漫画版ズ・メビオ・ダとほのぼの暮らす話 作:erif tellab
ギイガと同じように軟体動物がモチーフなのに、クウガ・マイティフォームにやられてしまった情けないグロンギがいるらしい。
あの後、なんやかんやゲゲルをクリアしてゴまで昇格できた。今回のゲゲルのプレイヤーは俺なので、最後まで付き合ってくれたメビオは昇格していない。まぁ、メビオを特別扱いしたら周りがうるさくなるから妥当だろう。
なお、俺のゲゲルの様子をダイジェストで送ると次のようになる。
一回戦目。ルール違反者のタコ怪人、ズ・ダーゴ・ギ。モーフィングパワーでナイフから変化させた専用長剣――名前に困ったので一応、魔戒剣と呼称――で撃破。雷の力を纏わせていたせいか、お腹の中のゲブロンを狙った訳でもないのに爆発四散した。
「牙突ゼロスタイル!」
「ぎょええぇぇぇぇ!!」
二回戦目。ルール違反者のクジラ怪人、ズ・グジラ・ギ。弓矢をモーフィングパワーで変化させた専用弓――略称、ビームボウにする――で、水中に逃げようとしたところを寸手で撃破。爆発四散。
ちなみにビームボウの由来は、つがえた矢がいきなり青く光った事に起因する。
「狙い撃つぜ!」
「水があれば最強なのにぃぃぃ!?」
三回戦目。ルール違反者で共同戦線を張ってきたヤモリ怪人のズ・ジャモル・レと、トカゲ怪人のメ・ガーゲ・レ。メビオと協力し、彼女の飛び蹴りでぶっ飛ばしてから、予め配置に着いていた俺が背中に殴打をかまして撃破。爆発四散。
また、アゴンさん特注の全身鎧を使い始めたのも、この辺りとなる。鎧の癖して、動き易さは普段とほぼ変わらなかった。
「「食らえ!!」」
「あべしっ!?」
「ジャモルが逝ったか……。だが所詮、奴はズ。ムセギジャジャの最弱集団よ」
「「次はお前だよ」」
「あ、あの……待って――ひでぶ!?」
四回戦目。ルール違反者で、お互いが勝手に始めたゲゲルをお互いに妨害しているウツボカヅラ怪人のズ・ガスポ・デと、ハエ怪人のメ・イバエ・バ。鎬を削り合っているのを、俺とメビオが乱入してきた形だ。
この時、まだ十にも満たないような姉弟らしき子どもの二人が、人質紛いの扱いをされていた。正直に言って二体のグロンギが潰し合っているのを遠くから眺めたかったが、勝者が決まってしまえば子どもたちの命はなかったので、漁夫の利を狙うのを渋々諦めた。
また、あいつらが人質戦法を使うほどの知恵があるか疑わしいが、念には念を入れて。人質救出を最優先にした後、子どもたちを逃がしてガスポとイバエを食い止めた。イバエはメビオに瞬殺されたが、ガスポは地味に強かった。
催涙効果のある蜜の香りや、腕から伸ばしたツタの攻撃。更には――あくまで推測の域を出ないが――人の視神経に作用して自分の姿を見えなくするフェロモンをばらまいたりと、結構な特殊能力に恵まれていた。改めて思い返してみれば、ガルメみたいな奴だな。
特にツタ攻撃が腕から射出もできてヒヤヒヤしたが、子どもたちの背に流れ弾が飛ばないようにきっちり全て捌いた。一緒に戦ってくれるメビオが心強かった。
こうしてガスポは、魔戒剣の一閃で撃破。爆発四散。その後、子どもたちの事が気掛かりになって見に行くと、二人は物陰でこちらをじっと見守っていたようだった。逃げはしなかったが、近づいてくる俺たちに警戒を解かない。
メビオは途中で人間態へと戻った一方、俺は鎧姿のままだ。子どもたちの安否がわかったなら長居は無用だと思いつつも、立ち去る前に一つだけ言葉を残す。
「大丈夫か?」
一応、掛けたのはリントの言葉だ。弟はピクッと固まっていたが、姉の方はうんと強く頷き、口を開く。
「ありがとう!」
それを聞いた瞬間、不覚にも涙がぶわっと溢れ出てしまった。とっさに子どもたちには背を向けていたので、見られた心配はない。俺たちは静かに去っていった。
ただしこの被っている兜。変に機能や視界が優れているせいか、溜めた涙を外に流すみたいだった。鎧越しでも俺が泣いているのが丸わかりで、これに気づいたメビオが案じてくる。
「ガミオ? 泣いてるのか?」
「嬉し涙だよ、気にすんな。てか、お前もなんだか肩がふるふるしてるぞ」
「……あっ! これは違うぞ! えっと、その……ホワホワしてるだけだ、ホワホワ! あのリントのせいだからな!」
そう言ってブンブンと首を横に振るメビオ。そんな動作とは裏腹に、表情は完全に嬉しそうだった。それからポーカーフェイスに努めた直後、「えへへ」と笑い声を小さく漏らす。
その感謝を受けて喜ぶ気持ち、わかるよ。俺もてっきり誰にも悟られず、誰にも感謝されずにグロンギを倒していくものだと思っていたから。気休め程度でもお礼の言葉で心が救われる。
五回戦目。乱入者お昼の部のメ・ガドラ・ダと、夜の部のズ・ゴオマ・グ。この件に関して後にバルバへ抗議したが、これもゲゲルの一環だと一蹴された。
ガドラが乱入してきた理由は、曲がりなりにも俺へリベンジする機会が手に入ったから。マッスル・ドッキングを仕掛けた事を何度謝っても聞く耳を持ってくれず、激しく攻め立ててくるばかりだった。
「もはや俺にキン肉バスターとキン肉ドライバーは通用しない!」
「そうかよ! マッスルスパーク!」
「なにぃ!?」
もはや戦う事でしかわかり合えない状況に、俺はマッスルスパークの発動を覚悟した。かくして、ガドラを戦闘不能へと追い込んで撃退する。
次にゴオマだが、反射光を当てた先日の件を深く根に持たれていた。その上、彼の主食は血なので、食べ物で平和的解決を図るのはほぼ不可能。レアのステーキがあれば話が別だったかもしれないが、俺たちの捕まえた鹿がボロボロにされた時点で交渉の余地なしと判断した。
「グロンギの誇りを……リントを殺す快楽を忘れたか、ガミオ!」
「端から持ち合わせちゃいない! スクリュードライバー!」
「ぐわあああぁぁぁ!?」
俺はゴオマに怒りのスクリュードライバーを炸裂させる。本心では彼を生かしたくなかったが、それでは何の罰にもならない気がした。反省は生きている内でないと、意味がない。
なので、気絶したゴオマを縄で簀巻きにし、適当な大木に拘束。メビオが進んで手伝ってくれたおかげで、それほど時間は掛からなかった。奴には身動きできない状況下にて、朝日を存分に浴びせられる罰を与える。
結果、翌日の朝には遠くの方からゴオマの絶叫が木霊した。ふと声が止んだ時は「死んだか?」と早とちりしたが、アイツも伊達にグロンギではない。自力で拘束から抜けたようだった。
後日に再会してみると、ゴオマは俺から黙って逃げるようになっていた。追い掛けようとすると脱兎の如く逃げ出す。朝日の刑が効いたようで何よりだ。次はないと思え。
ちなみに、ゴオマにボロボロにされた鹿はどうにか美味しくいただいた。バルバとガドラも食事の席に居てくれたおかげで、これっぽっちも残さずに済んだ。
そして問題の六回戦目。ルール違反者のゴキブリ怪人、メ・ゴリギ・バ。コイツを目の前にして、俺とメビオは形容し難い忌避感に際悩まされた。メビオに至ってはすっかり拒否反応を示してしまい、戦意喪失する。実質、戦えるのは俺一人となった。
こうもゴリギの外見に嫌悪感を抱いてしまうのは自然の摂理なのだろうか。心身ともに調子が崩れ、全力が出せない。交戦開始序盤は俺とゴリギ双方がじっと睨み合うだけだった。この時のゴリギの気持ちは知れないが、俺はとにかく先に動きたくない気分だった。
先手を打ってきたのはゴリギで、俺は催される気持ち悪さから防戦一辺倒。精神は常に取り乱していて、遂にはゴリギに逃走を許してしまう。
「くそっ……! メビオ、追い掛けるぞ!」
「ヤダ」
「へ? あ、おい。なに木の上で縮こまってるんだよ!?」
「イヤだ! アイツ気持ち悪い! ヤダヤダヤダ!」
「あ、もう……じゃあ先に行ってるぞ!」
「……うん」
ゴリギの足はメビオと比べると遅いが、当のメビオはこうして戦線離脱。俺は一人寂しく、何とも嫌な追撃を開始する事になった。
しかし、道中でバッタ怪人、ゴ・バダー・バとクウガの戦闘に巻き込まれてしまい、ゴリギの姿を見失ってしまう。バダーは漆黒の巨馬に、クウガはゴウラムを纏った栗毛の馬で競走中だった。ライバルが減るからという理由でバダーに狙われたり、グロンギが減るからという理由でクウガに轢き逃げされかけたり、この日は散々すぎた。
かくして二人から命からがら逃げ延びた俺は、メビオを見つけて一度拠点に戻った。とうとうリントがゴウラムを投入してきたのがわかったので、急いで対策を練る必要に迫られた。ゴウラムを着た馬はレーシングカーとタメを張れる速度で走っていたので、脅威度は極めて高い。
また、俺もいい加減に自分の足以外の移動手段を手に入れたかったのもある。バイクが欲しい。我が儘を言うならジェットスライガーが欲しい。
そんなこんなで色々と頑張った結果、くすねた新品のゲブロンを核としたMS-06J、ザクⅡの等身大が完成した。ククルス・ドアン搭乗機のように痩せ細っているのがミソだ。素材は粘土と鉱物である。
ちゃんと動いてくれる緑の巨人の誕生に、メビオはたちまち歓喜の声を上げた。自分たちとはだいぶ異なる機械的な存在に興味津々となり、グポーンと音を鳴らしながら光る頭部のモノアイには不思議そうな目を向けていた。
「ガミオ! みろみろ! コイツ、空が飛べるぞ!」
「ちゃんと掴まってろ! 着地するから!」
「へ――」
バックパックのメインスラスターを吹かして垂直に高く飛ぶザクⅡの肩に、楽しげにメビオが乗っている。彼女が呆けた瞬間、スラスターで滞空できる力が失われ、ザクⅡは咄嗟に着地姿勢に入った。ザクⅡと共にみるみる内に落下し、着地の衝撃で身体を少し揺さぶられる。
これを受けたメビオはしばらく茫然自失になっていた。俺も俺で、スラスターから焚かれたのが推進材由来の青い炎ではなく、儚げな色の円輪が連続して放たれては消えていたのに首を傾げた。
だからといって一々細かい事を解明していくほど、猶予はない。いつまでもゴリギを放置していく訳にはいかないし、クウガに封印されてしまった場合に与えられる俺の処遇がどうなるか皆目見当がつかない。ザクⅡはぶっつけ本番で実戦投入だ。
ザクⅡの運動性能は、雑魚のグロンギなら圧倒できるほどのものだった。装甲も固く、戦闘力はオートバジン並みを期待できる。後はせめて、ゴウラムのように馬と合体可能か否かを確認したい。
しかし、不意にも七回戦目が訪れてしまう。メビオとザクⅡと一緒に馬を探している途中で、バダーを封印した直後のクウガと遭遇してしまった。ゴウラムアタックが来る前にザクⅡがそこら辺にいたポニーと合体できたのが不幸中の幸いだったろうか。
ザクⅡは複雑怪奇な変形をしながら装着される。それに応じてポニーの肉体が程よく肥大化し、クウガの乗る馬とほぼ同じサイズになる。ザクⅡを装着したポニー――略してザニーの挙動は警戒心全開だった野生時と打って代わり、高らかに咆哮してクウガの馬をびくりと驚かせた。
その隙に俺も自分の鎧を纏い、ザニーに乗る。クウガの相手はさすがに厳しいので、メビオは先に逃がした。これで不安要素は大体なくなった。
クウガと改めて相対する際に構えた魔戒剣は更なる進化と巨大化を遂げて、魔戒斬馬剣へと姿を変える。明らかに大きくなっているにも関わらず、不思議と片手で振るえるほど軽かった。
対してクウガは馬上で静かにフォームチェンジを済ませ、銀が基調となっている紫の鎧を新たに身に付ける。
――鋼の鎧を身に付け、地割れの如く邪悪を切り裂く戦士あり。クウガ・タイタンフォーム――
クウガは俺と同じように専用長剣――タイタンソードを手にする。古代のクウガたちは封印エネルギーを存分に使いこなしているので、下手に一撃をもらう事すら危ぶまれる。鎧を着ているとはいえ、過信と油断は禁物だった。
そうして覚悟を決めた俺はザニーを走らせ、魔戒斬馬剣を掲げながら大声を出す。大声は少しでも恐怖心を紛らせ、多少なりとも己を勇気づけるためのものだった。
「チェストぉぉぉ!!」
「なんとぉぉぉぉ!!」
その結果、ギリギリのところでクウガの撃退に成功する。お互いに満身創痍すぎて、もう二度とクウガと戦いたくないと思った瞬間でもあった。
「ガミオ、ケガはないか? 大丈夫か? 」
「うん。大丈夫。でも……死ぬほど、疲れた……」
「あぁ!? おい、しっかりしろ!」
何とかメビオと合流した時には、自分の身体が真っ白な灰に燃え尽きたような錯覚を抱いた。ザニーに家まで運ばれ、這う這うの体で居間に寝転がる。ここから夕飯の準備やその他諸々をするとなると、辛い以外に言葉は出なかった。
ザニーは帰宅直後に分離させ、ポニーを森へと帰す。ザクⅡにはシーサー像の如く、玄関の前に立ってもらう。コイツへの補給は適当な石で済むようだった。手のひらサイズの石ころを口に近づけ、まるで消すように食べる姿は何とも言えない。
それが終われば次に夕飯作りが待っていたが、突然メビオが俺を制して「ご飯は私に任せろ。ガミオは休め」と言ってきた。ものすごく不安でしかなかったが、やる気満々の彼女に強行される形で当番が決まった。
そして――
「メビオ……ご飯作れたんだな」
「ガミオが作ってるのを見ていたからな。どうだ」
見事作り上げた料理を俺の目の前に並べて、自慢気に胸を張るメビオ。献立がドングリ団子や魚の塩焼きと簡単なものだが、俺はとにかく感謝の念で一杯になりそうだった。
「ありがとう」
自然とお礼の言葉が出る。すると徐々にメビオの態度が変わっていき、やがて照れ出す。両手を顔にやって身体を横に振る様はとても可愛かった。
こうして俺たちは食事の席に着いたのだった。メビオの手料理は意外と美味しかった。
Q.バルバだけでなくガドラも食事の席にいたのは?
A.武者修行の旅に出た矢先に、簀巻きにしたゴオマを木にくくりつけるガミオとメビオに出会いました。ガミオには三度も負けた上に生かされたので、戦意はありませんでした。同席はついで、ですね。
バルバ姐さん? ガミオのゲゲルの途中経過の確認だよ。
Q.メビオの手料理食べたい。
A.残念ながら完食されました。おや? 料理に挑戦してみた不良娘、ゴ・ザザル・バがこちらをじっと見ているぞ。その手には、美味しそうな料理が盛り付けられた皿が乗っている。
ザザル「食わねぇと溶かすぞ」
これは毒を盛られていない事を祈るしかありませんね。ちなみに彼女の使う毒は、対象を一瞬で跡形もなく融解させるものです。
A.ザクⅡのスラスター噴射が変になってるんだけど。
Q.飛行型魔導アーマーのガブリエル、ブラックバーンなるものが元ネタです。詳しくはFF零式をプレイ。ちょっと相違点があるけど。