超・世紀王デク   作:たあたん

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思いきってSHFのアクロバッター購入しました。ねんどろいど緑谷出久の隣に並べて楽しんでます。聞くところによると魂ウェブでリボルケインも発売されるそうで……コレは資料用に買わねばなるまい(使命感)

さて、ちょっと文字数オーバーしましたがなんとか纏まりましたBLACK回想篇。申し訳ないことにスゲー駆け足です。具体的には三神官の台詞が三人合わせて二つというレベル。ビシュムとバラオムの断末魔だけです。ダロムェ……
ちなみに作者はビシュム様すこです。言葉遣いは丁寧なのに超サディスティックなのがたまらないんじゃあ~^

あっ、アンケートのほうまだまだ募集してますのでよろしくです!皆さんの意見ぜひぜひお聞かせくださいませ!



死闘―CENTURY KING―

 緑谷出久の戦いは熾烈を極めた。

 

 各地で暗躍するゴルゴムの怪人たち。陥れられ、苦しめられる人々。彼らを救けるために、出久は東奔西走、たった独り戦わねばならなかった。わずかな間隙を縫って信彦を捜すが、手がかりすら見つけ出せぬまま時は過ぎていく。

 

 三神官の陰謀、怪人たちによる蹂躙、そして現れる、創世王の座を手にすべく出久の持つキングストーンを狙う剣聖ビルゲニア。幾度となく繰り広げられる激戦の中で、確実に出久は磨り減っていく。

 疲弊するのは肉体ばかりではなかった。身勝手な欲望のために悪魔に魂を売り、他者を苦しめることになんの良心の呵責も抱かぬゴルゴムの協力者たち。その中には政財界の要人や、出久が憧れていた人気ヒーローまでも存在していた。彼らによってゴルゴムの蠢動は揉み消され、数多いるヒーローたちの大多数もまた圧力に屈して見て見ぬふりを決め込んだ。自分が憧れていたのは、こんなものだったのか――出久は大いに失望し、一時はヒーローノートをつけることもやめてしまった。

 

 しかし、それでも出久は逃げ出さなかった。信彦を救いたいから。出久を支え、ときには危険も厭わず手を差し伸べてくれる――そんな母や克美・杏子を守りたかったから。それが大きな理由だったが、それだけではなかった。

 

 ゴルゴムの存在に気づいた一部のヒーローたちの中には、表立っては動けないながらも出久を支援してくれる者がいて、それがヒーローへの憧憬の想いをかろうじて繋ぎとめてくれた。そして第二の(スーパー)マシン、ロードセクターの獲得。力でもぎ取ったわけではない、さる人たちの信頼を得て託されたという事実。

 

 託されたといえば、呼び名もそうだ。出久が変身する、漆黒の鎧を纏ったバッタの怪人……ゴルゴムの世紀王・ブラックサン。

 だが、戦いの中で出久は、守るべき人々によって英雄としての名を与えられたのだ。――"仮面ライダー"。異形の仮面で哀しみを覆い隠し、マシンを駆って颯爽と人々を救う戦士。

 

 仮面ライダーBLACKを誇りをもって名乗り、出久はいつ終わるとも知れない死闘に挑み続ける。すべてが始まった夏は終わり、秋、冬が過ぎ、気づけば戦場に花が芽吹こうとしていた。

 

 

――そんな慎ましやかな命の営みを踏み躙るようにして……もうひとりの世紀王が遂に、産声をあげた。

 

 

「久しぶりだな、出久……いやブラックサン」

「!、――――」

 

 

「信彦、くん……」

 

 信彦……否、世紀王シャドームーン。

 世紀王の剣"サタンサーベル"を創世王より与えられ起死回生を図るビルゲニアの動きに危機感を抱いた三神官が、攫った杏子、そして彼らの命の源である空・海・地の石のエネルギーを使って彼を強化、覚醒させたのである。

 ブラックサンより堅固な白銀の鎧を身に纏い、彼もまた世紀王としての一歩を踏み出した。ビルゲニアを抹殺、サタンサーベルを奪還し、本来の姿である大怪人に戻った三神官を従えゴルゴムの総指揮をとる――本来の世紀王に相応しい姿。

 

 信彦はもはや、救い出すべき親友から討たねばならない宿敵となってしまったのか。出久の苦悩は深まる一方だった。

 

(いやだ……)

 

(きみと戦うなんていやだ……信彦くん……!)

 

 そう思ったのは出久ひとりではない。引子も克美も杏子も、息子(弟)とその親友が殺しあう姿なんて見たくはなかった。

 とりわけ杏子の想いは烈しかった。仮面ライダーの戦いを間近で支えているうちに、彼女にとって出久は弟の親友でも、もうひとりの弟でもなくなっていた。

 

「どうして!?どうしてあなたばっかり、そんな過酷な目に遭わなければならないの!?」

「杏子、ちゃん……」

「もういい、もういいじゃない出久くん……。私がなんとかするから……なんとか説得して、信彦をもとに戻してみせるから……。そのあとは強いヒーローに直談判でもなんでもしてゴルゴムと戦ってもらうから……!だからもう、あなたひとりが苦しい思いをすることないじゃないっ!!」

 

 その涙に、抱擁に、弱っていた出久の心は確かに流されかけた。たったひとりの親友と争ってまで、自分が戦い続ける意味が本当にあるのか。まだ子供でいられたはずの自分が。同級生は今頃、真新しい制服を纏って新生活に胸膨らませているのに。

 

 

 切れかけた糸を強引に繋いだのは、ゴルゴムによる全世界への宣戦布告だった。

 大怪人ダロム・バラオム・ビシュムが突如として街に出現、人々を蹂躙した。大怪人の強大なパワーを前に、出動したヒーローたちも太刀打ちできない。

 

 苦痛に呻き、救けを求める無辜の民。彼らが呼ぶ名は"平和の象徴"オールマイトでも、No.2ヒーロー・エンデヴァーでもなく。

 

「仮面、ライダー……!」

 

 その光景を目の当たりにして、出久は立ち上がった。立ち上がるほかなかった。憧れに裏切られても、裏切ることなんてできはしなかったから。

 

「たとえ何と戦うことになっても……何を失ってでも……ッ、僕は――僕は戦う、戦い続けるッ!!」

 

 

「――変、身ッ!!」

 

 

 "救ける"ため、再び仮面ライダーBLACKとして立ち上がった出久。己が傷つくことも厭わぬ奮戦により、彼は大怪人を一時撃退することに成功した。

 

「僕は絶対にあきらめない。ゴルゴムを滅ぼして……信彦くん、この手で必ず、きみを救け出すんだ……!」

 

 

 

 

 

 そうして、死闘は続く。

 

「なぜですッ、シャドームーン様……!シャドームーン様ぁ――!!」

 

 ライダーと心中を図ったビシュムは、しがみつく杏子ごと貫くことを躊躇したシャドームーンにより独り犬死にを遂げ、

 

「俺が死んだとて、シャドームーン様がおられる……!シャドームーン様、万歳!創世王、万歳ッ!!ゴルゴム、万歳――ッ!!」

 

 不穏分子となったクジラ怪人ごとライダーを葬り去ろうとしたバラオムもまたクジラ怪人の反撃を受け、ライダーの手で倒された。

 

 

――そして迎える、シャドームーンとの決戦。

 

「信彦くん……ッ」

「勝負だ……ブラックサン!」

 

 スペックで勝るシャドームーンに対し、仮面ライダーBLACKは積み重ねてきた経験にモノを言わせて互角に立ち回る。必殺のライダーキックとシャドーキックの激突すらも、決定打には至らない。

 

 決着の見えない死闘。しかし痺れを切らした創世王の介入により、潮目が変わった。

 

「いず、く……」

「……!」

 

 信彦の姿に戻されたシャドームーン。ライダーは……出久は攻撃を躊躇してしまう。

 それこそが創世王の狙いだった。即座に世紀王の姿に戻され、シャドームーンは猛攻を仕掛けてくる。張り詰めた緊張がわずかに緩んでしまったライダーは態勢を立て直すこともできず、追い詰められていく。

 そして、

 

「……ッ」

「私の勝ちだな……ブラックサン」

 

 ライダーは遂に倒れ、サタンサーベルを突きつけられる。

 

「どうし、て……わかって、くれないんだよ……」

 

 この地球を、世界を、生きとし生けるものを――力なきものを救い、守る。そういう存在に、自分も信彦もなりたかったはずなのに。

 親友の悲痛な声を断ちきるかのように――シャドームーンは、その腹を貫いた。

 

 

 

 

 

 仮面ライダーは、死んだ。その亡骸はキングストーンを宿したまま、天変地異に巻き込まれて海へと消えていった。

 シャドームーンは躊躇ったのだ。出久の腹を裂いてキングストーンを取り出すのを。その身を、辱めるのを。

 

(私は……俺は出久のキングストーンなどなくても、創世王の役割を果たしてみせる……!)

 

 それこそがキングストーンを奪わなかった理由だと自分に言い聞かせることで、彼はあくまで世紀王たろうとした。――創世王の叱責を受け、結局はその行方を捜すことになるのだが。

 

 いずれにせよ、ゴルゴムと独り戦っていたライダーがいなくなったことで、日本はいよいよ危機に陥った。ヒーローたちの多くはゴルゴムシンパの要人から圧力をかけられ動けないまま。それを振りきったごく一部の有志たちだけでは、あちこちで暴れる怪人たちへの対処が追いつかない。

 人々は三種類に分かたれた。国外へ脱出しようとする者、ただじっと嵐が過ぎ去るのを願う者……そしてゴルゴムに取り入り、自ら悪に堕ちる者。ヴィランばかりでなく、一般市民までもが"ゴルゴム親衛隊"を名乗り暴徒化した。希望を失った人々の心は、荒みきってしまったのだ。

 

 日本が、やがては地球が、ゴルゴムの望む弱肉強食の世界へと変わっていく――もはや誰も、その流れを止められる者はいないかのように思われた。

 

 

 だが、そうではなかった。――仮面ライダーは……緑谷出久は甦ったのだ。バラオムから救け、海へと帰したクジラ怪人……彼の与えてくれた命のエキスによって。

 命のエキスの効果で強化されたライダーは、最後の大怪人ダロムを打倒、その復活を世に知らしめた。人々の心に、希望の灯がともされる――

 

 

 

 

 

 地球に生きる、生きとし生けるもの――そのすべての希望を小さな身体に背負って、出久は最終決戦へと臨んだ。ゴルゴム本拠地への突入――ゴルゴムを棄て戦友となった、クジラ怪人の尊い犠牲と引き替えに。

 

「悔しいか?俺が憎いかブラックサン?ならばかかってこい、今度こそ決着の時だ!」

「ッ、シャドー……ムーン……!」

 

 戦わねばならない。勝たねばならない。命を落としたクジラ怪人、そして無辜の人々のためにも。

 

 再び始まる、かつての親友同士、ふたりの世紀王の対決。命のエキスで強化された仮面ライダーBLACKに対し、シャドームーンもまた創世王のエネルギーを受けその力の一部を受け継いでいた。それはライダーばかりでなく、戦場に咲く花々までもを吹き飛ばしていく。

 

 死闘のなかで、出久はふと信彦が好きだった歌を思い出していた。緑や花々、青く澄んだ海――美しい自然に、人々の心にはぬくもりと優しさ……そんな古き良き時代を懐かしむ歌。考古学者の息子ゆえに、少年らしくない渋い趣味になってしまったと自嘲していたけれど。

 

 彼の中にはもう、その穏やかなしらべは流れていなかった。

 

「――おまえはもうッ、信彦くんじゃない!!」

 

 だからもう、躊躇わない。救うことを、倒すことより優先はしない。ライダーは猛攻を仕掛けた。サタンサーベルでリプラスフォームを切り裂かれるのも厭わず。

 

 だがその決意が、結果的にもうひとつの犠牲を生み出すことになる。

 

「世紀王である以上、この俺にも……!――バトルホッパー!!」

「ッ!?」

 

 仮面ライダーの相棒であったはずのバトルホッパーは、その呼びかけひとつでシャドームーンの手に落ちた。元々は世紀王のマシンである以上、キングストーンの力で操られればひと溜まりもない。

 

 だがバトルホッパーは、その身に宿した魂まで悪魔に売ったわけではなかった。ライダーが対抗してキングストーンのエネルギーを費やしたことで、わずかに自由を取り戻したその瞬間、

 

――自爆。自らの命を対価にシャドームーンを吹き飛ばし、大きなダメージを与えることに成功したのだ。

 

「バトルホッパー……!しっかりしろ、バトルホッパー!!」

『……、……ッ』

 

 車体が大破炎上し、もはや原形をとどめていないバトルホッパー。しかし彼はまだ、眠りにつこうとはしなかった。わずかに首をもたげ、ライダーに何かを訴える。

 そして、

 

『ア……アリ、ガトウ……ライダー……イズ、ク――』

 

 

「!、だめだっ、死ぬな……!死んじゃ、いやだよ……!きみまでいなくなったら、僕は……ッ」

 

 一年にわたる辛く苦しい戦い。そのすべてをともにしてきた唯一の相棒。その死の瞬間だけは、仮面ライダーは独りぼっちの無力な子供に戻っていた。

 

 

 

 

 

 もう止まれない。止まるわけにはいかない。

 シャドームーンの落としたサタンサーベルを手に、仮面ライダーは独り突き進んだ。

 

「俺は、勝つ……!必ず貴様を、地獄へ送る……!」

 

 その鎧がところどころヒビ割れ、その隙間から赤い血を流しながらなお、シャドームーンは向かってくる。

 

「死ね――ライダーッ!!」

「ッ、もういい……、もういいだろ――!!」

 

 満身創痍の身体を犠牲に、放たれるシャドーキック。振りかざされるサタンサーベル。膨大なエネルギーがぶつかり合い、閃光が散る。

 

 やがてもとの暗闇が戻ったとき、立っていたのは――

 

「………」

「……ぐ、ァ」

 

 仮面ライダーと呼ばれた、漆黒の世紀王のほうだった。

 

 シャドームーンは刃をキングストーンに受けてしまっていた。遂に限界を迎え、倒れ込む白銀の世紀王。

 

「ハハ、ハ……俺の、負けか……」

「信彦、くん……」

 

 

「だが、哀れなのはおまえのほうだ、出久……。たったひとりの親友を……この信彦を殺め、生き延びたんだからな……。一生、後悔を抱えて生きていくんだ……」

 

 

 ふたりの世紀王の死闘は、こうしてブラックサンが制した。勝者となった彼に、創世王はゴルゴムの真実を語った。創世王は五万年周期で代替わりをする、その瞬間が目の前に来ていること。代替わりの度にその力を増してきたこと。次なる創世王は、宇宙をも支配する力を得るであろうこと。

 

 そうして創世王は、出久に甘い誘いをかけるのだ。「おまえが次期創世王だ」と――

 

「ふざけるな!!おまえの……おまえたちの身勝手のせいで、どれだけの命が……!」

『命?そんなものに、一体なんの価値がある?』

 

『そやつらがおまえに何かしてくれたか?おまえを慈しんでくれたか?』

 

『そうではあるまい。蔑み、虐げたはずだ。なんの罪もない優しいおまえを、ただ無力であるというだけで!』

 

「……ッ」

 

 確かに、創世王の言うとおりだった。無個性であるというだけで、自分は誰からも見下され、夢をぐちゃぐちゃに踏みにじられてきた。そんな人間たちは、自ら虐げてきた子供であるとも知らず、仮面ライダーに救けを求めた。ライダーが死ねば、今度は一転してゴルゴムに縋りつく――他人を踏み台にして。

 

 汚い。汚い汚い汚い!

 

 この世界は、歌のように美しくはない。それが現実だ。

 

 

『哀れなブラックサン……。だがそんな日々ももう終わりだ。おまえは全知全能の神となる。おまえを虐げた者どもの命はもはや、すべておまえの手の内にあるのだ!!』

 

 全知全能。それを手にしてしまえばもう、傷つく必要はない。夢見る必要もない。命の生き死にも、善悪も、すべてが思うままとなるのだから。そんな存在になれたら、どんなにかこの心は楽になれるだろう。

 

 

――だが、

 

 

「僕は……」

 

 

――それでも、

 

 

「僕だけは……ッ、僕を裏切るわけにはいかないんだぁ―――ッ!!」

 

 どんな苦難にも笑顔で打ち勝ち、力なき者を救ける超カッコイイヒーロー――そうなりたいと夢見ていた、幼き日の自分。

 

 いまここにいる自分までもが、彼を見捨てることはできなかった。

 

 

 寿命が尽き、心臓部だけになった創世王。晒されきった弱点を貫くべく、仮面ライダーはサタンサーベルを携え、駆ける。

 

「うおおおおおおおお――ッ!!」

 

 創世王は最後のエネルギーで迎撃してくる。既にボロボロになっていたリプラスフォームが弾き飛ばされ、醜いバッタ男の姿を露わにしてゆく。それでもライダーは止まらない。止まれない。

 

「ウ゛ウウ……ッ、――ウォオオオオオオオッ!!」

 

 クラッシャーを剥き出しにして絶叫しながら、バッタ男は創世王に迫る。そして、

 

『グ、ガァ……!?』

 

 貫いた。

 

「グルルルルルゥゥゥゥ……!」

『おの、れ……ブラックサン……!私は、必ず甦る……人間の心に悪がある限りッ、必ず……!忘れるなァ――!!』

 

 そうしてその身が、大爆発を起こす。爆炎の膨大なエネルギーは本拠地じゅうに伝播し、柱を突き崩し、すべてを燃やし尽くしていく。――シャドームーンの身体もまた、炎の中に消えてしまった。

 

「ッ、バトル……ホッパー……」

 

 無意識に呼んだ、相棒の名。しかし彼は来ない。もう、いないのだ。

 代わりに飛び込んできたのは、ロードセクターだった。精根尽き果てた主を乗せたマシンは、崩壊するゴルゴム本拠地を風のように去っていった。

 

 

 

 

 

 雨が降りしきっていた。

 

「………」

 

 雨粒に打たれ、少年は佇んでいた。たった独りで。その小さな背中に、ゴルゴムを滅ぼし勝利したという、英雄としての誇りと喜びは微塵もない。

 

 だって、彼には何も残されていなかった。ずっと苦楽をともにしてきたバトルホッパーは死んだ。心通わせあったクジラ怪人もまた倒れた……「海を守ってくれ」と言い残して。

 杏子と克美ももう、この日本にはいない。ほかならない少年自身が、ふたりに国外へ逃げるよう告げたのだ。

 

 それに、何より。

 

――たったひとりの親友を……この信彦を殺め、生き延びたんだからな……。一生、後悔を抱えて生きていくんだ……。

 

 信彦の――宿敵シャドームーンの声が、脳裏に染みついて反響し続けている。

 

「信彦……くん……」

 

 たった独りの親友を、宿敵として葬り去らねばならなかった。それと引き換えに世界を救えたという事実は、少年の心を欠片も癒しはしない。

 唯一、手を差し伸べる者があるとすれば、

 

「出久……」

「……かあ、さん」

 

 母、緑谷引子。彼女は日本に残っていた。肉親として、出久の帰る場所を守る――ただ、そのために。

 

「よく、がんばったね。……おうち、帰ろう?」

「………ッ」

 

 

 力なんて要らない世界。誰が傷つくこともない、優しい世界。

 

 世界がいまこの瞬間のようであればいいのにと、抱きしめる母の腕の中、少年は思った。

 

 

 

――緑谷出久、13歳の誕生日のことだった。

 

 

つづく

 

 




【登場人物】

緑谷出久/世紀王ブラックサン・仮面ライダーBLACK
小学校六年生→折寺中学校一年生。しかしゴルゴムとの戦いが激化したゆえ、この間学校にはほとんど通えていなかった。
人々から託された"仮面ライダー"の名を背負って戦い続けた彼に残されたのは、何も救えなかったという無力感、そして醜いバッタ男の肉体だけだった。

秋月信彦/世紀王シャドームーン
もうひとりの世紀王。当初はゴルゴム本拠地内で休眠状態にあったが、三神官のエネルギーを受けて復活し、ゴルゴムの指揮官の座に就く。
一度は仮面ライダーに勝利したものの甘さを見せ、甦ったライダーに敗れる。ゴルゴム本拠地の崩壊とともに命を落としたかに思われたが……!?

バトルホッパー
BLACK時代の出久、たったひとりの戦友。最終決戦においてシャドームーンに操られてしまい、ライダーを害さぬよう自爆する。
本来ゴルゴムのものであった彼もまた、出久を相棒として愛おしく思っていたのだった。

緑谷引子
出久の母。出久が仮面ライダーとして東奔西走する中で、彼の"帰る場所"であり続けた。
どんな姿になろうとも、彼女にとって息子は息子のままだった。

秋月克美・杏子
信彦の母と姉。戦うことはできないながら、出久に同行し支援することも多く、総一郎の生前の伝手でヒーローに協力を要請しに行くこともあった。
戦いの中で杏子は出久と少しずつ接近していくが、ライダーの死に際して国外へ脱出、出久の父である緑谷久のもとへ身を寄せることとなり、再会は果たされないままとなっている。
しかし死闘の中で、彼女らの存在が出久の心の支えになっていたこともまた事実であった。

暗黒結社ゴルゴム
 創世王
 ゴルゴムの支配者であり、神。寿命が尽きる前に新たな創世王をとシャドームーンを
 焚きつけ、ライダーまでも誘惑するが倒される。しかし彼は言い残した。人間の心に
 悪がある限り、必ず甦ると――

 三神官/大怪人ダロム・バラオム・ビシュム
 天・海・地をそれぞれ司るゴルゴム大幹部。もとは怪人であり、前の三神官から推挙
 され大怪人、ついで三神官の座を受け継いだ。
 幾度となくライダーを肉体的精神的に追いつめるが、順々に倒されてゆく。

 剣聖ビルゲニア
 ゴルゴム幹部のひとり。日食の日に生まれたものの五万年周期に合わず世紀王にはな
 れなかった。キングストーンを奪うべく暗躍、ライダーと幾度も対決するが、シャ
 ドームーンに始末される。死に際自らが当て馬にすぎないとようやく気付いた姿はあ
 まりに哀れであった。

 


次回 進化―BLACK RX―

ぶっちぎるぜ!!
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