漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話   作:erif tellab

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グロンギは普段、何を食ってるのだろうか。


努力なくして力を得られても、リスクや代償は覚悟しないといけないらしい

 草一本も生えていない殺風景な山の上。俺は何故か、白のクウガと向かい合っていた。

 

「大変だ、ガミオ! ゴオマがンのベルトの破片を取り込んだ!」

 

「え、クウガ? なんで? しかも白いし」

 

  俺の両肩に手を置きながら、捲し立てるようにそう告げてくるクウガ。思わぬ出来事に、人間態でいる俺は困惑を隠せない。

  目の前のクウガはグローイングフォーム――角が小さくなった白い姿だ。この形態はめちゃくちゃ弱い。

  なんだろう。全然状況が掴めない。クウガが俺の名前を知っていたり、グロンギである俺へ妙に馴れよって来たりと、不思議な事ばかりだ。さらには俺の疑問を無視するかのようにして、自分一人で勝手に話を進める。

 

「もう……もう奴を止める手立てはないのか……!? もう、どうしようもないのか!?」

 

「ねぇ、聞いてる? その声ってもしかして小野寺くん? 小野寺ユウスケくん?」

 

  そんな俺の言葉にクウガはまともな返答をせず、ずっと恐々とするばかりだ。

  一体、何がクウガをここまで怯えさせているのかと思えば、先ほどの発言が甦る。ゴオマがンのベルトの破片を取り込んだ、と。途端に俺も身震いする。

  所詮はゴオマだと侮りたいところだが、ンのベルトによる強化を受けた彼はゴ集団の中堅たちと互角に渡り合えるほど強くなっている。ガドル閣下やダグバ不完全体にはボコボコにされたとは言え、金の力を得たクウガには終始優勢に戦えていたのは確かだ。

  ズのグロンギをそこまで強化させるとは、ンのベルトの破片は本当に恐ろしい。かくいう俺もズであるので、強化の影響で太陽光すら克服してしまったであろうゴオマとは微塵たりとも出会いたくなかった。軽く死ねる。

  次の瞬間、俺たちから離れた場所に光がスポットライトの如く放たれる。光の出所はよくわからない。

  それに気づいた俺とクウガは咄嗟に振り向くと、光の中に人影が一つ見えた。逆光で顔は確認できなかったが、身体の線から人影は女性だと判断できる。

  女性はゆっくり前に歩き出し、詳しい姿が次第に現れる。そして、クウガが女性に指を指しながら、大地を震わさんばかりの声量で叫び出す。

 

「究極生命体、ズ・ゴオマ・グの誕生だああぁぁぁ!!」

 

「いや、アイツ誰だああぁぁぁ!?」

 

  クウガの叫びとともに本格的にこの場へ舞い降りた女性を目の当たりにして、俺は思わず大声でつっこんでしまった。

  女性的な細さを残しながらも引き締まった肉体に、風でたなびくセミロングの黒髪。服装はタンクトップに長ズボンと、女性が人前でそんな風にしていて良いのか疑うような格好をしている。胸は随分たわわと実り、くびれが綺麗に決まっていた。

  俺の知る限り、ここまでのダイナマイトボディを誇っているのはジャーザしかいない。あの女性がゴオマだなんて、あのくりっとした目を持っているがゴオマだなんて、到底信じられなかった。

 

  副作用? ンのベルトの破片が偶発的に引き起こした副作用か何かなの? 族長交代にそんなリスクがあったの?

 

  腰に手を当ててかっこよく佇んでいるゴオマに茫然としていると、隣からクウガとは全く違う誰かの声が聞こえてくる。

 

「逃げよう、ガミオ!」

 

「メビオ!? お前、いつの間に!」

 

「ハアァァァ……!!」

 

  突然のメビオの登場に驚く暇もなく、俺の気も知らずにゴオマは何やら気迫の篭った声を発する。ものすごく嫌な予感しかしなかったので、メビオと一緒に怪人態に変身して咄嗟に逃げ出した。

  その際にクウガはどうしようかと考えるのも束の間、彼は飛行する装甲機ゴウラムの背の上に乗り、俺たちと横に並んでゴオマから逃げていた。

  それから、とても慌てふためいた様子でクウガは俺に話し掛けてくる。

 

「う、うわー! 逃げてどうするんだよ、ガミオ!」

 

「うるさい! こっちも何が何だかわかってないんだよ! つーか、ユウスケ……ライジングアルティメットになってこいよ! あれ、お前だけの最強フォームだろぉ!?」

 

  そうやって言い返している傍ら、遥か後方に置き去りにされたゴオマは声高らかに宣言する。

 

「ダグバ……やってやる! 必ず殺す! だがその前にガミオ……貴様からだ!」

 

  わーい、名指しされたぞー。例えゴオマが女になっていても嬉しくないなー。

  そんな風に一瞬、思考放棄に陥りかける。だが、ここで現実逃避をしても特に意味はない。今すべきは、どうやってゴオマの魔の手から逃れるかだ。

  しかし、その前に気持ちを落ち着かせるために一つだけ言いたい事がある。すぅっと息を深く吸い込み、そうして腹の底から思いきり声を出した。

 

「おのれディケイドぉぉぉ!!」

 

  この後、究極怪人態に変身したゴオマにあっさり追いつかれてしまったので、メビオとクウガと力を合わせて奴と死に物狂いで戦う事になった。

 

 ※

 

「……夢か」

 

  チュンチュンと鳴く小鳥たちのさえずりが聞こえる早朝に、俺は目覚める。寝床から上半身を起こして周りを見てみると、隣にスヤスヤと寝息を立てて横たわっているメビオの姿があった。寝顔が幸せそうで何よりだった。

  まだメビオが眠っている内に朝食を準備する。今回は蛇の卵を使ったオムレツだ。ソースは甘酸っぱい果実を代用し、オムレツの中身はバッタやイナゴなどの昆虫を原型がなくなるまでミンチにして焼いたものだ。

  現代からすると一般的ではない昆虫食だが、メビオは大して忌避感などを抱いていなかったので何も問題はなかった。俺も昆虫食にはとっくの昔に慣れた。

  ちなみに昆虫食は世界中の食糧難を救えるらしい。家畜にするにしても、豚や牛を育てるよりも低コストで済むから合理的だそうだ。

  オムレツを完成させたところでメビオがちょうど目覚めたので、そのまま一緒に食事を取る。今では見よう見まねでも、メビオは食事の挨拶をキチンと取るようになっていた。

 

「「ごちそうさまでした」」

 

  ほらね、この通り。

 

  朝食後はその他も雑事を済まして、それから組手を軽くこなした。また負けてしまったメビオを慰めるのが大変だった。

  お昼までにはまだ時間が残っているので、暇潰しにと一枚の巨大な紙を用意する。色は紫に染めておいた。モーフィングパワーの無駄遣いである。

  これを見ていたメビオは、そわそわしながら笑顔を浮かべる。わくわくしすぎて、完全に待ちあぐねている様子だった。声の調子もどこか昂らせ、おっとり刀で質問してくる。

 

「ガミオ、こんなに大きな紙を用意してどうするんだ? 紙飛行機を作るのか?」

 

「いいや、違う。これから作るのは紙飛行機やドラゴンよりも複雑怪奇な代物だ。めちゃくちゃ時間はかかるけど、達成感がとんでもなくすごい。ぶっちゃけると趣味」

 

「あ……私、まだどらごんもできてない……」

 

「落ち込むなよ。覚えればいいんだから」

 

  項垂れた頭を優しく撫でると、メビオはおもむろに元気を取り戻す。かくして、世界ギネスにも挑戦できるような折り紙が始まった。

  予てより小さな紙で何度も練習をしている。これはメビオにも内緒にしていた事だ。折り方が非常にうろ覚えだったが、グロンギの地頭の良さのおかげで何とか完成にまで漕ぎ着けた。その時、囲碁や将棋に全力で取り組んだのと同じぐらいにまで心身を消耗したのは、グロンギに生まれて初めてかもしれない。

  きっかけは動画投稿サイト。折り紙に何となくハマっていた頃だ。その際に折り紙の無限の可能性に触れて、俺をここまでの領域へと引き摺り込んでくれた。この娯楽に欠けすぎた古代において、まさに折り紙は至高の遊びの一つに数えられた。ゲゲルは論外だ。

  近くでじっと見守るメビオの視線を受けながら、ようやくそれを完成させる。彼女の目の先には、二メートル近くある紙の人形が大地に立っていた――

 

「おお! 紙からこんな人形が作れるのか!? なぁなぁ、これはなんだ? 動くのか?」

 

  巨大人形の周りをぐるぐる歩き、興奮気味に見上げるメビオ。そんな彼女に俺は、この場を決めるようにして人形の名を教える。

 

「汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリヲン初号機」

 

「……んん?」

 

「……初号機でいいよ。今日はコイツをどうにか動かす練習をする。完全に特殊能力の部類だな」

 

  案の定、初号機のフルネームにメビオはきょとんとした表情のまま、小首を傾げた。気を取り直して次の行程に移ろう。

  今回の目的は、クウガを支援するゴウラムと同じような存在を作り出そうというものだ。まだゴウラムの出没情報は出ていないが、ゴウラムに乗った緑のクウガが延々と空を飛んだ暁には、制空権を握られて一方的にやられてしまう。ペガサスボウガンで空爆とか嫌すぎる。

  なので、こちらもゴウラム対策に何らかの手を講じる必要が出てくる訳だ。操作方法は、バラの花弁を自在に操るバルバみたいな感じを目指したい。

  そんなこんなで、メビオにドラゴンの折り方をレクチャーしながら試行錯誤してみる事、およそ三十分。初号機はうんともすんとも言わなかった。試しに腹の中の石の力を使ってみるも、垂れ流しになるだけで余計に疲れた。

 

「ぜぇ……はぁ……何だ? 一体何がダメなんだ……?」

 

「できたぞ、どらごん! どうだ!」

 

「お、マジか。相変わらず飲み込み早いな」

 

「ふふん、ホめろホめろ♪」

 

  だが取り敢えず、簡単な方のドラゴンの折り紙を作ったメビオの頭を撫でる。すると俺の胸の中にピョンと飛び込んできて、もっとねだられた。

 

「待った。その前に一つ、取っておきの最終兵器を初号機に使いたい」

 

  そう言って俺はメビオを制止し、懐から例の物を取り出す。ムッと不満げに頬を膨らますメビオだったが、俺の手のひらに乗せられたものを目にすると一気に顔色が変わった。恐る恐る、これの名を聞いてくる。

 

「それは……」

 

「ゲブロン」

 

  その時、メビオは石像のように動きが固まった。

  ここにゲブロンがどうしてあるのか、さぞ不思議に思う事だろう。それは当然だ。そもそもゲブロン自体が希少で、こうして気軽に出せるようなものではないのだから。

  では、他のグロンギの腹の中を抉って取ったのかと言われると、それも違う。正しくは、まだ埋め込まれていない新品を誰にも気取られないように盗んできた。この古代にまともな法や警察機関は存在していないから、窃盗罪に問われて警察署に連行されるような心配はほぼない。

  それでも俺は内心、誰かにバレていないかどうかものすごくヒヤヒヤしている。バルバ辺りが知れば、もれなく殺されそうだ。大事なものを変な事に使うんじゃないと。

 

「新品をこっそり盗んだ。いいか、この事は誰にも言うなよ。俺との約束だ。守れる?」

 

  さりげなく危ない真似をしている自覚はある。メビオにそう言い聞かせると、彼女はコクリと静かに首を縦に振った。

  ならば良し。さぁ、実験を始めようじゃないか。

 

「いくぞ! 一先ずコイツに全てを賭ける!」

 

  そして俺は、ゲブロンを初号機の胸部中央に強く押し付ける。すると、ゲブロンはゼリーに柔らかく沈むかのように初号機の中へ埋まっていき、徐々に目映いばかりの光を放ち始める。

  この光景を前に、メビオは短く歓声を上げる。俺もつられて、感嘆の声を漏らしそうだった。

  明らかに不思議な事が起きる。そんな予感がした。

  だが次の瞬間、ゲブロンが小爆発を起こして黒煙が軽く吹き上がる。初号機は上半身が綺麗さっぱり吹き飛び、跡形もなくなっていた。

  ついでに間近でゲブロンの爆発に巻き込まれた俺たち二人だが、特に大したケガを負わずに済んだ。ただ、それが余計に失敗である事を物語っているみたいで、無性に悲しくなってきた。

 

「ガミオ」

 

「……失敗した。期待させてごめん、メビオ……」

 

  深く溜め息を吐きながら、俺は大きく肩を落とす。それからメビオが励ましてきたのは意外だった。

 

 

 





Q.今回見たガミオの夢を詳しく。

A.

クウガ「この瞳に焼き付けるのは、俺たちの未来。そして、闇を照らす希望の光だ!!」

ガミオ「へ?」

メビオ「(0_0 )<?」

クウガ「人々の希望、人々の夢。俺は仮面ライダークウガ! 俺はこの輝きで未来を照らす!」

刹那、金色に輝き出すガミオたち。メビオとガミオは究極体に、クウガはライジングアルティメットに変化。

ガミオ(……もうノリに任せるか)

ガミオたち、一斉攻撃

ゴオマ「こんなはずではあああぁぁぁぁ!!」



究極の闇をもたらす連中しかいないのは仕様。

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