りえりーほんとすこなのだ
「デュエリスト・ロワイヤル……?」
巨大な街、それを取り囲むような壁。
壁は巨大な鉄の扉で仕切られ、中に入れば出られない。そんな蟻地獄に迷い込んだ私達は、ウィチタ曰くデュエリスト・ロワイヤルなるものの参加者となったと言う。
「どういう事か、説明してもらう」
「いいだろう、ついて来い二人とも。私の隠れ家に案内してやる」
ウィチタの後ろについて行きながら仰々しい街を歩く。
さっきの瓦礫の山に比べると、建造物がしっかりと形を残している。だが、中心に向かうにつれて大きくなっていく摩天楼。搭のように伸びたその先端は雲の先にまであるようだった。
そもそも、その建物とやらもそう呼ぶには少し憚られる代物だ。コンクリートで固められた武骨な箱物。およそインテリアの欠片もないただの中が空洞な硬い箱だ。ちゃんと扉と窓は着いていたので、建物である事は間違いないのだが……
「ウィチタ、歩きながらでもいい。できるだけ話してくれないか」
ジャマイカがウィチタに言った。
「仕方ない。焦るなとは言いたいが無理な話だろう。そうだなまずどこから話すか……私に本物か偽物かを聞かないのは、知らないだけなのか?」
「いいや、ファクターについては知っている」
「ふむ、なら話は早い。私達は消えない為に、この街で
ウィチタ曰く、この街にいる少女達は皆事態を理解しており、消滅しない為にその気があれば互いに
そうやって引き延ばし、解決を待つ者もいれば、積極的に生きる事を求める者もいる。
そんな混沌とした街がここなのだそうだ。
「何故オレ達を閉じ込める?」
「偽物を閉じ込める為だ。お前達が本物である事は私も理解している。そこは安心しろ」
「なるほど……」
「私達は、何もただ無為に殺し合っている訳ではない。重桜と鉄血を駆逐しつつ、外へ向けて交信を行っている」
そう――外。
恐らく日本と思われるこの場所から、私達の母港へと。
「芳しくないのだな……」
私の言葉にウィチタはらしくもなく、力なく頷いた。その背中からも苦心が見て取れる。
「まるでこの場所が、世界の全てであるかのように何も見えない。だが確かにこの外のどこかに生体反応がある。母港は確実に生きている」
暫く鉄の街を歩くと、変わらずコンクリートの箱の前にたどり着いた。だが少し生活感のある建前だ。窓からは明かりも漏れている。
「誰かいるのか」
「安心しろ。今の所の仲間だ」
中は外身と比べると圧倒的な生活感だった。
ちゃんと玄関はあるしカーペットは敷いてあるし床はフローリング。廊下はなくそのまま一つの建物が部屋そのものだったが、それにしてはまあまあの広さ。人が4人入っても余裕があるほどだ。
そして――
「あ……おかえりウィチタ。遅かったね」
「お前は、マサチューセッツ!」
その褐色肌に豊満な肉付きと白銀の髪、そして額の謎マークは一目見たら忘れない間違いなくマサチューセッツだ!
「お客さん……?」
「新しい参加者だ。よろしくしてくれ。私は茶でも淹れてくる。ロイヤルなのだから紅茶でいいな」
ロイヤルだから紅茶、という完全に固まったイメージなのは少し心外だがまあ紅茶でいい。
「ウィチタが自分で淹れてくれるのか。意外だな」
「私をなんだと思っている。大仰な事を言っているだけの木偶の棒ではない。マサチューセッツがそういう事をしないから、私からするしかないのだ」
まあ確かにそれはなんとなく分かる。
と、マサチューセッツが、自分が座っているソファーの横をとんとん叩いている。座れ、という事だろう。
「なら失礼する。ほら、ジャマイカも」
「ああ」
しかしやはり……大きいな。体も、胸も。
「二人はこれからどうするの……?」
唐突にマサチューセッツがそう訊いた。
いいや、タイミングとしては唐突ではあるが、この場での質問としては、私としても明確にしておきたい事なのでむしろありがたい。
「そうだな、ウィチタに協力してこの事態を何とかしたい」
「だって……ウィチタ」
キッチンのウィチタにマサチューセッツが声をかける。ウィチタがそれに答えるように私に言った。
「協力か。有難い……と言いたい所だがその申し出は断ろう」
「何故だ。人員は多い方がいいだろう?」
「分かるか。この状況において傍に置いておける者はそれこそ、真に心を許せる者のみだ。利害の一致などという薄い関係には簡単に亀裂が入る。ハーミーズ、お前はそれを体験して来なかったか?」
シムスの、私を見る表情が蘇るがすぐに首を振って振り払う。
「やはりな。それならば分かるはずだ。今はこの街を見て回れ、そして何度か戦えば分かる。その上でまだ私達に協力したいと言うのならその時は、その時で考えよう」
「ハーミーズ。オレもウィチタの言葉には賛成だ」
「そうだな。分かった。ありがとうウィチタ、マサチューセッツ。これからの目的ができた」
「それはよかった。ほら、紅茶だ」
体に染み渡るダージリンの香りを噛み締めながらこれからの事を思案する。
きっとまた私は誰かを手にかけるだろう。
その時は――その時は、まだ、どうすればいいのか分からない。
ただ、私ができる最善の行動は
「それにしても意外だな。ウィチタにとってマサチューセッツは真に心を許せるのか」
「それはねウィチタがぼくに――
「ん゛ん゛ん゛、マサチューセッツ少し黙っていろ」
「嫌だと言ったら?」
「肉を食べたくないのか」
「分かった……黙ってる」
うーむ……ますます想像できない。
二人はいったいどういう経緯でそこまでの関係になったんだ……?
「ハーミーズ、お前は何か勘違いしていないか?」
「何がだ?」
「まあいい。今日は泊っていけ。飯も出してやる。夜は雑魚寝だがな」