超・世紀王デク   作:たあたん

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お待たせしといてアレですが今回は原作とあんまり変わらない…というかだいぶはしょってます。

今更ながら「涙(前)」で数人の方にご指摘いただいたAFOの「礼儀というものを襲っていなくてね」という台詞ですが、誤字ではなく「襲う=受け継ぐ」のテイストで書きました。意味として通るかちょっとアレですが、意図したものですので訂正はしておりません。


開幕!体育祭(前)

 

 ゴールデンウィークも開け、大多数の学生ないし社会人にとっては憂鬱な日常が戻ってきた。

 

 ただし例外もいる──"彼"のような、明確なビジョンをもって日々邁進している者などは。

 

「いってきまーす!」

 

 玄関から声をかけると、「いってらっしゃい」と複数人の声が返ってくる。それを背に聴きながら、ガレージで相棒と合流して出発する。

 そんな、緑谷出久の一日のはじまり。英雄"仮面ライダー"として過酷な戦いを経験してきた彼にとって、涙を流さんばかりに大切な、礎の日々である。

 

 

 *

 

 

 

──雄英高校1年A組。最高峰たるヒーロー養成校の一角であると同時に、世間では既に平和の象徴・オールマイトと並ぶ英雄と目されている仮面ライダーを擁していることでも知られている。無論、属する学生たちはまさか仮面ライダーが同級生になるとは想像だにしていなかっただろうが。まして外見だけなら、クラスで一、二を争うほどに華やかさとは程遠い少年がその正体だとは……。

 

 とはいえ入学からひと月が過ぎて、出久の存在はクラス内に限っては悪目立ちしなくなりつつある。元々の性格が控えめとは言わないまでも一歩引いたところがあるし、何よりどうしてもナード根性を発揮してしまう。超人と言うには卑近すぎる性格が、彼をクラスに溶け込ませていた。

 

 ともあれ皆と挨拶をかわし、着席する。──ひとつ前の席が、空いている。それがどうしても気にかかった。

 

(……かっちゃん)

 

 かっちゃん──爆豪勝己。幼なじみ……とひと言で括るには複雑な関係にある彼は、先のUSJ(ウソの災害事故ルーム)での敵連合との死闘で重傷を負い、入院していた。ゴールデンウィーク中に退院し自宅に帰ったという話は聞いたが、一度見舞いに行ったあとは連絡もとっていない。

 今日は登校してくるのだろうか。あるいはまだ自宅療養が続くとも考えられる。それならそれでやむをえないことなのだが、病室でのやりとりから自分たちの関係がどのように変わったか、早く確かめたいと思ったのだ。泣き虫のデクを、唯ひとり知る男。

 

 と、教室前方の空気が急に浮き足立ったものとなったので、出久は顔を上げた。

 

「バクゴー!!」

 

 その名を呼びながら、切島鋭児郎が駆け寄っていく。「ウゼェ」と彼をあしらう金髪赤眼の少年。

 

「おめェ、もう大丈夫なのか!?」

「どけや。……とっくに完治しとるわ」

「そっか……良かった、本当に」

 

 切島はほっとするばかりか、わずかながら目を潤ませてさえいるようだった。USJでの共闘を経て、勝己との間に信頼関係が生まれつつあるのだろう。それは少なくとも、切島の一方的な想いではないように出久には見えた。

 そのまま彼とひと言ふた言ことばをかわすと、勝己はいよいよこちらに向かってくる。出久は思わず立ち上がってそれを迎えた。

 

「おはよう、かっちゃん」

「……おー」

 

 返事は、それだけ。そのまま彼は椅子に座る……つまりこちらに背を向けてしまったから、会話は続かない。出久も、無理に続けようとは思わなかった。

 幼なじみ同士とは傍目にはとても思えないやりとりなのは、入学当初から変わらない。

 

 ただ、入学以前から出久と親しくしているふたりには、互いの様子がどこか違ったものとなっていることに気づいた。

 

「なんか変わったね……デクくんと爆豪くん。会話がなくても、通じあってるって感じがする?」

「そうだな。何にせよ、彼らの関係が改善されるのは良いことだ」

 

 USJ戦での爆豪勝己の行動を聞き及び、飯田天哉は彼への評価を改めていた。むろん友人である緑谷出久と彼とを比較すれば、前者に肩入れしてしまうのはやむをえない。その出久が望んでいた方向に事が進みつつあるならば、それは喜ぶべきこと。これからは彼らを見守っていこうと、飯田はそう心に決めたのだった。

 

「そういえば、」話題を換えるお茶子。「爆豪くんはあれだけど、相澤先生……大丈夫なんかな?」

「うむ……」

 

 我らA組の担任であり抹消ヒーロー・イレイザーヘッドでもある相澤消太の負傷は、勝己のそれを遥かに上回る深刻なものだった。彼は一体どうなったのか。無論、最悪の事態となればなんの知らせもないことはないだろうが──

 

 そんなことをぐるぐると考えていたらば、本鈴と同時に教室前方の戸ががらりと開かれた。

 

「!?」

「え……」

「……マジ?」

 

 呆気にとられるクラス一同。入室してきたのは見るも恐ろしいミイラ男……しかし黒ずくめの服装や無造作に伸びた長髪などの特徴から、それが噂をすればのA組担任であることはすぐにわかった。

 

 ともあれこの担任のもとで教わるようになって約ひと月。除籍の二文字が身につまされている生徒たちはざわつきもそこそこに、皆ぴしっと着席していた。

 

 

──そして彼の口から、二週間後、体育祭が開催されることが告げられたのだった。

 

 

 *

 

 

 

 雄英体育祭。それはこの超常社会において、かつてのオリンピックに代わると言われるほど世間の注目を集める一大行事である。やや大袈裟に思われるかもしれないが、未来のプロヒーローたちが日々磨きあげた実力を披露し、競いあう場なのだ。

 

 とはいえ、先のヴィラン襲撃などを鑑みれば純粋に学校行事として期待できるものに変わりはない。相澤の口から開催が伝えられた瞬間の色めき立ちようは相当なものだった。「学校っぽいのきたァァァ!!」というシャウトがそれを象徴している。

 

 仮面ライダー・緑谷出久も胸を膨らませる一方で、一部の生徒のもつ懸念にも同意できる部分があるとも感じていた。雄英高校の施設内にヴィラン……それもゴルゴムの残党と手を組むような得体の知れない輩が侵入し、生徒やオールマイトを殺害しようとしたのだ。幸いにして死者はなかったが、仮面ライダーが苦戦し重傷者を出したという事実は世間に少なからず衝撃を与えていた。その矢先に、例年通りの体育祭を開くことが正しいのかどうか、議論の余地があるのもわかる。

 

 癖であれこれ考えていたらば、緑谷裁定により誕生した委員長・飯田天哉が声をかけてきた。

 

「緑谷くん!お昼休みだぞ、速やかに食堂へ移動して昼食をとろう!!」

「あ、うん……休憩まできびきびとるんだね」

 

 兄のほうは真面目は真面目でも、基本的に鷹揚な面が強いのだが。まあ、友人のこういう振る舞いにも慣れてはきた。

 

 友人といえば、もうひとり。

 

「デクくん、飯田くん……」

「あ、麗日さ──」

 

 近づいてきた少女に笑いかけようとして……笑顔が、中途半端な形で硬直した。

 

「……ウララカ、サン?」

 

 そこに立っていたものはまぎれもなく麗日お茶子の姿かたちをしていた。にもかかわらず疑問形で名を呼んでしまうのは、彼女が今までに見たことのないような麗らかでない笑みを浮かべていたからだ。

 

「……体育祭、頑張ろうねええ……!」

「え、あ、ああ……え?」

 

 一体、どうした!?いや気合いが入っているのはわかるのだけれども。

 彼女の発する鬼気迫るオーラは、出久たちばかりでなくクラス全体を震えあがらせた……いや、そこまでは言い過ぎか。ともかく、尋常でない様子なのは間違いなかった。

 

 

 *

 

 

 

 麗日お茶子は一体どうしてしまったのか。

 

 体育祭に向けて気張っているというのは、見ていればわかる。それは他のクラスメイトも、もちろん自分たちも同じだ。

 ただ彼女に関しては、その気合いの入り方が尋常でない。何かを背負っている者のみが纏う、鬼気──出久もかつてはそうだったゆえ、それを感じとることができた。

 

 背負うもの──ヒーローに、なりたい理由。

 

「麗日さん、訊いてもいいかな?」

「な、何っ?」

 

 先を歩くお茶子が、弾かれたように振り向く。オーバーリアクションは飯田の専売特許と思っていたのだが……今のこのふたりに挟まれると自分などは実に地味なものである。苦笑しつつ、出久は訊いた。

 

「どうして、ヒーローになりたいと思ったの?」

「えっ……」

 

 力の入ったお茶子の表情が素に戻ったかと思うと、どこか所在なさげに目が泳ぐ。後ろめたいことでもあるのだろうか。

 

「……デクくんたちと比べたら、めっちゃしょうもない理由だよ?」

「いや、そんな……」

 

 そんなことはない──とは、聞いてみないことには断言できないが。

 ともあれふたりがばっちり聞く姿勢を整えているものだから、お茶子もあとには退けなくなった。

 

「えっと……その、……経済的な理由というか、つまり……」

 

 つまり──

 

「えっ……」

「お金……金銭、だと?」

 

 ふたりは思わず顔を見合わせた。普段の彼女に拝金主義的な振る舞いは見当たらないし、人々を救けるというヒーローの使命が心に根づいていることは疑いようがない。この一ヶ月の水魚の交わりがあって、それは自信をもって断言できる。

 

「……何か、事情がある?」

「………」

「あ……ごめん、無理に聞き出すつもりはないけど」

 

 わからないことは知りたいと思うのは出久の拭えぬ性だった。それはむろん悪いことではないが、だからといって友人を傷つけることがあったらそれは悪癖でしかない。

 ただ幸いなことに、その"事情"はお茶子にとって恥じらいはあれ、恥じるべきものではなかった。

 

「……私の実家ね、土建屋やってるんよ」

 

 その告白を皮切りに、お茶子は己の生い立ちを語りはじめた。昼夜を問わず汗水垂らして会社の、従業員のために働く両親。彼らの背中を、物心ついたときから彼女は見続けていた。

 しかしいかに懸命に働こうとも、昨今の不景気により厳しい状況が続く。苦労に苦労を重ねる両親のために、幼いお茶子は己の個性を活かして会社を継ぐことを考えた。ヒーローの夢は、胸にしまって。

 

 しかし──

 

「お父ちゃんとお母ちゃん、言ってくれたんだ。"おまえが自分の夢を叶えてくれるほうが、よっぽど嬉しい"って……」

 

「──だから私、りっぱなヒーローになって、いっぱいお金稼いで、お父ちゃんとお母ちゃんに楽させてあげたいんだ」

「麗日さん……」

 

 "金銭目的"の真意を語ったお茶子は、はにかんだような笑顔を浮かべた。

 

「な、なんか恥ずかしいなあ。めっちゃフツーの理由でさ……デクくんなんか、二回も世界救ってるのに」

「……それは結果だよ、麗日さん」

「えっ?」

 

「僕だって元々は、自分の大切なものを守りたいから戦っていたんだ」

 

 むしろその明確な動機こそ、ヒーローとしてのオリジンになったと出久は思う。漠然とした憧憬だけでは、あの過酷な戦いを生き抜くことなどできなかっただろうから。

 

「家族とか、友だちとか、仲間とか……身近な人たちのために頑張れるのって、すごく素敵なことだと思う。だから恥ずかしがることなんてない、きみは目一杯、胸を張っていいんだ。──ね、天哉くん?」

「うむ!ぼ、俺も家族や友人を守りたいという想いは常日頃から持っているつもりだ!」

 

 出久の言葉ではないが、飯田も胸を張っていた。彼も兄をはじめ家族を純粋に敬慕し、大切にする性質である。お茶子の想いには共感するところも大きいのだろう。

 目を丸くしていたお茶子は、やがてふたりの言葉を噛み砕いたのだろう──まろい頬をわずかに染めて、微笑を浮かべた。

 

「……ありがとっ、ふたりとも!」

 

 そうこうしていたらお腹がぐう、と鳴ったので、今度は別の意味で赤面する羽目になってしまったのだが。

 

「あ……は、早く食堂行こっ!?お昼休み終わっちゃうし!」

「あはは……そうだね」

「うむ、行こう!」

 

 改めて歩き出す──と、出久はいずこからか己を呼ぶ声を聞いた。

 

「少年……緑谷少年……!」

「!」

 

 振り返れば、そこには──真実の姿(トゥルー・フォーム)の──オールマイトの姿。流石に堂々とはしておらず、部屋から顔だけ出して手招きをしている。

 

「………」

 

 やや逡巡はしたが、憧れのNo.1ヒーローからの呼び立てである。ノーとは言えなかった。

 

「あ……ごめん、ふたりとも。僕、先生に用事頼まれてたんだった」

「えっ、そうなん?」

「ム、それはいけないぞ緑谷くん!引き受けたことは最優先かつ迅速に遂行せねば!」

 

 注意しつつ、気持ちよく送り出してくれる。ありがたみと同時に自身の隠し事の多さに罪悪感を覚えつつ、出久は友人たちと別れた。

 

 

 *

 

 

 

「すまないね少年、貴重なお昼休みに。あ、お弁当用意してあるよ。食べるよね?」

「あ、はい……じゃあいただきます」

 

 友人との団欒を邪魔してしまったことを申し訳なく思ってか、出久をソファに座らせたまま弁当を用意したり、お茶を淹れたりと甲斐甲斐しく動き回るオールマイト。No.1ヒーローとしての規格外な姿を長年じっくり見続けてきた身としては面映ゆいような、なんとも言えない気持ちになる。なんというかこう……たまに母性的なのだ。

 

 苦笑しつつも御相伴にあずかることにした出久は、あれこれが終わったオールマイト……もとい八木俊典が向かいに腰掛けたところで、自ら口を開いた。

 

「でも、どうしたんですか?一緒にお昼だなんて、初めてな気がしますけど……」

「ああ……そうだね、そうなんだよ」

 

 ばつの悪そうな表情を浮かべ、頷く俊典。

 

「きみが雄英(ここ)に入学してからというもの、対面でじっくり話をする機会をまったく作れなかったことに思い至ってね……」

「ああ……でも仕方ないですよ。オールマイト、ただでさえ多忙なのに……あんなこともあったし」

 

 口許にだけは笑みをつくりつつ、その実出久の表情は曇っている。──そう、確かに()()()()()があった。だからこそもっと、気を配るべきではなかったか。弟子……にはし損ねてしまったが、自身の個性の秘密を共有させ、一時的であれ受け継いでまでもらった。仮面ライダーであったとしても、たった15歳の少年に。

 

(この子はまだ少年なんだ。不幸の積み重ねで世界の命運をかけた戦いの矢面に立たせてはしまったが……本当なら、我々大人が守り育ててゆかねばならない雛だ)

 

 そんな決意を秘め、改めて口を開く。

 

「爆豪少年も相澤くんも無事に復帰したわけだが……何か話はしたかい?特に爆豪少年とは」

 

 出久と入院していた彼を引き合わせるよう取り計らったのは他ならない俊典自身だ。彼らの間にやりとりがあったことも当然、認識している。ただ問答の内容や、その後についてまでは承知していない。そこまで他人が介入するようなことでないと言われれば、その通りだとも思う。そういった線引きを器用にできる性質ではないのだ、このNo.1ヒーローは。

 

 案の定曖昧な笑みを浮かべて、出久は口を開いた。

 

「挨拶だけです。それも、ほとんど僕から一方的に……って感じですけど」

「そ、そうなんだ……うーん」

「いや、それだけでも良いんです。かっちゃんも僕も、昔とは違って……でも、変わらないものもあるから」

 

 お互いに、そのことに気づくことができた。様々な感情が絡みあった拗れた関係はそう簡単に元のようにはならないだろうけれども……きっと、やり直せる。

 このときの出久は確かにそう信じていた。何度裏切られても捨てきれないその、無邪気さで。

 

 ただこのときばかりは、俊典も出久の想いに惹かれた。父子ほどの年齢差はあれ、純粋さにおいては彼も少年のようなものだったのだ。

 

(ふたりのことは、私の出る幕ではないか)

 

 ゆえにそう結論付け、話題を変えることにした。

 

「それで、ここからが本題なんだが……」

「……ワン・フォー・オールのことですか?」

「!」

 

 厳粛な顔つきになる出久。──彼もまた、機会を見計らってその話をしようと思っていたのだ。

 

「……きみはやはり、後継者を見つけ次第その力を手放すつもりでいるのかい?」

「はい」迷いはなかった。「その気持ちは変わりません……いや、この前のことでさらに強くなりました」

「少年……仮面ライダーが、分身したことかい?」

 

 言葉にすると笑ってしまいそうな話ではある。無論、この場ではふたりともくすりともしないが。

 

「この一年……仮にもあなたから受け継いだ力を腐らせておくわけにはいかないと思って、使いこなすための訓練は確かに積んできました。でもあんなことは、予想外だった……」

「………」

 

 仮面ライダーの"分身"──オールマイトも含め、あの光景を目撃した者たちはそう捉えていることだろう。それ自体外部には洩らしたくない──ヴィラン側から洩れる可能性は十分あるが──話なのだが、出久自身が己の胸のうちにとどめていることもあった。

 

(あれはきっと……未来の、僕自身だ)

 

 ワン・フォー・オールとキングストーンの共鳴により、時を越えて来訪した。彼らもワン・フォー・オールを使っていたということは、遥か未来においても自分はまだ譲渡をしていないのか。それとも共鳴による、奇跡か。

 

──どちらであろうが、恐ろしいことなのだ。現実に自分は、時間という神の領域さえ侵してしまった。

 

「僕が心まで人間でなくなったら……いよいよ、誰にも止められなくなってしまう」

「少年……」

 

 そんなこと、あるわけがない。俊典は心の底からそう信じて、出久にも伝えたかった。しかし一度はすべてに絶望し、英雄の名を捨てひっそりと生きてゆこうとしていた彼は、その否定を頑なに否定する。

 

「──だからこの体育祭、僕にとってはある意味最大のチャンスなんです」

「!?」

 

 そのひと言に、いよいよ俊典は度肝を抜かれた。

 

(まさか少年、次の体育祭でもう後継者を見極めるつもりか!?)

 

 いくらなんでも早い、早すぎる。だいたい自分のように観察者(オブザーバー)としてならともかく、彼はいち参加者の立場でそれをするつもりなのだ。

 

「ま、待ってくれ少年!せめて雄英に在籍している間くらいは、時間を取っても──」

「それじゃダメなんです。だから──」

 

 

「──僕、とことん勝ちに行きます!」

「……え?」

 

 出久の大きな瞳が好戦的な光を放っていることに、ようやく俊典は気づいた。しかし自身の強大化を恐れていた先ほどまでの様子とは、人が変わったようではないか。

 

「ご、ごめん。話が見えないんだけど……?」

「あ、すみません。──平和の象徴の後継者は、いざというとき世紀王を止められる存在でなくちゃならない。そのために必要なのは、何よりどんな強敵にも尻込みせず喰らいついていく勇敢さだと思うんです」

 

 クラスメイトたちの多くは、規格外すぎる仮面ライダーの実力を目の当たりにして圧倒され、慄いていた。確かにそれは無理からぬことかもしれない、ヒーローの卵というだけのふつうの少年たちに対して、この身体は魔王の器だ。本能的に戦意を喪失してしまうのも無理からぬことなのかもしれない。

 だが、それさえも乗り越えて自分と対峙できる人間にこそ──この力を。

 

 そんな人間を、雄英生徒数百人の中から見出だすために。

 

 

「僕が来たってことを、世の中に知らしめてみせます」

 

 緑谷出久が、自ら至った決意だった。

 

 

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