漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話   作:erif tellab

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双子一緒にゲゲルに挑んだグロンギがいるらしい。バヅー、バダー兄弟とどこで差ができたのだろうか。


ゲゲルは天下一武道会みたいなのが良かった

 ダグバ封印の報は瞬く間にグロンギの集落中に広がった。前回やって来た嵐は、ダグバがクウガ軍団と戦う際にもたらされたものらしい。ンの特権を乱用するだなんて、どれだけ戦闘狂いなんだ……。あまつさえ、クウガ軍団に甚大な被害を与えたそうだから、頭を抱えていられない。

  族長不在の事態に陥り、ンのベルトもダグバもろとも封印。封印を解こうにも、安置場所であるリントの里に控えるクウガ軍団を相手取らないといけないなど、色々面倒な事になっている。究極の闇が起こせない、グロンギの楽園が作れないと一部の連中が騒いでいるが、俺には関係ない話だな。やったぜ。

  また、族長不在をとっとと解消するため、ゴ集団によるゲリザギバスゲゲルが繰り上げとなった。きっとガドル閣下が族長の座に収まるだろうが、後回しにされたズ集団とメ集団は大半が反対していた。それも無理やり黙らされたのだけど。

  そんな訳で、俺は早々にズ、メの集会を脱け出そうとする。

 

「ブットバソウル! イヤッフッフウゥゥゥ!!」

 

  こんなに嬉しい事はない。喜びのあまり、ついつい側転を繰り返しながら建物の出口へと向かう。突然の俺の奇声に驚いて目を見開かせるヤツもいたが、そんな彼らの視線はどうでも良かった。

  しかし――

 

「ゲリザギバスゲゲルには貴様も強制参加だ、ガミオ」

 

「へ?」

 

  凛として放たれたバルバの言葉に、俺は思わず立ち止まる。そのまま振り向いて彼女の顔を二度見するが、硬い表情が変わる事はない。

  それで今の発言が嘘ではないと察してしまったせいで、全身がわなわなと震え出す。ゲリザギバスゲゲルの強制参加なんてとても受け入れられず、たちまち叫ぶ。

 

「う、嘘だ! 俺はズなんだぞぉ! ザインが可哀想だぞぉ!!」

 

  遠くに座っているザインがビクッと反応するが、バルバはそれを歯牙にも掛けない。どんどん話を進める。

 

「貴様は究極の闇そのものになれる器がある。辞退は許されない。騒ぐ分には構わないが、拒否を示せばゴが貴様を殺しにくるだろう」

 

「ちぃっ! ならば仕方ない。奥の手だ」

 

  まさに無慈悲な宣告。俺は舌打ちしつつ、背負っていたバッグから一つの包みを取り出す。ガドル閣下たちと戦うべきか否かを考えると、決断は早く済んだ。

  そうしてバルバの元まで行き、包みを開いて中身を見せる。そこには、たくさんの粟団子があった。糖はモーフィングパワーの応用で果物から抽出したもの使用しているので、結構甘くて美味しい。

  これぞ俺に残された平和的解決手段、【食べ物で釣る】。バルバは冷静さを保っているが、粟団子に初めて触れた感じが薄々と顔に見え隠れしていた。

 

「それは何だ?」

 

「お菓子です。毒はありません」

 

  バルバの尋ねに答えるや否や、粟団子を一個掴んで半分に千切る。それから彼女の目の前に半分こにした粟団子を美味しそうに食べて、もう片方を差し出す。

  これを受けて微動だにしなくなるバルバ。すると、いつの間にか俺の隣に来ていたメビオも包みの中の粟団子を一つ食べる。このいやしんぼめ。だが構わない。

  そして、幸せそうな雰囲気を出しながらモグモグ食べているメビオに押される形か、バルバはようやく粟団子を口にする。

  多くの衆人観衆が静かに見守る中、バルバは遂に粟団子に喉に通す。飲み込む音が僅かに聞こえた直後、彼女はおもむろに喋り始める。

 

「……いくらかの融通は利かせよう」

 

  その瞬間、俺は心の中でガッツポーズを決めた。証人は集会に来たグロンギ全員、言質は取らせてもらった。

 

「うっわ、バルバを買収しちゃったよ」

 

「人聞きの悪い事を言うな、ガルメ。買収ではなく交渉と呼べ」

 

  傍から飛び出したガルメの言葉にすかさず訂正を入れる。別に賄賂ではないので、現代の法にも一切触れていない。セーフだ。

  次に俺は、迷わずバルバに己の要望を告げる。

 

「じゃあゲリザギバスゲゲルの辞退を――」

 

「ダメだ」

 

「じゃあゲゲルの内容は天下一武道会方式で! 殺しは禁止の!」

 

「ダメだ」

 

「ザインに出場権利を渡します!」

 

「ダメだ」

 

「リントを殺したって何のステータスにもならないと思います! 強くなりたいなら素直に鍛えればいいじゃないですかぁ!! リントを殺す合理的な理由がありません!! 無駄な殺生反対!」

 

「楽しいよ」

 

「ギノガは黙れ! こちとら楽しくないんじゃい!」

 

  どれを言っても却下され、挙げ句の果てにはギノガから野次が入ってくる。オカマ野郎から楽しいと言われても、ただでさえゲゲルの内容がアレだから俺の心には全然響かない。

 

「ゲゲルを拒むとはグロンギの面汚しめ……」

 

  その時、そんなゴオマの呟きを確かに聞き取った。嗅覚と同じく、俺の強化されている聴力は伊達じゃない。今のを捨て置くのは少し我慢ならなかった。

  刹那、バッグの中から片手に収まるコンパクトサイズの銅鏡を手に持ち、建物内の日が差している場所へと移動する。日光の量は不足気味だが、銅鏡で反射させる分には問題ない。即座に反射光をゴオマに向けた。

 

「日輪の力を借りて今必殺の」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

  半ば棒読みで口上を口ずさむ俺に対し、些細な光でも滅法嫌がるゴオマ。彼が悶絶したところで再度バルバへと近づく。その際、包みの中身を何度もチラ見させる事も忘れない。案の定、バルバは顔を少し歪ませた。

  彼女は宙と粟団子を交互に見やりながら、しばらく唸る。だが、悩む時間は十秒も経たなかった。

 

「ならば、ルール違反者の処刑はどうだ? 今回の一件で勝手にゲゲルを始める者が後を絶たなくなっている。主にズを中心にして。私が妥協できるのはここまでだ」

 

  あ、やっぱり相手を殺すのは絶対なんですね。

  その後、頑固なバルバとどんなに話し込んでも更なる譲歩は叶わず、粟団子を渋々渡してしまう結果となった。

 

 ※

 

  それから我が家に帰宅して。ゲリザギバスゲゲルからは逃れられない以上、心情的には色々と不完全燃焼だった。

 

「おのぉぉれえぇぇぇぇ!!」

 

  喉を枯らさん勢いで咆哮する。今回ばかりは、大人しく胸の内でひたすら秘めておく訳にはいかない。イライラを八つ当たりで解消したい気分だ。

 

「ガミオばかりゲゲルができてずるいぞ! ずるいずるいずるい!」

 

  その上、今回の処遇にはメビオもご立腹だった。怒髪天の様相で俺に攻めかかってくる。何時にも増して殺気立っていた。

  容赦がない。特に手刀に至っては、食らえばものすごく痛そうだ。それでも反射的に熾烈なカウンターを決めたくなるのを抑えて、あくまでも寝技や関節技で制するように留める。

  回避と捌きを全力で徹した先に、ふと勝ち筋が見えてくる。勝利へ至る行動に移すのは秒にも満たない。一瞬でメビオの虚を突き、ロメロスペシャルを放つ。メビオは「ふにゃあぁぁぁ!!」と悲鳴を上げた。

  しかし、メビオを降参させるのはかなりの根気が必要だった。ロメロスペシャルが決まった後でもクタクタになるまで抵抗を続けて、最後はお互いスタミナ切れで地面に横たわる。

 

「ハァ……ハァ……ずるいって言われてもなぁ……。メビオはどうしてゲゲルをしたいんだよ? ンの称号がそんなに欲しいん?」

 

  試しにそう聞いてみると、メビオは首を傾げて悩み出す。そして――

 

「……楽しいから? あ、でもわからないぞ。他にもずっと楽しい事が見つかったから、リントを狩るのがつまらなく見える」

 

「つまるところ、ラはクソ運営。はっきりわかるもんだ」

 

  自分なりに答えを出すものの、メビオは微妙な顔をしていた。彼女にすらこんな評価を下されているのだから、ゲゲルの運営は底が知れる。荒ぶる3D将棋やバルチャスでは駄目なのか?

  とにかく気を取り直して俺たちはゆっくり起き上がる。竹の水筒で水分補給を済まして、今度は別の事を始める。メビオと散々取っ組み合いしたおかげで、イライラは全て吹き飛んだ。

 

「よし。ビリビリの練習やるぞ」

 

「うん」

 

  俺の言葉にメビオは素直に頷く。ビリビリとは雷の力の制御を指すのだが、これを人間態でやってみるとマッサージのように心地好かった。更に二人で協力すれば、心地好さは倍増する。

  メビオと向かい合って両手を繋ぎ、間髪入れずに制御を開始する。すると微弱な電流が身体中を滞りなく巡る感覚に襲われ、否応なしに肩の力が抜ける。癖になりそうだ。

  メビオの方を見てみると、気持ちよさげなだらしない顔になっていた。頬に筋肉が緩みきって、目を細める。

 

「「ビリビリ~」」

 

  不意に重なった声は、全力起動の扇風機に向けて発声するかのように震えていた。

 

  そんなこんなでやりたい事を一通り終えると、弓矢とナイフを携えて遠出する。メビオも同行してきた。

  ただし今回はいつもの狩りと違って、ルール違反者探しも兼ねている。その要となるのが、バルバから受け取った白バラのセンサーだ。目標が近くにいれば感知してくれるらしい。

  また、俺に課せられたゲゲルのルールが他とすごく変わっていて、ここで標的を倒しても一気にゴまでは昇格できない。あくまでズ、メ、ゴと順々に上げられる模様だ。昇格したくないのが本音である。

  つまり、ゲゲルを三回通しで繰り返せという話だ。狙いが人間ではなくなったのが不幸中の幸いだろうか。尚、他のゴのゲリザギバスゲゲルも並行しているとの事。そちらの監督はドルドに一任されている。

  ちなみに、最初のプレイヤーはゴの恥さらしである猪怪人、ジイノだ。すぐクウガに負けそう。

  ただ、標的が個人になったおかげで俺に制限時間は課せられなかった。警察やツイッター、SMS等が存在しないこの御時世だからこそ、理由はなんとなくわかる。怪人態に変身できなければ、己の足だけでただっ広い長野県をしらみ潰しに捜索する無理ゲーと化していた。

  その最中、何故かご機嫌斜めになったメビオが、俺の服に留められた白バラセンサーに何度もパンチを仕掛けてくる。獲物を探す片手間で全て防いでいるが、流石に執拗すぎたので注意する。

 

「こらこら。猫パンチはやめろ」

 

「ガミオ、それを外せ。ムカムカする」

 

「焼き餅かよ」

 

  そう言うとメビオは頬をプクリとさせて、そっぽを向ける。なかなか機嫌が直る様子のない彼女に、俺はほとほと困り果てた。

  協力者の是非に関する説明は、バルバから何もなかった。それならメビオの存在は黙認されていると見て問題なさそうだが、少し不安だ。いざの時は口八丁でバルバを言い負かす以外に手はないだろう。一方で武器の使用は禁止とか言われていたから、これは守らないと。

  捜索に掛かる時間を少しでも節約するため、途中からは怪人態で山や川、森を駆け抜けていく。ルール違反勢は大概人里に降りている脳筋のようなイメージがあるが、ガルメみたいに賢く安全にゲゲルをやっている可能性も否めない。狩猟や採取などで人里から離れているのを徹底的に襲いそうなのが嫌すぎる。

  また、クウガとの会敵のリスクも最後に回しておきたい。下手を打てば、ゴのグロンギとの激闘に巻き込まれかねないから。

 

  だが、探せど探せど見つからない。発見したのは偶然出会ったイノシシだけだ。素早く逃げ出すイノシシの背中へ矢を放ち、一気に追い縋ったメビオがきっちり仕留める。

  そんな時、遠くの方から誰かの叫び声が聞こえてきた。なんやかんやで白バラセンサーも地味に反応していた気がしたので、耳と鼻を頼りに俺はすぐさま現場へ急行する。イノシシに気を取られていたメビオは完全に出遅れた形になった。

  やがて、一体の怪人がカゴを背負う男性をじわりじわりと追い詰めているのが目に写る。敢えて男性をすぐに殺さず、完全に遊んでいる様子だ。

  奴が遊び気分でいるのが、男性を助けるまたとないチャンスだ。これを逃せば、男性の命は保証できなくなる。

 

  間に合え――!

 

「待った!」

 

「ん? ぐべっ!?」

 

  奴の肩に手を置いて注意を男性から逸らさせた瞬間、その顔面を殴り飛ばす。怪人は大きく吹き飛び、男性から離れる。

 

「“早く逃げろ”」

 

「ひ、ひいぃぃぃ!」

 

  そのまま男性を庇うように立ち回りつつ日本語で逃走を促すが、彼は感謝の言葉一つすら述べずに姿を眩ます。俺が怪人態のままだと気づくのは、割りとすぐだった。怖がらせてごめんなさい。

  さて、気持ちを切り替えて、先ほど殴り飛ばした怪人と改めて対面する。ネズミの特徴が窺える事から、奴はきっとズの双子であるネズマ・ネズモ兄弟の片割れだろう。

  もう一人はどこに? 別行動? 先に逃げた男性の姿が頭によぎるが、目の前にいるコイツも看過できない。匂いで探ろうにも、運悪く風下に立ってしまったようだ。こうなるなら嫌われるのを覚悟で男性に付きっきりになるべきだった。

 

「貴様はガミオ……リントを助けたつもりかぁ?」

 

  顔面パンチのダメージから立ち直ったネズマ――ネズモと区別がつかないから暫定で――は苛立ちを見せる。歯ぎしりしてくれるなら何よりだ。

  どうせなら、もっと冷静さを欠いて欲しい。そう思いながら俺は、なるべくネズマを挑発するように心掛ける。

 

「人助けを見るのが嫌なら誰も襲うな。そうすれば平和だから」

 

「癪に触るヤツめ。だが、いつから相手が一人だと錯覚していた?」

 

  ネズマが急に余裕ぶるのも束の間、頭上から殺気が降ってくる。恐らくは、木の上に待機していたのだろう。双子揃ってここにいるなら良し。

  正面と頭上の両方向に注意しながら咄嗟に身構える。この程度の複数対一をこなせるだけの自信はあった。それこそ、ステゴロで十分なくらいだ。

  まず最初に、頭上から来るネズモを迎撃――しようとしたところ、怪人態のメビオが音もなくネズモにドロップキックをかましたので難なきを得た。

  なんて登場の仕方をしてくれたんだ、メビオ。ネズモは綺麗に放物線を描きながら地面に落ち、ネズマは愕然としている。そりゃそうだ。

  当のメビオはイノシシを脇に抱えたまま、俺にどや顔を披露する。いかにも褒めて欲しそうな眼差しだ。

  こうなってしまっては仕方ない。たじたじになるのを我慢して、精一杯の出任せを双子に言い放つ。

 

「悪いな、こっちもコンビなんだ」

 

「「……上等だああぁぁぁ!!」」

 

  かくして、俺たち二人と双子との戦いの火蓋が切って落とされた。弄びながら人の命を摘み取ろうとしたコイツらに、慈悲なんてあげようがなかった。

  この後、ネズマ・ネズモをボコボコに打ちのめした上に、最後の一撃として蹴りを食らわしたら爆発四散させてしまった。きっとゲブロンが誘引爆発でもしたのだろう。そう思う事にする。

 





Q.もしも白バラセンサーを捨てたら?

A.

ガドル「ゲゲルをやりたくない? なら決闘を申し込む」

ドルド「応じろ」

ガミオ「これ勝っても実質、族長の座を手に入れてしまう罠しか待ってないんだけど」


Q.バルバが粟団子を知らない? いや、そんなバカな……

A.ゴオマの主食が吸血だったり、太陽に弱かったりと、グロンギは怪人態の元ネタの特性を幾つか兼ね備えていると判断しました。
つまり、この理論でいくならバルバ姐さんは植物系怪人なので、水と土の養分、光合成だけで生きていられるという事に……?


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