漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話   作:erif tellab

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近代、現代であるにも関わらずにロシアの冬に飲まれてしまったナポレオンやヒトラーがいるなら、古代のグロンギたちも冬の時期はゲゲルを中断していてもおかしくない……はず。

※さすがにリスキーだったので、ネズマの台詞回しを修正します。ご指摘ありがとうございます。


哀しみと刹那に飲み込まれた魂たち

 季節は秋。ここ最近の寒暖の差が激しい気がするが、落葉樹を見れば葉を紅色や黄色に染めているのがわかる。程よく綺麗な枯れ葉が地に落ちて、足場を覆い隠そうとする。

  秋の次に訪れるのは冬。この時期が過ぎ去れば、冬篭りの準備をしなければならない。収穫や、保存食作りなど今の内にできる事は片っ端からやっていこう。

  メビオも一緒に暮らしているので、食糧面の負担は単純に考えて、いつもの二倍だ。大変な事に変わりはないが、一人当たりのマンパワーの値が普通の人と比べるとおかしい事になっているため、心配はない。終始怪人態で力仕事をすれば、すぐに終わるだろう。数少ない、グロンギに生まれて良かった点の一つだ。

 

  ゴ集団のゲゲルについては、標的のリントの絶対数が現代よりも少ない事とクウガ軍団が編成されているせいか、一人につき制限時間の猶予がかなりある。今はジャラジ……だっけ?

  ゴ・ジャラジ・ダ。ヤマアラシ怪人。好物は人間の苦しむ姿と、かなり近づきたくない奴である。コルレルやジム・ライトアーマーの如き紙装甲だが、青のクウガ以上にすばしっこい。武器はヤマアラシの針を使う。

  ドルドが持つバグンダダのカウントはクウガ軍団も含まれる。ボーナス点として。ジャラジの制限時間は二週間で目標九十人と長丁場だが、ゴウラムを率いたクウガ軍団が警視庁顔負けの厳戒態勢で人里の警備に当たっていれば、まず一般人に手が出せないだろう。

  つまり、ジャラジは大好きな格下狩りを封じられるだけでは飽きたらず、基本的に自分と同格かそれ以上の相手と戦う羽目になったという訳だ。ジャラジが持久戦を取ってくるのが目に見えるが、取り敢えず「ざまぁ」とだけ言っておこう。クウガよ、こいつに不殺の誓いは要らないから本気でやってしまえ。

 

  そんなこんなで、俺にはかなり時間が残されている。冬が来ればゲゲルも自然中断されるとバルバからのお達しだし、気分は最高だ。ゲリザギバスゲゲルにはどうにかしてバックレてやる。

  だがその前に一つ。全然気が進まないが、最優先に済ませておきたい事がある。ザクⅡには留守番を頼み、見晴らしの良い適当な場所で作業を始める。材料は岩で、必要な道具はニードル一本だ。

  丁寧に時間を掛けて石工師の真似をするつもりはない。モーフィングパワーで楽々と岩を長方形の石板に再構築する。デザインも拘らず、シンプルなものにした。

  次にニードルで石板の表に文字を刻み込む。かなり力がいるが、繊細すぎる作業にモーフィングパワーは向いていないから致し方ない。ここは素直に諦めて、一心不乱に単純作業を続ける。

  すると、横からメビオが飽き飽きとした口調で話し掛けてくる。付いてこなくてもいいと言っていたのだが、そこは相変わらずだった。

 

「なぁなぁ。なに作ってるんだ?」

 

「慰霊碑。メガリバース装置とかで俺のゲゲルの相手が化けて出てくるのが怖いからさ、一応作っとく」

 

「めがりばーす?」

 

「それは気にするな」

 

「むぅ、知らない事ばかり言って私をバカにしてるな?」

 

「してないよ」

 

「してる!」

 

「してない」

 

  そうして、構ってちゃんなメビオのおかげで作業を中断される始末。「つまらない! つまらない!」と開き直った時は、逆に清々しいと思った。

  メガリバース装置の意味が伝わらないのはわかっていた。だって相手は古代に生きるグロンギだし。ただ、ショッカーやゴルゴム、その他大勢の悪の組織が時空を越えてやって来る可能性がどうしても否定できないから、わざわざグロンギの供養をする訳だ。死者が復讐しに来たら怖すぎる。

  どうにかメビオを諫めた後、ぱっぱと台座も用意して慰霊碑を完成させる。水が入った瓶に花を植えて、合掌。黙祷を捧げる。メビオも見よう見まねで俺に続いた。

  ネズマ、ネズモ、ダーゴ、グジラ、ジャモル、ガーゲ、イバエ、ガスポ、ゴリギ。線香までは用意できなかったけど、地獄の業火に焼かれながら、どうか安らかに眠ってください。眠れないならそのまま成仏してください。そして生まれ変わるなら、マンチカンやポメラニアン、スナネコなどの小動物になって前世の罪を償ってください。

 

 ――やめろぉぉ!! 俺を可愛がるなぁぁぁ!! え、お風呂の時間? やったー!――

 

 ――嫌だ……注射は嫌だ!? そこにいるのはクチヒコ・ミミヒコ兄弟か! 見てないで助けて……お前らも注射……だと……!? そんな座して待つなんて!――

 

 ――例え気持ちよく撫でられようが、俺はリントに屈しない! あ、そこそこ。そこ気持ちいいぞ――

 

 ――あのゴールデンハムスターからヒマワリの種を分けてもらって幾星霜。その日から俺は、ヒマワリの種が大好きになってしまった。この味を知ってしまえば、もう元には戻れない。俺は……俺は……回し車を走るぞー! てちてちてちてち。たーのしー!――

 

  ――兄貴ぃぃぃ!? 正気を保ってくれぇぇぇ!!――

 

  ――プリキュアの妖精……? 俺が……?――

 

  ――ジャモルがリントの少女の変身アイテムになったか……。やはり所詮はズ、哀れな男よ。……へ? 妖精の俺にリントの姿を取らせた上で変身しろと? 女の子だからイケるってその……フリフリのドレスを着て? あ、あの……ちょっと待っ――

 

  ――ええい! ヤンデレ如きに元グロンギの俺がぁぁぁ!! おいピカチュウ、肉盾になってくれ! クチートが執拗に俺を追い掛けてくる! ……はっ!? あ、あ、うわあぁぁぁぁ!――

 

  ――ガミオ……俺が間違っていた。まさか、リントといるのがこんなにまで温かいなんて……。マスター、散歩を願い出よう。リードを持ってくれ――

 

  黙祷の最中、誰かの声が幾つにも重なって聞こえた気がした。まぁ、メビオにも聞こえている様子はなさそうだし、確実に気のせいだな。

 

  それからは、メビオと一緒にのんびり遊びに出た。紅葉が彩る川原にて、俺はしみじみと水のせせらぎを聴いていた。

 

「あぁ……読書したくなるなぁ……」

 

  ふと、そんな事を呟いてしまう。弥生時代に書物がほとんどないのが少し悲しい。

 

「ガミオー! 今度は長持ちしてるぞー!」

 

  一方のメビオは、折り紙の船を川に流していた。そんなに見てほしいのか、大声で俺の名を呼ぶ。

  小さな紙船は川の激流に揉まれながらも、沈没せずに進んでいく。岸でメビオが並走しながら見守る中、とうとう浸水が始まった。やがて紙船は藻屑と化する。

  これを目にしたメビオは大きく肩を落とした。即座に俺の元まで駆け寄ってきて、顔を胸の中にうずめる。だが、俺が優しく頭を撫でながら慰めていると、次第に元気を取り戻していく。彼女は再び、紙船の製作に挑戦した。

  そんなメビオの意気込みには俺も触発された。折り紙に熱中する彼女と同じように何か作ってみたくなる。

  そういう訳で、あまりにも簡単すぎるハーモニカを作った。材料はそこら辺の木の枝、ツタだ。木の枝をモーフィングパワーでクラフトスティック、紙、爪楊枝に再構築し、下からスティック・紙・楊枝・スティックの順に重ねる。この時、爪楊枝はスティックの両端にそれぞれ一本ずつ配置させる。

  そこまで出来れば、爪楊枝がある両端をツタで巻いて固定するだけ。小学生レベルの代物が完成である。お手軽さを重視したため、本格的なものと比較するには色々と程遠い。

  ここまで童心に返った工作なんて久しぶりだ。試しに吹いてみるが、普通のハーモニカのようにすんなりと上手にできない。舌と唇の形にコツが要るようだ。

  次から次へと吹き方を試行錯誤し、ようやくまともに音が出せるようになる。しかし――

 

「……簡単なハーモニカだと色々きちいな」

 

  完成品が子供向け工作物なだけあって、音が物凄く安かった。わかっていたが無性に悲しくなってくる。これなら歌った方がマシだと思える。

  それでも目新しさはあったのか、メビオが途端に興味津々となる。一曲弾いてみれば、目を輝かせながらねだってきた。

 

「私にもやらせろ! はやくはやく!」

 

「ほい、どうぞ」

 

「やった!」

 

  俺から簡単ハーモニカを受け取り、大喜びで吹いてみるメビオ。始めは上手くできなくて拗ねてしまったが、俺が丁寧に教える事で演奏レベルにまで至った。

  今では仮面ライダーカブトの主題歌にハマり、何度も繰り返して吹いている。グロンギであるために肺活量が大きくなっているのだろう、疲れを全然見せない。

  次からは本格的なハーモニカ作りに挑んでみるか。そう思った時、どこからともなくやってくる足音を捉えた。居場所はかなり近い。

  メビオの演奏に集中しすぎて気が付くのが遅れた。もしもクウガのスニーキング中だったら色々恐ろしいので、咄嗟の音の出所へ振り向く。

 

  そこには美女がいた。長袖にズボンのチャイナ服を身に纏い、スレンダーな体型である。メビオと比べると、随分大人びている雰囲気を持っている。

  緑がかった長髪に加えて、カマキリの目玉みたいなシニョンを頭の両側面にそれぞれ一つずつ留めていた。髪は前後に分けていて、後ろ髪は纏めて垂らしている。ポニーテールとは少し違うが。

  風貌が完全に日本由来ではないので、否応なしに警戒心が募る。中国人だとしても、ここにいる理由がわからなかった。渡来人なら大体が朝鮮半島出身だよな? どういう事だってばよ。

  身構える俺に美女は気に留めず、むしろ未だに演奏中のメビオへ視線を向ける。きょとんとした表情とその瞳から、好奇心を抱いているのが窺えた。砂利道の上をゆっくり歩き、ある程度近づいてきたところで口を開く。

 

「それから綺麗な音が出てるのか。不思議だな」

 

  そう言って美女はメビオを見ながら、首を傾げる。不思議なのは貴女の方だと思います。

  この人は本当に誰だ? メビオと同じく、俺の知らない姿に変わっているグロンギの誰か? ダメだ、てんで見当がつかない。

  急に強い風が辺りに吹きつけ、何枚もの紅葉が木の枝から落ちていく。その内の一枚が美女の元にふわりと舞い降りて、そっと差し出した彼女の手のひらに乗っかった。美女の意識は簡単ハーモニカから紅葉へと移り、手元のものと木を交互に眺める。やっぱり不思議なのは貴女の方ですね。

 

「えっと、どちら様ですか?」

 

「ん? お前がゲゲルに強制参加させられた時の集会で会った事があるだろう? あの時の出来事は今でも忘れられないぞ、ガミオ」

 

  思いきって尋ねてみれば、そんな風に言い返される。結局、俺は彼女の事を全く思い出せなかった。あの時はバルバとの交渉で必死だったから。

 

「……すみません、思い出せないです。というか、貴方の名前すら存じ上げないです」

 

  臆面しながらも、頭を下げつつ正直に伝える。すると――

 

「そう言えばそうだな。私の名はメ・ガリマ・バだ。よろしく頼む」

 

  ガリマと名乗った彼女は、俺にゆっくりと手を差し出してきた。それは明らかに握手を求めていて、予想を遥かに裏切った事態に俺は思考を放棄しかける。

  そして、ガリマがもう片方の手で持っていた紅葉は遂に宙に放られる。嘘だと言ってよ、バーニィ。

 

 

 




Q.クチヒコ・ミミヒコ兄弟?

A.金色の猫と銀色の猫の兄弟で、近所では非常に有名です。TVにも出ました。空き巣を撃退した事があるとか、金と銀のメタリックな鬼に変身するとかしないとか。

元ネタは、仮面ライダー電王&ディケイドNew Generations 鬼ヶ島の戦艦より、ラスボスを担ってくれた鬼一族の兄弟です。名前はそのままクチヒコ・ミミヒコで、ゴルドラとシルバラに変身します。どういう訳か、ガミオ被害者たちと同じく来世が動物でした。



Q.ハーレム築こうとしてるとか、ガミオ絶対許さねぇ。

A.人数と人選的にはコレが限界です。コレ以上のものを高望みしたり、メビオとガリマ以外を狙ったりすると悲しみの向こうへ辿り着いてしまいます。マジで。

ザザル「アタシ以外の女と口聞いたら溶かす」

ジャーザ「早くどうでもいいメスを片付けて、あなたとの愛の巣を作らなきゃ」

バルバ「……」無言の拘束・拉致監禁。

ゲラグ「ねぇ、怖い? あなたのためにメイド衣装で精一杯尽くしてきた私が怖い? ……そんな訳ないじゃない!!」

高確率で以上のようになるでしょう。

ゴオマ(幼女)「お兄ちゃんには私だけがいればいいの! 他の誰でもない、私!」

今ならもれなく、ンのベルトの破片の影響を受けてしまったゴオマも付いてきます。


Q.畜生となったグロンギたちの補足。

A.ネズマ・ネズモはハムスターに。ダーゴ、グジラ、イバエは猫に。ガスポはポケモン、ゴリギは犬です。

ジャモル「プリキュア!! 俺を使って変身しろぉぉぉ!!」

先輩妖精「言葉に殺意がこもってるからダメ! もっと可愛らしく! 折角だから語尾もつけて!」

ジャモル「うわぁぁぁぁぁ!!」


ガーゲ「ふん、ジャモルめ。面白く道化を演じるものよ……」

先輩妖精「あなたもよ! ほら、私に続けて言いなさい。プリキュア、くるりんミラーチェンジ!」

ガーゲ「断る」

先輩妖精「あ、そういうこと言っちゃうんだ。じゃあプリキュアの先輩たちにしごさせてもらいましょう」

ガーゲ「嘘です。ごめんなさい。一生懸命頑張ります」

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