漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話   作:erif tellab

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ダグバが数万人規模のジェノサイドをして初めて、自衛隊出動が検討されるらしい。相手は日本在住の古代民族だから、防衛ではなくて災害(?)出動になるのは仕方ないね。


ナム豆乱れる時、北斗フーン分けると聞く

  ゴに昇格した後、紆余曲折あってゲリザキバスゲゲルの順番を一番最後にしてもらった。バルバは渋っていたが、パリパリの焼き立て野菜餃子を献上したら容易く頷いてくれた。

  しかし、これで一先ず安心できると思っていた矢先、恐れていた事態が発生する。不良娘のザザルと、アイドルみたいに容姿端麗な少女のゲラグが野菜餃子に興味を示してきたのだった。

 

「なんだこれ? そんなに美味いのか?」

 

「これって焼いただけじゃん。しかも片っ方だけだし」

 

  いくら単純に不思議がっても、相手はゴのグロンギ。今すぐ逃げたい衝動に駆られるが、後先を穏便に済ませるなら堪え忍ぶしかなかった。

 

「あ、待って。たからないで。数はそんなにないから、せめて均等に――」

 

「新しく作ればいいでしょう? ここで」

 

  それでも必死に彼女たちとの接触を最小限にしようと努めていると、横から男性のそんな言葉が間に入ってくる。

  突如として提案を挟んできた男性の名はゴ・ライオ・ダ。現代では人間社会にどっぷり潜んでから計画性なゲゲルを始める男に、抜け目はなかった。逃走の一手が打ちづらくなる。

 

「ちっ! 得るや否やぁぁ!」

 

  おかげさまで、この場にいるゴたち全員分の調理をする羽目になった。メビオも手伝ってくれたので、調理時間は大きく削減できた。

  その際に必要な材料が足りない問題が自然と出たが、普通に自宅まで取りに行って解決した。どんなに距離があっても、怪人態で走っていけば造作もない。

  そうして焼き上がった野菜餃子をゴの皆さんは、ぶつくさと小言を言いながらもモグモグ食べていく。とにかく、舌鼓を打ってもらえるようで助かった。

  なお、ガドル閣下が野菜餃子を黙々と口にする姿を見守るのが、とても怖くて実に辛かった。ふと視線を動かしてみると、何やら先ほどから蔑んでくるゲラグにキレたメビオが、傘で彼女にアバンストラッシュを決めるのを見てしまうし、なんて日なのだろうか。

 

「ズのクセに生意気なんですけど、コイツ。クラゲ毒決めっぞ、コラ」

 

「次はぶらっでぃーすくらいどを掛けようか? ぺがさす流星拳でもいいぞ?」

 

「おいコラ! 閣下の御前だぞ! 喧嘩するな!」

 

  一触即発の雰囲気を醸し出す二人を俺は止めに入る。蜂蜜シロップのかき氷を渡せば、彼女たちはあっさり仲直りをしてくれた。まさか、モーフィングパワーの応用でヒャドが使えるとは思わなんだ。

  かき氷の未知の食感と味に触れた二人は、ものすごい勢いで食べていく。やがて頭が痛くなったのか、おもむろに額を抑える。微笑ましい光景だ。

  このように喧嘩が終息するのも束の間、後は無事に帰るだけだと呑気に構えていたらバベルに絡まれた。

 

「なるほど。ガミオが変わっているというのは本当のようだな。一つ手合わせ願おうか」

 

「へ? あの、ちょっと――」

 

「ドルド、審判を頼めるか?」

 

「応じよう」

 

「う、嘘だそんな事!!」

 

  バッファロー怪人たるバベルは、その怪力で以て俺を引き摺っていく。審判役を買って出たラ・ドルド・グも無言を貫き、何も助け船を出してくれない。

  そうこうしている内に、適当な広場で殺し厳禁の戦いが始まる。ドルドが神聖な審判をしてくれる事を祈りつつも、バベルが殺してくる勢いで攻め掛かってくるので、こちらも否応なしに手加減ができなくなる。お互いに怪人態に変身しているから、遠慮もなくなってしまう。

  もはや殺し厳禁が形骸化する寸前。バベルの可愛がりを越えた所業を前にして、俺は防御姿勢から一転する。もう我慢の限界だった。隙を見つけ、怒りを込めた本気の一撃を繰り出す。

 

「ひつきぼしの鳳凰の握りこぶしの奥深い意義の天翔の十字の鳳ぉぉぉ!!」

 

「う、動きが捉えられない……!? ぐわっは!」

 

「空の中に揺れ動く羽! 何人も壊す事ができません!」

 

「勝者、ガミオ」

 

  ドルドにより、試合終了の合図が知らされる。気が付けば周りに集まっていた観衆が沸き上がっていたが、メビオの声援を含めても素直に喜べない。クウガと騎馬戦した時と同じぐらいに疲れた。

 

 

 

  そんなこんなで五体満足に帰宅を果たす。しかし、帰り際に放たれたガドル閣下の「次の土産も楽しみにしておこう」というお言葉のせいで、戦々恐々とするばかりだった。

  これ以上、俺に何を求めると言うんだ。美味しいものが欲しいなら、本場の中国大陸に上がれ。あ、ゲゲルの被害が中国にまで拡がったらどうしよう。いや、現地でクウガに封印されても、甦る現代は大気汚染で酷いから……大丈夫だな。

  それはさておき、早速ザクⅡの修復作業に取り掛かる。ボディの製作は二度目であるので、サクサクと作っていく。メビオも協力してくれたおかげで、完成はあっという間だった。

  残された作業は、核を取り付けるだけ。俺たちは期待を胸に膨らませながら、核をザクⅡの胸部の中に埋め込んだ。

  しかし、ザクⅡはうんともすんとも言わない。まるで屍のように横たわる様子を目の当たりしたメビオの顔に、影が落とされる。

  これは行けない。メビオの気持ちを裏切りたくないのもそうだが、個人的にこんな終わり方で納得する訳にはいかなかった。共に過ごした時間は短くとも、ザクⅡは既に立派な戦友。そこまで存在が大きくなったヤツをすんなり諦められるはずがない。

  そんな訳で、多少でも気持ちを落ち着かせるために復活の呪文やアイテムの名前などを唱える。支離滅裂なのは気にしてはならない。

 

「ザオラル! ザオリク! レイズ! レイズレッド! フェニックスの尾! エリクサー! ドラゴンボール! サンドスター! ライフボトル! ドクターX! 私失敗しないのでぇぇぇ!!」

 

  その時、不思議な事が起こった。突如としてザクⅡのモノアイがピンク色に光り、生命の火を灯す。それからゆっくりと立ち上がり、俺たちに元気な姿を見せつける。

 

「よっしゃあ!」

 

「ザク~!」

 

  長らく願っていた復活に俺はついついガッツポーズをし、メビオは嬉しさのあまりにザクⅡの胸へと飛び込む。ザクⅡはメビオを優しく受け止めた。

  それから俺も彼らの輪の中に入り、全員で手を繋いで喜びを分かち合う。ピョンピョンと跳ねながら、その場をぐるりと回った。

 

「「やった! やった! やった! やった! やった!」」

 

  俺たちに合わせて軽快な動きをするザクⅡ。これがあったからこそ守れた命があるのだと考えると、感極まりそうだ。身を呈してクウガを守るだけに留まらず、何とか生還してきたのは誉めるに値する。

  この小躍りは、俺とメビオのスタミナが尽きるまで続いた。その後も込み上がった感情は冷める事がなく、もっと祝いたいという思いに馳せられる。

  そこまで思い至った俺は、自宅の隣にある倉庫へ訪れる。メビオもひょこひょこと付いてきた。

  倉庫の奥まで進むと、横に列なった複数の壺を目にする。それらには全て、蓋が閉められている。

 

「ガミオ、それは?」

 

「手探りで作ったワイン試作十三号。今は弥生時代だから酒税法は存在してない」

 

「わいん? やよい?」

 

「飲み物だよ。味は今から確かめる」

 

  メビオの質問に手短に答えた俺は、一つの壺を手に取る。ちなみに、試作一号から十二号は知識ゼロの犠牲となった。白ワインには二度と手は出さない。

  杓子を用意して、蓋を開けた中身から少量を掬う。おもむろに口につけてみると、渋みがなくて意外と飲みやすかった。市場に出せるクオリティではないのは確かだろうが、手作りとしては十分な出来だろうか。

 

「んー……まぁ、こんなものだな」

 

「え? 美味いのか? 私にも飲ませろ!」

 

「待て。せっかくだから皆で飲むぞ。ザクⅡの復活を祝うんだ」

 

「わかった!」

 

  俺の言葉にうんうんと頷くメビオ。いかにも待ちきれないのが一目瞭然だった。

  一方で年齢的に彼女が酒を飲んでも大丈夫なのか気になりもするが、この時代に飲酒法は存在していないので問題はなかった。アルコール度数も大して高くなさそうだし、平気だろう。太古の事例を裁けないなんて、法は無力だ。

  そして夕食の準備も済ませ、家の中へとザクⅡを招き入れる。居間でジオンのモビルスーツが胡座をかく様は何とも言えない。

  俺たちの分の食事はちゃぶ台の上だが、スペースが足りなかったのでザクⅡ専用の箱膳を追加で用意した。箱膳には石ころが盛り付けられた皿と、ワインが注がれたコップが置かれている。コップの側にはお手製のストローがある。

  きっと、ゴロン族の食事風景はこんな感じに違いない。ザクⅡの食事内容が浮いてしまうのは致し方ないが、そんな事に俺は一々目くじらを立てたりなどしない。ただ純粋に、ザクⅡへ祝杯を上げたかった。ただし、メビオの場合は食い気がマシマシなので少し微妙だ。

 

「それじゃ、ザクⅡ復活を祝ってぇ……」

 

「「かんぱーい!」」

 

  俺が乾杯の音頭を取り、メビオと声が重なる。ザクⅡは元より喋れないので乾杯の動作を取るだが、それでも声を出してくれたような気がした。

  そんなザクⅡがストローでちびちびとワインを飲むのを見た時は、とんでもない発見だと軽く呆然した。ゴウラムの場合はどうなるのだろうかと、ふと不思議に思ってしまう。

  俺たちは飲むワインは、小さく盃に注がれた形だ。量は限られているので、大切に味わなければならない。正しい酒の楽しみ方は知らないが、目で見て、香りを堪能してから喉に通す。

  しかし、そんな事はお構い無しにメビオはグビッと飲み干す。一度の量は少ないものの、イッキ飲みという心配させる真似をしでかした事に変わりない。俺は盃を一度置いて、彼女の調子を確かめようとする。

  すると――

 

「ガミオぉ……これ、なんかいい気分になるぞぉ」

 

「え? 酔うの早くない? やっぱりジュースとかが良かった?」

 

「イヤ! もっと飲むぅ」

 

「あ、おい! 酒に弱いなら飲み過ぎは――」

 

「あはぁ♪ ガミオー」

 

  俺の制止を聞かずにメビオはお代わりを二杯、三杯と注いではすぐに飲みきる。顔は真っ赤で、既に呂律も回っていた。

  このままではマズイ。そう思った俺は彼女の前に焼き魚や焼き肉が乗った皿を差し出す。案の定、メビオの目は盃から料理へと移り、箸を使いながらパクパクと食べ始めた。覚えたての箸の使い方はたどたどしく、ペースはやけにゆっくりだった。

  それから三十分経過した頃。遂に食事の手を止めたメビオだが、依然として酔った状態で俺に擦り寄ってくる。

 

「ふみゃ、もっと撫でてぇー」

 

「ベロンベロンじゃんかよ……」

 

「にゃー♪」

 

  呆れ果てながら首周りを揉むように撫でると、メビオは心地好さげに鳴き声を出す。できれば食事に集中したかったが、甘えてくる彼女の対応に掛かりきりだ。

 

「――!」

 

「ザクⅡ? そのサムズアップはどこで覚えた?」

 

  そこを見てみると、コップ片手に親指を立てるザクⅡがいた。無論、端から回答は期待していないが、コイツの言いたい事はそれとなく伝わってきた。

 

「……そうだなぁ。メビオ可愛いよなぁ」

 

「――! ――!」

 

  俺の呟きに激しく同意を示すザクⅡ。それを聞いていたメビオも反応し、ニンマリと笑いながら答える。

 

「私、可愛いか? えへへー♪」

 

  決めた。この瞬間からは思いきって、メビオの愛くるしい姿を眺めながらワインを飲もう。そうしよう。食事なんて二の次だ。

  かくして、すっかり甘えん坊になったメビオによって、祝杯は夜がふけるまで長引いた。

 

「ザクⅡ。勝利の栄光を君に」

 

「――!」

 

「がみおー、ぎゅってしてー♪」

 

 

 

 

 

 




Q.メビオがアバンストラッシュを使った!

A.ガミオ再現技シリーズです。


Q.バベルに勝ちやがった! ゴの三人衆が四天王に!

A.俊敏体のないバベルなら普通に勝てます。最高にヤバいのは、ガドル閣下やジャーザとの高速戦闘。


Q.小説版のグロンギもいるの?

A.います。

ゲラグ「やっほー! みんなのアイドル、伽部凛だよー! 私がヒロインの話を書いてくれたら、なんでも言う事を聞いちゃうぞー!」

だそうです。なんでも言う事を聞いてくれるようですね。貴方の武運長久を願います。


Q.他の女性陣が酔ったら?

A.

ジャーザ……テンション爆上げ。

ザザル……絡み酒からの泣き上戸。

ベミウ……何故か母性を発揮。誉め上戸に。

ガリマ……普段と変わらない。

バルバ……想像に任せます。











ゴオマ……自慢話と落ち込みを繰り返す。


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