漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話   作:erif tellab

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五代とガドル閣下の二回戦目は、神経断裂弾のダメージが残っていてガドル閣下が弱体化していた説を提唱します。初戦であれだけコテンパンにされたのに、ライジングの制限時間がなくなっただけでマトモに戦えるようになるのは考えにくいからです。

つまり、一条さんのおかげである。


牙澪

 全力で振った魔戒剣を、ガドル閣下は指二本で白羽止めする。魔戒剣が拘束され、応じて俺も宙に硬直した一瞬の隙を狙われる。

  ガドル閣下の拳が綺麗に俺の腹へと吸い込まれ、殴り飛ばされる。それから地面の上を僅かに転がり、受身を取って立ち上がる。ふと見てみると、ドムの首と魔戒剣はとっくに打ち捨てられていた。ガドル閣下はそれに目もくれず、自ら馬を降りて堂々と歩いてくる。

 

「ヒヒィーン!!」

 

  ガドル閣下の馬――仮称、黒王は、ザニーたちの方へ向かっていった。その筋骨隆々な姿は、明らかにモーフィングパワーで改造されているとわかる。俺とザニーたちと分断するつもりなのだろうか。

  しかし、黒王の相手はザニー、ゴウラム装備の馬だけに留まり、騎手であるクウガとメビオは急いで俺の隣に並び立つ。遅れたガリマ姐さんも、輝刃を大剣“キバブレイカー”に変形させてやって来る。それと同時に、彼女たちも怪人態へ変身する。

 

「クウガもいるのか。だが並みの相手だな。無能が四人に増えただけか」

 

  ガドル閣下からのとんでもない言われよう。あくまでも黒の金のクウガ並の実力を持つ彼視点による評価だが、わかっていても傷つく。四人掛かりで挑んでも勝ち目が薄いと、否が応でも痛感するのだった。

  まずは魔戒剣の回収を第一に攻め掛かる。肉弾戦ではガドル閣下に勝てる見込みがない。ゴリギの件もあるので、クウガが封印エネルギーを注入しても申し訳程度の弱体化をするだけになるかもしれない。せめて、武器が必要だった。

  先陣は俺が切り、すぐ後ろにはガリマ姐さんが侍る。冬の間は彼女も一緒に電気マッサージ訓練を受けていたので、相当なパワーアップを果たしている。使っている得物が上下の先端に長刀が付いたタイプではないのがネックだが、両手持ちのキバブレイカーを軽々使いこなしている。

 

  だが、相手はガドル閣下。攻略は容易くなく、注意を引いた俺の拳があっさり掴まれ、脛を蹴られる。伝わる威力と衝撃は鎧の堅さをもろともせず、膝が地に着いてしまう。その上、片腕をきつく取られているので身動きが激しく制限される。

  瞬時に横から斬り掛かってきたガリマ姐さんには、剛力体に変化する事で対処。さっと空いた腕を前に出すだけで、重たい斬撃を真っ向から受け止めた。

 

  ガキィィン!!

 

「っ!?」

 

  腕とキバブレイカーが接触した箇所から金属音が響く不思議現象。これにガリマ姐さんは愕然とした表情を見せて、次に迫りくるガドル閣下の攻撃に反応が遅れる。ふと俺の腕を放した手が握り締められ、目にも止まらぬ速さで俺とガリマ姐さんの顔面に繰り出された。気がつけば、ガドル閣下は俊敏体になっていた。

 

「にゃっ!」

 

「はぁっ!」

 

  数メートルも殴り飛ばされる俺たち二人と入れ替わるようにしてメビオと、ドラゴンロッドを手にした青のクウガが飛び込む。メビオはともかく、ガドル閣下に紙装甲で挑むのは不味いぞ、クウガ!

  しかし、荒っぽくも的確に連撃を放つメビオにクウガは合わせて戦う。一見して連携が成り立たなそうなのが、違っていた。一切の淀みもなく、水流のように高速戦闘を繰り広げる。

  二人の速さは俺でも対処できる程度でガドル閣下に一歩劣るものの、手数と連携で彼を圧倒。ガドル閣下はひたすら二人の攻撃をいなし、回避していた。まともな一撃が入っていないのが口惜しい。

  この隙に俺は魔戒剣の回収に走る。ガリマ姐さんはキバブレイカーから弓形態“キバストライカー”に変形させ、援護射撃をおこなう。

  贔屓目に見ても、ガリマ姐さんの射た光矢は見事なタイミングだった。ちょうどガドル閣下が後ろを向いた時。俺だけでなく、誰もが確実に命中するだろうと思われる一矢。

 

  それでも、ことごとくちゃぶ台をひっくり返すのがガドル閣下のスタイル。流石は破壊のカリスマ。彼は背を向けたまま、猛スビードで飛ぶ光矢を簡単に掴むのだった。

  光矢はそのまま握り潰されて消滅。同時にガドル閣下は空高く跳躍し、メビオとクウガの攻撃が空振りに終わる。

  空中にいる間は身動きが取れない。そう思ったのかガリマ姐さんは冷静に狙い射とうと試みる。だが、それよりも早く射撃体になったガドル閣下が、どこからともなく手にしたボウガンを連射する。

  咄嗟に回避するガリマ姐さん。ガドル閣下の次の標的はメビオたちで、空中で姿勢制御しながら発射。追撃、もしくは着地狩りしようとしていた二人の足がすくみ、辛うじて矢を避ける。その次は俺に矢が飛んできた。

  兜の目玉に向かう矢を、間髪入れずに魔戒剣で切り払う。この間にもガドル閣下は着地を済ましていたが、迎撃として幾度もなく放たれる矢に俺は臆せず、鎧任せに強引に接近する。

  そして魔戒剣の間合いが相手に届く。迷わず一閃するが、斬り伏せたのはボウガンだけだった。僅かに一歩下がったガドル閣下は格闘体へと一周して戻り、丸腰のまま俺と戦う。

 

「ちぃっ!」

 

  魔戒剣を手にしても、技量差は火を見るより明らかだった。振りかざされる刃は避けるか、逸らすか、俺の腕に邪魔入れするかで対処される。遂にはガドル閣下の右ストレートを胴にモロに受け、後ろにいるメビオたちの元まで転がされる。

  ここで俺たちは一度集合し、態勢を整えながらガドル閣下と改めて対峙した。

 

「どうする?」

 

「俺が突っ込む!」

 

「その後は!?」

 

「やるしかない!」

 

  上から順にガリマ姐さん、俺、メビオ、クウガ。全員の表情に余裕がなく、切羽詰まっている。当然だ、ガドル閣下に未だ傷一つ付けられていないのだから。

  当の本人は、余裕綽々といった感じだ。決して油断したり、慢心しようとしないのだから余計にたちが悪い。正真正銘の四人掛かりで絶え間なく隙のない連携を取らない事には、活路は見出だせなかった。

  掛け声はない。今度こそという思いで、四人同時にガドル閣下へ向かう。ドラゴンロッドを捨てたクウガは赤になり、ガリマ姐さんはキバブレイカーに持ち直す。攻撃の主軸は俺とメビオだ。

 

  囲んで叩けば勝てるというのは、口で言うだけなら簡単である。ガドル閣下相手にそれを実現させるには、かなり骨がいる。案の定、閣下は終始格闘体で俺たちの猛攻を捌いていた。

  俺が斬り掛かれば受け止め、メビオが蹴り掛かれば足を掴み、クウガが食らいつこうとすればメビオを片手間でぶつける。必死に抗う意思を見せるガリマ姐さんも、俺を無理やり下敷きにする形で伏せられる。まともに体系化されている体術はこの時代にないはずだが、ガドル閣下は関節技にとても精通していた。

  そこまでの洗礼を受け、クウガがガドル閣下に飛び蹴りをかました事でようやく勝機を掴めた。この機会を俺は逃さず、無様に地面へ寝転がるガドル閣下へすかさず魔戒剣を真っ直ぐ振るう。

  すると――

 

「俺に剣を抜かせるとは……」

 

「抜かないでください!」

 

「断る」

 

  俺の切実な願いも空しく、ガドル閣下が本気を出してしまった。寸手に剣で防がれ、剛力体の怪力で跳ね除けられる。確かについ先ほどクウガに封印エネルギーの注入されたのに、力の衰えを感じさせない。

  素早く起き上がったガドル閣下と、俺は激しく剣で斬り合う。ガドル閣下の剣の腕は我流の俺とは異なり、とても綺麗で力強く洗練されていた。剛力体の力も相まって、正面からでは確実に押し通せない。

  そこにガリマ姐さんと、タイタンソードを構えた紫のクウガが加わる。こちら側の攻撃の手数が増えるだけで結果は変わらなかったが、ちょうど良いタイミングでメビオも乱入する。

  メビオの取った行動は半ば捨て身に近かった。剣で身を刻まれながらも、ガドル閣下の頭上から襲い掛かる。比較的鈍重な剛力体ではメビオのスピードには着いてこれず、懐に潜り込まれるや否や渾身のアッパーをもらった。

  メビオの拳には雷の力が纏ってあった。ガドル閣下の身体は大きく打ち上げられ、不時着。ここで初めて、彼の表情が歪んだ。

  もう一辺足りとも猶予を与えられない。俺はガリマ姐さんと二人掛かりで、ガドル閣下の剣を抑え込む。これなら剛力体でも、しばらく鍔迫り合いができた。

 

「クウガぁ!」

 

  俺が呼び掛けた次の瞬間には、タイタンソードの切っ先を正面にかざしたクウガが突進してきた。俺とガリマ姐さんの合間を縫って、大地を支える巨剣がガドル閣下を貫く――

 

 ※

 

「はぁ……はぁ……しんど……」

 

  変身解除した俺たち四人は、おもむろに地面へ腰を降ろす。ヘトヘトで力も出ない。メビオは仰向けに倒れ、ガリマ姐さんはペタリとその場に座り込む。クウガは……今にも魂が抜けそうな顔でうつ伏せていた。普段からの驚異的な再生能力のおかげで、全員に怪我はない。

  視線を横にずらすと、ダウンしているザニーとクウガの馬が見えた。ガドル閣下の馬は本人が封印されたためか、既に地平線の彼方まで走っている。元気でな。

  そして目の前には、ガドル閣下怪人態のぬいぐるみが置かれていた。クウガによって封印されたグロンギたち共通の成れの果てだ。可愛らしいが、俺はこんな姿になりたくない。

  その時、青空が緑色の仄かな光に包まれる。オーロラとは違う。山の向こう側から天へと登っている光柱を起点にして、空が輝いている。

 

「あぁ、広域封印が始まるぅ……」

 

  これを受けて、クウガが呟く。光が俺たちの頭上にまで及んでいる事から、もう逃げても間に合わないようだ。

  そうか。やはりグロンギは全て封印される定めなのか。ぬいぐるみにされて、アイツラと同じ場所にぶちこまれるのは嫌だなぁ。封印されたら眠るのだろうが、嫌悪感は拭いきれない。ギノガの横に置かれたらどうしよう……。

 

「……はっ!」

 

  いつの間にか、俺の隣にメビオとガリマ姐さんが居座っているのに気づく。疲れていて察知が遅れた。

 

「ガリマはあっち行け! ガミオとずっと一緒にいるのは私だ! 渡さないぞ!」

 

「ん、ガミオと私は友達だぞ? 一緒に居たいのは私だって同じだ。離ればなれは……寂しいからな」

 

「お前ら、元気じゃん……」

 

  喧嘩腰のメビオと、はっきりした受け答えができるガリマ姐さんに俺はホトホト呆れる。それから二人は俺に肩を預けるが、あいにく受け止めるほどの元気はないので後ろに倒れてしまう。

  結果、面白い事に俺は二人に腕枕をする形になった。すると切り替えの早い彼女たちは瞬く間に腕枕を堪能し、疲れた身体を休める。布団の代わりが柔らかい草原で良かった。これなら封印されても安眠できそうだ。

 

「クウガ。俺たちがぬいぐるみになったらさ、保管場所を三人だけの空間にしてもらえない? もしくは専用の部屋」

 

「すみません……俺の一存じゃちょっと……」

 

「マジかよ……」

 

  封印ライフを快適するためにダメ元で頼んでみたが、このクウガにそこまでの力はないようだ。原始的な力がものを言う時代だから、クウガの発言力は相当だと思うけれど……もしかしてリントって、平和な民主国? 邪馬台国とは反対の道を進んでいるのか?

  それはさておき、空の光が一段と強まっている。この調子だと、封印されるまでの時間はごく僅かだろう。ライオたちと交戦しているグフたちとの安否確認すら取れない。

  彼らは大丈夫だろうか。それとも、ドムと同じく命を散らしてしまったのだろうか。残念ながら、俺はエスパーではなく普通のグロンギなのでそれを知る術を持たない。バルバを抑えているドラゴンフレアたちも気掛かりだ。

  グフ、ドム、ゲルググ、サク、サム、ブルホーン、ガトリングボア、バイパーウィップ、ドラゴンフレア。俺たちがまんまと封印されてしまうのを許してくれ。クウガを恨むんじゃないぞ。……この中で生き残りが何人いるのか、めちゃくちゃ不安だ。

  なお、独りでに獣形態へ戻った輝刃は、静かに俺たちの側に寄り添ってくる。ザニーたちは依然としてバテていた。ガリマ姐さんに乱暴に扱われたのに偉いよな、お前。

 

  やがて、空の輝きが増すごとに意識が遠のき、とてつもない眠気に襲われる。最後に見たのは、メビオとガリマ姐さんの寝顔だった。

 





Q.このシナリオの没ネタは?

A.

ダーゴ「主人の娘の持ち物であるミラクルライトを振ってみたが、何も起こらんぞ? やはり奇跡が起こせるのは映画の話か」

その時、不思議な事が起こった。

クチヒコ「……む! グジラの魂を通して、何者かが助けを求めている! ミミヒコ、グジラを押さえておけ!」

ミミヒコ「わかったぜ、兄ちゃん!」

グジラ「え、何? 何するの!?」

クチヒコ「これより鬼……じゃなくて、ネコ一族の代々より伝わる儀式をおこなう! 世界中のグジラの仲間に語り掛けて、パワーをガミオに!」

グジラ「何故その名を!?」

~世界を越えた先々~

イバエ「いいですとも!」

ジャモル「ガミオがビンチだモル!」

ガーゲ「ジャモル……遂に頭がやられたか……俺もそろそろ逝こう。堕ちれば楽だ」

ネズマ「ヒマワリの種だ! 受け取ってくれー!」

ネズモ「兄貴! あげるの違う!」


ガスポ「……あ、ガミオが見える。クチートから俺を助けに来てくれたのか……?」

そうして勘違いしたまま、ガミオに手を伸ばすガスポ。


ゴリギ「元気玉の要領だな? いいだろう!」


結果、赤狼騎士牙澪の鎧が黄金に輝き出し、ガドル閣下に逆転勝利。

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