ニコラス・吹雪の声を担当されているM・A・Oさんは、『Z/X IGNITION』にてフィエリテの声を担当されていました。
ウィチタとマサチューセッツの部屋に泊まって一夜が明けた。
私の目を覚ましたのはどこからか響く爆発音だった。
「――――――」
なんとなく、心が疼くのを感じた。
誰かが
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「神のカード?」
調達(強奪)して来たという菓子パンで朝食をとっていると、ウィチタが私のデッキを指してこう言った。
『ハーミーズ殿、神のカードを持っているのか?』
確かに”ラーの翼神竜”を所持していたクリーブランドと戦いはしたが、アンティルールをしていた訳でもなく、何故ウィチタがそんな事を言い出したのかが分からない。
明太フランスパンを齧るウィチタは、”オシリスの天空竜”を取り出して見せた。
「神のカード――最上位の”ラーの翼神竜”を始めとした”オシリスの天空竜””オベリスクの巨神兵”からなる三枚のカード、これらは常に所有者が存在する。元の所有者が消えれば、その所有者に勝った者に録りつくようになっている。デッキを確認してみてくれ」
「あ、ああ……」
デッキケースを開ける――瞬間、黄金色の何かが頭の中に入り込んでくるのを感じた。
不死鳥の息遣い、確かに聞こえる命の鼓動。
私の指は最初から分かっていたように、数十枚のカードの中からラーを抜き出した。
「これは……」
「やはりな。なるほど、クリーブランドを倒したと聞いたが、やはりそうなっていたか。ちなみに残りの一枚、オベリスクはヘレナが持っている。この街のどこかにいるだろうな」
「このカードはいったいなんなんだ?」
「そこまでは分からん。どこから生まれ出でたのかすら、誰も分からない。ただその力は神そのものとしての力だけではない、と噂で聴いた。どういう意味かは分からんがな」
奇怪な文様のような文字で書かれたテキスト。
神々しい黄金の不死鳥。
やはり何度見てもかっこいいな……いやいや、そういう話ではない。どちらにせよ、今の私のデッキでラーは使えないだろう。カードには悪いが今は眠っていてもらおう。
と、いう話をウィチタにすると、
「そういう事なら朗報だ。明石がカードショップを開いている」
「なんだと!? 明石がカードショップを!? どこにあるんだそれはっ!!」
「お、落ち着けハーミーズ殿肩を持って頭を揺らすな……」
「すまない、久々の響きについ興奮してしまった」
しかしこの状況になっても商売をしている明石の商い根性には畏敬の念すら抱く。この戦いの渦中なのだ、カードの需要は極限まで高まっているだろう。実際に、私のテンションも今極限まで高まっている。
「一応地図を渡しておく。建物を見れば一目で分かるだろう。街を見回るついでに行ってみるといい」
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――と、いう訳で。
「ここか……」
でかでかと猫の顔の形をした電光掲示板が光る分かり易く明石のお店。武骨な建造物に比べるとここだけ異様に人工物染みていて逆に違和感だ。
とりあえず中に入ってみよう、と思ったが、さっきからジャマイカが静かだ。どうしたんだ?
「シナプスが休息を告げている……」
「そう言えばジャマイカは朝に弱いんだったな。髪もボサボサだぞ」
「心配するな。入ろう……オレも気になる」
「分かった、では――」
自動ドアが開いて行く。
ガラスの向こう側の世界に光が射していく――
「いらっしゃいませにゃー」
中はいたって普通、見慣れたカードショップの内装だった。
広めのデュエルスペースは勿論、ストレージもカードの種類、はては属性ごとに分けられていてとても分かり易い。いったいどこで仕入れてきたのかショーケースには一点の綻びもなくほぼ全てのカードが揃っているようだった。
「ハーミーズとジャマイカのここに来てたのかにゃ。よろしく見て行ってほしいにゃ」
「ああ、勿論そうさせてもらう。だが一つ訊きたい、お代は何を支払えばいいんだ? この状況で通貨は生きているのか?」
緑色の猫耳をぴこぴこさせながら不敵に笑う明石。どうやらただ事ではなさそうだ。いったい何を支払わせられるんだ……!?
「二人も知っての通り、
「デュエルエナジーか、なるほど分かったぞ」
「オレは全く分からないのだがハーミーズ、理解が早すぎないか?」
「大丈夫、こういうのは勢いで分かっておいた方がいい。それより早くカードを見よう!」
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何時間経っただろうか、まだ日も昇りかけだったのが、気が付けば昼を過ぎていた。
足が棒になりそうだ。
だがその分収穫もあった。これでいつ決闘が始まろうと即座にその場に対応できるだろう。
「大丈夫かジャマイカ」
「心配するな。デッキの運命は既に視えた」
いいデッキが組めそうだと言っているな。それはよかった。
さて、お腹が空いてくる頃だしサテンにでも――
「おっはよー! じゃないこんにちわー!」
「いらっしゃいませにゃ吹雪。今日も元気そうで何よりににゃ」
自動ドアが開き切るよりも早く入ってきたのは吹雪だった。
「おろ? ハーミーズにジャマイカじゃん。丁度良かった綾波見なかった? ずっと探してるんだけど、この街にいるって聞いて来てみたはいいけど全然見つからないし突然襲い掛かられるわで大変で……」
「ま、待ってくれ一気に言われても分からない」
隣でジャマイカが、さっきまでのハーミーズも似たようなものだったと言ったような気がしたが気のせいだろう。
「残念だが綾波は見ていない。私達も昨日ここに来たばかりなんだ」
「そっかーそれは残念。仕方ない! また探しに……あ、手伝ってくれてもいいんだよ?」
うん、どうせ今から街を回ろうとしていたところだ。これも何かの縁、吹雪について行ってみよう。
「分かった、折角だから吹雪の人探しを手伝おう。それでいいなジャマイカ」
「ああ。意義はない」
「ありがとー! まさかホントに手伝ってくれるとは思わなかったよ。じゃあさっそく行こう!」
店を出る直前、明石が言った。
「気を付けるにゃ、最近この辺りで駆逐艦が行方不明になる事件が起きているにゃ。決闘の痕跡もないからきっと物理的な誘拐にゃ」
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「駆逐艦を誘拐かぁ、私的にはアークロイヤルが真っ先に思い浮かんだけど」
「彼女は直接手を出せるような奴ではない。だが状況が状況だ、全くないとも言い切れないのも事実だ」
そもそも、アークロイヤルがこの街にいるのかどうかすらも怪しい。
彼女の事だから駆逐艦を守る為に奔走しまくってその噂が風に乗ってきてもおかしくはない。それとなくウィチタやマサチューセッツに話題を振ってみたが、アークロイヤルを見た事がある素振りはなかった。
それにしても誘拐とは、いったいなんの目的で。閉じ込めて
「ところで吹雪は何故綾波を探しているんだ?」
「あー……それは、ね。暁も電も雷も、他のみんなも負けて消えちゃったんだ。最後に私と綾波だけ残ったんだけどはぐれちゃってね。はぐれる前に喧嘩したから謝りたいんだ」
また、シムスの記憶が脳裏を過った。
こんな事、本当は考えたくはない。考えるべきではないのは分かっている。だが、もし、二度と会えなくなってしまうとすれば、そうなる前に会いたいと思う気持ちは誰に推し量れるものでもないだろう。
「あーダメダメ! 辛気臭いの禁止禁止! はい一番古い禁止カードでスピリットモンスター!」
「『八咫烏』! はっ、思わず答えてしまった」
吹雪は確かに笑っていたが、その笑顔は……
「っ、ハーミーズ、吹雪! あれを……!!」
ジャマイカが叫んだ。
その視線の先に待ち構えるようにして立っていたのは――飛龍。
目には闘志が、腕には
「ここから先には行かせない。通りたければぼくを倒して行け!」
「
私を遮るようにしてジャマイカが前に出た。
「待てハーミーズ、ここはオレにやらせてくれないか。あの時果たせなかった思い、少しでもいい、
その言葉から察した。
シェフィールドと戦ったのはこの飛龍か、飛龍と一緒にいた重桜か。飛龍の苦しむような表情がそれが事実なのだと告げていた。
「ぼくはただ天城大先輩の命に従うだけ。いいだろうジャマイカ、
「言われるまでもない――ッ! 行けハーミーズ、吹雪! ここはオレに任せろ!」
ただ首肯して走り出した。
背中の向こうからは、悲しみに満ちた声が響き渡る。
「「