遊☆戯☆王アズールレーン~记忆的幻觉~   作:ハンバート二世

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 ジャマイカの声を担当されている三瓶由布子さんは、遊☆戯☆王ZEXALにて、天城ハルトの声を担当されていました――ハルト? ハルト……ハルトォォォォォォォ!!


ターン6――その思いは穢れ

「ここが……ぼく達の秘密基地、いやアジトかな? うーん、本拠地だとちょっと大きいし……まあとにかく入ってよ」

「そう言う割には大きいな」

 

 フォックスハウンドに案内されて入ったのは、瓦礫の街の中で一際目立つ搭だ。

 継ぎはぎの板や鉄板で外を補強しているところを見るに、フォックスハウンド達がここを拠点としてそう短くはないのだろう。

 搭の鉄骨は赤色で、頂上を見上げようとすると、途中でぽっきり折れていた。本当はもっと高い搭だったはずだ。

 無骨な建物の内装はいたっておしゃれ。そこは女の子なのだから当たり前か。

 上に登る為の階段、上から布を被せたソファ、机と椅子が置いてあって明かりもある。二階部分には二段ベッドが数個置かれており、小綺麗で住み心地が良さそうな場所だ。

 

「帰ったかフォックスハウンド。どうだった――とは、訊くまでもないみたいだな」

 

 椅子にもソファにも座らず、地べたにブルーシートを広げて何かやっていたのは夕張。

 相変わらず機械いじりでもしているようだ。

 

「この搭の補強や内装も全部、夕張がやってくれたんだ。いやぁ言い方は悪いけど夕張がいるとすごく便利だよ」

「ふふふ、私に言わせればこの程度お茶の子さいさいだ。勿論、フォックスハウンド達が手伝ってくれたおかげも大きいがな」

「ま、とりあえず座りなよハーミーズ。疲れたでしょ? お茶でも入れるからゆっくりしてて」

「ありがとう」

 

 ソファは存外にふかふかだった。

 執務室にあった高いソファと同じくらいかそれ以上だ。

 ぱっと見渡すと、やはり机や椅子を始めとした備品は妙に綺麗だ。

 

「気になったか? これも全部私がやったんだ。手先が器用だからな。機械以外も得意だ」

「すごいな……キッチンまであるのか。水はどこから来てるんだ?」

「地上はこうでも地下はダメージを受けていないようだったから、近くの建物から引っ張ってきた。電気は自家発電だ。屋上に太陽電池パネルを置いたりしている。これだけでも半年以上は保っているのだから自分でも驚きだ」

 

 屋上があるのか。後で行ってみよう。

 

「食糧はどうしているんだ?」

「住民がごっそりいなくなっていたのが幸いした。無人のコンビニやスーパーから、保存できるものをかっぱらってきた。今もグローウォーム達が調達に行っている」

 

 待て、今なんと言った?

 住民がごっそりいなくなっていた?

 

「人一人もいないという事か」

「そうだな。そういう事になるな。私達がこの場所に飛ばされた時には街は瓦礫の山で、人が一切いない。死体の一つすら落ちていないのはおかしいと思い探してみたのだが見る影すらなかった。血痕すらないのはどう考えても異常だ」

 

 となると考えられるのは、先にこの街から人間が消えた後で街が崩壊し、私達がここに来た?

 ならば伊勢の――レッドアクシズの狙いはなんだ? 私達と敵対しているとは言え、人間への直接的な侵略行為は行わなかった。それが今になって突然こんな、しかも無人街に私達を置き去りにする意味はなんだ?

 私達の偽物を差し向ける意味は?

 

 不可解な事が多すぎる。

 

「考えすぎるのも体に毒だよ。はい、紅茶でよかったよね」

「ありがとうフォックスハウンド。これは……?」

「メロンパン。いっぱいあったから――

「待て! それは私が大切に貯蓄した秘蔵のメロンパンだ! そう易々と消費していいものではない!」

 

 鬼気迫る表情でフォックスハウンドに掴みかかろうとする夕張はひらりと避ける。まるで動物でも釣るみたいにメロンパンを上に掲げて遊んでいる。

 

「あんなに貯めてたらカビ生えちゃうよ。食糧だって無限にある訳じゃないんだよ」

「むむむ……仕方がない。今日のところは許そう。だが次からは私に断って食べてくれ」

「はいはい。じゃあハーミーズ」

 

 あそこまで言われると食べるのを少し憚られるが、午後の腹の虫がそろそろ間食が食べたいと急かしているので抗えない。

 袋を開けると、甘い香りが鼻孔をくすぐる。

 

「それは少し高いやつだ。味わって食べてくれ」

「いただきます。はむっ……うん、美味いな。もう一つ食べたいくらいだ……」

「うぐぐ、それは……あ、そうだ! 屋上にジャマイカがいるぞ。会いに行ってみたらどうだ!」

「なにそのRPG風の唐突な提案は。でもまあ、彼女いっつも一人で黄昏てるし、会ってあげてよ。色々あって落ち込んでる節もあるから」

「色々……?」

 

 その色々とは、訊くまでもない事か。

 私の感覚でここに来る直前に見たものを思い出し、胸の中が煮えるように熱くなる。あれが、二度や三度ならず起きているのだ。

 

 

 およそ五階分くらい登ったところで建物の外から漏れる明かりが見えた。

 そこから外に出ると、屋上と言うよりも広めのテラスのような場所があった。

 黄昏の果てが空を染める刻、赤の色彩が屋上を照らし出す。

 そこに一人、空を仰いで佇む人影があった。テラスの柵に肘を乗せて彼女に倣って隣に立つと、彼女は突然口を開いた。

 

「何故空は、何度も表情を変えるのだろうな」

「空は自分勝手だからな。どれだけ聞き上手でも、すぐに興味を失ってどこかへ行ってしまう。私は空と会話するのをいつしかやめていた」

「…………………………驚いたな、まさか――」

 

 今ボソッと、「驚いたな、まさか真面目に答えるとは思わなかった」と言わなかったか?

 ジャマイカが特殊な世界を構築していると知って乗った私が馬鹿みたいじゃないか!

 そしてかなり気まずい。

 

「……オレは、そんな空にしか頼る事ができなかった。いや、ちょっと待ってくれ。少し違うな。空にしか……あ、今笑ったな?」

「心配して損したぞ。毎日この時間、屋上で夕日を眺めていると聞いたから来てみたものを」

「……心配されるような事は何もない。オレは戦う為に生まれた。その中で失ったモノを、鑑みる事はない」

 

 本当は、もっと大勢いたらしい。

 この場所に辿り着いたものはフォックスハウンド達だけではなかった。事実、もっと多くいた痕跡があの場所からは感じられた。

 シェフィールドは、ジャマイカを庇って決闘(デュエル)をして負けた。

 それをジャマイカは、ずっと心に背負っているのではないか?

 

 と、ジャマイカがデッキを取り出した。

 

「決闘でもしながら話すか。マットなら持っている」

「それはいいな。最近立ち決闘しかしていなかったような気もするからな」

 

 床にシートを敷いて、マットの上にカードを並べる。

 ふといつかの、指揮官とやっていた決闘を思い出す。

 あの時はやる相手が指揮官しかいなかったのだったな。今は……

 

 ジャンケンの結果、勝ったのはジャマイカだ。

 

「オレの先行だ。『銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)』の効果で手札の光属性モンスターを捨てて――」

 

 ジャマイカは元からこうして夕焼けを見る癖があったようで、それは今も変わらない事らしい。

 ただやはり、言葉の端々からは不安定な部分が見え隠れしていた。

 

「フォックス達と仲が悪い訳じゃない。ただ、抑える事ができなくなるんじゃないかと、自分自身を恐ろしく感じる時がある。もし私の中のこれを『解放』してしまえば、彼女達を傷付けてしまうのではないかと――あ、ブレイクソードの効果は『銀河眼の光子卿(ギャラクシーアイズ・フォトンロード)の効果で無効だ」

「破壊はしないのか?」

「する訳ないだろ。使った素材は『銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)』だ。破壊はしない」

「仕方ない。3伏せでエンドだ」

 

 心の中に溜まった淀みをそのままに、抑え込もうとしていた。

 彼女の言葉が意味するところは恐らく、復讐心による暴走がみんなを結果的に傷付けてしまうのではないかと危惧している。

 

「辛いなら頼ってもいいんだ。その為の集団だ。一人で抱え込んでもいい事は何もないぞ。なんなら私がなんでも話を聞いてあげる事もできるぞ。あ、銀河眼は霧剣で止める」

「流石は大先輩だ。心に余裕があるのは羨ましい。オレだってそうしたいのは山々さ。だけど、この穢れた領域は誰にも明け渡したくない。この思いは私だけの物として抱えていたい。光子卿でブレソを攻撃。蘇生効果は無効だ。メイン2に光子卿に重ねてFAフォトン。効果で伏せ破壊」

「それなら無理にとは言わない。だが、それで本当に暴走しては意味がないぞ。ソレを力に変える事が何より大切だ。墓地の幻影剣を除外してブレソを蘇生。ラウンチでダリベにランクアップ」

「ありがとう……これほど言葉を交わしたのは久方ぶりだ。それだけでも十二分に、オレにとっては心が安らぐ。『反射光子流(フォトン・ライジング・ストリーム)』でレクイエムの攻撃力分、FAの攻撃力を上げる」

 

 そう言ったジャマイカの表情は心なしか和らいだ、ような気がしたが、気のせいでない事を祈る。

 さて、そろそろ日も落ちてきた、買い出し(強奪)に行っているというグローウォーム達も戻ってくる頃合いだろう。

 

「幻影剣2枚をレクイエムに装備して8600、これで詰みだな」

「負けたか……流石はハーミーズだ。デッキの補強が必要だな

 

 こんなにカードの事で話せたのも、指揮官以外では初めてだった。

 この点だけについては、この世界に感謝したい。

 決闘が戦いの道具となるのは心苦しいが、こんなにも決闘ができるなんて夢のような事だ。

 ジャマイカは、前にいた世界でも興味がありそうな雰囲気だったような記憶があるが……

 

「二人ともー、グローウォーム達が帰ってきたからそろそろ降りてきてー! ご飯だよー!」

「おっと、そろそろ降りよう。フォックスが呼んでる」

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