超・世紀王デク   作:たあたん

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おっおっおっ恐ろしいことに拙作が日刊ランキングに登場しとります!(3月19日午前10時現在)一週間足らずでお気に入り1000件とは……ゴルゴムの仕業かッ!?
???「いや乾巧って奴の仕業なんだ」
???「晴人のSAY YO!」
???「紘汰さんのせいだ」

冗談はともかく本当にありがとうございます!まだ始まりも始まりなのでこれから皆さんのご期待に沿えるかプレッシュアーがハンパないですが、デクばりにがんばりたいと思いたいです(キングオブコメディ)

さて、やりたい放題をご期待の読者の方々には大変申し訳ないのですが、これから何話か過去編となります。今回はBLACK1~2話前半をまとめた内容となっておりますが、原作視聴済みの方はご存知のように重い。重いです。
……本当はBLACK全51話を1話でまとめようと思ったんだけどね?いくら重要エピのみかいつまんででも無理でした。あんまり無理に詰め込んでただのダイジェストと化しても「これいらなくね?本編観ればよくね?」ということになるので最初から開き直って話を分けてます。とりあえず信彦の人柄がわかる会話と改造・戦闘シーンは入れないとと思って。次回2~33話、37~45話は「色んな戦い」で済ましてどうにかBLACK篇は終わらせたいと思います。トラストミー。

(原作BLACKからの変更点)
・克美・杏子が信彦の母・姉に変更→小6の子の彼女じゃあんまり役に立たないだろうし、妹のままじゃさらに小さいし……ということです。杏子×出久はつまりおねショタ。
・「仮面ライダー」をいきなり自称しない(Wと同じ方式で名乗るようになる)

あと今後の展開にあまり関係ない小さな変更点としては、三神官との初戦はブラックにならずバッタ男のままで戦った&バトルホッパーは出久の変身前モトバイク(自転車)に擬態している、というのがあります。自転車といってもYAMA○Aさんの出してる見た目完全バイクの奴のイメージです。なんぼ超常社会でも無個性の小6が免許持てるのは無理あるかな……と思ってこうなりました。
RXはもっと大胆な変更がある予定。霞のジョー=×××××とか……


長くなってしまいましたが、最後にアンケートのお知らせです。
出久が変身前に着るヒーロースーツについて活動報告でアンケートを行っております。是非たくさんの方にご回答いただけたら嬉しいです!


変身―BLACK―

 秋月信彦は出久と同じ無個性の子供だった。

 さらには誕生日も同じ7月15日。その事実を知ったときには、子供ながらに運命の出会いだと思った。

 

 とはいえ共通点はそれくらいで、あとは何もかもが違っていた。

 出久が幼なじみに"デク"とあだ名されたのは何も無個性ばかりが理由ではなく、成長が遅く、それ以外のことも人よりうまくできない子供だったから。

 その点信彦はなんでもできた。頭もよかったし、運動も得意。やっぱりどちらかといえばかっちゃんに近い……と幼い出久は思い直したけれども、性格だけは違っていて。いつも優しくて、穏やかで、孤立しがちな出久を励ましてくれた。幼稚園や学校が違う――信彦は私立に通っていた――から毎日は会えなかったけれども、出久を対等な友人と認めて尊重してくれる信彦の存在は、幼い出久にとってほぼ唯一の心の拠り所だった。

 

 本人だけでなく、信彦の家族も良い人たちばかりだった。母・克美は快活でありながら教養と美貌を兼ね備えた可憐な女性で、五歳年上の姉・杏子も出久を実の弟のように可愛がってくれた。父・総一郎は大学教授で研究が忙しいらしく会う機会は少なかったが、実父が海外に単身赴任している出久にとってはもうひとりの父と思える、尊敬できる人だった。

 出久の母・引子はいまでも、秋月一家への感謝をしきりに口にする。無個性の子供をほとんどひとりで育てなければならない彼女にとっても、その存在は大いなる救いだったのだろう。

 

 

――そうして家族ぐるみの付き合いが続いて、幾年。緑谷出久・秋月信彦12歳……運命の誕生日が訪れたのである。

 

 

 出久と信彦の誕生日を祝う誕生日パーティーは、なんと船上で行われた。直前まで知らされていなかった緑谷母子は面食らい、ただただ恐縮するほかなかった。秋月家が裕福なことは知っていたが、まさかここまでとは――

 

 生まれて初めて着る白いタキシード。それに包まれた小柄な身体をぶるぶる震わせる出久を見て、信彦はくすりと笑った。

 

「出久おまえ、いくらなんでも緊張しすぎだぞ」

「だっ、だってこんな……船の上でパーティーなんて、映画でくらいしか見たことないよ僕……。しかも主役だなんて……本当に良かったの?僕までそんな……」

「良かったの!俺とおまえは兄弟みたいなモンなんだから」

「信彦くん……」

「俺が兄貴でおまえ弟なっ!」

「お、同い年なんだからせめて双子にしてよ、もうっ」

 

 優しいことばだけでなく、和ませてもくれる。太陽のような笑みを浮かべて。まぶしくて、嬉しかった。――同時に、もしも幼なじみと未だに親しくあったならとも思った。彼にもとっくに信彦を紹介して、この場にも招待できたかもしれない……と。

 センチメンタルな思考を振り払って、出久は改めて招待客らを見渡した。秋月総一郎はよほど顔が広いとみえ、様々な人々が(おとな)っている。教授仲間や政財界の要人、さらには有名女優など――

 

「あっ、つ、月影ゆかり……!すごい、本物だ!」

「ん、ファンなの?」

「ふぁ、ファンって言っていいかはわかんないけど……」

「まあすげえ美人だもんな。あとでサインもらってこようぜ」

「!、う、うん」

 

 それはいとも容易く果たされた。総一郎が彼女を含めた数人をふたりに紹介したのだ。

 精神医学と脳外科の世界的権威である黒松教授に、無所属ながら永田町で存在感を示す坂田衆議院議員、そして経済界のドンとも言われる大宮コンツェルンの大宮会長――彼女以外の面々も錚々たるメンバーであった。

 もうくらくらと目が回るような心持ちの出久だったが、月影ゆかりが不意に放ったことばには引っ掛かりを覚えた。

 

「あなたたちは選ばれし子供なのよ。しっかりね」

 

 そのひと言に怪訝な思いを抱いたのは信彦も同じらしかった。彼が「選ばれしって、何にですか?」と訊くと、

 

「あら、何も知らないの?あなたたちは明日、日食の時――」

 

 が、月影ゆかりの口からすべてが語られることはなかった。慌てた様子でやってきた総一郎に「息子たちをからかわれては困ります」と制止されてしまったのだ。彼女は「酔ってしまって」と言い訳して口を噤んだが……総一郎や黒松教授らが一瞬見せた鬼気迫った様子に、やはり不可解なものを感じた。

 

 

――そのときのことを、出久はいまでも後悔している。もしもそこで陰謀に気づき、信彦ともども逃げ出すことができたなら。その後の悲劇は、なかったかもしれない……。

 

 

 だが現実には、自分はただの無個性の子供――そう信じて疑わなかった当時の出久が、そんな行動をとれるはずもなく。

 

 直後、突如として現れたバッタの大群に襲われ、そのまま意識を失って……。

 

「さあご一緒に……我らが御子よ……!」

 

 そんな声が、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 そして目を覚ましたとき、出久も信彦も一糸まとわぬ姿でおびただしい管に繋がれていた。――白布でその身を頭まで覆った、異形型のごとき顔をもつ醜悪な三人の男女に見下ろされている。

 

「人間としての記憶はすべて消し去るのみ――」

「――約束が違う!それだけはやめてくれ!!」

 

 石灰岩のような皮膚の老人に抗議したのは、総一郎だった。「ふたりとも私の息子だ!」――平時であれば、こんなに嬉しいことばもなかっただろうが。

 老人は聞き入れず、出久、そして信彦の身体に光線を照射する。身体に激痛が走る。体内の何もかもが破壊され、同時に創造されていく。その凄絶な感覚に、ふたりの少年は泣き叫ぶほかなかった。

 それが脳まで達しようとしたそのとき、総一郎がこちらに飛びかかってくるのが目に入った。弾みで管はすべてちぎれ、出久は自由の身となる。

 

「私に構わず逃げろ――ッ!!」

 

 覚えているのはそこまでだった。気づけば出久はバッタの意匠を施されたバイクに凭れるようにして、その場を逃げ出していた。

 

 

――その後、"暗黒結社ゴルゴムの三神官"を名乗るかの怪人らに追われるなかで、出久は思い知った。自らがもう、ふつうの人間ではなくなってしまったことを。

 

 三神官の執拗な攻撃に、いよいよ少年の小さな肉体が限界を迎えようとしたそのとき……出久はにわかに"変身"を遂げた。バッタに似た、異形の怪人の姿――

 

 

「――グルルルルゥッ、グオォォォォッ!!」

 

 

 狂暴な闘争本能が身体を突き動かす。怪人――バッタ男は出久少年のそれとは似つかぬ唸り声とともに、三神官へと襲いかかった。念動力による直接攻撃も、頭上より落とされた鉄骨もものともしない。その猛攻は、彼らを一時撤退へと追い込むことに成功したのだ。

 

「バトル、ホッパー……」

 

 朦朧とするなか、無意識に呼んだ名前。――あのバッタに似たバイクが独り駆けてくる。それこそが"バトルホッパー"――長きに渡る死闘をともにくぐり抜けることとなる、唯一無二の相棒の名だった。

 

 

 

 

 

 夜明けを過ぎた頃、出久はモトバイクに擬態したバトルホッパーとともに自宅へ戻った。母・引子が涙すら浮かべて抱きついてくる。その腕の温かさにわずかばかり安堵したのもつかの間、出久はすぐさま次なる行動に移らざるをえなくなった。引子とともに信彦の帰りを待っていた秋月母娘より、総一郎からの伝言を受け取ったのだ。出久ひとりで、某工場跡地に来い――

 

 心配して同行を申し出る母らを宥め、出久は指示された場所へ向かった。――予想どおり、そこにはかの信彦の父の姿があって。

 ゴルゴムとはなんなのか、総一郎とはどういう関係なのか……問いただす出久に対し、彼はすべてを語った。研究への膨大な資金援助と引き替えにゴルゴムのメンバーとなったこと。ゴルゴムは悪魔の集団であり、一度目をつけられたら逃げる術などないこと。

 そして十二年前の皆既日食の日、時を同じくして生まれたふたりの子供が、ゴルゴムの支配者"創世王"となる資格をもつこと――その子供こそが、出久と信彦であったこと。

 

「じゃあ僕と信彦くんは、そのために……?」

「そうだ。きみと信彦は"世紀王"……きみの体内に埋め込まれた"キングストーン"こそが、その証だ」

「……!」

 

 あの空間を脱出してからずっと覚えていた、腹部の違和感。それはキングストーンなどという謎の物質がもたらしたものだったのだ。

 真相を知った出久の胸に沸いてきたのは、己ばかりか実の息子までもを裏切り、ゴルゴムへと売った目の前の男への稚い怒りだった。

 

「おじさんは、最初から知ってたんですか……?僕が……僕らが、そんな化け物にされるって……」

「これからの世界はゴルゴムによって選ばれた人間しか生きられない、人類は淘汰されるんだ……ヒーローもヴィランも、市民もなく……」

「やめて……そんなの、聞きたくない……」

「聞くんだ出久くん。きみと信彦は世紀王、選ばれた存在なんだ。だから新世界でも生きられるし、愛する者を生かすことだってできる。だから――」

「ッ、おじさんにはわからないの!?僕も信彦くんも、無個性ってただそれひとつで、ずっと選ばれない側の人間だったんだよ!?だから信彦くんは、将来そんな世の中を変えるんだって、そう僕に約束してくれたのに……それなのに……!」

 

 ゴルゴムのやろうとしていることは、自分や信彦が望む真逆だ。決して認められるものではなかった。

 話が平行線を辿る――そんな折、ゴルゴムから刺客が送り込まれた。"クモ怪人"――クモの遺伝子を移植され数万年の寿命を得た古代人の成れの果て……彼らに言わせれば、人類の上位種であった。

 

 複数のクモ怪人によって出久が翻弄されているうちに、総一郎は捕らわれ……そして、鉄塔の上から突き落とされた。

 

――その身が、地面に叩きつけられる。

 

「おじさん、おじさんッ!!」

「克美……杏子……信彦、を……頼む……」

 

 息子と同い年の少年にそう言い残し……彼は――事切れた。

 初めての身近な人間の死に、出久はあふれ出す激情のまま慟哭した。確かに彼はゴルゴムのメンバーだったかもしれないが、それでも父のような存在であったことに変わりはなかった。それを冷たく奪い去ったのだ――悪魔の集団、ゴルゴムが。

 

 先ほどの総一郎に対する怒りとは比べものにならない烈しい感情が、出久の中に巻き起こった。腹の奥で、何かがどくんと疼く。

 迫るクモ怪人に向き直る。もはや恐怖など感じない。戦え、倒せと、本能が訴えかける。

 

 突き動かされるように、出久はふたつの拳を握り締めた。血の滲むほど力のこもったそれらから、ギチギチギチと常人ではありえない音が響く。そして、

 

「変、身……!」

 

 腕を振り上げた瞬間、出久の腹部にベルトのような物体が浮き出でた。そこから放たれる閃光が、出久の肉体を醜いバッタ男へと変貌させる。

 

 "変身"はそれだけに留まらない。バッタ男の全身を、漆黒の装甲――強化皮膚"リプラスフォーム"が覆っていく。本能のままに暴れ回るのではなく、知性と勇気を兼ね備えた……世紀王"ブラックサン"にふさわしい姿。

 

 ブラックサンへの変身を遂げた出久は、己の全身全霊をこめてクモ怪人と戦った。同級生との喧嘩の経験すらない彼だったが、世紀王の肉体、バトルホッパーの援護、そして蓄積してきたヒーローの知識によって互角に渡り合う。そして必殺のライダーパンチ、ライダーキックを放ち、クモ怪人打倒を成し遂げたのだった――

 

 己の"変身"と総一郎の死――哀しい現実は、その後出久を心配して駆けつけてきた引子と秋月母娘の知るところとなる。

 

 彼女らを守り、信彦を救け出す。そして人間の自由のため、人類の敵ゴルゴムと戦うことを少年は誓った。これより待ち受ける過酷な運命を、その小さな身体で予感しながら。

 

 

――緑谷出久、12歳。

 

 彼の幼年期はその日終わりを告げた。同年代の誰よりもずっと早く、たった独り、ヒーローとしての第一歩を踏み出したのだ。

 

 

つづく

 

 

 





【登場人物】

緑谷出久/世紀王ブラックサン
小学校六年生。
皆既日食の最中に生まれたことから暗黒結社ゴルゴムによって拉致、改造手術を施され、バッタに似た異形の戦士・世紀王ブラックサンとなる。
ずっと夢見ていた英雄としての早すぎる初陣は、喪失と絶望の序章でしかなかった。

秋月信彦/世紀王シャドームーン
小学校六年生。
出久と同日、やはり皆既日食の最中に生まれた。同じく無個性ながら優秀、快活な性格で、出久にとっては唯一の気の置けない親友。
彼をゴルゴムのもとに置き去りにしてしまったことを、14歳となったいまも出久は後悔し続けている。

バトルホッパー
世紀王のためのマシン。出久とともに逃亡し、彼の相棒となる。変身前はまだ二輪の免許を持てない出久に合わせ、バイク"風"のモトバイクに擬態する。
RXの相棒"アクロバッター"とよく似ているが、その関係は……?

緑谷引子
出久の母。息子を無個性に生んでしまったことに罪悪感を抱き続けていたが、改造人間にされ孤独な戦いに身を投じる息子を支えるなかで、さらなる苦悩を味わうことになる。

秋月克美・杏子
信彦の母と姉。息子(弟)の無事を祈りながら、彼女らもまた出久の戦いを支える数少ない協力者となる。
出久が14歳となった現在、信彦同様そばにはいないようだが……?

秋月総一郎
信彦の父。大学教授。実父が海外で働いている出久にとってはもうひとりの父親のような存在だったが、その正体はゴルゴムの協力者。内心ゴルゴムを嫌悪しながらも出久と信彦を引き渡した。
土壇場で出久を逃がしたために処刑された。もしも彼が、出久ではなく愛する息子の救出を優先していたら?その結果は神のみぞ知る。

暗黒結社ゴルゴム
総一郎曰く「悪魔の集団」。「創世王」を頂点に幹部の「三神官」、そして改造人間である怪人たちで構成されるほか、総一郎のような人間の協力者・シンパが世界中にいるらしい。
三神官によって出久と信彦は拉致され、「創世王」候補である「世紀王」へと改造されてしまった。


次回 死闘―CENTURY KING―

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