遊☆戯☆王アズールレーン~记忆的幻觉~   作:ハンバート二世

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 フォックスハウンドの声を担当されている山岡ゆりさんは、『Lostorage incited WIXOSS』にて、トラップデッキを操るルリグ、あーやの声を担当されていました。


ターン4――その敵影は警鐘

 それはゲームであって遊びではない。

 負ければ死。

 

 それは如何なる戦いにおいても付き纏うプレッシャー。

 だが何故だろうか、決闘(デュエル)の中においては、『死』というプレッシャーが闘志を漲らせる基となる。

 アドレナリンが分泌され、己が限界を引き出す、そしてそれを破壊しようと躍起になる。

 

 しかしこれは戦いだ。

 負ければその時、今までの全てを失いこの世から消滅する。

 

「あれは――」

 

 サイレンの音を聞いて外に出ると、どうやら外で決闘が始まっているようだった。

 誰かが重桜と戦っている。

 凄まじい爆音が、遠く離れているはずのここにまで、まるで耳元かのように聞こえてくる。

 そして闇のゲームは破壊を具現化する。

 あの煙……そして炎は本物だ。

 

「あの方向は、港のど正面ではないか!」

 

 アークロイヤルが驚きの色を見せる。

 それもそのはずだろう、敵は真正面から攻めてきた。

 それは勇ましいのかはたまた無謀なのか分からない。

 

 

 港――学園が存在する門の真正面。

 敵陣の目の前に敵は現れた。

 肺を焼かんとする煙に阻まれて、よく見えない。

 

「誰かいないか! くそっ、何が目的だ……?

 

 

 突然吹き荒れた強風によって、炎がかき消される。

 

 その中から現れたのは、炎の翼を羽ばたかせる神獣の影――。

 そして、相対する伊勢とネバダがいた。

 

 

・伊勢

LP1000/手札2枚/デッキ28枚

フィールド:炎王獣ガネーシャ

 

・ネバダ

LP300/手札3枚/デッキ20枚

フィールド:魔弾の射手カスパール、魔弾の射手スター

 

 

「『炎王獣ガネーシャ』でカスパールを攻撃!! 終わりだァ!!」

「くっ……手札から罠カード、『魔弾-デスペラード』を、発動! ガネーシャを破壊する!」

 

 魔弾は手札からの罠カード発動を得意とするデッキ。炎王は毎ターンのモンスター破壊を得意とするデッキだが、魔弾には破壊を無効化できる罠があったはず。それなのにここまで圧されているとは……!

 

「ガネーシャが破壊された事で、墓地の『炎王獣バロン』を特殊召喚だ! 再び攻撃!」

「だがこちらも、カスパールの効果で墓地の『魔弾クロス・ドミネーター』を手札に加え発動させてもらう。これでバロンの攻撃力は0!!」

 

 カスパールの攻撃力は1200、攻撃力0のバロンとの戦闘が通れば、ネバダの勝利だが、

 

「ネバダ、もっとアンタと戦いたかったよ。アンタはあたしの心を久々に燃やしてくれた。だがそれもこれで終わりだ。

 速攻魔法『炎王炎環』」

「なん……だと!?」

 

「これにより、あたしのフィールドの炎属性モンスターを破壊し、墓地の炎属性モンスターを蘇生する!! バロンを破壊し、蘇れ――『炎王神獣ガルドニクス』!!」

 

 ガルドニクスの攻撃力は2700――デスペラード、クロス・ドミネーターは1ターンに1度しか使えない。

 

「アークロイヤル、このままではネバダが!」

「……決闘の外では、私達にはどうする事もできない」

 

 

「『炎王神獣』ガルドニクス――カスパールを攻撃だ!!」

「ガっ、あああああああ!!」

 

 

・ネバダ

LP0

 

 

 肌を焼く爆炎は空気を膨張させ凄まじい爆風を巻き起こした。

 それを間近で受けたネバダは数メートル以上、アスファルトの上を生身でバウンドする。

 倒れたネバダの身体は足元から消滅していく。

 完全にその体は消えてなくなった。

 ”カケラ”が蒼い海に溶け出して、消えてなくなっていく。

 

 ――こんな光景を、今まで何度見ただろうか。

 そしてその度に、心の奥底が黒ずんでいくのを感じた。

 こんなものを、二度と見たくないと何度思ったか。

 そしてその度に、心が焦燥で埋め尽くされていくのを感じた。

 

「伊勢……私とデュエルだ」

「待てハーミーズ早まるな! 奴は強い、今ここでお前を失う訳にはいかないんだ!」

 

 分かる。分かるさ。

 だが涙で芽は出ない。

 

「次はアンタが相手? いいねぇ、腕が温まってきた所だ……喜んで相手を、と言いたい所だが残念ながらそうはいかないんだ」

「どういう事だ!」

 

 伊勢は低く笑うと、虚空から球状の機械のような何かを取り出した。

 近未来的なソレは蛍光の緑色に怪しく光を灯している。

 

「あたしゃまどろっこしい事は嫌いなんだけどね、これも仕事なんだよ。アンタとの決闘はお預けだよ」

「何をす――ハーミーズ!!」

「な――」

 

 アークロイヤルの叫びと重なって、その球体は目を潰すかのような強烈な光を放ち始めた。

 それは本当に光なのか? 衝撃は地を捲り上げ轟音は音をかき消した。

 世界が塗り替えられていくかのように、全てが光に包まれていく――目を開けていられない。

 

 そしてその光は、意識さえも吹き飛ばした。

 

 

 

 

「――っ!! いったいどうなったんだ!?」

 

 あれは爆弾か何かだったのだろうか、だがそれにしては……いや、今は周囲の状況確認が先だ。

 ここは……どこだ?

 

「廃墟……?」

 

 骨組みが剥き出しになったり、切断されたような痕のあるビル群が並ぶ廃墟。

 足元は瓦礫だらけで前を向いて歩けないほどだ。

 もしやあの爆発? であの一帯がそうなったのかと考えたが、どう見ても母港の建造物の並びと一致しない。どこか都会の街の中のようだ。

 それほど遠くに飛ばされたとしても、それはそれで私の体が無事ではない……ああいや、決闘者なら大丈夫か。

 それはともかく、アークロイヤル達を探さないと。

 

「アークロイヤル! ロングアイランド! 誰かいないか!?」

 

 鉄筋コンクリートに反響する自分の声が聞こえるばかりで、動物の足音すらしない。

 雲の動く音さえ聞こえるようだ。

 そもそも、こんな場所存在するのか? 見るからに多くのビルが立ち並んで、つまり人が多くいたのであろう場所がこのように廃墟になっている。

 これも重桜や鉄血による侵略なのか……?

 考えども答えは出ない。とにかく何か見つかるものはないかと瓦礫の山を歩き続ける。

 だが、見えるのは延々と続く同じような街並みだけ。時折どてっぱらに風穴が空いたビルの間を抜ける風が吹き抜けるくらい。

 もしかすると、世界全てがこうなってしまったのかもしれないという邪推が思考を支配しようとしてくる。

 

「あり得ない……そんな事があってたまるか」

 

 早く、アークロイヤル達に会わないと――そう、思っていた矢先、物音が聞こえた。

 カランカランと、中空の缶が転がるような音。案の定、それは空の缶だった。

 

「ッ――」

 

 背後に感じた気配に振り向き、振り下ろされた決闘盤(デュエルディスク)をディスクで受け止めた。

 甲高い音と共に火花が散る。

 

「いい反射神経だね……!!」

「お前は――フォックスハウンド!? どうしてこんな!」

 

 フォックスハウンドは私と面識がある同じロイヤルの仲間のはずだ。

 だと言うのに、まるで敵と相対した時のように距離を取り、ディスクを構えている。

 

「『偽物』め……ここで倒してやる!」

「ま、待ってくれ、何の話だ? 私は『本物』だ!」

「その答えは決闘(デュエル)をすれば分かる」

「なるほど……仕方ない、ならば決闘(デュエル)だ!!」

 

 『本物』、『偽物』という話はアークロイヤルとした話と似ている。

 セイレーンの技術と関係があるという事だ。

 

「ぼくの先行だ!」

 

 

・フォックスハウンド

LP4000/手札5枚/デッキ35枚

 

・ハーミーズ

LP4000/手札5枚/デッキ35枚

 

 

「ぼくはカードを5枚伏せて、ターンエンド!」

「手札を全てセットだと!?」

 

 そんな大胆な事ができるデッキは限られてくるが……いったい何をするつもりだ!?

 

「さ、キミのターンだよ」

「フォックスハウンド教えてくれ。この廃墟は、何があったんだ」

 

 フォックスハウンドの表情は暗く重い。

 そして少し、訝しむような面持ちだった。

 

「もしかしてキミは、何も知らないのかい?」

「なんだと……?」

「あれから1年経ったって言うのに」

 

 1年だと――!?

 

「あれからとは、まさか伊勢が攻めてきた時の――」

「そう。あれから1年。ぼく達の世界は変わってしまった。あの光はぼく達を知らない場所へ飛ばしたんだ。他の皆がどうなったかは分からない。でも少なくとも、ぼくとジャマイカ、シムス、クリーブランド、グローウォーム、夕張がこの廃墟に飛ばされてる。そして、ぼく達の仲間の姿をした『偽物』が襲いかかってきたんだ」

 

 それで私を偽物だと言って……

 

「なら私は、1年間眠っていたと……?」

「それが怪しいから疑っているんだ。さあ、決闘を続けよう。キミのターンだ!」

 

 こうなっては本当にやるしかない。

 分からない事も山積みだが、今は目の前の決闘に集中しなければ。

 フォックスハウンドの実力は未知数。だが少なくとも、5枚の伏せカードがブラフとは思えない。

 まずは1枚でもあの伏せを捲る――!

 

「私のターン、ドロー!」

 

 

・ハーミーズ

LP4000/手札6枚/デッキ34枚

 

 

 これは――よし、これならあの伏せカードを――!

 

「私は魔法(マジック)カード、『ハーピィの羽根帚』を発動! これで相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!」

「甘いっ! 永続(トラップ)発動! 『王宮の勅命』! これで、このカードが存在する限り全ての魔法効果は無効化される! 更に『強欲な瓶』を発動、これで1枚ドローだ!」

 

 勅命か――これで『RUM』を使った戦法は取れなくなった。

 ブレイクソードの効果で破壊するにしても、残りの伏せカードがネックになる。あれらが何かが分からない限り、迂闊には動けない。

 ならば、

 

「手札から『幻影騎士団ラギッドグローブ』を通常召喚、そして『幻影騎士団サイレントブーツ』を特殊召喚! サイレントブーツは自分の場に『幻影騎士団』がいる場合、手札から特殊召喚できる」

「レベル3のモンスターが、2体――!」

「私はレベル3のラギッドグローブとサイレントブーツでオーバーレイ! 現れろ、ランク3! 『幻影騎士団ブレイクソード』!」

 

 さあ、割られたくないカードがあるなら、ブレイクソードを除去するはずだ。

 破壊による除去ならばブレイクソードの効果で幻影騎士団を蘇生できる。

 

「そうか、このままじゃぼくの伏せカードが割られちゃう訳だね。だったらこれだ! 罠発動! 『バージェストマ・ディノミスクス』!」

「『バージェストマ』だと!?」

「その効果により、ブレイクソードを除外して、ボクの手札を1枚捨てるよ!」

 

 バージェストマは罠カードがモンスターとして特殊召喚されるデッキ。

 偶然にも似たようなデッキだが、ディノミスクスの除外は幻影騎士団にとっては非常に辛い。

 

「だが私は――

「待った! ディノミスクスに対するチェーンとして永続罠『王宮の鉄壁』を発動! これで、お互いにカードを除外する事はできなくなる!」

「何――!?」

「更に、罠カードが発動した事で墓地の『バージェストマ・ディノミスクス』の効果を発動! モンスターとして特殊召喚する!」

 

 

・バージェストマ・ディノミスクス(守備表示)

1200/0

 

 

 これでは、幻影騎士団の墓地から除外してカードをサーチする効果が使えない。

 同時に相手もディノミスクスを使えなくなったが、そうなっても問題ないようなデッキになっているのだろう。

 事実、モンスターとして特殊召喚された『バージェストマ』はフィールドから離れる場合に除外される。それを防ぐ目的で入れたのだ。

 

「狙った獲物は絶対に逃がさない。じわじわといかせてもらうよ……!」

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