ボッチでもゆるいキャンプがしたい   作:蚊取りG

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初めまして蚊取りGです。
初投稿となるので至らない点があるかもしれませんが、お手柔らかにお願いします。

誤字脱字などあったら感想等で指摘していただければ幸いです。


プロローグはカフェオレ

秋の深まりも頂点を極めようかという頃、山梨の冷たい空気を切り裂きながら俺は一人、孤独にバイクを走らせていた。

 

親父の転勤で生まれ育った北海道を離れ、山梨に引っ越してきてから幾年月。

最初は文句もあったものだが、何のことはない。

住めば都とはよく言ったもので、半年もすればすっかり山梨も気に入ってしまった。

 

なんと言っても富士山の存在がでかい。

 

太古から日本の霊峰として名高い富士の雄大さを全身で感じていれば、ちょっとした生活のいざこざも悲しみも何のその、全て露と消えていくかのようだ。

 

決して、意気揚々と新しい友人を作ろうとするも初対面の話しかけ方がわからず途方に暮れている内にすぐに固定のグループができてしまい、完全に孤立した俺は、教室の片隅で一人寂しく本を読んでいるのが悲しいなんて思っている訳ではない。決してない。

 

実際いじめに合っている訳でもないし、独りでのんびりするのが好きな俺は、今の境遇をみじめだとは思わないし、別段文句もない。

 

だが現実とは非情なもので、そんな俺にやすやすとその鋭い刃を突き刺してくる。授業でグループを作らなければならない時等がそれだ、一体何度俺一人だけあまり、先生や人数的にあぶれていた人とグループを組まされたことか・・・

 

その時の相手のなんとも言えない表情を思い出すと申し訳ない思いになってしまう。ごめんね!佐藤君!俺なんかと組むことになって!

 

そんなこんなで日頃のストレスがたまった週末は、俺は決まって一人バイクを走らせる。

 

夏に大型バイクに乗り換えた親父の御下がりのバイクを、同じく夏に二輪免許を取得した俺が譲り受け、乗り回しているのだ。

 

だが、今日はただのツーリングではない。いつかやろうと少しずつバイクをカスタムし、遂に準備が完了したのだ。ボッチ遊びの最終形の一角を成す遊び、そう、ソロキャンプである。

 

親父が山に入ることの多い仕事という事もあり、小さい頃から親父に親父の同僚が主催するキャンプによく連れていかれたもので、今となっては完全にキャンプが趣味になってしまった。

 

そんなキャンプ好きの俺が、日本でも有数のキャンプ地として名高い富士五湖を有する山梨に住んでいてキャンプをしないわけにはいかなかった。

 

しかし現実は非情である!

俺が高校受験で忙しくなった去年。家族でキャンプに行くこともなくなり、親父の転勤が決まった事がきっかけで母の提案で大半のキャンプ道具は両親の友人達に譲ってしまい残っていないのだ!

 

 

寝袋等何かと便利な道具だけは残っているが、この残った道具もなかなかの曲者で、まだキャンプ道具の技術が乏しかった時代に作られた道具ということもあり、とても大きく嵩張るのだ・・・

 

これではとてもソロでキャンプ等できるわけがない。

 

一度大きなリュックを背負ってキャンプを強行してみたこともあるが、北海道育ちの俺にとって山梨の夏は暑すぎた。ただでさえでかくて重い荷物を背負って汗だくになってたどり着いたキャンプ場で、予想外な込み具合に酔ってしまい。ほとんど楽しむ事ができなかった。挙句の果て、翌日凄まじい肩の痛みに悩まされる羽目になり、それからキャンプは一切していない。

 

それでも俺は諦めなかった。目標を人の減るオフシーズンに定め、こつこつと準備を進めてきた。北海道の大半のキャンプ場はオフシーズンになると閉鎖してしまう。

何故なら寒すぎる上に管理も難しいためである。

 

しかし山梨は違う!人気のキャンプ場も数多く点在し、雪も降るには降るが北海道ほど早く降る訳でもなく気温もそこまで低くない。そのためオフシーズンになってもキャンプができるのだ!

 

そんなこんなで記念すべき初ソロキャンプ、行く場所は悩んだ。悩んだ末、そんなに無理をしない事にして近すぎず遠すぎない本栖湖湖畔のキャンプ場に決めたのだ。

 

「ふ~♪素晴らしきかな本栖湖!奥に見える富士山がまた素晴らしい!」

 

絶景を堪能するのもつかの間、尿意が俺を襲う。

人間の体は冷えると本来汗で発散される水分が体内に残り、血管も委縮して体内の血液量が増え、結果体の水分量が増える。

さらに筋肉が萎縮することで尿を貯める容量も減るためトイレが近くなるのである。

 

時間も14時を軽く過ぎた頃、時間はたっぷりあるため受付前にトイレによることにしたのだが―――

 

「なんだ・・・あれ・・・」

 

トイレの前に何かがいた。近づいてみると人が寝ていた。

Why?何故?こんな季節に?風邪ひくぞ?

 

しかもよく見ると女の子ではないか!年齢は俺と同じか下くらいか?ピンクの髪を後ろで縛りピンクに紅色のチェックの入ったカーディガン、淡いピンクのスカートと全体的にピンクな服装の女の子が・・・涎を垂らして気持ちよさそうにいびきをかいていた―――

 

これは起こすべきか?

だが待ってほしい!もしここで話しかけ目が覚めた女性に、「きゃー変態!痴漢!強姦魔!」等と暴れられたら社会的に死ぬ!そんなことになったらついでに物理的にも死んでしまう気がする!

 

いかん!そんなリスクを取ることはできない!

 

仕方がないここはそっとしておく事にしよう、すまない名も知らぬ少女よ。風邪を引いても恨むなら昨今の社会情勢を恨んでくれ。いやそもそもこんな処で眠っているのが悪いのでは?

 

管理棟で受付に名前を記入する。

 

「山木 岳広・・・と」

 

記入が終わった処で管理人さんがキャンプ場の説明をしてくれた。

 

「チェックアウトは明日、朝10時。薪は林の中の物を自由に使ってください」

 

ほう、直火ができるだけでなく、材料も現地調達でいいのか・・・このキャンプ場中々いいぞ!

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

管理人さんにお礼を言って管理棟を後にする。

これは中々楽しいキャンプになりそうだ。

 

サイトに入るとやはりオフシーズン、ほとんど人がいないからガラガラだ。

適当に心地よさそうなスペースを探して手早く設営を終わらせる。

 

ふむ、久しぶりに設営したから少し時間がかかったが結構覚えてるものだな・・・

 

調理用のテーブルを出してとりあえずお湯を沸かしてカフェオレを造る。

 

深めに焙煎したコーヒー豆を通常のコーヒーよりも多く用意し、細かく引きましょう。

こうすることで濃くコーヒーを抽出することができ、牛乳で割ってもコーヒーの味をしっかりと楽しむ事が出来ます。

 

次にコップにドリッパーを乗せ、フィルターのつなぎ目を折りドリッパーにセットしましょう。

セットしたフィルターに引いたコーヒー粉を入れトントンと軽くドリッパーを叩いて粉をなるベく平らにしておきます。

 

沸騰したお湯をそのまま入れると雑味が出てしまうため、お湯が沸騰したら火から離して冷まし、代わりに牛乳を弱火にかけておきます。尚、おいしいコーヒーの温度は約90度と言われています。

 

少しだけ冷ましたお湯を少量、中心から外側にのの字を描くようにコーヒー粉に注ぎコーヒーを蒸らしましょう。

 

2~3分程蒸らしたら先ほどよりも多く中心から外側にのの字を描くように入れましょう。

 

恐らくこれで一杯分のコーヒーは入れることができると思いますが、コップが大きく入り切っていない場合は同じ手順で先ほどよりも少ないお湯を注ぎましょう。

 

コーヒーが基準値に達したら、コーヒー豆に入っているお湯はそのまま豆ごとごみ袋に捨てましょう。全部抽出してしまうと雑味まで抽出してしまうのを防ぐためです。

 

コッヘルで温めておいた牛乳が沸騰する直前になったらコーヒーをコッヘルに入れてしまい一緒に温め、カフェオレが沸騰する前に火を止め、完成です。

 

うむ・・・素晴らしきかな本栖湖。

千円札の絵柄になるだけのことはある素晴らしき絶景!

それを眺めながら飲むカフェオレのなんと美味しきことか・・・来てよかった!

 

ふと回りを見るとどうやら御隣さんは女性のようだ。

女性独りでのキャンプとは珍しい、というか初めて見た・・・

 

いるんだな、都市伝説だと思ってた。

しかし小さい人だ、中学生くらいかな?

青みのかかった長髪を頭の天辺で団子にしている、あれどうやって結ってるんだ?

クリーム色に薄茶色のチェック柄に所々花の模様が描かれた大きなカーディガンを羽織り、布でできたアウトドアチェアに深々と座り読書をしている。よく見るとキャンプ道具も中々いい物を持っているようでうらやましい。

 

興味は出るがあまりじろじろ見るのはマナー違反。

林で薪を集めて焚火を楽しむ事にしよう。

 

そんなこんなでのんびりしていると辺りはすっかり暗くなり、風で揺れる草木のざわめきと、本栖湖の水が風で煽られ砂浜に打ち付ける音だけが、心地よい音色を奏でていた。

 

「さて、そろそろ夕飯にするか・・・だがその前にトイレだな」

 

事前に用意していたランタンの灯りを頼りに、キャンプ場の入り口に向かうが、夜の暗さに目が慣れたのと、満月のため、思った以上に明るかった。

 

「これならランタン灯けなくても歩けるな、電池も節約したいし。」

 

この判断が間違っていた事を、俺はすぐに思い知る事になった―――

 

 

 

坂を登ってチェーンを超えようとした処で前から何かが向かって来るのが見えた。

 

「何だ?大きさ的に人か?まさか幽霊じゃないだろうな?」

 

人影は二つ、まさか幽霊かと思い灯りを付けずにしばらく観察していたのが間違いだった。

その二つの人影はみるみる大きくなりそのままチェーンを飛び越えようとして・・・そのまま俺にダイブしてきてしまった!

 

「ぐあ!」「おぶ!」「えふ!」

 

三者三様の声を出し俺は二つの人影の下敷きにされてしまった。

 

これが俺こと山木岳広と志摩りん、各務原なでしこ。そして後に参加する野クルこと野外活動サークルとの衝撃的な出会いとなるのだった―――

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