超・世紀王デク   作:たあたん

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魔王邀撃(後)

 

 飛来した光の束が、バイオライダーを呑み込んでいく。

 その光景を目の当たりにして、尾白猿夫は「よし……!」と拳を握りしめた。今この瞬間はまさしく、彼の立てた作戦が奏功したあかしなのだ。

 

──そう、彼らが手を結んだのは上鳴チームだけではなかった。

 

「見てくれたかい?ボクのネビルレーザー☆」

「ええ、バッチリ見せてもらったわ。青山ちゃん」

 

 青山優雅、個性"ネビルレーザー"。ヘソからレーザービームを発射する、単純だが強力な個性である。

 

「やるじゃねーか青山、緑谷に直撃かますなんてよ!」

「フフッ、Merci☆」

 

 きらん、と彼の瞳から星が瞬く。独特なキャラクターゆえ今まで交流もあまりなかったのだが、意外と気立てのいい少年なのだとわかった。

 

「峰田ちゃん、次はアナタの番よ」

「わかってら!」

 

 峰田実。アライアンスにおける彼の役割は、足止め・第二弾である。誰も、仮面ライダーの愛馬が少し攻撃したくらいで行動不能に追い込めるとは思っていない。

 

「喰らえアクロバッター!実サマのもぎもぎだぁ──ッ!」

 

 葡萄のような頭の果実をもぎり取り、アクロバッターめがけて投げつける。強力な粘着性のあるそれは次々とアクロバッターの車体やホイールにくっつき、その身動きを阻害する。万全な状態であれば無理矢理にでも弾き飛ばしてみせたかもしれないが、ダメージを受けている今は困難だった。

 

『仮面ライダー、なんと馬を失ってしまったァァァ!!?地面に足を着いた時点でアウトだぞ、どうするゥ!?』

 

 熱のこもったプレゼント・マイクの実況が、ステージ上に響く。実際、ライダーはその危機のさなかにあった。熱に弱いバイオライダーの形態でレーザービームをもろに浴びてしまったのだ。青山、というよりアライアンスの狙いが活きた。

 

「ッ、やるじゃ、ないか……!」

 

 ゆっくりと墜落しながら、バイオライダーは……笑っていた。このまま地に伏せれば、余力があるかなきかに関係なく自分は敗退する。繰り返すようだが、それはこういうルールの試合なのだから。

 ちら、と見れば、切島たち挑んできた面々は、これからのことをいったんは忘れて喜びをわかちあっている。既に勝利を確信しているようだが……まだ、甘い。現実にまだ、敗北は決定づけられていないのだ。

 

「……ワン・フォー・オール、5パーセント……!」

 

 力を絞りつつ、ワン・フォー・オールを発動させる。ステージそのものを壊滅させるわけにはいかないので、これくらいが精々だろう。

 

「DETROIT──SMAAAAASHッ!!!」

 

 力を集約した拳の一撃は──地面めがけて、放たれた。

 

「何っ!?──うわあああああ!!?」

 

 その副産物たる衝撃波に、周囲にいたチームは呑み込まれていく。彼らは理解しきれていなかったのだ──仮面ライダー……魔王のごとき英雄の、真価というものを。

 

 

 *

 

 

 

 ステージの広さゆえ、仮面ライダーを中心とした丁々発止とは距離を置いて戦っていた者たちは、スマッシュの影響を受けずに済んでいた。

 

「うわぁ、デクくん……また派手にやっとる」

 

 そちらを見遣りつつ、お茶子が感嘆の言葉を発する。実際のところは"逆転に繋がる一手"というところなのだが、彼女らは実況を聞くでもなく目の前の戦闘に邁進していた。

 

「くっ、相変わらず規格外のパワーだ……!緑谷くん、やはり僕は──」

 

 戦いたい。全力の彼と、真正面からぶつかってみたい──そんな欲求が、飯田天哉の心を支配しかかる。

 しかし、

 

「──痛だっ!!?」

 

 頭のてっぺんを突然殴りつけられ、飯田はうめいた。そのようなことをしてくる相手はひとりしかいないわけで。

 

「な、何をするんだ爆豪くん!?」

「うるせー。がっついてんじゃねーよ、クソメガネ」

「……!」

 

 勝己の言葉は、決して独りよがりなものではなかった。

 

「爆豪の言う通りだ。緑谷と正面切って戦うのはまだ早い」轟が同調しつつ、「それに……俺たちと戦いたい連中もいるみたいだぞ」

「!」

 

 目の前に立ちはだかる騎馬。当然ながら見覚えのある顔が並んではいるが、顔と名前は必ずしも一致しない。他人の名前にとんと無頓着な我らがリーダーに限らず、である。

 

「……B組の連中か」

「鉄哲徹鐵だッ、覚えとけ!!」

 

 鋼鉄のような白銀の剛毛が、風にゆれる。吊り上がった眼といい、切島鋭児郎によく似ていると爆豪チームの面々は感じた。彼より顔つきも性格も些かきついようではあるが。

 

「はっ、お断りだわ!──半分ヤロォ!!」

「……轟だ」

 

 いい加減チームメイトの名前くらいは覚えてほしいものだと思いつつ、轟は右手に力を込めた。彼の苛烈さは必ずしも好ましいものでないが、同意できる部分もある。

 

「悪ィが、おまえたちは敵じゃねえ」

 

 勝己だったらば、ただの的でしかないとまで吐き捨てるだろうか。いずれにせよそう言い放って、轟焦凍は己の個性を発動させた。足下から氷結が奔り、獲物に喰らいつかんとする。

 対して、

 

「ヘッ……B組の底力、舐めんなよ──ッ!!」

 

 不敵な笑みを浮かべた鉄哲少年。次の瞬間、その姿に異変が起こった。

 肌が音をたてて硬質化し、光沢をもった鈍色へと染まっていく。──まるで、鋼鉄のように。

 

 体操服の一部が破れるほどに硬さと鋭さを得た鉄哲は、雄叫びとともに己が拳を振り下ろした。迫りくる氷結へと。

 そして、氷は粉々に砕け散った。

 

「………」

 

 轟が初めて顔を顰める。それを見て気をよくしたか、鉄哲チームは真正面から接近してくる。格闘戦──切島鋭児郎によく似た個性の持ち主であれば、その志向も頷ける。他の面々も、その判断には乗り気のようだった。

 

「返り討ちにしてやらァ!!クソメガネ、丸顔!」

「わかっているとも!」

「まかせて!」

 

 相手が接近戦をお望みなら、こちらもそれに合わせてやるまで。飯田がエンジンを発動させ、騎馬ごと加速する。一気に距離が詰まる。そして、

 

「「お、らァァッ!!」」

 

 勝己の爆破と、鉄哲の拳とが炸裂しあう。人体が起こすにはおよそ似つかわしくない、巻き起こる旋風。

 そのどちらもが、決定打を与えるには至らない。互いに大きく後退させられながらも、騎手を落とすようなへまはしなかった。

 

「ッ、もういっぺんだぁ!!」

「上等だァ2Pヤロォ!!」

「誰が2Pだ、誰が!」

 

 今度こそケリをつけるべく、再び肉薄する両チーム。互いに相手が侮れない強敵であると理解し、だからこそ完膚なきまでに叩き潰すべく全身全霊をかける。少年同士のルールの中での死闘としては、まぎれもない在るべき姿だ。

 

 しかしながら、問題がひとつだけあった。──これは一騎打ちではなく、複数のチームが入り乱れる乱戦ということだ。

 

「──ッ、」

 

 その事実に思い至ったのは、我らがリーダーの首筋に何者かの手が触れた瞬間だった。

 

「な……!?」

 

 慌てて振り向く勝己。それでも身体ごとというわけにはいかず、首をぎりぎりまで傾けるのが精々なのだが。

 

 

 果たしてそこには、見知らぬ金髪が揺れていた。

 

「やあ。随分と好き勝手暴れてくれたみたいだね」

「てめェは……」

 

「1年B組、物間寧人」碧眼が鋭く細められ、「キミらを──吹っ飛ばす」

 

 

 烈しい爆炎が、爆豪チームを呑み込んだ。

 

 

 *

 

 

 

 試合を見守る者たちの殆どは、"ありふれた"激戦のことなど目に入ってはいなかった。

 彼らの目は一様に、ある一点に注がれていた。──ステージの西側、仮面ライダーBLACK RXが戦っていた……その場所。

 

 そこには、巨大なクレーターが出来上がっていたのだ。

 

「ッ、いったい、何が……」

 

 砂塵にまみれながら、切島が息も絶え絶えにつぶやく。RXの拳が一瞬光ったかと思うと、一秒も経たないうちに閃光が視界を覆い、次いで突風と衝撃波が襲いかかってきたのだ。

 

「尾白、砂藤、大丈夫か!?」

「お、おう……俺たちは」

「それより、他のチームの皆は……?」

 

 土煙に視界が塞がれ、周囲の現況がわからない。それでも仮面ライダーが不意打ちを仕掛けてくるとは不思議と思わなかった。……そもそもそんなことをする必要がないのだと、既に本能が悟っていたのかもしれない。

 

「切島ぁ〜!」

「!」

 

 呼び声に振り向けば、砂塵をかき分けるようにして接近してくる騎馬の影。それが同盟を結んでいる八百万チームのものであることを認めて、切島たちはほっと息をついた。

 

「無事だったか!」

「まー、なんとかな」上鳴が応じる。「八百万がシールド出してくれなきゃヤバかったけど。な?」

「当然のことですわ」

 

 極めて落ち着いた表情で八百万百が応じる。皆と同じく土埃にまみれながら、その凛とした表情は崩れない。お嬢様、なのは間違いないようだが、ヒーローを目指すものとしての精神的素養は調っているようだった。リーダーというのはこういうものかと、改めて切島は思う。

 

(感心してる場合じゃねえ、今は俺もリーダーなんだ)

 

 この一瞬で動きを封じられ、さらには仮面ライダー本体を見失ってしまった。このまま態勢を立て直されてしまえば、形勢は一気にあちらへ傾く。それだけはなんとしても避けなければならない。

 

「!、そうだ、梅雨ちゃんのチームは?」

 

 そう、口に出したときだった。

 

「うわあああああ──ッ!!?」

「!?」

 

 高校生らしからぬ、まだ変声期も迎えていないような少年の悲鳴が響く。ぎょっとした2チームの面々が振り向くのと、もうもうと立ち込め続ける砂塵が一気呵成に吹き飛ばされるのが同時。

 

 そこには、信じられない光景が存在していた。

 

『み、峰田チーム……ノックアウトォォォ!!』

 

 峰田、梅雨、青山──そして騎馬を担当していた、障子。彼らはばらばらに、地面に倒れ伏していた。──ハチマキが、ない。

 

「そ、そんな……」

 

 同盟の一角が崩れた。その事実に気圧されながらも身構える両チームだったが、

 

「……緑谷さんは、どこへ行ってしまいましたの?」

「……!」

 

 百の言葉に、一同ははっとした。四方八方、どこを見ても姿がない。いや、目のいかない場所がひとつある。人であれども常人でない彼ならば、フィールドにしうる場所──

 

 

──彼らの頭上に、巨大な翳が差した。

 

 

「悪いけど……足を奪ったくらいで、仮面ライダーは止まらない!」

 

 光を纏ったRXの姿は天使のようであって……少年たちにとっては、魔王そのものだった。

 

 

 つづく

 

 

 




魔王に容赦なく蹂躙される者、魔王を討ち果たすべく劫火の中で奮闘する者。
少年たちが運命の岐路に立たされる中、2回戦終了のゴングが鳴る……。

次回 超・世紀王デク

「凍てつく記憶」

ーー母は、俺に煮え湯を浴びせた。


ぶっちぎるぜぇ!!
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