漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話   作:erif tellab

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なんか好評だったので、もう一話。ガリマ姐さんとか、ベミウとか、ジャーザとかは他に任せます。


究極の闇そのものよりも、闇を照らす希望の光になりたかった

 どうして俺はガミオになってしまったのだろうか。どうしてゲゲルをサボれないのだろうか。サボればもれなく粛清される。良くも悪くもグロンギは実力社会だ。ダグバ怖い。

  今、赤狼の怪人態に変身している俺の目の前には、四人の戦士が立ち塞がっている。

 

  赤の戦士、クウガ・マイティフォーム。

 

  青の戦士、クウガ・ドラゴンフォーム。

 

  緑の戦士、クウガ・ペガサスフォーム。

 

  紫の戦士、クウガ・タイタンフォーム。

 

  完成、真・地獄絵図。

 

「……バンデアグムザ」

 

  やたらと既視感を覚えるが、流石は古代のクウガだと誉めてやろう。俺は玉砕覚悟で四人の戦士に立ち向かっていった。結果はお察しだ。

 

  ……緑のクウガの時間制限がまるでなくなってるなんて、ふざけるなよなぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

「――ミオ、ガミオ。起きろ」

 

「……ハッ!」

 

  朝。メビオに揺さぶられた俺はとりとめもなく目覚める。なんだ、夢か。

  そうして俺が起き上がると、間もなくしてメビオが朝食をねだってきた。

 

「腹へった。ご飯作れ」

 

  うん、実に端的で命令口調なお願いだ。礼儀がまったく感じられない。それは古代に生きるグロンギゆえに仕方ない事なのだが。

  ただ、俺にはそこまで準備してやる義理はない。単に食べ物を用意するだけなら、メビオも普通に一人でこなせる。なので、起こされた恨みを軽く込めて言い返す。

 

「いや、自分で用意できるだろ、それぐらい」

 

「ガミオのご飯の方がうまい」

 

「それは……ちくしょう、言い返せねぇ」

 

  まさしく、人間の味を覚えてしまった熊と同義。メビオが積極的に俺から飯をたかるのは自明の理でしかなかった。彼女の純心な眼差しを浴びながら、俺はほとほと呆れ果てる。

 

  俺の生活拠点はグロンギたちの集落と離れている。理由は簡単、全然平和じゃないからだ。己はグロンギにしては異質だと自覚しているので、余計なちょっかいも避けたかった。

  家はシンプルな竪穴住居。隠れるようにして存在するここは現状、バレているのがメビオとバルバのみ。ラの階級の人は本当に捜査能力がおかしい。やはりゲゲルを辞退できる可能性は低い模様。

  近くには、とある村跡から回収した小麦を植えた小さな畑が一つ。下手くそながら、粘土と石ころを材料にしたかまども作ってある。これらをグロンギの集落のど真ん中で作った暁には、問答無用で荒らされる事は間違いないだろう。

  それでも、俺はれっきとしたした文明人でありたい。創造の伴わない破壊はしたくない。そもそもグロンギやめたい。

 

  そんな事を思いつつ、昨日の内に発酵させておいたパン生地を二つ、かまどで焼いておく。予熱も忘れてはならない。小麦が弥生時代の日本に伝来していて本当に良かった。

  焼き終わればバターロールくらいの大きさになるだろうか。この間に果実を潰し、それをジャム代わりにする。

  ふと視線を横にずらすと、パン生地を焼いている真っ最中のかまどの前で座り込むメビオの姿があった。身体を左右に小さく揺らしながら待っている様子は健気で、とてもグロンギとは思えない。時々、パンから発せられる香ばしい匂いも嗅いでいた。

  パンの香りにすっかり頬が緩むメビオ。その気持ちはわからなくはない。俺も伊達に狼の怪人に変身できる訳ではないから。嗅覚は犬並みだ。

  そのため、食べ物の焦げ加減に関しては人一倍敏感にもなれる。目だけでなく匂いでパンの焼け具合を測り、ここぞというタイミングでかまどから取り出す。パンはちょうどよく出来上がっていた。

 

「おお~!」

 

  パンはメビオにとっての未知の産物であるので、彼女は目をキラキラ光らせながら笑顔になる。

  端からそれを見れば、過去に何度も作る練習をしておいた甲斐があったものだと実感できる。もうゲゲルの参加資格を剥奪して、こうして食べ物とかで釣ればメビオは幸せになれるのではないだろうか。いや、無理か。

  今日の朝食はジャム塗りのパン。時代を考えれば、かなり贅沢な食事である。

 

 

  その後、朝食を終えて片付けを済ませると、俺は動物たちの皮で出来たバッグを背に出掛ける。バッグの中身はとにかくたくさん。右手には、先端部を骨で代用した銛を持つ。

  すると、メビオが首を傾げながらひょこっとついてきた。ツンツンと指を軽く突いてきて、こちらの気を逸らしてくる。

 

「なぁなぁ。今日はどこに行くんだ? その槍、少し変だぞ」

 

「槍じゃなくて銛。海に行く」

 

「海!?」

 

  その時、メビオはやけにすっとんきょうな驚きを見せた。思わず気になって彼女の方を振り向くと、左腕をガッシリ掴まれて歩きを阻害される。

 

「海はダメだ! そんなのよりも私とまた戦え! ユーイギだぞ!」

 

「また今度な。嫌ならついてこなくてもいいし……」

 

「ダメだ! 考えなおせ!」

 

  そう頑なに言ってメビオは俺の腕をぐいぐい引っ張って離さない。このままメビオごと引き摺って前に進もうにも、彼女の機嫌が拗れる予感するので気が引ける。

  一度立ち止まり、メビオと互いに目を合わせる。しばらくは彼女もムッと構えていたが、時間が経つにつれておどおどし始める。その黒曜石みたいな光沢を持つ瞳には、何らかの期待が込められているようだ。

  そして、メビオの握る手の力が不意に弱まる。この隙に俺は怪人態に変身し、瞬く間にその場を離脱した。

 

「じゃあの」

 

「あっ!?」

 

  直後、メビオも変身して鬼ごっこを仕掛けてきたのは言うまでもない。

 

 

  そんなこんなで浜辺に到着した。ここまで怪人態で走ってきたが、途中でクウガや一般人たちに出くわさなかったのは行幸だ。

  まず焚き火を起こし、バッグから必要な調理器具を取り出して準備を整える。どんな魚介類を取って、どんな風に調理するかは未だに迷っている。

  俺は依然として怪人態のままで、海に臨んでいく。身体能力が跳ね上がるのだから使わない手はない。一方で人間態に戻っていたメビオは、海辺から離れた場所で切なさそうな雰囲気を醸し出しつつ、こちらを静かに見守っていた。

 

「いくぜ、エントリイイィィィ!!」

 

  銛を片手にいざ海へ。俺は声高らかに叫びながら、水中へ大きく飛び込んだ。気分はズゴック、ゴッグ、ハイゴッグだ。

  五十匹も狩るなんて真似はしない。あくまで獲るのは、自分で完食できる分だけだ。メビオの分も考えておこう。

  素人ながらも懸命に水中探索を続ける。ちょっと浜辺から遠く出てみれば、悠々と泳いでいる魚はあちこちで見掛けるようになる。

  これは眺めているだけでも楽しい。時代が漁業権などの法整備がガチガチに進んでいる現代ではなくて良かったとさえ思えてくる。グロンギになってしまったのは少し悲しいけど。

  そうこうしていると、岩影で一匹のタコを発見する。俺の片手では収まりきらないほどの大きさだ。

  よし、あれにしよう。そう思って俺はより深く潜水し、間髪入れずに銛を突き立てる。

 

  ようやく捕らえられたのは三分も経過した頃だろうか。水中だと思うように動きが取れず、吸盤で岩に張り付くタコには苦戦を強いられた。銛を何度刺してもなかなか力尽きず、素手に掴みに行けば触手が腕に絡みついてきてと散々だった。

  それでもグロンギの持つ怪力でごり押し、強引に岩から剥がして止めを決める。タコを銛で串刺しにして、やっと水上へと顔を出す。

  息継ぎなしでタコと三分間もの水中戦なんて、並みの人間では不可能に近いだろう。これでゲゲルがなければ、もっと素直にグロンギである事に喜べたかもしれない。

  数分ぶりに呼吸を取り戻し、大気中の酸素を存分に肺に取り込む。心臓がバクバクと鼓動が激しくなっていた。

  そうして浜辺までに戻ろうとした時、海面に浮かんだ謎の物体を目にする。それは漂流物にしてはやけに不自然すぎて、まるでマネキンが溺れているような――

 

  ……ん?

 

「メビオぉぉぉぉ!?」

 

  あの見慣れた皮のブレザーは間違いなくメビオのもの。だとすれば、何故かメビオが海に流されていると考えるのは当然だった。

  急いで助けに入ると案の定メビオが溺れていて、そのまま浜辺の上に運ぶ。タコを刺した銛を適当な場所に置き、メビオを仰向けに寝かせる。

 

「おい大丈夫か!? しっかりしろ!」

 

「……ケホッ、ケホッ」

 

  大声で呼び掛けると、目を固く閉じていたメビオは途端に咳き込み、覚醒する。次にゆっくり上半身を起こすメビオの姿に、俺は胸を撫で下ろす。

  だが次の瞬間、メビオがキッと目を見開いたかと思うと、形振り構わず走り出す。自分が溺れたばかりの海に。俺は咄嗟にメビオを後ろから羽交い絞めにして食い止める。

 

「おい待てぇ!! 溺れたばかりなのにどうしてまた海に向かうんだよぉ!?」

 

「ガミオが泳げて私が泳げないのくやしい! イライラする!」

 

「なんでそんなに自分を追い込むんだ!?」

 

「放せぇー!」

 

  涙声でジタバタ暴れるメビオ。これを収めるのにはかなりの時間を要した。

  メビオを鎮めた後、タオル代わりに布を渡して焚き火の前に座らせる。俺は人間態に戻り、絞めたタコを茹でている。

  あれから聞いたメビオの話によると、タコとの戦いで海の深くへと消えた俺を見て、居ても立ってもいられなくなったらしい。パンを焼く時は待てたのに、どうして水中戦の決着がつくのを待てなかったのだろうか。

 

「元はといえばガミオのせいなんだ。海に潜ってぜんぜん戻ってこなかったから」

 

「それ、心配してくれたって事でいいのか?」

 

「してない」

 

  事の真意を尋ねてみると、メビオはプイッと顔を逸らす。頬を膨らませ、口を尖らせていた。

  彼女の機嫌はあからさまに悪くなっている。しかし、いざタコ料理が出来上がるとホクホク顔で口にするのだった。今日の昼食は干した貝と海藻の出汁を使ったタコスープ、タコの刺身、タコの丸焼きである。

 

  食事と後片付けをあらかた済ました後は、俺に対抗心を燃やしながら泳ぐ練習をするメビオの面倒を見る事になった。始めは拙く、大人しく浮かぶ事すらも怯えてできない有り様だった。

  しかし、ゆっくり時間を掛けて教えてやれば造作もなく、三十分も経てばコツを掴んだみたいだ。まだまだぎこちないが、俺の手を借りずとも泳げるようになる。

 

「みろみろ、ガミオ! 私だって頑張れば泳げるんだからなー!」

 

「俺が教えてようやっとだけどな」

 

「ムッ! それはなしにしろ!」

 

「はいはい」

 

  俺がそう返事をすると、メビオはすぐさま泳ぎの練習に戻る。彼女が一生懸命に平泳ぎしているのを見守っていると、ほっこりしてしまいそうだ。グロンギに生まれて良かったと錯乱しかける。

  でも、できる事なら狼繋がりで魔戒騎士になりたかったなぁ。あれはやり甲斐系ブラック企業で、グロンギと比べると守りし者でいられる分ずっとマシだ。

  どんぐりの背比べ? 気のせいだろ。

 

「あぶっ! 足、つったぁ!」

 

「っ!? 今助ける!」

 

  メビオの助けを求める声に応じて、俺はすかさず海に入る。救助後にわーんと泣きつかれたのは目に新しかった。

 

 





Q.ガミオ羨ましいなぁ、この野郎。

A.そんな貴方に、メ集団やゴ集団の見目麗しい女性怪人を。
……え? 不良娘のザザルは嫌だって? ザザルさん、こいつです。溶解液で一思いにやっちゃってください。
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