泡沫の王には確実にない設定。
本編とは一切関係ありません。
・概要
記憶の共有はなくても感覚の共有がある。
片方が体を使う場合、もう片方と頭の中で会話ができるが体側が主導権を握る。
アーデンの呼び方がそれぞれ違う。
メディウム「ご主人様」
ディザストロ「マスター」
魔力の塊を使うことで実体化できる魔法が扱える。
その場合体側が魔力を放出することで行える。
二重人格の自覚はあるが個人としてお互いを認め合っている。
・アーデンに出会うまでの経緯
本編と変わらず使命を背負って王都を出る。
ディザストロの人格が王都を出ると決意した本来の人格だがアーデンの虐待で傷つき続けた結果、幼児退行。
メディウムの人格が生まれ、六歳までの記憶はそちらがもっている。
自衛本能で虐待が日常であり、楽しい記憶がほとんどなくなったディザストロが出来上がる。
・大まかな設定
メディウム・ルシス・チェラム
・六歳以降はジグナタス要塞の軟禁の記憶しかない。
・知っている言葉や知識は無意識に活用できるため頭脳レベルは変わらないが怖がり。
・アーデンにべったりでベタベタに甘やかされて育っている。依存が激しい。被虐趣味が多少あるが自傷はしない。
・ノクティスがいることは知っているがあったことは記憶にない。いつも正しいディザストロやアーデンの命令ならば傷つけるが怖がりなのでやりたくはない。
・ディザストロはいつも一緒にいる兄のような存在。
・戦闘はできないが魔法が得意。
ディザストロ・イズニア
・六歳までの記憶がないがそれ以降は存在する。
・帰省時も中身はディザストロのためノクティスを知っている。頭脳レベルはメディウムより経験があるため高い。
・甘やかされるのが苦手のツンデレで非常に厳しく育てられた。アーデン至上主義。最愛と語り、愛情が振り切れている。
・被虐趣味の傾向が強く、自傷も行うことがある。
・メディウムは守るべき弟のような思いでいる。
・近接戦が得意でファントムソード を使用できる。魔法は幻術以外からっきし。被虐趣味なので自ら血を流しに行く。
・ノクティスをもう一人の弟だと思うがアーデンのためならば殺害も厭わない。
・アーデンと同じ色合いがお気に入り。
ボツ設定 鈴の音二つ
「いいよな、メディは。マスターに愛されてさ。」
「ディアだって愛されてるよ。いつも優しいじゃない。」
ジグナタス要塞の一室。
明かりもない暗い部屋で唯一置かれた家具のベッドに倒れこんだ青年は弟に、羨ましいとこぼす。
少し拗ねたような妬みを聞いた弟はくすくすと笑いながら兄とともに仕える主人を思う。
のらりくらりとしたつかみ所のない主人は確かに兄に厳しい。
しかし、それと同時に誰よりも二人を愛してくれている。
そして叶わない恋をする兄の最愛の人。
弟は父のように優しい主人を思っているが恋をするほどではない。
されど、主人がいないと兄も弟も真っ当には生きられないほど依存していた。
「マスターはメディを愛してるのさ。もちろん、俺も愛してるけど。」
「僕もディアを愛してるよ。ご主人様には敵わないかもしれないけど、世界で一番!」
「俺だってそうさ。マスターには敵わないけど。」
愛してると言われた青年は包帯だらけの足をくすぐったそうに動かす。
二人の一番は主人だが、それに劣らないほどお互いが大好きでお互いを理解していた。
「そういえば、ディア。今日も"ご褒美"もらったの?」
「ああ。最高の気分さ。あとちょっとで逝けたんだが、お預け。マスターはたまんないね。」
「あんまり強請らないでよ。本当に死んじゃうよ。」
血が滲んできた包帯を上から強く押す。
せっかくマスターが巻いてくれたのに。
裂くような痛みと同時に背中に駆け上がる背徳感と快感がたまらなく、青年は艶のある息を漏らした。
「マスターはちゃんと加減してくれるさ。でも腕の一本や二本、引き抜いてくれて構わないのに。」
「もう!僕が大変になるんだよ?」
「ああ、そうだった。ごめんな。気をつける。」
傷口に爪を立てながら恍惚とした顔で受け答えするその姿に、本当に気をつける気があるのか心配がつのる。
兄の中で明確な線引きがあるのは知っているが、主人のことになると理性がなくなって見境がない。
べったり甘えている弟の方が冷静な瞬間が多いのがその証拠。
狂愛は諸刃の剣だと弟は学習していた。
しかし、その恋路は応援している。
叶わなくても共にいたいと願う謙虚な兄は幸せになってもらいたい。
「マスター、早く帰ってこねぇかな。」
「今日一日会議でしょう?なかなか戻らないよ。」
「そういえばレイヴスが遊びに来るって言ってたかも。」
「ちょっと!それを早く言ってよ!そんな格好で出迎える気なの!?」
生暖かい微量の魔力を垂れ流しながらすっかり忘れてたと呑気にあくびをする。
主人のことで頭がいっぱいの愛瀬の後はどうしても色々と抜けてしまう兄にベッドサイドへと"現れた"弟が悲鳴をあげた。
背中まであるストレートの赤毛をするりと垂らしながら、下着の上に血が滲む包帯だらけの体が起き上がった。
橙色の瞳がトロリと蕩けたように柔らかく歪み、弟にしなだれ掛かる。
「ああ。忘れてた。マスターは激しいからな。他のこと忘れさせてくるし。」
「わかったからどいて!着替えとってくるから!」
包帯が巻かれていない肩の部分を強く押し返し、簡単にベッドに倒れた兄の服を捜索。
案外近くに脱ぎ散らかしてあった服を拾い上げて兄に投げた。
背中まである黒髪を一つにまとめ、夜空のような黒い瞳をキツく細めて兄を睨んだ。
「早く着て!レイヴス兄さんに見られたら目も当てられないよ!」
「蔑んでいじめてくれるかもしれないぜ?はぁ、やっば。考えただけで…。」
「喜ぶのはディアだけだよ!僕が恥ずかしいの!」
「ちぇっ。」
ぶるりと身を震わせ、艶めかしく唇をペロリと舐めた兄を一喝。
並みの男ならば今の動作を見た瞬間兄の言いなりになるだろうが弟はその限りではない。
傷つけられてもなお残る白い肩と綺麗な鎖骨をわざと出すようなシャツと包帯だらけの足のために買われたホットパンツを履く。
裸足はダメだとスリッパを渡され着替えている間に淹れたのか紅茶を出された。
「コーヒーでもいいんだぜ?お子様舌。」
「あんな苦いもの誰が飲むの。」
「マスターの主食に近いじゃないか。」
「ゔっ…べ、別に僕が飲む必要ないし。」
「淹れ方ぐらい知っておけ。マスターに"ご奉仕"したいだろ?」
「絶対意味が違う!!」
たかが紅茶とコーヒーの話でチロチロと舌を出しながら弟をからかう。
一つ一つの動作に品があり、ちゃんとすればどこかの貴族のように見えるはず。
それなのに気を抜いている所為なのか濡れたような視線と誘うような艶かしさが先に目につく。
このままではレイヴスの理性が心配だ。
「レイヴス兄さんは節度のある人だけど、男だから大丈夫とかで僕の知らないところで許したりしてないだろうね?」
「どんなに寂しくても脚開くのはマスターだけだぜ。寂しくなくても強請るんだがな。」
主人にはものすごいくせに他人への貞操観念に厳しい兄はきっちりと距離を保っている。
前に勘違いして帝国兵に襲われたことがあったがその時は半殺しにしたそうだ。
弟には更に厳しく、主人でもあまり許してはならないと口を酸っぱくして言っていた。
愛瀬の際は会話も覗き見もさせない。
片思いの独占欲ではなく知識はあっても純粋でいてほしい兄心だった。
その思い通りに経験のない弟は脚を開いてわざと座る兄に顔を真っ赤にして怒鳴る。
「僕にもしないでよ!?」
「もちろんさ。弟に可愛がられる趣味はない。」
「言動と行動が一致しないよ!!」
解けかけた包帯を巻き直しながら太腿を見せるような体勢をとる兄に首まで真っ赤になった弟が悲鳴をあげる。
からかって満足した兄はケラケラと独特の笑い声をあげて、主人からもらった黒いローブを羽織った。
ホットパンツのため、包帯が巻かれただけの生足に視線がいってしまう。
筋肉質のはずなのに美しい肌と兄の艶かしい雰囲気が硬い脚を白百合のような可憐な脚に見せていた。
魔法が使えるなのにてんで才能がない兄は怪我の治療はしない。
逆に身体能力は高い癖に剣も振れない弟は魔法に天賦の才があった。
代わりに治療をしようと昔申し出たことがあったが、愛情の証だからこのままでいいと断られたため致し方なく応急処置に止まっている。
「レイヴス兄さんもマメだよね。毎週様子見なんて。」
「心配性なんだ。シスコンだし。」
「それただのディスりだよね?」
多めに淹れた紅茶に角砂糖を三つも入れる弟は、年上の知り合いを思い浮かべる。
先日、准将に昇格した彼は兄に片思いをしているはずだ。
面倒な三角関係だが、兄は気づいておらず主人のことしか頭にない。
察しのいい弟は不憫なレイヴスに同情した。
毎週プレゼントを携えてやってくるのに見向きもされないとは。
挙げ句の果てに会話内容は永遠に主人の話。
どれだけ睦言を囁いても、潤いに誘ってもてんで通じない。
報われないにもほどがある。
それだけ主人への愛が強いとも言える。
猫舌ゆえにチビチビと紅茶を飲んでいると、兄の携帯による着信音が響いた。
噂をすればなんとやら。
レイヴスから、こちらに向かうという内容のメールだ。
今週の手土産は帝都限定でエボニー社が出店している喫茶店のコーヒー豆とチーズスフレ。
コーヒーはもとよりケーキ類に目がない兄用だろう。
「ほんっとマメだよね。」
「甘党なんだろう。シスコンだし。」
「シスコンに恨みでもあるの?」
携帯を投げ出して、兄がベッドサイドから立ち上がる。
紅茶のお代わりと一緒に冷蔵庫にしまってあったティラミスを取り出す。
ケーキ類の中でもチーズとチョコを好んで食べる。
弟がイチゴとチョコ好きなため、イチゴのショートケーキも取り出した。
誰が備蓄しているのかというと、外出できる主人しかいない。
兄弟のためにケーキ屋に毎週訪れる故に巷では有名らしい。
レイヴスも張り合って、そこそこ有名だ。
帝都のケーキ店で彼らを見ない週はないとか。
兄弟を双子だと思っているアラネアが笑いを噛み殺しながら言っていた。
「これからチーズスフレも来るのに食べるの?」
「腹減った。」
「ご飯食べなよ。パスタがあるよ?」
「甘いのが食べたい。」
「パスタ食べてからね!」
兄からティラミスを取り上げ、電子レンジに入れておいたパスタを取り出す。
愛瀬の前に食べようとしていたパスタだ。
少し冷めてぬるくなっているが猫舌にはちょうどいいだろう。
トマトソースが和えられたパスタを致しかたなくモソモソ食す兄にため息をつき、弟は来客の準備を始めた。
完全なるボツ設定を投下。
投稿期間が空いたため、その贖罪に。
闇が深すぎる。でも好き。