漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話   作:erif tellab

15 / 19

自分はグロンギリサイクル生活説を提唱します。

だってザジオさんとか、グセパやバグンダダ、ンのベルト等をゼロから作り直そうとしてなかったんだもの。ゴオマを長野までパシらせるよりも絶対早いのに。


閣下

 ある日の夕方。メビオたちと三人でちゃぶ台を囲んで夕飯を摂っていると、ガリマ姐さんがふとこんな事を言ってきた。

 

「ガミオ。そう言えば、冬が解けたらゲゲルはどうするつもりだ? 私は微塵たりとも興味を抱かなくなったが、お前はクリアすればザギバスゲゲルに進めるだろう?」

 

「ゲゲルはバックレるつもりなんですけど、そうだなぁ……」

 

  わりかし難しい質問に、俺は頭を抱える。ンの称号を手に入れて族長になっても、グロンギたちのザギバスゲゲルの相手が俺に刷り変わるだけだ。ゲゲルの内容を平和的なものに変えようとすれば、ほとんどの連中が反抗するのは目に見えている。

  つまるところ、ゲゲルの改革はグロンギたちも正面衝突待ったなしである。しかも、その前にゲリザギバスゲゲルをこなさなければならないので、精神的に辛いものがある。どうせなら、ゲゲルをサボりたい。

  しかし、サボるにしても予想される障害の排除が困難すぎる。まず俺よりも先にゲリザギバスゲゲルをクリアする有望株が、ライオとガドル閣下の二人だ。後はザギバスゲゲルを受けるだけの彼らと、正面から戦うのは危険すぎる。

  ならば、夜逃げを決め込む? いや、ガドル閣下がンのベルトを身に付けてしまった暁には、地の果てまで逃げても瞬間移動とかで追い掛けられる事だろう。逃走は無意味だ、戦うしかなくなる。

  戦うにしても、中途半端は一番良くない。やるなら徹底的にだが、ガドル閣下相手だと生き残れる自信がほとんどない。恐らくメビオも一緒に戦ってくれるが、もしもの時が不安だ。

  メビオは今、モグモグと夕飯を頬張っている。ゲゲルをバックレるのに失敗すれば、この微笑ましい光景が見れなくなる。こればかりは何がなんでも守りたい。

  すると、こちらの視線に気づいたメビオがおもむろに聞いてくる。

 

「な、何だ? いきなり見つめて……」

 

「あ、ごめん。何でもない」

 

  そう返すとメビオは何とも言えないような顔になる。少なくとも、ショボくれたのは確かだった。こうなればとことんやるか……。

 

  そんなこんなで、冬解けの季節がやってくる。寒さは残っているが、きつくはない。真冬の暇な時間のほとんどが、この日のための準備に費やした。ガリマ姐さんも手伝ってくれたおかげで、準備は倍以上に捗った。

  この頃になると、ゴ集団の大半がクウガの前に撃沈し、封印されている。わざわざ集会を開くほどでもなかったのか、我が家にバルバが訪れてきた。

 

「えいえい」

 

「……何の真似だ?」

 

  誰もいないひっそりとした家の庭にて、俺はハリセンでバルバの頭を何度も叩く。威力は元より大したものではないので、バルバは平然とした様子で俺に尋ねた。

 

「ゲゲル国際条約第一条。ラの階級に反逆した者は失格になる」

 

「本気か、ガミオ?」

 

「こんな事もあろうかと、メビオたちと一緒にありったけの雪だるまを作っておきました」

 

  この俺の一言が、作戦開始の合図となる。決して単にボケをしている訳ではない。

 

「「サクサクサクサクサクサク」」

 

「「サムサムサムサムサムサム」」

 

  森の向こう側から湾曲軌道でここに落ちてくるのは、ジオンの超量産型モビルスーツであるサクの軍団。宙にいる間のサクたちは触手みたいな両手両足をカプセル状のボディに収納し、着地の寸前でようやく展開する。

  また空を見上げると、ドラゴンフレアが袋詰めにした連邦の超量産型モビルスーツ、サムを投下しているのが見える。この光景はさながら爆発しない空爆だった。

  他にも伏兵として家の周りに潜伏していたサクとサムが現れる。彼らにはサクマシンガンやビームスブレーガンといった武装はない。彼らの役割はあくまでも、バルバをここに釘付けにする事だ。

  例え“ラ”であっても、これほどの物量で押されれば堪らないはず。現にバルバは、この場所に集結した彼らを目の当たりにして言葉を失っている。その間の抜けた表情は新鮮だった。

 

「今です!」

 

「「サク~!! / サム~!!」」

 

  どこからともなく出現したドムの号令が響き渡り、サクたちが一斉にバルバへ飛び掛かる。バルバはハッと我に返るが遅く、サクとサムの山の中へと埋もれていった。

  この隙に俺はドムと共に現場を離れる。途中でザニーに乗ったメビオと合流し、擦れ違い様に掴まる形でザニーの上に跨がった。前にはメビオがちょこんと座る。

  ホバー走行しながら腰にザクマシンガン、肩にジャイアントバズを担ぐドムの傍らで、メビオは後ろを振り向く。その瞳に写すのは、勇敢にバルバと戦うサクとサム、ついでにドラゴンフレアの姿だった。名残惜しさゆえにか、彼らの名を叫ぶ。

 

「サクー! サムー! ドラゴンフレアー! うぅ……」

 

「堪えろ、メビオ! これも全て、ゲゲルをおじゃんにして平和な日常を過ごすためだ! サクたちの犠牲を無駄にしちゃいけない!」

 

「でもぉ!」

 

  俺の言葉に反応して、駄々をこね始めるメビオ。ここで遅れて合流してきたガリマ姐さんが、冷静な口調でメビオを諭す。

 

「メビオ、お前も覚悟を決めただろう。それに、サクたちは自分の意思で私たちに協力してくれた。今さらごねていては、彼らの気持ちを無下にしてしまう」

 

  そこまで聞いたメビオは不意に静かになり、唇をぎゅっと閉じてガリマ姐さんを睨む。目尻には涙が溜まっており、彼女がどれだけ辛いのかが伝わってくる。

  ちなみにガリマ姐さんが乗っているのは、ユニコーンドリルとレオサークルが合体した個体、超獣王“輝刃(キバ)”だ。依然として四つ足歩行なので、機動力は抜群である。

 

「……ふん! ガリマには言われたくない!」

 

  やがてメビオは、そう強く言い放つ。彼女には本当に申し訳ない事をした。例えやせ我慢でも、気持ちを切り替えてくれるのなら幸いだ。

 

「ガミオ少佐! グフたち陽動部隊にライオが引っ掛かったようです! しかし、ライオに率いられたグロンギがたくさんいるとの事!」

 

「マジか……」

 

  次の瞬間、俺たちと並走しているドムから報告が入る。まさかの相手の集団行動に、焦燥感を抱いててしまう。

  俺たちの考えた作戦は至って簡単。ゴ集団とクウガ軍団を誘導して、互いに衝突させる事だ。この時、クウガ軍団にグロンギの集落を特定させる手伝いも欠かさない。等間隔で配置させたサクとサムを道標の代わりにした。

  グロンギの集落を見つけてしまったクウガ軍団はどう思うだろうか。そのままスルーするのだろうか? それとも、グロンギを封印しに作戦とかを講じたりするのだろうか?

  とにかく、これはゴ集団の強い人をクウガに押し付ける我ながら最低な作戦だ。こちらの方が合理的で安全だと考えた。封印エネルギーでリアルチートしているから仕方ない。

  陽動部隊のグフとゲルググ、他のスノーウェポンたちには、そのままクウガ軍団と共同戦線を張るように指示しているが、グロンギ側も軍団を成しているとなると、些か不安が残る。単体を釣り上げるのが理想だったために、作戦の雲行きが心許ない。通信を交わせるのがドムしかいないので、なおさらだ。

  その時だった。正面に突如、怪人態に変身しているガドル閣下が現れたのは。

 

「げぇ!? 閣下ぁ!?」

 

「グロンギの恥さらしが三人か……。ライオが先駆けした今、ゲゲルは成立しなくなった。ンのベルトはもはや早い者勝ちとなる」

 

  俺たちが馬の足を止めて進路を変えようとするや否や、ガドル閣下は親切にも現在の状況を説明してくれる。できれば会いたくなかった。

  ガドル閣下の放つプレッシャーは全身に重くのし掛かり、冷静さを失わせようとする。心臓の鼓動も早くなり、冷や汗が止まらない。メビオたちの方を見てみると、俺と変わらないような反応を示していた。

  万事休す。戦うしかない……!!

  そう決心した俺に先駆けて、ドムが無言で一歩前に出る。静かにジャイアントバズの砲口をガドル閣下に向けて、背後にいる俺たちへ次のように言った。

 

「閣下の足止めは私に任せてください! 少佐たちは急ぎコンペイトウに……いえ、ソロモンへ!」

 

「ドム……わかった!」

 

  自ら殿を受け持ってくれたドムに、俺はそれだけを告げて立ち去る。後を付いてくるガリマ姐さんやメビオは惜しげにしていたが、のんびりと別れの挨拶をするほどの時間は残されていなかった。恐らく、ドムはガドル閣下に殺されるだろう。

  これで余計にドムたちの犠牲をますます無駄にはできない。今の俺たちの出せる最高の解答は、ドムの望みをこうして叶えてやる事だけだ。必ず生き残って、ガドル閣下とクウガ軍団をぶつけないと……。

 

  その矢先、ゴウラムを纏った馬に乗るクウガと遭遇した。

 

「げぇ!? クウガぁ!?」

 

「あ、待って待って! 俺です! あなた方に助けてもらったクウガです!」

 

「え?」

 

  クウガは身ぶり羽振りで敵意がない事を知らせる。俺たち三人が人間態でいた事が、功を奏したのかもしれない。そのまま彼は危害を加える事なく、俺たちの横を走り始める。

 

「邪魔だ、クウガ! 八つ当たりするぞ!」

 

「ちょっ、殴らないで話を聞いて――」

 

「こらこら」

 

  ちょうど手の届く距離まで近づいたので、問答無用でクウガにパンチを仕掛けるメビオ。それを俺は、彼女の頭を両手でぐりぐりする事で止めさせた。

  頭を抱えて「うぅ~……」と悶絶するメビオの傍らで、理不尽な暴力から解放されたクウガはようやっと口を開く。

 

「ふぅ、助かりましたぁ……。て、そうじゃなくて! 今、広範囲に渡ってグロンギたちを纏めて封印する計画が発動中なんです! 早く逃げないと――」

 

「行くぞ、お前ら!! 目標は九州! できれば沖縄ぁ!」

 

  作戦変更。グロンギたちの対処はクウガたちがしてくれるようなので、このまま全力で長野県を脱出する。

  俺の唐突な指示には、メビオとガリマ姐さんはとっくに昔に慣れていた。コクリと黙って頷いた後はクウガを置きざりにする勢いで、ザニーと輝刃を走らせる。

 

「逃げるの早いですね!?」

 

「そりゃそうだ!」

 

  それから必死に追い掛けてきたクウガに、俺も必死の思いで答える。先ほどの彼の口振りから察するに、その広範囲封印計画はグロンギだけを封印する便利なものらしい。対象は子供や老人のグロンギも無差別に選ばれるようなので、巻き添えを喰らうのだけは回避しなければ。

  仮に彼の発言が嘘だとしても、わざわざそんな嘘を吐くメリットが思い付かない。結局、俺たちが逃げる事に変わりはないのだから。逃げた先で他のクウガが待ち伏せているにしても、ガドル閣下との戦いに巻き込ませるつもりだから好都合だ。

 

  しかし、その淡い望みは易々と打ち砕かれる事になる。どこからともなく調達した馬に乗ったガドル閣下が、先回りしていたのだった。彼の片手には、モノアイの光を失ったドムの生首がぶら下がっていて――

 

「……ぅうおおおぉぉぉぉ!!」

 

  目撃するとしないでは、気持ちの揺らぎ具合の差がはっきり出るようだ。あれを目にした途端、一気に頭に血が昇る。

  変身、鎧装着、抜剣。連携のれの字も忘れた俺はザニーを足場に跳躍し、ガドル閣下に斬り掛かった。

 

 





Q.先代クウガであるリクは今、どうしてるの?

A.グフたちと一緒に、ライオと死闘を繰り広げています。ライオ、並みのクウガだと瞬殺されるレベルで強いです。なお、この戦いでゴウラムとグフたちは心を通わせました。


Q.ガドラは?

A.己の来世を垣間見ました。

ガドラ「また負けた上に生かされた……もはや、生き恥を晒せぬ!」

ガミオ被害者の会「「ようこそ、こちら側へ」」

ガドラ「……気が変わった。うむ、命は大事にするべきだな」


Q.ドムの戦いぶりを詳しく。

A.ジャイアントバズ連射 → ザクマシンガン全弾発射 → ヒートサーベル抜刀

対してガドル閣下。バズの直撃を受けても五体満足。ザクマシンガンに至っては、身体が柔らかくて弾丸が刺さらずにポトポト落ちてる。神経断裂弾を耐えただけある。

この後、ドムは目隠しの光線も使いながらヒートサーベルを一閃するが、ガドル閣下にあっさり見切られて胸を手刀で貫かれる事に。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。