ知らずの笑顔なんて、仮面までひっつけてね……」
「………」
少年は、沈黙している。ショックから立ち直れていないのか、自分のことばを噛みしめているのか。
いずれにせよタイムリミットが来てしまった以上、彼には時間がなかった。
「光がその輝きを増せば、影もまた濃くなる。そして影は、やがて光をも呑み込んでしまうかもしれない。……それだけは覚えておいてくれ、少年」
出久の顔を見ることなく、背中越しにそう告げてオールマイトは屋上を出た。階段を下りながら……拳を握りしめる。
(……だからきみには、託せないんだ)
強すぎる光が、影に呑み込まれればどうなるか。――彼の脳裏には、この世界を地獄へと変えていくバッタに似た異形の戦士の姿が浮かんでいた。どんなヒーローも兵器も意味をなさない、絶対的で絶望的な力。そんなものが、善も悪もなくすべてを蹂躙していく。
あの少年がそうならないという保証は、どこにもなかった。
「ッ、とにかく早く、こいつを引き渡さないと――」
捕らえたヴィランのことをようやく思い出し、なんとはなしにズボンのポケットを探る。――ない。
「え……!?」
慌ててもう片方も探る。ない。周囲を見回す。ない。
そのときいずこからか、爆発音のようなものが響いてきて。
「ま、まさか……!?」
*
田等院商店街は地獄と化していた。
巻き起こる爆発が窓ガラスを粉々にし、建物そのものを破壊していく。その中心にはかのヘドロのヴィランがいた。――そして、
「がァッ、ク、ソがぁぁぁ………ッ!!」
囚われの身となりながら、離脱しようと懸命に爆破を起こし続ける爆豪勝己の姿も。
"デステゴロ"ら駆けつけたヒーローが攻撃を仕掛けるが、流動体たるヘドロのボディには通用しない。さらには勝己が爆破を起こし続けているせいで、もはやまともに接近すらできなくなってしまった。
「駄目だっ、誰か有利な個性のヒーローが来るまで待つしかねえ!」
「何、すぐに誰か来るさ!あの子には悪いが、それまで耐えてもらおう」
こんな会話がなされる始末。実力が足りない、だからどうしようもない。悔しがりながらも、恥ずかしげもなく。
――そしてそれは、野次馬にまぎれたオールマイトも同じだった。
(情けない……)
救けたい。でもタイムリミットのために、自分はもう戦える身体ではない。
(情けない……!)
ヘドロに取り込まれた少年が、もがいている。
(情けない――ッ!)
見開かれたその瞳が、そこにいるヒーロー全員へと縋りついて――
そのとき、
群衆をかき分けるようにして、小柄な人影が飛び出していく。乱れた緑の髪が、風を切って揺れている。
(あれは――!?)
オールマイトがその正体を悟るのと、デステゴロが「馬鹿野郎、止まれ!!」と制止するのがほとんど同時。
だが、学ランを纏ったかの少年は止まらない。右腕を天高く掲げ、焼け焦げたノートを放り上げる。
「あのガキ……!」
(デ、ク……?)
左の拳を固く握りしめた少年――緑谷出久は、すべてを劈くような勇ましき声で……その"再臨"のときを告げた。
「変―――身ッ!!」
腹部にベルト状の装飾品――"サンライザー"が出現する。そこから眩い光が、無数の火花が放たれ、出久の身体を覆い尽くす。
それらを尽く食い破るようにして、姿を現したのは――
「なッ!?」
「あ、あれって……!?」
「いや、そんなわけ……」
「でも……そうだよ!」
野次馬、ヒーロー――場に居合わせた全員が、口を揃えてその名を呼ぶ。
「仮面、ライダー……!」