漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話   作:erif tellab

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その頃、悪いものを食べたガドル閣下は相棒のデムドと一緒に新婚旅行という名の大ショッカーとの戦いに身を投じていたり……


番外編2。ゴオマちゃん

 グロンギ広域封印の日、ゴオマは一人でこっそりとンのベルトの破片が納められていた墓地へと来ていた。破片を手に入れて狂ったように喜ぶものの、いざ一個ずつ丁寧に取り込んだ瞬間に封印が発動。彼はンのなる事を夢に見ながら、深い眠りへと着いた。

 そして時は流れて平成。経年劣化でゆるゆるになっていた封印が解けたため、ようやくゴオマは目覚めた。日の光を浴びても拒絶反応は起きず、身体の奥底から力が溢れてくるのを感じる。瞬間、ゴオマは己の圧倒的なパワーアップを自覚し、ほくそ笑んだ。

 

「やった……やったぞ! 俺はンのベルトの破片を取り込めていたんだ! あとは、破片を全て集めるだけ……フフ、フハハハ!フハハハ! アーハッハッハァ!! ……ん?」

 

 そこまで大笑いしていると、ゴオマは何か気づいた。どういう事か、自分の声の音が女のように高いのである。心なしか、目線も低くなっているような気がした。改めて、自分の状態を確認する。

 ボロボロのマントにシャツとズボン。靴は履いておらず、誰から見てもみすぼらしい格好であるのがわかる。身長も、小学生ぐらいにまで縮んでいた。

 しかし、肉体の変化はそれだけではなかった。無言で静かにズボンの中を確かめると――男の象徴が綺麗さっぱりなくなっていた事に気づく。

 

「……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 遅れて、甲高い悲鳴を上げるゴオマ。この日、彼は究極幼女ズ・ゴオマ・グへと生まれ変わったのであった。

 

 それから、ゴオマは自分に起きた変化を確かめた。わかったのは人間態のスペックが人並みに高い事と怪人態に変身できない事、大好きな生き物の血を受け付けない事だった。

 これにはゴオマちゃんは困り果てた。大好きなゲゲルが満足にできない上に、吸血もできないのだから。先ほど、食料として生け捕りにした小鳥にがぶりついてみたが、血を口に含ませた瞬間に脳が「ゴオマちゃんが食べていいものではありません!」と拒絶してしまったのだ。

 

「ぺっ! ぺっ! うぅ……」

 

 血を吐き出し、大きく肩を落とすゴオマちゃん。それでも彼女は諦めず、ひとまずは小鳥を丸焼きにして食べた。血と比べて格段と美味しかったと、感想に思った。

 こうしてゴオマちゃんの放浪の旅が始まる。大昔よりも空気が汚れているのが辛かったが、ンのベルトの破片でパワーアップした身としてはそれほど苦でもない。ゴオマちゃんはリントを狩るゲゲル的に誇り高いグロンギなのだ。やがてはンの称号を手にするぐらいの気概がある。それぐらいの事でへこたれてどうするのだろうか。

 自分が眠っていた遺跡がある山を下った先には、現代の街が広がっていた。もちろん、古代の原始的な住宅しか知らないゴオマちゃんは目を見開いた。

 

(なんだここは……リントの里なのか?)

 

 街に入ったゴオマちゃんは辺りをキョロキョロと見回す。自動車、横断歩道、信号、ビル、マンション。全てが彼女にとっての未知の存在であった。

 そのため、同じく道を行き来する人々の視線が向けられても、自分が現代人にとって浮いている事にも気づかない。完全に目新しい文明に釘付けになっていた。

 

「ねぇ、君。 どこの子かな? そんな格好で出歩いてるなんて、親はどうしたの?」

 

 しばらくすると、パトロール中の警察官がゴオマちゃんの元に駆け付けてきた。ゴオマちゃんはンのベルトの破片のおかげで知力が跳ね上がっているため、彼の話す日本語が理解できる。彼女はおもむろに答えた。

 

「そんなものはいない。それよりもここはどこだ?」

 

「えっ!? えっ、ちょっ、えっ!? こ、孤児!?」

 

 ゴオマちゃんの口からさらりと語られた事実に警察官は激しく動揺する。それは周りの野次馬たちにも瞬く間に伝播していき、次々と彼女をスマホのカメラに収めようとする。

 一方で親無しの意味を重く受け止めていない彼女は、どうしてこんなにも騒ぎ立てられるのかがわからなかった。とりあえず落ち着きを取り戻した警察官が、再び質問をしてくる。

 

「えっと、本当に親はいないの? 親戚とかは? 」

 

「だからいないと言っているだろう。早く俺の質問に答えろ」

 

「なんてクールな幼女なんだ!? あー、えっと、ちょっと待ってね。今、上司と連絡取るから……」

 

「ちっ、もういい」

 

 話をろくに聞いてくれない警察官に気を悪くしたゴオマちゃんは手刀を構える。しかし、ある事が思い至ったので警察官を手に掛けるのを止める。

 

(勝手に殺したらバルバがうるさい)

 

 脳裏に浮かぶのは、バラのタトゥーの女。あくまでゲゲルのムセギジャジャを貫き通していくと考えていたゴオマちゃんは、歯痒い気持ちになりながらも勝手な殺人を自重する。それはンのベルトの破片を取り込んだとしても、変わらなかった。

 すると、近くをたまたま通りすがろうとする大型トラックを目にした。あれに乗れば移動が楽だと思ったゴオマちゃんは、迷わずにトラックに向かって高く跳躍。見事、コンテナの上に着地するのであった。

 

「あっ!? おーい!!」

 

 後ろから聞こえる警察官の声を無視し、正面だけを見据える。自動的に景色が移動していくという初めての経験に彼女の心が不意に踊った。気がつけば、柄でもなく鼻歌を歌っていた。

 それからもゴオマちゃんは大型車の上を乗り継いだりなどして、主に長野県内を中心に各地を巡った。時には道端に落ちていた小銭を拾い、時には商店街で食べ物をくすねたり、またある時は無断でこっそり簡易宿泊所に泊まったり。彼女の悪事は留まる事を知らなかった。

 だが、途中で彼女は察する。どこを行っても自分以外のグロンギがいない事を。封印から目覚めたのが自分だけなら、ゲゲルを勝手にやろうにも監督役である『ラ』がいないので昇格もできないと。それでは、ただの快楽殺人をやるだけで実質的な意味がないと。以前のゴオマちゃんであればここまでの知恵はなかったが、生憎とわかってしまった。

 そのため、ゴオマちゃんは他のグロンギが眠っているであろう遺跡の捜索に奔走する事になった。全てはゲゲルのため、ダグバを倒してンの称号を堂々と得るため。

 そんなある日の出来事。水分補給にと自動販売機を壊してリンゴジュースを手に入れたゴオマちゃんは、ストローでちうちうと吸いながら電気屋の横を歩いていた。すると――

 

『みんな、抱き締めて! 銀河の、果てまでぇー!』

 

「……」

 

 ガラスで遮られた見世棚に置かれている液晶テレビに、アイドルとして歌って踊っているゲラグの姿を見つけてしまった。顔見知りのとんでもない変化にゴオマちゃんは絶句し、その場でしばらく立ち尽くす。

 

(な……なんだこれは……? 伽部凛? いや、お前ゲラグだろ。ゴ・ゲラグ・ギだろ)

 

 わなわなと震え出すゴオマちゃん。彼女の胸の内に募るのは、リントの真似事をしているゲラグに対する怒りではなく、むしろ清々しいまでの侮蔑だった。全力でバカにしたい衝動に駆られる。

 だが、そんな考えは次のニュースを見て変わった。

 

『ニュースです。小学生ぐらいの女の子が、各地で窃盗などを働いています』

 

 画面には、防犯カメラのとある映像が映し出される。それは、まさしくゴオマちゃんが自動販売機を破壊している瞬間を収めているのであった。

 これはマズイと本能的に悟ったゴオマちゃんは、大急ぎでリンゴジュースを飲み干す。全身の冷や汗が止まらず、心臓の鼓動は激しくなるばかり。このような経験は、ガミオとメビオに簀巻きにされて太陽の下に出された時以来だ。

 テレビを見るのもほどほどにして、ゴオマちゃんは走る。今まで何ともなかった通行人たちの視線が、無性に突き刺さって落ち着かなくなる。とにかく、すぐにでもこの場から逃げ出したかった。

 しかし、適当なビルの屋上まで行き着いたところで、最悪の事態を迎えてしまう。

 

「幼女発見! 幼女発見!」

 

「よーし、ペロペロしちゃうぞー」

 

「可愛い幼女は拐っちゃおうね」

 

 やって来たのは様々な怪人たち。紳士の風上にも置けない、最低野郎共の集団であった。ニュースを見ていた彼らは、ゴオマちゃんを誘拐しようと画策するのであった。

 復活からだいぶ時間が経っても、ゴオマちゃんはまだ怪人態に変身できない。高カロリーの食べ物を盗んでは食べての繰り返しで身体の栄養不足は改善されていたが、それでも人間態のスペックが高くなるだけ。顔面陥没が起こせる一トンパンチが出せれない現状、この怪人たちに成す術はなかった。

 最低野郎共に囲まれ、壁際へじわりじわりと寄せられる。怖笑顔で近づいてくる彼らに、ゴオマちゃんは思わず目尻に涙を溜めてしまう。

 

(どうして……どうして俺がこんな目に……!)

 

 その時、不思議の事が起こった。

 

「待てぇい!」

 

 突如として掛けられた声に、最低野郎共は振り返る。するとそこには――

 

「最強の怪魔ロボット、デスガロン!」

 

「海の使者、クジラ怪人!」

 

「クラブオルフェノク!」

 

「白鳥の勇者、キッグナス!」

 

「バガモンもいるのだガー!」

 

 怪魔ロボット、ゴルゴム怪人、オルフェノク、ゾディアーツ、バグスターの五人が揃っていた。名乗りを終えるや否や、デスガロンが口を開く。

 

「あどけないグロンギの少女を拐おうとする悪党どもめ! 貴様らはこのデスガロンが許さん!」

 

 瞬間、ゴオマちゃんは目と耳を疑った。グロンギみたいな連中が自分を助けに来たかと思いきや、こちらの素性をばらしていないにも関わらず“グロンギの少女”と呼ばれたのだから。

 ゲラグと言い、最低野郎共と言い、デスガロンたちと言い。目まぐるしく訪れる非日常に、ゴオマちゃんは一度思考を放棄する。こうしている内にも、目の前にいた悪党はデスガロンたちによって成敗された。

 その後、トントン拍子で保護されたゴオマちゃんは怪人用更正施設へと入れられた。施設の経営をしているのは、仮面ライダーにぼこぼこにされて悪の組織としての活動に嫌気が差し、心を入れ替えて愛と平和のために戦う事を決意した怪人たちが所属する法人団体である。

 また、更正施設といっても外への接触は割りと自由だった。そのため、コマサンダーの妹であるコマチャンダーが度々やって来ては、ゴオマちゃんと遊んだりする。

 

「よろしくゴオマちゃん! 私はコマチャンダー! コマちゃんって呼んでね!」

 

「ちゃん付けするな」

 

 バゴっ!

 

「ぴえぇぇぇぇぇぇん!!」

 

 もちろん、初めて出会った頃はゴオマちゃんがコマチャンダーに暴力を振るったりと、あまり穏やかではなかった。しかし、問題を起こす度に綺麗な王蛇が駆け付けてくるので、初めはトゲしかなかった彼女も次第に丸くなっていく。

 

「バガモン。このチーズバーガーとやら、かなり美味いぞ。モグモグ……」

 

「本当だガ? えへへ、それは何よりなんだガ!」

 

 ただし、丸くなったとはいっても不満の一つや二つは存在する。それは――

 

「嫌だぁ! 着たくない! ドレスなんて着たくないぃぃぃぃ!?」

 

「よろしい。なら、ゴスロリではなくチャイナ服で妥協しよう」

 

「げぇっ、ガリマぁ!?」

 

 自分の着る服の問題であった。最初はボロボロの服を着ていた彼女であるが、周りからは「そのままではいけない」と言われたのである。まだ男としての矜持が残っているゴオマちゃんとしては、服を与えられるという名目で着せ替え人形になるのはご免だった。

 しかしながら、ンのベルトの破片を取り込むタイミングと封印エネルギー注入が合わさった化学反応により、とても可愛らしい少女に生まれ変わったのが運の尽き。結局は、多くの者たちに集られてしまうのである。

 

「うわー! ゴオマちゃん、とても綺麗だよ! 私が保証するのだ!」

 

「うぅ……」

 

 そう言って目を輝かせるコマチャンダーと、のの字を書きながら座り込むゴオマちゃん。その日、ゴオマちゃんはコマチャンダーに目一杯誉められ、慰められた。

 だが、ここで挫けてしまう程ゴオマちゃんは弱くはなかった。絶好の機会を見計り、更正施設からの脱走を試みる。

 深夜。周りには誰も居らず、自分の最も好む時間帯。この時の彼女は、今なら怪人態になれると予感めいたものを抱いていた。ゲブロンの力を引き出すイメージを欠かさず、いつものように大空へ羽ばたこうとする。

 

「……あれぇ?」

 

 ふと飛び立つのを止めたゴオマちゃんは、おもむろに自分の身体を確かめる。良く見てみれば、怪人態に変化できたのは両腕のみであった。それ以外は可愛いリントのままで、愕然とする。

 

「あっ、コラ! ゴオマちゃん! 脱走するんじゃない!」

 

 危うく茫然自失になりそうだった時、後ろからクジラ怪人が追い掛けてきた。我に返ったゴオマちゃんはそそくさと逃げ出そうとするが、忽然と正面を立ち塞いだ人物の顔を見て戦慄する。

 その狼を模した全身鎧は、遠慮なくゴオマちゃんのトラウマを刺激する。顔を直視しようとするものならば、酷く狼狽して物事を考えられなくなる。そう、そこにいたのは――

 

「悪い子はいねがー? 悪い子はいねがー?」

 

 赤狼騎士、牙澪であった。

 

「……うわああぁぁぁぁ!? バガモォォォォォン!!」

 

 この後、バガモンに抱き着いて助けを求めた彼女は、やがて泣き疲れて眠りに落ちた。




Q.オマケください。

A.

ある日、プリキュアのEDのダンスを踊っているメビオとコマチャンダーを目撃したゴオマちゃん。

ゴオマちゃん「……俺は何も見ていない」

メビオ「忘れろォォォ!!」

ゴオマちゃん「あばぁ!?」

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