遊☆戯☆王アズールレーン~记忆的幻觉~   作:ハンバート二世

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 ウィチタの声を担当されている山本希望さんは、バハムート降臨及びシャドバにて騎士シンシア、推してまいる!のエルフナイト・シンシアを担当されていました。
 実質カードゲーム声優(遠縁)


アンコネクト・ディスハンド
ターン12――その凶星は予兆


 ただひたすらに歩き続けた。

 廃墟となった街はやはり、一切の人影を見せない伽藍洞だった。

 ひび割れたアスファルトを靴底が擦る音が、異常なほどに耳に張り付く。歩く度に思考が掻き乱される。忘れようとする記憶を呼び覚ます。

 ふと隣を見ると静かな顔をするジャマイカがいた。

 私もこれで熱血クールだとか言われていたはずなのにこれだ。かろうじて残ったガラス窓に映る自分の顔を見たが、酷くやつれているようだった。

 

「シムス達はいないな。はぐれてしまったか」

「ああ……みたいだ」

 

 ジャマイカの言葉に力なく返す。

 ペットボトルの水を飲み干すが気は晴れない。

 

「どうする。シムスとグローウォームを探すか、このまま街へ行くか――ここで休息をとるか。ハーミーズ、空元気は己を殺す自刃となる」

「無理はするなと言ってるんだな。でも大丈夫。体力的には問題ない。このまま街へ行こう。もうすぐそこに見えている」

 

 そう、あと数キロ歩いた先には『街』があった。

 薄汚い暗雲が立ち込めた、文字通り摩天楼のような街が――これが元々あったものだとは思えない。所々に見える情報からここは日本だ。こんなスチームパンク染みた場所なんてあっただろうか?

 

「ハーミーズ……分かった。だが気を付けろ。凶星(まがつぼし)が見える」

「嫌な予感か。すぐに決闘(デュエル)ができるようにしておかないとな」

 

 街の入り口は一目瞭然だった。

 一区画を囲うようにしてそこそこの高い壁が円状に広がっていた。巨大な鉄の扉が口を閉じたまま私達を見据えている。

 私達が何をせずとも、扉は腹に響く音を立ててゆっくりと開いて行く。

 立ち込める。

 ああ、私には分かる。この死臭は惨たらしい戦いの痕跡だ。

 

「死神が首を(もた)げるのを感じる。どうやら、ここでもまた誰かは死ぬようだハーミーズ。引き返す事もできる」

「私を誰だと思ってるんだ。最古参のハーミーズだぞ。それなりに死線は潜り抜けた。仲間を手に掛ける事にももう……慣れた。これ以上心配されると私も少し心外だぞ」

「ふ――それは失礼な事をした。ならば征こう。これからはオレ達のターンだ」

 

 そうだ、これ以上は敵の思い通りにはさせない。

 敵が誰かはまだ分からないが、少なくともレッドアクシズの連中には気を付けなければ。

 

「当面の目的は情報を集め、指揮官へ連絡を取る、でいいな」

「了解だ。行くぞ! 全速先進だ!!」

 

 硝煙立ち込める門扉の奥へと進んで行く。

 固い地面を叩く靴の音は先よりも強く聞こえる。

 もうこの心にきっと、迷いはない。

 

 フォックスハウンドもクリーブランドも夕張も死んだ。シムスもグローウォームも見失った。

 これからもきっと何か失うだろう。

 だがそれでも、私は諦めない。

 必ず、必ず私はまた指揮官に会うんだ!

 

 

 

 

「”オシリスの天空竜”の攻撃! 超電導波サンダー・フォース!!」

 

 

 第一声、聞こえたのは驚くべき言葉だった。

 そして、吹きすさぶ嵐が取り巻く硝煙を一瞬にして消し去った中にあったものは灼赤の神(オシリス)

 今まさに、その雷撃を解き放つ瞬間だった。

 

「ぐぁああああ!! くぅっ!!」

 

LP/1700

 

「だが、『ドラグニティナイト-アスカロン』が相手によって破壊された事で、エクストラデッキから『ドラグニティナイト-バルーチャ』をシンクロ召喚扱いとして特殊召喚!! そして、バルーチャがシンクロ召喚に成功した事で墓地のドラグニティモンスターを4体装備する!」

「どうした古鷹! 重桜の決闘者(デュエリスト)はその程度のものなのか!」

「忘れてないよね……神は1ターンしかフィールドで生きられない」

「ふん。言われるまでもない。貴様こそ忘れてはいないだろうな。私が誰なのかを――」

 

 あれはウィチタだ! オシリスを従える赤い髪の少女。

 クリーブランドがラーときて次はウィチタがオシリスか! そして相手は古鷹。ドラグニティ-ブランディストック、ファランクス、ミリトゥム、アキュリスの4体を装備したバルーチャを従えている。

 ウィチタは以前と変わらず毅然としつつも自信に満ち溢れた様子だが、やはりその気迫に古鷹は圧され気味のようだ。

 待て、古鷹という事はレッドアクシズ――いきなり本命のお出ましか!

 

「ジャマイカ、一旦止めさせるぞ、話を聞かなくては!」

「ああ」

 

 ウィチタはターンエンド。

 ウィチタのフィールドにいたオシリスはエンドフェイズに墓地に送られる。それ以外フィールドにあるのは――

 

 

・ウィチタ

LP3500

フィールド:天変地異、デーモンの宣告、伏せカード1枚

 

・古鷹

LP1700

フィールド:ドラグニティナイト-バルーチャ(装備カード4枚)

 

 

「ウィチタ! 待ってくれ! 重桜に話があるんだ!」

「ハーミーズ殿か。残念だが、奴はこの状況については何も知らない。下がっていた方がいい。巻き込まれるぞ」

 

 一蹴か……だが、ウィチタ本人が言うのであれば確かだろう――いや待て、本人かどうかは分からないぞ。

 

「ハーミーズ、一応決闘者因子を感知する機械を持ってきたんだが、あの時の偽クリーブランドとの反応とは別物だ。本物か偽物かを見分けられるようにはなっているらしい」

「それじゃああのクリーブランドは……」

「偽物とは言え、完全に私達を騙そうとしていたのではなかったのかもしれないな。だが今はそんな事はどうでもいい」

 

 そう、だ。今はこの決闘の行く末だ。

 オシリスは墓地に送られ、今ウィチタのフィールドはがら空き。伏せカードは1枚。

 バルーチャは、装備されているカードに付き攻撃力が300アップする。それによって現在の攻撃力は3200。そして装備されているブランディストックの効果で、バルーチャは2回攻撃できる。

 攻撃が通れば古鷹の勝ちだ。

 

「私のターン!」

「天変地異の効果でデッキトップは見えている。引いたカードは『ドラグニティ・ドライブ』か」

 

 ウィチタが揺さぶるように言った。

 そう、天変地異は互いのデッキを全て裏返す永続魔法。次の相手の動きを予測しやすくなると同時に、ウィチタはデッキトップを操作するカードでコントロールするデッキだろう。

 

「関係ない! 私はバルーチャで2回攻撃! これで終わ――

「それはどうかな! 永続罠発動! 『リビングデッドの呼び声』! 墓地の”オシリスの天空竜”を特殊召喚する! オシリスは手札1枚につき攻撃力が1000上がる。私の手札は4枚、よって攻撃力は4000だ!」

「くっ……!! 攻撃は中止だ。私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 特殊召喚されたオシリスは再び墓地に送られる。

 だがこれでまたフィールドはがら空き。手札は5枚になるとは言え。3300と伏せカード1枚を越えなければいけない。

 どうするつもりだ……

 

「私のターン、ドロー!」

 

・ウィチタ

LP3500/手札5枚/デッキトップ『魔帝アングマール』

 

「私は500ライフポイントを支払い、『デーモンの宣告』の効果を発動。デッキの一番上のカード名を当てる事ができれば、そのカードを手札に加える事ができる」

 

 だが、デッキトップは見えている出来レースだ。

 確実に1枚のドローができる。

 

「私は『魔帝アングマール』を宣言し、手札に加える。手札の『SPYRAL-ダンディ』のモンスター効果を発動。相手のデッキの一番上のカードの種類を当てる事ができれば、こいつを特殊召喚し、相手フィールドの魔法・罠カードを破壊できる。魔法カードだ」

 

 古鷹のデッキトップは『ハーピィの羽根帚』。

 このターンを耐え凌げばウィチタのアドバンテージ減を破壊できるが……!

 

「ダンディを特殊召喚し、その伏せカードを破壊させてもらうぞ!」

「そんな……!」

 

 破壊されたのは『神風のバリア-エア・フォース』。相手の攻撃モンスターを全て手札に戻すカードか。ドライブを見せておいて油断させた所を……と考えたようだが、どうやら失敗したらしい。

 これで攻撃を邪魔するものはいなくなった。

 

「だが、まだ私のフィールドには3200のバルーチャがいる!」

「それでこの私を抑えられると思っているのなら、今すぐ海の藻屑となるがいい――! 既に私の勝利への道は貴様にも見えているはずだ!

 私はダンディを生贄に、魔帝アングマールを召喚! アングマールが生贄召喚に成功した時、墓地の魔法カードを除外する事で、同名カードを手札に加える。除外し加える魔法カードは『真実の名』! そしてこれを発動!」

 

 真実の名も、デッキトップを当てる事ができれば効果を適用できるカードだ!

 その効果とは――

 

「宣言するは『大欲な壺』! そして、これを手札に加え、真実の名はデッキから神を呼び寄せる! 出でよ”オシリスの天空竜”!!」

「攻撃力……4000」

「終わりだ――!! オシリスでバルーチャに攻撃、そしてアングマールのダイレクトアタック!!」

 

 

・古鷹

LP0

 

「負けちゃったか……ああ、加古、ごめんね。後は任せたよ――」

 

 消えていく古鷹の体は、他の何かを見る事すらなく消滅した。

 ソリッドビジョンも消え、異常な静けさが辺りを包み込む。

 

「さて、ハーミーズ殿、ジャマイカ。どうやらここへ初めて来たようだな。そして残念だが、ここから出てもらう訳にはいかない」

「――!! まさか!」

 

 ジャマイカが振り返る。

 だが時すでに遅し、扉は固く口を紡んでいた。開ける為のスイッチなど、どこにも見当たらない。

 閉じ込められた……

 

「なんの真似だウィチタ。ここはいったいなんなんだ」

「ようこそ! ここはバトルシティ。存分に戦い、そして存分に散れ。お前達はデュエリスト・ロワイヤルの参加者となった」

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