漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話 作:erif tellab
時は流れて――
目を開ければ、俺に膝枕しているガリマ姐さんの姿が見えた。僅かに微笑みを浮かべては、俺の顔を見つめてくる。
メビオは俺の側でぐっすり寝ていた。眠っていても、俺の片腕をガッシリ抱いている。ちょっとやそっとでは振りほどけそうにない。
すると、ガリマ姐さんが優しく話し掛けてくる。
「起きたか?」
「起きました……え? なんで膝枕?」
「メビオがお前にしてもらった時、心地よさそうだったからな。どうだ?」
「悪くない、です」
「そうか」
そこで一旦話を止めて、俺はどうにか上半身だけを起き上がらせる。ガリマ姐さんの膝枕は嬉しいが、恥ずかしいし気まずい事この上ない。不興を買う前に起床するべし。
俺が寝ていたのは、開放感溢れる大きな石室の中。明らかに遺跡と呼べる場所だった。たくさんの光が外から差していて、灯りに困らない。
「ふにゅ……」
「あ、メビオも起きた?」
「んー?」
合わせてメビオも起床する。だが寝惚けているようで、何も捉えていない視線の向き方が少し不気味だった。はっきり覚醒するのは数秒後になる。
「ガミオぉ……」
「おーよしよし。メビオは甘えん坊さんだなー」
「うふふっ」
早速メビオが抱き付いてきたので、その頭を撫でる。嬉しそうな声を漏らし、俺の腕の中で目を細めた。
「取り敢えず、外行くか」
次にそう言って二人を外に連れていく。現在位置がまるでわからないが、動いてみない事には何も始まらなかった。
外で待っていたのは森と、キツい傾斜。どうやら山の中であるようだ。そのまま下り道に出ると、深く茂る木々を抜けたところで麓の景色が一望できる。そこには見るも懐かしい、現代の街が建ち並んでいた。街の周囲は山で囲われ、大阪や都心並みの発展を果たしていない。
全く意図せずに辿り着いてしまった。俺がかつて生活していた空間に。弥生時代ではお目にかからない光景にメビオは興奮し、ガリマ姐さんは唖然しつつも観察するのを怠らない。
「ガミオ! なんか変な家がたくさん並んでるぞ! 数えきれない!」
「なんだか窮屈そうだ。それに、空気が少し変な気もする……」
ガリマ姐さんの指摘通り、少々の息苦しさがある。十中八九、経済発展の弊害だろうな。ここが中国の都市部でなくて本当に助かった。
「ガミオ、麓まで下ってみるか?」
「あ! 私は行ってみたいぞ! ほら、ガミオー!」
「コラコラ、引っ張るな」
ふと聞いてきたガリマ姐さんに続いて、メビオは有無を言わせぬ勢いで俺の手を取る。道中で鼻唄も奏でていたから、麓の先が楽しみで仕方ないようだ。
途中からガリマ姐さんも無言で俺と手を繋いできて、三人一緒で仲良く下山する。長き封印から目覚めたばかりにしてはブランクは微塵として感じられず、道なき道でもスイスイと乗り越えられた。整備された公道を探すのが面倒とは言ってはならない。
相変わらず、グロンギの驚異的な身体能力は健在だ。封印が冬眠みたいな扱いだったせいか、腹は減っていない。時代が西暦二千年以降なら今まで通りのサバイバル生活が法律云々で厳しく制限されてしまうから、根なし草の俺たちが現代社会に溶け込むには苦労すると簡単に想像できる。
それを考えれば、他のグロンギたちの基本スタイルがヒャッハーと暴れるか、誰かに成り済ますかの二択で色々と豪快すぎた。古代人の戸籍管理とか作成とか、頼めば役所の人は作ってくれるのかなぁ……。信じてもらえないようなら、わざと怪人態を披露しなければならないぞ。
役所務めの人間とグロンギ怪人態の二者面談……。これが上手く成功した後はどうしようか? メビオとガリマ姐さんと農業や畜産に携わってみる? 意外と性に合いそうだ。
そうして将来を思い浮かべていると、メビオが小首を傾げながら尋ねてきた。
「ん? どうしたんだ、ガミオ?」
「これからの事考えてた。なるべく楽しく暮らしたいなって」
俺のそんな言葉にきょとんとした表情になるメビオ。それからクスリと笑い、「私は毎日楽しいぞ、ガミオと一緒だからな!」と元気に返した。笑顔は純真さに満ち満ちていて、見ている側がほっこりするぐらいに微笑ましい。
「もっと楽しくなるさ、きっと」
そして次の瞬間には、ガリマ姐さんがそう付け加えるのだった。メビオは珍しくガリマ姐さんの発言を肯定し、満足げに頷く。
前向きになっているおかげで、明るい未来が自然と見えてくる。二人といれば、どんな困難も打破できそうだ。ガドル閣下との戦いは金輪際やりたくないが、些細な平和さえ壊そうとするのであれば、俺は誰とだって戦ってやる。全てはのんびり暮らすために。
「ミラクルワールド長野市へようこそ! 私はコマチャンダー! スーパー1より上手にガイドできるのだ!」
「……キン肉バスター!!」
「ぴゃあああぁぁぁぁぁぁ!?」
だから、例え相手がいたいけな少女でも、悪の組織ジンドグマ所属かつコマサンダーの親類だと容易に見当がついたので、慈悲はなかった。
※
かくして、全てのグロンギは封印された。多くのクウガの命を代償に発動した大規模封印は長野の隅々にまで行き渡り、誰一人としてグロンギを逃さなかった。
大半のグロンギ封印態を納めた施設は、後に九郎ヶ岳遺跡と呼ばれる事となる。封印状態を完璧に近いレベルに保つため、後年は人柱としてクウガが生きたまま埋葬される。そのクウガの名は、リク。齢五十を迎えた頃の話だ。
それでも余った封印態は各地で小分けにして納められた。管理の手間が増えるが、小分けにした分だけ封印状態が安定し、人柱を必要としない。唯一の例外は、ゴ集団に属する強力で邪悪なグロンギだった。
これにて、平成の世に至るまでクウガが必要になる事はない。他のクウガたちは次第に引退していき、彼らを生み出したリントはやがて歴史の影に消えていく。だが、彼らの遺したものはなくならかった。
魔石ゲブロンを動力源にした雪だるまたちは、ガミオが封印されると同時に機能を停止。素材が雪であるため、ザクⅡ以外は溶けてなくなる。ザクⅡはクウガよりエネルギーを分けられても動かなかったが、リントと共闘してくれた感謝の意味も込めてゴウラムと共に保管された。
そして、ザクⅡの主人である者の名が有志によって碑文に刻まれ、後世へと語り継がれる。その内容は現代語訳すると、次の通りである。
あるところに赤狼の戦士がいた。戦士は狼の鎧に身を包み、クウガと共に邪悪なグロンギを打ち払う。
心穏やかな戦士は同族であるグロンギを裏切り、幾度に渡ってリントを助け、ゲゲルを終結へと導く。己が封印される時が迫っても、決して見苦しい姿を見せなかった。
また、戦士の側には必ず仲間がいた。豹の戦士と蟷螂の戦士だ。加えて、彼らの元に多くのしもべが従っていた事も、ここに記す。
しかし時が経つにつれて、彼らの名も歴史の影へと埋もれてしまう。覚えている者は誰一人としておらず、半ば死者と同じように忘れ去られていく。生きてきた証は跡形もなく消えるか、長きに渡って人目に付かないかの二つだった。
それでも、彼らはあくまでも封印されているだけ。眠っているだけだ。骸たちとは違って、魂は未だに肉体に宿っている。ひとたび眠りから目覚めれば、人々の間で再び語り草となるのは難しくない。
来たるべき運命の日まで、彼らは今も眠り続ける。狭く閉ざされた暗闇の中、古代に生きたリントたちの記憶の奥底で。
そして、現代へ――
「ユウスケー! そっちにゴキブリが逃げたぞー!」
「えっ、マジで!? あ、ほんとだ! メビオちゃん、逃げて!」
「にゃあぁぁぁ!?」
「メビオはゴキブリが苦手なのか。意外だな。……ほら、仕留めたぞ」
「「おお~」」
A.え? 終わり?
Q.はい。
A.う、嘘だ! そんなの嘘だ!
Q.次回以降は時系列をガン無視した番外編となります。
A.認めない! 番外編なんて認めない!
Q.現代になってしまったのでご了承ください。
では次回、「ベミウに母性が目覚める」