FFXV 泡沫の王   作:急須

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自由気ままに独自解釈を大いに繰り広げますがあらかじめご了承ください。


Chapter01 旅立ち
もう一人の王族


「ふふふ、ふーん、ふんふん、ふんふふーん。」

 

調子が外れどこか気の抜けるファンファーレをゆったりと口ずさむ。

一人の青年が、王都に建つビルの上からルシス王の住まう城を眺めていた。

 

城の前には113代目ルシス国王であるレギス・ルシス・チェラムが、息子たるノクティス・ルシス・チェラムを結婚式へと送り出している。

 

長きに渡るニフルハイム帝国軍との戦争もルシス王国が追い込まれる形となり、今や歴代国王から引き継がれてきた、その身を削って張り巡らせる魔法障壁が頼みの綱。

体を蝕む大魔法といっても過言ではない魔法障壁の影響か、レギス国王は齢50にして足を悪くし髪も白くなり今では立っていられるのがやっとの状態。

今もドラットー将軍に支えられながら息子を送り出している。

 

その息子の方は、何にも知らないマヌケ。

ニフルハイム帝国とルシス王国の平和の証として執り行われるルナフレーナ・ノックス・フルーレとの結婚式に臨むため、帝国の属国であるオルティシエへと向かう予定。

半分政略的な結婚だが、ルナフレーナは神凪の一族。

もともと交流もあったためかお互いに前向き。

 

しかし、王になる自覚は全くない。

レギス国王もノクティスの使命を知っているために強く言えないのが原因としてあげられる。

 

そしてさらに何も知らないが自覚のある従者が二人。

旅に同行する軍師。眼鏡をあげる癖が特徴的な落ち着いた青年。

イグニス・スキエンティア。ノクティスにとてつもなく甘いのが玉に瑕。

 

その横に控えている巨躯の男。半人前の王の盾たるグラディオラス・アミシティア。

妹のいる身としてなのかそもそもノクティスと兄弟のように育ったからなのか兄貴分になろうと努力している姿をよく見かける。

 

そして、従者でもなんでもない一般人。ノクティスの親友、プロンプト・アージェンダム。一般人と言われると鼻で笑いたくなるが、親友としてノクティスを支えている。

割とお調子者。

 

今回の旅はこの四人でレギス国王の愛車、レガリアに乗ってオルティシエまで向かう。

王権を表す高級車に乗っての旅などまさしく王子御一行なのだが、圧倒的に知名度が低い王子なのでバレる心配は少なそうだ。

目立ちたくないのはノクティス王子だけだろうが。

 

「おにーさんのお見送りもしてあげましょーかねぇ。あー、名前呼ばれても反応できるかなぁ。」

 

ビルの上から、召喚した片手剣を思いっきり投げ飛ばす。

魔法のアシストで見事にノクティスの足元に突き刺さったところをタイムラグなしに、王族しか使えないシフト魔法で降り立つ。

 

一瞬の出来事でその場にいる誰も反応ができなかった。

 

「結婚おめでとう?あれ?婚約おめでとうかな?お兄さんがいない時に出発なんて悲しいぞ。ノクティス王子。」

「兄貴!帰ってたのか!?」

 

片手剣をおもちゃのようにくるくる回しながらにこやかに適当な挨拶を述べる。

まるでいないことが前提のように驚くノクティスにお兄さんは泣きそうだ。

 

「本日、帰還いたしました。これからまた帝国領へと出立する予定です。結果報告はすでにコル将軍へと。」

 

感情のこもらない平坦な声で必要事項だけを報告し、レギス国王の返事も待たずにノクティスへと向き直る。

その時はすでに笑顔を貼り付けている。

 

いつも世界中を飛び回っているため、ほとんど会うことはないが兄として慕ってくれてはいるようだ。

 

「え?お兄さん?」

「ひさしぶり。メディウム・ルシス・チェラム。ノクティス..あー、ノクトのお兄さんだ。今年で26になるんだったかな。」

 

長い間名乗っていない名前がなんとか詰まらずに出てきたことにホッとする。

ついでにノクティスをノクトという愛称に訂正しておいた。

呼ばれていた気がするという曖昧な覚え方はやめてきちんとメモしておこうと、心の中で覚えておく。

恨みだけで名前を覚えている輩と一緒にしてはいけない。

 

そんな考えはおくびにも出さず、にこやかな兄の顔が続く。

 

「急いで帰ってきたんだ。ちょうど仕事も一区切り。見送りだけでもって。」

「そっか。悪りぃな。忙しいのに。」

「可愛い弟のためでしょう。」

 

小さい頃のように乱雑に頭を撫でる。

光り輝く夜空のような髪がふわふわと揺れ動く。

子供扱いが不満なのか少し睨まれた。

 

俺とノクトは全く似ていない。

正確には似ていると言えば似ているのだが、雰囲気が全く違う。

心優しく不器用なノクトとは違い、にこやかに笑っているのにどこか胡散臭いのが俺だ。

実際そう思っているのはノクトだけなのだが大当たりである。

我が弟ながら侮りがたい。基本なめてかかっているが。

 

「ほら、行っておいで。王子様。」

「兄貴もだろ...。いってくる。」

 

ーー王位継承権を自ら投げ捨て、俺の"親"のために身を粉にして働いてきたが、この見送りでこの王子の顔は最後になるだろう。

あの性悪ならまだこき使ってきそうだがそれはそれ。

俺が肩入れしているに過ぎない。

 

全ては星の為。

全ては"親"の為。

 

捨てられたらそれまでだが、せめて弟が救い出せたらどれだけ良かったか。

せめて家族を守れる力が俺にあったら、こんなことにはならなかったのか。

 

ーー人としての喜びを捨て、使命を果たす人形になれーー

 

くそったれな神様が五歳の俺に囁いた言葉は今でも耳にこびりついている。

そのくせ王位から弾くのだから馬鹿らしい。

人形には何も与えないとでも言いたいのか。

だが、その人形も最後の悪あがきをする時が来た。

 

「あーそうだ、言い忘れてた。」

「なんだ?」

 

今まさに旅に出ようというノクトを呼び止め、ここ一番の微笑みを向ける。

 

「楽しんでこい。世界は今、大いに進んでるからな。」

 

ノクトが不思議そうにこちらを見ている。

言葉の意味を分かりかねているようだが、その意味は身をもって知ることだろう。

どうせ待ち焦がれた王様という餌に侮蔑と憎しみを向けてくる性悪に絡まれるのだ。

いやでも理解させられる。

 

 

 

走り去るレガリアを見送り、ゆっくりとレギスへと向き直る。

長い間世界中を飛び回っていたことへの労りとこれから起こることへの深い悲しみが見て取れる。

 

「...メディウム。」

 

「はい。」

 

一拍遅れたが、呼ばれていることを理解していつものように微笑む。

あなたの望む最高の息子を演じるのは疲れるんですよ。

そう思ってはいるがそれも今日までなのだから抑えるしかない。

 

この最高の息子を演じられるのも、今日までなのだから。

 

「万が一のことは、すでに備えてあります。そもそも、負けるつもりもないでしょう。」

 

調印式を魔法障壁の内側たる城で行う。

どう考えても罠だった。

しかし、レギスはその提案を受け入れた。

城で、戦争をするつもりなのだ。

 

ノクト達は城から逃がされた。

レガリアならば多少の攻撃でも動きさえすれば耐えられる、逃げられる。

レギスからの最後の贈り物になるだろう。

父親が突如いなくなるなど、ノクトには重い。

負けるつもりがないにしても相手が悪すぎる。今の帝国の宰相がその最たる例だ。

 

この戦争は、勝てる見込みがない。

 

しかし、クリスタルに課せられた使命はルシス王家にいつまでもつきまとう。

その使命こそ世界を救うことになるのだ。

最優先に守るのはレギスではなく、クリスタルでもなく、その手にある光耀の指輪。

クリスタルは、指輪に力を貯め真の王を守る檻に過ぎない。

 

「私も、外へと旅立ちます。後のことは王都警備隊の方々に。」

「...辛い選択を、させてしまった。」

 

歯をくいしばる。

雲一つない青空が忌々しい。

王家が守り続けて来た平和が嘆かわしい。

何故、父も弟も世界のために命を投げ出さねばならないのか。

 

「辛くはありません。ただ、一人の家族として言えることはありますが。」

 

心優しい王は、王ゆえに容易に父として振る舞えない。

そのことに対して寂しかったといえば嘘になる。

だがそれ以前に。

 

「後を追うことを、許されないのはどうにも遣る瀬無いものですね。」

 

レギスに届いたかもわからないか細い声。

せめて、普通の家族になれたのなら。

せめて、真の王が俺であったならば。

どうでもいい願いが浮かんでは消える。

 

しかし、使命は待ってくれない。

この心が壊れてもなお立ち止まるのは許されない。

 

「ーー使命を果たしてまいります。」

 

レギスの言葉は待たなかった。

聞いてしまったら、使命など果たせなくなりそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

「お別れは済ませた?」

 

悪趣味な羽と暑苦しい重ね着を何枚もし、よれよれの帽子をかぶった男が王都から少し出た道に佇む。

無精髭と癖毛なのかくるくるした赤毛。

胡散臭い笑みはこの人譲りと言えなくもない。

 

「済ませたよ。"親"父殿。」

「書類上なのに律儀だねぇ。疲れない?それ。」

「2000年も恨みつらみたらたらのあんたよりはマシさ。どーせならその後も俺に付き合ってくれりゃぁいいのにさ。」

「あんなガキに俺が負けるとでも思ってる?王家断絶のために生かしてあげてるの忘れた?"ディザストロ・イズニア"君。」

「借り物競争ならノクトの勝ちだろうなぁ。断絶するかは、はてさて。アーデン・イズニア宰相。」

 

やれやれという仕草だけをして、かぶっていた帽子を俺の頭に深く被せてくる。

ある意味で同じ存在の俺を、楽しいお遊戯のために書類上の親子に仕立て上げておもちゃにする悪趣味なこいつは帝国の宰相。

 

本名アーデン・イズニア。

正式名もあるが名乗ることはほとんどない。

俺も一応帝国からすればディザストロ・イズニアが本名になる。

宰相の腹心の部下として扱われているが、ルシスの情報も流さなければ帝国の情報も曖昧に伝えている。

 

バレたらアーデンにオモチャにされる危険性を省みて、曖昧に伝えて調査を頼むという形にしかできないでいたのが現状。

ディザストロという名もアーデンに付けられた。

"厄災"という意味はおそらく、俺の使命を指しているのだろうが。

悪趣味ここに極まれり、だ。

 

「調印式には出るんだろう。俺の仕事は?」

「神凪の救出。氷神に受け渡しすればどうとでもなるでしょ。指輪も届けるように言って。」

「おいおい、休ませてくれないのかよ。」

「仕事はって聞いたの、君でしょ?」

 

弟の婚約者、つまり未来の妹をお助けしろと。

...王は生かすつもりがないってことか。

 

「...新しき親父殿の仰せのままに。」

「ディアも来ればいいのに。裏切り者のメディウム・ルシス・チェラムはディザストロ・イズニアとしてアーデン・イズニアのオモチャになります、とか。」

「...今更な口上だ。」

 

長きにわたり闇に身を浸してきた星の病は、愉しそうに俺の首を絞め上げる。

堕ちないギリギリを俺に渡り歩かせるのがこいつの愉しみ。

付き合う身としてはいつこいつと同じ存在に改造されるかわかったもんじゃない恐怖に蝕まれる。

もう、20年も味わってきたが。

 

「なかなか堕ちないねぇ。そこが気に入ったんだけど。」

 

愛しいものと殺したいほど憎いもの。

まざりあえばただの狂気とも取れるそれが、上部だけの言葉を告げる。

ただ、待つのに飽きてどうせなら用済みの王族で遊びたいだけなのか、ただの気まぐれなのか。

それすらもわからずにただ翻弄される。

 

ルシスが蒔いた種はルシスに帰る。

それが、世界の終わりであろうとも。

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