超・世紀王デク   作:たあたん

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キリが悪いので今回はチーム編成の一部のみ
短いです


独走!!(後)

 

 緑谷出久が撰んだ文字通りのダークホースは、彼以外のおそらく全国の人間の意表を突いたと言っても過言ではなかった。

 

『かかか仮面ラァ~~イダ!?一回戦の超速ゴールから息つく間もなくまたブッ飛んだことをかましてきやがったァ!!ってかルール的にアリなのかコレぇ!?』

 

 実況のプレゼント・マイクからもっともな突っ込みが入る。

 とはいえこの雄英体育祭、個性アリのガチバトルである以上奇想天外なことは毎年往々にして発生する。そういうとき判断を委ねられているのは主審たるミッドナイトである。果たして。

 

「う~~ん……唯一無二の相棒ってアツいからアリ!!」

 

 これである。彼女の判断は独自の情理に基づくものなのであった。

 

「こ、コイツはシヴィーだぜ……色んな意味でぇ」

「……審判がそう判断したなら仕方ないだろう」解説役のミイラ……もとい相澤の反応はつれない。「それに、奴は"壁"になるつもりだ。自らの宣言通りにな」

 

 「超えられるものなら超えてみろ」──無茶言うなと叫びたくなる最強コンビに、生徒たちがどれほど喰らいつけるか、二回戦にしてこの体育祭、例年を遥かに凌ぐ盛り上がりになると相澤は踏んでいた。

 

 

 一方の生徒たちはというと、

 

「う、ウソだろぉ……緑谷ァ」

 

 この世の終わりのような声を発したのは峰田実である。USJで出久と連携をとった彼は、わずかながら仮面ライダーの助けとなったという自負があったのだ。だから今度も、と思ったのだが。

 

「まさかバッターちゃんと組むなんて。でも、緑谷ちゃんらしいわね」

 

 一方で峰田ともどもチームアップをした蛙吹梅雨はというと、極めて落ち着いた反応だった。普段、峰田のセクシャルハラスメントに容赦ない報復を行う彼女だったが。

 

「峰田ちゃん、よかったらわたしと組まない?」

「エ゛ッ!!?」思わず素っ頓狂な声をあげる。「ま、マジでか梅雨ちゃん!?」

「アナタとわたしの個性なら、相性が良いわ」

 

 とはいえ、ふたりだけで組むには攻撃・防御ともに難がある。矛と盾、そのふたつが揃えば相手が仮面ライダーだとしても。

 と、いうわけで。

 

「盾役は任せろ」

「ボクに声かけてくれてMerci☆」

 

 障子目蔵、青山優雅。このふたりを加入させ、峰田をリーダーとするチームが出来上がったのだった。

 

 

 *

 

 

 

 心操人使は悩んでいた。目の前では、A組の面々が次々にチームを形成している。

 

 普通科の生徒のなかで唯一あの障害物競走(いっかいせん)を乗り越えた身ながら、彼はこの二回戦……否、表彰台の頂にまで自身の足跡を刻むつもりでいた。

 ただ、そのためには目の前の現実に立ち向かわねばならない。仮面ライダーの影に隠れたダークホースであるがゆえに、誰にも見向きされない存在であるという。

 

 とはいえ彼の個性は、その課題を解決──と言い切れるものかは怪しいものだが──することが可能なものだった。実際それで、トイレに行っていて偶然チーム入りが遅れたらしいB組生徒のひとりを確保することに成功していた。

 ただそれは、たまたま運が良かったというだけのことだった。B組は事前に組分けを決めていたのか淀みなくチームアップを行っているし、逆に大多数が仮面ライダーこと緑谷出久に群がる恥も外聞もない振る舞いを見せていたA組の面々は、出久が()()()()誰とも組まないという選択をした途端、その塊の中でチームを形成していっている。そこに心操がつけこむ余地は見いだせない。

 

(あの中に割り込むか?いや、しかし……)

 

 無理にそれを実行すれば、自らの手のうちを晒すことにもなりかねない。ゆえに彼は、一歩を踏み出せずにいた。

 

「おや、ひょっとしてアナタは普通科の方ですか?」

「!」

 

 そんな心操に、自分から声をかけに行く者があった。ピンク色の髪に瞳孔の開いた金色の瞳が特徴的な女の子、ヒーロー科の面々にはない装備を背負っている。

 

「……あんたは?」

「おっと失礼。──こちらを」

 

 同じ高校生だというのになぜか名刺を持っていて、差し出してくる。そこには"雄英高校サポート科 発目明"とあった。

 

「サポート科……なるほどね、はみ出し者同士手を組もうってことか」

 

 皮肉めいた物言いは、半ば癖になっているものだった。プライドの高い人間であれば癇に触ることもあろう、しかしこの発目という少女はまったく意に介する様子もなかった。

 

「本音を言えば仮面ライダーさんと組みたかったんですが、普通科の方なら私のベイビーちゃんのモニターにちょうどいいですしねえ」

「……ベイビーちゃん?」

 

 掴みどころのない物言いをする少女を胡乱な目で見つめていると、さらにもうひとつ足音が近づいてくる。そちらに視線を向けた心操が思わず後ずさりしかかるのも無理なきこと。なぜならそこには、女体のかたちに膨らんだ体操着が浮遊していたので。

 

「あ~っ、ひどい!幽霊でも見たみたいな反応!」

 

 浮遊する体操着(フライング・ユニフォーム)が少女の声でしゃべったので、心操は彼女が身体を透明にする個性の持ち主なのだと思い至った。ここまで完璧に姿かたちを認識しがたいのも珍しいが。

 

「……悪かったよ。で、どちら様?」

 

 愉しそうに肩を揺らして、少女は答えた。

 

『A組の葉隠透ですー。よろしくね!』

 

 

 *

 

 

 

「てめェらデクのオトモダチだろ、ンで俺と組む気になった?」

 

 クラス内の人間関係を詳しく知る者なら誰でも抱くであろう疑問を、爆豪勝己はメンバーにぶつけた。"デクのオトモダチ"には当然、轟焦凍は含まれていないが。

 

「だからだ」答えたのは飯田天哉だった。「喜びも苦心も対等に分かち合えるような友人で、俺はありたい。そのために、物怖じせず彼と全力で戦おうというきみたちと組むのが最善だと判断した!」

 

 そして、彼女も。

 

「私も!デクくんの力になれるようなヒーローになるために、今は……全力でぶつかるっ!」

 

 「そうかよ」と、勝己は小さく笑った。自分とも轟ともかけ離れた、お手本のようなやさしい理由だ。

 まあ実際のところ、彼らの事情などどうでもよかった。全力で勝ちに向かいさえすれば。そういう意味ではこのチーム、間違いなくベストメンバーだ。

 

「なら、せいぜい足引っ張んじゃねーぞ!半分野郎、てめェもな」

「当然だ」

 

 自分と轟の攻撃力に、飯田のスピード、そして麗日の撹乱&補助──並べると聞こえは良いが、必ずしもまとまりが良いとは言いきれない。

 リーダーとはつまりその調律を担うのが役目なのだと、勝己は理解していた。ただ脊髄反射でその肩書きに執着したわけではない。

 

 

 *

 

 

 

 彼らも含め、急場でチームアップを行ったA組の面々に対して、B組は心操人使の想像した通りあらかじめ編成を決めていた。

 

「鉄哲、恨みっこなしだぜ?」

「おうよ!」

 

 B組チームのふたりのリーダー、物間と鉄哲がそんな会話をかわしあう。彼らの弄する策を知るのは、彼ら自身をおいて他にはいない。策というのはそういうものだ。

 

 問題は、小細工が世紀王たる英雄──仮面ライダーに通じるか、であるが。

 

 

『さァいくぜぇ!残虐バトルロワイヤル、カ~ウントダァウン!』

 

 

──3、

 

「……狙いは、」

 

──2、

 

「ひとつ……!」

 

──1、

 

「………」

 

 

「さあ行くよ、アクロバッター」

『バッチコイ、ダ!』

 

 

 そして彼らは、走り出す。

 

 

 つづく

 

 

 




策略と闘争渦巻くステージ。暴虐の限りを尽くす騎馬の魔王を、果たして少年少女たちは止めることができるのか!?

次回 超・世紀王デク

「魔王邀撃」


ぶっちぎるぜぇ!!

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